岡山大学大学院医歯学総合研究科ヒトES細胞倫理審査委員会 第8回委員会議事録
日時:平成16年11月8日(月)午後1時〜3時10分
場所:歯学部第一会議室(歯学部棟2階)
出席者:A,B,C,E,F,G,I,申請者B
欠席者:D,H
資料:岡山大学大学院医歯学総合研究科ヒトES細胞倫理審査委員会第7回委員会議事録(案)
   使用計画書概要
   第7回議論の要点と合意事項のまとめ(案)
   「ヒト胚性幹細胞(ES細胞)の肝細胞への分化誘導およびその体外式バイオ人工肝臓への応用に関する基礎的研究」研究計画書に対するコメント
 
A : それでは時間になりましたので始めたいと思います。H先生ですが,風邪をひかれたそうでして,非常に残念なことにきょう出席できないという連絡があったそうですので,これできょう出席予定の委員の方は全員そろいました。
 あらかじめお知らせしておきましたとおり,きょうはまず研究施設の見学をしようという計画です。もう来られていますか。
事務担当: いえ,10分ぐらいに臨床研究棟へ。
A : こちらから行くの。
事務担当: はい。
A : ああ,そうですか。10分ぐらいに行くそうですので,それまでにちょっと資料を確認していただければと思います。
 まず,あらかじめお届けしてある資料は,リバイズされた使用計画書と,それから議事録の案でございます。C先生が海外出張中のために少し追加の修正がございまして,それがきょう机上に配られております2枚の紙に,15ページと,P15と書いてありますけども,それが追加の資料です。
 そのほかにクリップでとめてあります3枚の紙がございまして,これは一番目はいつものように前回の委員会の議論の要点と合意事項のまとめでございます。
 それから,1枚めくっていただきますと,前回の委員会の議論に基づきまして使用計画申請者の方にこれこれこういう点に留意して計画書をリバイズしてくださいというコメントを出しました。本当はあらかじめこの内容を委員の先生方にオーケーをいただいてから向こうにお届けるするのが筋ですけれども,時間の関係で内容を先にお伝えして計画研究書をリバイズして頂きました。
 まず,議論の要点と合意事項のまとめというのをごらんください。
 1番として,その前の委員会の合意事項を確認したということ。
 2番は前回,前々回の委員会で問い合わせや調査することになっていたこと,基礎研究と臨床研究の範囲とか,あるいはブタのESがアベイラブルであるかどうか,そのあたりについての結果を御報告いたしました。
 それから,3番目は資料の確認と内容説明。
 4番目に,主要計画書を提出された申請者の中から申請者A先生,申請者B先生,申請者C先生の3人の方に出席をいただいて以下の質疑を行いました。まず,申請者A先生から概要,申請者B先生から研究の背景とバイオ人工肝の説明,申請者CからマウスES細胞を使った実験結果の説明,それから最後に申請者B先生からヒトES細胞に関する準備状況とその説明を受け,引き続いてここにあげた幾つかの事項について質疑を行いましたということであります。質疑の終了後,申請者は退席していただきまして,審査過程には加わっていないということをここで確認しております。
 それから,5番目にその後の議論でこれこれこういう問題が出てきたということが挙げてあります。計画は基本的には倫理的に容認できる範疇に入るのではないかということ。それから,科学的に目的は有意義であると。それから,準備状況はおおむね容認できるし,マウスES細胞で十分な基礎があれば,必ずしもブタとかサルで実験をさらに行うということは求めないというのがコンセンサスであったと思います。
 ただしそこにありますように,マウスES細胞に由来する肝類似細胞を人工肝臓モジュールに詰める実験は追加していただきたいということを要望するということになったと思います。
 それから,分化した細胞の機能検定に関する議論,それから倫理的な側面について使用責任者から文書でお考えを表明していただく。
 それから,ES細胞が無償で提供されることを明記する。文言の改善を行うと。こういう内容を申請者に伝えて対応していただくということになったと思いますけれども,この合意事項のまとめについて何か問題点,あるいは落ちてる点がございましたら御意見をお伺いしたいと思います。
 いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。それでは,ご了解いただいたということにいたしまして,これを前回の委員会の合意事項のまとめといたしたいと思います。その合意事項に基づいて出した要望書が次にありますが,これは実際に研究計画書の中身と一緒に検討した方がいいと思います。それでは,今から実際に研究施設の方に伺いたいと思います。研究施設に伺っていろいろ具体的なものを見ながら質問があると思いますが,自由に質問してください。その記録もテープにとって,こういう質疑がありましたということを報告したいと思っております。
 では,よろしくお願いいたします。
 
(研究に使用する予定である臨床研究棟8階実験室に移動,実験室におけるやりとりについては省略)
   (臨床研究棟実験室から委員会会場へ移動)
 
A :それでは,委員会を続けたいと思います。皆様お疲れさまでした。
まず,記憶がフレッシュなうちに施設について御意見を伺いたいと思いますけれども,いかがでしょうか。要求されていることはヒトES細胞をある種の礼を持って取り扱う環境にあるか,それから安全性,その両面からが重要なポイントだと思われますけれども。御意見お願いしたいと思います。
I : もう本当にああいうことについては素人ですので,こういうものかと思っただけでよく分からないんですが。
A : 特に入り口といいますか,実際に使われる部屋の前にあのような領域があることは結構なことなんですけれども,その前室あたりが余りなれない方からごらんになりますとかなり雑然としているなという……。
I : そうですね。
A : 印象をお持ちじゃないかと思うんですけど。ただ,結局スペースの問題でなかなか難しいんですね。本来であれば,あの前室の方の実験のスペースも居住の区画というのはもう少しきちっと分けてあげるのが最低限の条件なんですけども,もう今の建物事情ではとてもそういかなくて,実験台のそばに書き物机があって,コーヒー茶碗があるというような状況やっているようです。こればかりはなかなか仕方がないと。その中では一生懸命あのスペースをあけたということではないかと思っているんですが。
 F先生,どうでしょう。
F: スペースが足りないというのは鹿田も津島も同じ状況ですね。
 1点要望として上げるならば,私が言う資格はないのかもしれませんが,エアカーテンで外界とシャットアウトするといっても,実験室の掃除は念入りに行うこと,ということくらいでしょうか。
A : ありがとうございました。
 ほかにございませんでしょうか。
 掃除に関しては,一応,申請者の方に伝えたいと思います。もちろん言うまでもなくあの研究室は今はまだ使われておりませんので,機器を運び込む前にきれいに掃除をするというふうに思います。特に細胞培養をやりますのでコンタミネーションにはみんな神経を使いますから,周辺は比較的きれいになるはずなんです。ほかの研究,例えば分子生物学の研究している環境よりは自分のためにきれいにするというところがあると思いますけど。
F: いや,私の言ったのは,ある意味で雑談ぐらいに……。
A : ええ,分かります。分かりました。
 E先生,いかがですか。
E: 印象ですが,何とか形を整えられている。大変だったろうなという気がします。もっといい施設が,予算があればできるんじゃないかなという気もします。できた方が,逆に,やりやすいでしょうし。韓国の同じような施設をソウルで見たんですが,物すごくお金をつぎ込んでるんで,ぴかぴかでしたね。小さな部屋で作業をするのはちょっとかわいそうかな,という印象を受けました。
A : ほかにございませんでしょうか。
 G先生,いかがでしょうか。
G: そうですね。まぁいいんじゃないでしょうか。入り口なんかはあれでいいかなという気がしますけれども,スペースの関係で仕方がないかなと思います。
A : ほかにございますか。
 確かに最近再生医学をやっているある種の研究施設は,非常に建物も恵まれていて驚くほどきれいな環境でやっているところもありますけれども,古くからある研究施設というのは多かれ少なかれああいうレベルっていうのが現実だと思うんですね。それで問題は,この倫理委員会としてヒトES細胞を取り扱うのに最低限といいましょうか,必要な基準を満たしていると考えるか,あるいはもう少し例えばこういうことは改善できる範囲で改善していただきたいということがあればお伺いして先方には伝えたいと思いますけど。具体的な件に関してはいかがでしょうか。
 C先生,何か御意見ございます。
C: 施設に関しては特にないですが,実験設備がまだ置かれていないという状況でいいのかなどうかそのあたりが少し気になったのですが,如何なものでしょうか?
A : 向こうの説明によりますと,要するにこれは承認されないと全然スタートできない研究なので,承認されてから現有設備を活用するなり新しく購入するなりして設備を整えたいと,そういう方針のようですね。それも理解できることで,今みんなそろえて承認されないと全部むだになってしまうということもございますので。
 B先生,何か御意見。
B: いえ,特にはありません。狭い部分で苦労をされているという印象を受けました。
A : それでは,設備に関してまして先ほど申し上げましたヒトES細胞を取り扱うのに必要とされている基準は満たしているんじゃないかというふうに結論をつけてよろしいでしょうか。
 それでは,特に反対の御意見なさそうですので,施設に関しましては検分した上で一応必要な基準を持たしていると考えると,このように判断させていただきたいと思います。
 それでは,皆様のお手元に既に新しくリバイズされた研究計画書が届いていると思います。既に御検討いただくようにお願いをしてございましたけれども,実際にチェックといいますか,全体の検討をしていきたいと思います。
 前回さまざまな議論が出まして,きょうお配りしたような要望事項をコメントという形で送らせていただきました。
 まず,それをちょっとごらんいただければいいんですが,実は前回の委員会が終わった後にこれを同じ内容のことを既にお伝えしてありますので10月の半ばごろの日付になっております。そこにありますように,これこれこういう意見の要約をお知らせしますのでそれに従って計画書を改変して再提出してくださいということになっておりまして,一番問題になったのが,マウスES細胞での準備状況が肝細胞用に分化させた後にモジュールに詰めて機能がどうなるかという実験をやるべきではないかということです。かなり議論になりましたので,ちょっと詳しく書いてあります。これはどうしても必要だという意見と,それから必ずしもそこまで求めなくてもいいのではないかという御意見がございましたけれども,全体の結論としては,やはりこの段階でその研究結果を出していただいた方がいいだろうということになりましたので,その点をお伝えするという内容になっております。
 それから,2番目は研究責任者がヒトES細胞をどのようなものとしてとらえて,どういう倫理的配慮が必要であると考えているか,またそれを現実化するためにどのような方策をとろうとしているか,それについて文書で回答していただきたいという要望をいたしました。
 それから,3番目に具体的な計画書の記載内容に関しまして幾つかの要望事項がありました。1番は,無償で供与するということの1文を明記してもらいたい。それから,2番は文章が長過ぎるので小見出しをつけたり,分かりやすくもう少し工夫をすべきであるということです。それから,3番目には,これは前々回の委員会で主に議論になりましたが,研究計画を推進するための費用の概算の見積もりとか,そのソースを可能な範囲で記述してもらいたいと。それから,4番目はモジュールに詰めた細胞の機能評価をどのようにするのか,その項目の検討。それから,定量性を特に重視して,その点をはっきり分かるように書いていただきたいと。それから,5番目は長期の目標と当面の目的,当面の研究目標というのを分けて全体がはっきり分かるように位置づけてくださいと。それから,先ほどもちょっと言いましたけど,文言についての検討も少し必要であろうと。そのほかに本研究計画の内容とか推進体制に強調すべき特徴があればそれを記載してくださいと,こういう要望事項を出したわけです。
 したがって,きょう今から検討していただきますのは,こういう要望事項がまず入っているかどうかということ,それから最後に全体として以前からどういう審査項目について審査をするかという基準を何度もお配りしてありますので,大体それに基づいて検討をしていきたいというふうに思います。もし,今回,基本的にこの研究計画書が承認できるという方向に結論がいけば,委員の皆様方に2週間ぐらいかけて評価報告といいますか,それを書いていただきたいと思っております。大きな項目について,これこれこういう点があるからこういう点で評価したというようなことを皆さんに書いていただきまして,私がそれらをすべて要約をして最終的にこの委員会の審査報告書としたい,それを研究科長に提出すると,そういうスケジュールにしたいと思います。
 したがって,もちろん途中で異論があって問題点が出れば全くそれは別ですけれども,そうでなければ内容についての検討はきょうで一応基本的に終わるということになりますので,そういうことを意識しながら御検討いただきたいと思います。
 まず,どうしましょうか。前回のこのコメントが入っているかどうかということの確認をしたいと思うんですけれども。
 1番目のES細胞から分化させた肝細胞をモジュールに詰めた実験をしてくださいというふうにお願いをいたしました。そうしましたら,その間研究が行われたようでして,8ページにモジュールに充填したマウスES細胞から誘導された肝細胞のアンモニア代謝という結果が出ております。これは,EB形成後に充填して,その状態でHPOを作用させましたということなんですね。そうすると,これがアンモニアの代謝率で機能を検定してますけれども,平面培養のときよりも60%程度ですか,機能が向上したという結果がございます。
G: 前のページのモジュールにヒトES細胞を充填する時期として,それでマウスES細胞と書かれています。そして,この図2が,これはヒトのかマウスだか分からない。マウス,ヒトのですか。
A : これは先生,ヒトのではないです。ヒトのはまだ触ってませんから。
G: だからマウスですね。
A : ええ。
G: やはり,ここ,図のとこにマウス胚様体EBと入れていただきたい。この2のサブタイトルではヒトES細胞を充填する時期として非常に紛らわしい。
A : そうですね。
G: 私,ぱっと見たとき,これはマウスかヒトか分からないなと思って,非常にあいまいなと思って読みましたけど。この点明確にしていただきたいと思います。
A : 分かりました。この申請者の意図は,恐らくこのタイトルを書くときには計画が頭にあって,それでその後に内容については根拠を示すためにマウスの結果になってるということになってるんで,確かに紛らわしいのですね。そのように修正を求めたいと思います。
 F先生,前回ちょっとそういう研究もしてもらった方がいいんじゃないかという御意見,F先生,I先生あたりからあったと思うんですけど,これで一応結果が,3次元にマウスのES細胞に由来する細胞を詰めて確かに機能がある程度上がったということの一つの証拠であるというふうにお認めになれますでしょうか。
I : はい,結構だと思いますけど。
A : よろしいでしょうか。
 それでは,1番の要望事項に関しましてはその記載というか,その結果が加わったというふうに判断したいと思います。
 それから,2番目の要望事項は,研究責任者のお考えを文書でっていうことでして,これ,この計画書の一番最後に資料としてついておりますけれども,これもお読みいただいたと思いますが,いかがでしょうか。
 E先生,いかがですか,倫理的な立場からして。
E: 胚の提供者の病歴や年齢等の個人情報は求めないと,必要があるけれども求めないというふうにお考えなんでしょうかね。必要はもともとないのか。何となくこの記述を読むと,あった方がいいけれどもプライバシー,個人情報の保護のために求めないとなっているような,最後のページですね,上から4行目あたりからですね。
A : それはどうなんでしょうかね。この文章を読んでどちらかを判断することは少し難しいと思いますけれど。一般的に研究する立場からいいますと,計画書にある研究には個人情報というのはあまり大きな意味を持たないと推測されます。ただし,情報というのはあればあるほど,その結果を解釈するときに役に立つんだと思うんですね。例えば,そういうことがあるかどうか分かりませんけれども,提供者がある特定の遺伝的背景を持っているとすると,その肝臓の分化のしやすさが個人情報と結びつくかも知れません。もし全くプライバシーの問題を抜きにして,ただ純粋に研究のことだけ考えれば,多分情報があった方がよりいいだろうと思います。ただし,この研究計画そのものは,その部分は非常にかなりマイナーな部分ですので,もうそれは求めないという姿勢を明確にしているということだと思いますけど。
 このセクションで大事なことは,こういうお考えに立っている申請者A先生がこの研究計画,ヒトES細胞の使用責任者として適格であるかどうかということが一番問題だと思いますけれども,その立場の表明がこれで十分であるかどうかという,そこだと思いますが,いかがでしょうか。
I : 本当によく分からないんですが,でもES細胞を使って人間に実際に移植するというような方向だとやはり抵抗感は大きいわけですけれども,今回の計画のバイオ人工肝臓モジュールっていうのは,直接移植するわけではなくて,それを非常に重い肝臓疾患に,一時的な,手術なんかの前後の一時的な救命装置のようなものとして使えるということで,これはES細胞の,まだそこまでは今回の研究ではいかないわけですけれども,その基礎段階ということですけれども,方向として容認できるといいますか,役にも立つし受け入れやすい計画なんじゃないかとは思います。
A : ありがとうございました。それがこの研究計画の一つの大きな特徴だと思いますね。それは研究計画の中にもそのことを強調して書いていただいてまして,今回のリバイズされた計画書でははっきりしてるので,その点は確かによい点だなと私も思っております。
 申請者A先生のこのお考えに関してはいかがでしょうか。よろしいでしょうかね。
G: 一番最後のとこで申請者A先生が書かれてますね。私はこれでいいと思います。あるいは,講演会とかなんとかを自主的に開くのもいいですけれども,やはり生命倫理学会とかそういうところにも出席するとかというのが入ってもいいように思います。ES細胞は特別な細胞だという意識を持って仕事を進めていただきたいなと思ってます。
A : 分かりました。その旨はちょっとお伝えしておきます。
 ついでにちょっとだけ御参考までに申し上げます。
 申請者A先生は,例えばこの前神戸で開かれた倫理関係の市民に対する講演会がありまして,私も参加しましたけれども,それにも自主的に出ておられまして,確かにそういう方向に努力はされてるというふうに思います。一応そこははっきりさせてくださいということは言いましょう。
 そのほかにございますか。よろしいでしょうか。
 それでは,この点も一応コメントといいますか要望におこたえいただいたというふうに判断したいと思います。
 それから,3番目にもう少し細かい内容ですけれども,無償で供給を受けるということの一文を入れてくださいということが前回F先生の方からございまして,それは計画書の中に入っておりました。5ページの一番上ですね。中辻先生から無償にて提供されると,添付書類5ということになっておりますので,一応これは入ってると思いますが,先生,よろしいですか。
 それから次は文章が長過ぎて非常に分かりにくいということで,この点は非常に工夫していただきまして,項目立ても比較的はっきりしておりますし,確かによく分かるようになったと思いますが,その件に関して何か御意見ございますでしょうか。
G: 分かりやすくなったと思います。
A : よろしいでしょうか。
 では次に,研究計画を推進するための費用概算見積もりとそのソースですけれども,これも9ページに1項目ございまして,研究計画を推進するための費用という項目がありまして,必要な費用の概算,460万円。
 まず,この460万円が妥当であるかどうか,このことについては。23ページの添付資料4にその費用概算の根拠が示されております。培地が60万円,グロスファクター100万円,試薬類が200万円,培養用器具が100万円で,大体1年間に460万円。これは,C先生ごらんになって,この費用の産出は妥当な範囲とお考えになりますか。
C: 実験を行うにはこれで妥当かなとは思うのですが,先ほどの備品関係は,これはどう解釈したらよろしいんでしょうか。これプラス備品とか……。
A : そうですね。
C: その辺がちょっと……。
A : 備品が入ってませんね。
C: 備品はどういう費用の中でこの計画の中で購入されてそろえられるということなのでしょうか?
A : いや,そうじゃないと思いますね。これは消耗品ですね,ここにリストアップされてるのは。
C: ええ,そうなんです。
A : それ以外にお金を見積もらなくてはいけないのに,この記載によりますと必要な経費はとなってますので,ちょっとやっぱりその点は修正していただいた方がいいですね,これは。
C: ええ,今日見させていただいて,例えば全部現在の段階でそろっているのであればこれでいいのではないかなと思うのですが,そろってなかったものですから。
A : そうですね。
C: ええ。
A : この件に関して,そのほかに御意見ございます。
I : さっき伺いましたらある種のことは外注で分析に出されるというお話でしたけど,そういう費用も必要なんじゃないでしょうか。
A : そうですね。外注の費用。
 そのほかにございますでしょうか。
 それでは,この点に関しましては費用の見積もりはもう少し正確に,丁寧に考えていただきたいという修正を求めたいと思います。
 次に,モジュールに詰めた細胞の機能評価に関して項目とか定量的なアプローチというお願いをしました。確かに前回よりはもう少し機能検定というか,そのあたりの考察がなされてると思いましたけれども。
 G先生,前回いろいろ御要望されましたけど。
G: 今度はアンモニア代謝なんか書いていただいていいと思います。いわゆる急性肝不全で一番の問題が高アンモニア血症だと私は思いました。だから,このくらい代謝するのであればいいかなと今思っています。
A : ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。
 はい,どうぞ。
B: 8ページなんですが,当然アンモニアの代謝はされるんだと思うんですけれども,この表1の中に上がっているのが,前回指摘されたアルブミンと各種凝固因子のみになってるので,せっかく上にアンモニア代謝のデータも出てますし,ヒトでもアンモニア代謝を測定するっていう欄が追加されてもいいのではないかと思うんですけれど。
A : そうですね。検討すべき項目としてはアンモニア代謝というのが当然入っているべきですよね。分かりました。その点は追加したいと思います。
G: だけど,ヒトのモジュールに詰めてこれから実験やるわけでしょう。だから,それができてアンモニア代謝も調べるわけじゃないんですか。
A : そうです,そうです。これは,だからこの4番に書いてあることは,こういうことをやりますよということですので。
B: マウスのES細胞でアンモニア代謝がよくなった,よくなったというか,機能が出たっていう実験を追加されたのですが,その実験をする前にこの表1は書かれたんだと思うんです。そのときにはアルブミンと各種凝固因子の発生を目印に分化の程度を調べるんだと言われてたんですが,アンモニア代謝機能も実際にここまで出てくるんですから,調べる活性測定の中に加えてもいいのではないかと思ったんですが。
A : そうですね。前回G先生もアンモニア代謝のことは重要ですから検討してくださいというようにおっしゃいましたし,これがどうして入ってないのかちょっとよく分からないんですけど。
G: これは体の中の値なんですよ。人体にアンモニアを付加して実験はやれないわけです。
A : そうです。けれども,大体どのぐらい産生されてどのぐらい処理されてるかということのエスティメーションはできてるはずですので,いずれにしてもそういうことをやりますよということはどこかに書いておいてもらわなくてはいけない。
G: だから,表1にアルブミン代謝を入れるわけにはいかない……。
A : 中に入れるわけにはいきません,産生物質名ですからね。
G: だから,動物の血清の中のアンモニアが大体幾らとかというのは分かるわけですけど,どれくらい代謝されてるかというのははかれないわけですよ,動物ですから。
A : これは,先生,8ページにあるテーブルはヒトについての値じゃないですか。
G: これ,ヒトですか。マウスかと思った。
A : ヒトだと思う。
G: ヒトですか。
A : ええ。だから,これはこのぐらいだから,これの15%ぐらい……。
G: ちょっとあいまいですね。ヒトと書いてほしい……。
I : ヒトかマウスかを書いていただくべきですね。
G: ええ。
A : そこはヒトと書く,書いて,項目については先ほどのアンモニア代謝のエスティメーションも含めてちょっとそれも調べますということを書いていただくことにいたしましょう。
 それでよろしいでしょうか。
 では次に,長期の目標と,それで今回のこの研究計画期間内で何をしようとしているのかということを明確にしてくださいというお願いをいたしました。その位置づけは,例えば1ページの使用目的に要約のところにも,後半部分は長期的にはこういうことを目指すけれども現段階ではこれを行うということも書かれておりまして,この点は一応コメントにおこたえいただいたのではないかというふうに私は思いましたが,御意見ございましたらお願いいたします。
E: 使用目的のところの一番最後の行に,この研究が終わった後のことなんですが,サル肝不全モデルを用いたバイオ人工肝臓の効果判定試験を計画してると。これは,今回つくられたものを使うということなんでしょうか。
A : 先生のそのつくられたものを使うというのはどういう意味でしょうか。つまり,そこでつくったモジュールそのものをもうそのままという,そのような理解でいいですか。
E: ヒトのES細胞由来のものをサルで使うという……。
A : いや,もちろんヒトのES細胞由来のものを使うっていうことは間違いがないんですけど,今回の計画期間中につくったものを,そのものとしてそのまま使うという意味ではないと思いますね。この研究計画では,研究が終わった時点で細胞は処理すると書かれております。それは,もうその実験は再現性があるからいつでもそういう細胞をつくることができるようになるであろうと,この実験が終わりますと。そうすると,第2期にサルでどのぐらい効果が,臨床的な意味でサルを使ってですけれども,サルを使って命を助けることができるのかという研究をしようと思ったときには,改めて細胞を分化誘導して,それをモジュールに詰めてそれを使うということになるんだと思うんです。
E: 分かりました。そのときは,また新たに何か委員会に出されるようになるんでしょうか。
A : それは,当然新しい使用計画ですから,このような委員会で審議をいたしまして,また文科省の専門委員会に上げるということになると思います。
 ほかにございますか。
 それでは,最後に文言のことがちょっと残ってるんですが,その前にいよいよ,細かい文言は別にしてこの研究計画全体,これまでの要望に一応基本的にはこたえていただいて,一部修正がまだ残っておりまして,その修正は改めてつけ加えてやろうと思っておりますが,もう一度大きな観点に立ち戻って,以前にお配りした評価の規準の大項目についてもう一度確認をしたいと思うんです。
 まず第1に,この研究計画が全体として倫理的に容認できるものであるかどうかということです。これはもう最終段階の判定のようなものなんですけれど,できれば皆さん,各委員から御意見を伺いたいと思うんですけど。
 まず,F先生からお願いします。
F: 合致していると思います。
A : G先生。
G: 私もよろしいと思います。
E: 同じです。
A : C先生。
C: 私も容認できると思います。
A : B先生。
B: 私も問題ないと思います。
A : I先生,いかがですか。
I : ES細胞を使うというようなこと全体に対する根本的な疑問はないわけではないんですが,それはもう容認した上でこの研究をどう見るかということであれば,私は容認できる研究だと思います。
A : ありがとうございました。今,I先生がおっしゃったように,今世の中で大体こういう基準だからそれに従ってそれに合ってるかどうかということよりも,もう一歩踏み込んで,個人的な御意見も踏まえてどのように考えるかという,そういう形で御意見をいただければ,その方がお互いの理解といいますか,将来このような問題を倫理的な観点からどう考えていくかというところで非常に役に立ちますので,そういう形でお考えを伺えたらと思っております。
 それでは,この研究計画に関しましては,今の世の中でこういう研究が行われることは容認できるであろうということで意見が一致したというふうに判断されますので,次にこの研究計画の科学的妥当性,これは科学的に見て推進すべき根拠が十分整っているかどうかということです。これは,前回からかなり細かく検討してまいりましたが,その点について委員の皆様方の御意見をお伺いしたいと思います。
 また,F先生の方からお願いします。
F: 基準を満たしていると思います。
A : G先生,いかがですか。
G: なかなかこの目的に合うような実験結果になるのは難しいと私は思っておりますけれども,一応チャレンジする価値はあると思っております。
A : E先生。
E: 科学的正当性,妥当性については基準を満たしているのではないかと推測しております。そして,最後,先ほどの倫理的な問題について,I先生がおっしゃったように私も考えてまして,基本的に人体の全部であれ一部であれ,人体が資源化,商品化するという大きな流れがあるわけですね。これ自体に大変な問題性がある。特にES細胞について言えば,既に胚が破壊され,樹立されてもうここまで来ている,それをだめだというのは余りにも歴史のねじを逆に巻くような感じもします。テクニカルに見れば,というか,部分的に見ればまず問題はないでしょうが。人類全体の大きい営みの流れの中ではやはり懸念される要素はあるということを前提にして,倫理的に許容される,という結論をつけ加えておきたいと思います。
A : ありがとうございました。そのような意見を是非どんどん言っていただきたいと思います。最初にこの委員会をどのように進めるか,そのときいろいろ議論をいたしまして,そのときは残念ながらI先生はいらっしゃらなかったわけですけれども,とにかくいろんな意見があり得るだろうけれども,徹底して話をしてコンセンサスを求めながらやってこうと,多数決でものを決めるのではなくてという話をいたしました。最終的な報告書にも,できるだけそういうお考えといいますか,基本的にこれでオーケーだからもういいというのではなくて,委員の中にはこういう意見もあって,こういう点を留保しながら,それで認めるということがありましたということをできるだけ盛り込んだ形で報告書をつくりたいと思っております。従って,先ほど申し上げましたけれども,委員の皆さん方にはこの後,それぞれに報告書を書いて頂きますが,その中にそのような御意見を是非含めていただければ,最終的にまとめる段階でそれを尊重して書いてみたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 C先生,科学的な妥当性について。
C: 科学的妥当性はあると思いますし,チャレンジする意義があると思います。
B: 科学的な妥当性はあると思います。これまでの研究経過を踏まえて,さらに一歩進めるという意味で,非常に着実な計画ではないかというふうに感じました。
A : I先生,いかがでしょうか。
I : 今,E先生がおっしゃってくださったことが,私も本当に基本的な疑問としてはあります。それと,私の言い方で言わせていただくと,科学の研究はうっかりすると先陣争いとか,それから利益追求ということになりかねない部分があると思うんですね。そういう側面が強く出てしまったら,たとえES細胞を使う,使わないということでなくても,そういうやり方というのは社会全体から見て余りいいことではないという気持ちを持っておりますが,最初に伺った研究計画では何をしようとしてるのかよく分からない,とにかくES細胞を使った研究に手をつけておこうというような感じが見えましたので疑問を持ったんですが,改めて出てきた計画をこの前御説明いただきまして,全く肝臓の疾患の研究の必要性の方からアプローチしておられるということで,その意味では後の計画を伺って非常に私としては納得ができたと思っております。
A : ありがとうございました。それでは,今いろんな御意見を伺いまして,基本的にはすべての委員の方がこの研究計画は科学的根拠があるというふうに御判断いただいたと思われますので,詳細につきましてはそれぞれの特徴を持った御意見を求めたいと思いますけれども,基本的にはこれでオーケーだということにしたいと思います。
 それから次に,特に今日ごらんいただいた研究設備に関してですけれども,要するに最初に申し上げましたが,ヒトES細胞をある種の礼意を持って取り扱うのに十分な環境が整っているかどうか。それから,細胞を適切に保管,管理できるか。それから,研究を遅滞なく進めるための設備,器具は整っているか。この3番目に関しましては,まだ設備は整って,備品が整っていないわけですけれども,それは商業的に購入可能なものであって,スペースに関しては既に確保されてるということで,このあたりのことについての御判断をまたいただきたいと思います。
 F先生,どうぞ。
F: きょう拝見させていただいて,今委員長からも御指摘ありましたように,まだ備品が全部そろっているわけではありませんので,申請者B先生でございましたっけ,きょう説明していただいたのは。申請者B先生の御説明のとおりになるであろうならば,設備としては十分であろうというふうに考えております。
A : G先生,お願いします。
G: よろしいと思いますが。
A : E先生。
E: 同じです。
C: 私も備品が今日の説明どおりそろえば,それで結構だと思います。
B: 備品がそのとおりにそろえばいいということと,それからその部屋の出入りなんですが,申請者B先生の説明どおり,ほかの方たちもそれに協力をしてあの部屋を説明どおりに運用してくだされば問題ないんじゃないかと思いました。
I : 贅沢を言えば切りがないんだろうと思いますけれども,今の大学の状況ではそんなに贅沢な設備は不可能なんだと思いますし,それに湯水のようにお金を使うことがいいことだとも思いませんので,必要なことが満たされていれば結構だと思います。
A : ありがとうございました。先ほどからちょっと出てます備品に関しましては,予算のことを明記していただきます。実際に実験に携わっている方からいいますと,あと必要な備品というのは比較的軽いもので,あそこにバイオハザード用のクリーンベンチを備えるというのが多分一番大変なんですね。外にダクトを出す工事も含まれますので。あと,入れる予定の遠心機,それからCO2インキュベータ,その他は割合もうどこでも使ってるような器具で,値段も総額にして数百万円程度です。
I : ただ,それが予算に入ってないのはちょっと何とかはっきりさせていただきたいと。
A : ええ,もちろんそれは要望します。部屋もない状態ではとても計画を承認できないと思うんですけど,今から整えなくてはいけない備品に関しましては,常識的に見て比較的簡単に手に入るだろうと判断されます。そのことだけ1つつけ加えておきます。
 それでは,一応設備は備品その他の購入計画をきちんとするということで認められるというふうに判断したいと思います。
 次に,研究体制及び研究者の資質,業績,準備状況ですけれども,使用責任者,それから研究に実際に携わる人も含めて,この点に関しましてはこれまでの資料をごらんになってどのような御意見でしょうか。
 また,F先生からお願いします。
F: 諸先生方の略歴と研究業績等々の資料を拝見したところ,十分皆さん方高い能力をお持ちだというふうに思います。ただ1点,今発言するのが正しいのかどうか,先ほど発言すべきだったのかもしれませんが,研究体制にかかわることなのでちょっと1つ発言させていただけますか。
A : お願いします。
F: どうも前回ヒアリングのときにも気にはなっておったんですが,アメリカのジェロン社との協力関係がどうも気にかかっています。例えば計画書の3ページなんですが,3ページの11行目ですか,11行目に「2002年11月に本研究代表者の申請者Aはジェロン社との間に研究契約を行い」というところ,この研究契約は現在も継続中で,本研究についてもこの契約に基づいて行われているのであろうかどうかと。もしそうであるとするならば,つまり契約に基づいて行っているということであるのならば,その契約内容によっては後々紛争の種になりかねないと。つまり,前回ヒアリングのときにそういうおそれはないというふうに御発言があったかと思いますが,例えば特許の帰属とかそのあたりのところも含めて,計画書で説明をする性質のものかどうかの御判断も含めてちょっとここは検討が必要なのではないかと。
 また,ジェロン社は一民間企業でありますので,本研究が現段階で商業的なものと結びつくことはあってはならないのではないかとも思います。つまり,ES細胞という性質を考えると,現段階では商業ベースと直結するようなことがあってはならないだろうと私は思うんですけれども,そのあたりもこのジェロン社との関係で契約というものの中身によりけりでしょうが,どういうことになっているのかということが気にかかっております。
 それからもう一点,今読み上げました行から3行下なんですが,本プロジェクトへの研究支援体制が整備されている(添付資料2)とありますが,添付資料2は研究支援体制,つまりジェロン社の本プロジェクトへの研究支援体制を示すような内容のものではないということで,本文と添付資料の間に齟齬がありますので,そこがちょっと気にはなっております。
 先ほどもっと早いときに言うべきでしたでしょうが,済みませんでした。
A : ありがとうございます。いつ言ってくださってもいいんです。どんどん御意見をくださった方がありがたいんです。
 まず第1に,後の方に言われました添付資料との齟齬ですね,これは修正していただくことにいたしましょう。
 それから,その前の契約の問題なんですけども,これはどういたしましょうか。つまり,この前の説明ですと,要するにもちろんジェロン社はジェロン社である種の特許を現在持っている。しかし,研究の面に関してはできるだけの協力をする。将来,例えばこの大学でジェロン社からの情報網も用いながらある種商業的価値があるものが生まれた場合には,ジェロン社が持っている特許に対してはそのパテント料を当然払う必要があるけれども,そこで付加された治験に関してはこちらの大学の権利であると,こういう説明が前回あったと思います。それに対して,今の先生の御意見は,どの点をはっきりしなくてはいけないということでしょうか。今その説明を文書によって確認をするということでしょうか。
F: 前回御説明いただいたことは,計画書に記載する性質のものであるのかどうかというと,そうではないような気もするんですけれども,やはりここにアメリカの一民間企業をかなりクローズアップする形で取り上げていますので,ここらあたりやはり本審査の方で疑義が生じるのではないかと。また,研究契約という文言を使われておりますので,一体どういう契約をしてるんだという疑問が提示されるのではないかというふうにちょっと懸念をしておりますので,そのようなことのないように前回のヒアリングの内容を少し加えて説明をしておいた方が,後々トラブルを招かなくていいんではないかということでございます。
 また,もう一つ懸念がありますので,何でそういうふうに明確にしておいた方がいいんではないかというと,特許紛争とか,もう皆さん方御存じだと思いますけども,アメリカ一人勝ちといいますか,もうアメリカの好き勝手し放題の状態ですので,最初はおたくで新たに発見したものはおたくのもんですよなんて言ってても,よくよく契約内容を読み返してみたら,実はそういうふうになってなかったというようなことも間々あることでありまして,ですからこの岡山大学のチームが,努力した結果がちゃんとみずからの成果となるように,もしそうならないような事態が発生すれば,これは非常に腹立たしいですので,ちょっとそこが気になってるということでございます。
A : ありがとうございます。私がちょっと特許云々のことを細かく議論するのがどうかなと思うところは,一つは研究がどういうふうに発展していって,どういうような形である種の知的財産,そういう価値が生まれるのかということがまだまだ未確定であるということと,もう一つは,どうも私もよく分かりませんけれども,全体の印象としては特許の問題というのは結局は争うというか,お互いに議論をして何か適当なところへ落ち着くというところを探していく感じがあって,あらかじめ姿が見えないものに対して線を決めるというのは相当難しいことなんじゃないかという印象を持っております。それで,ちょっと細かいところはどうかなと思ったんですけど,いずれにしても今先生が言われたように,確かに契約と書いていて,その中身がよく分からないし,だから前回の説明をもう少し拡張した形でどういう関係にあるのかということが,前回の説明を聞かない人にもこの計画書を見れば分かるような形に少し改めていただくというふうにいたしましょうか。
F: 今,委員長の御発言にありましたように,前回のヒアリングを聞いている者にとってはどういう関係なのかということは,これはかなり分かる部分でありまして,研究契約というよりは,むしろジェロン社からの全面的な支援と,バックアップというような内容なんだろうというふうに理解をしておるわけですが,今のこの研究計画書の書き方だとそのあたりは伝わってこないだろうということで,委員長の御提案のように,もう少しこのあたりを誤解のないように,ヒアリングで発言された内容も含めてちょっと加えていただくということで賛成いたします。
A : それでは,その点はそういう方向にさせていただくとして,G先生。
G: 研究者の方,皆さん立派でいいと思いますが。
A : E先生,いかがでしょうか。
E: 問題ないと思います。そして,つけ加えたいんですが,先ほどのF先生の御指摘の件なんですけれども,研究契約書というのが恐らく存在するんですよね。だとすれば,それを現実に見せていただくことが必要かどうか。この前の説明ではこちらは先方から助けていただくだけだと。逆に,例えばこちらが向こうを助けてあげたけれども何のペイもないと,また,そのペイがあった場合,そのペイ自体が莫大なものであれば,そのことにもどこからクレームがつくとも限らない。研究計画を文科省に申請する段階で,もし莫大なペイがあるようなものであればどうかなということになるかもしれないし,そのあたりはやはり押さえておいた方が安全,安心ではないかと思いますね。
A : E先生,2つのことをおっしゃって,1つは契約書を我々がチェックさせていただくということをやった方がよろしいでしょうか。
E: 難しいけど,後々問題になる可能性はないとは言えないですね,ここの契約内容によっては。
G: これは私はジェロン社の方はこのクラレが開発してるカラムのようなものを非常にねらってると思います。だから,もしこれがコマーシャルになるとすると,クラレなんかが絡んでくる。何もジェロン社だけでなくて。そして,やはりここは大学では太刀打ちできないから,クラレとジェロン社での話し合いがあると私は思います。だから,余りここで細かく考えなくても,モジュールの方はクラレがもう特許を出してるわけですから。将来的にはもしコマーシャルになっても余り問題ないのではないか。大学がそんなに損をすることはあり得ないと私は思ってます。
E: そうですね,今G先生がおっしゃったように,損をする場合は大抵非難されにくいんですが,得をする場合に非難される可能性がまた,それは大丈夫ですか。
G: 得をというのは何ですかね。
A : 前回ちょっとそのことについての議論があったと思うんですが,これはまだ海のものとも山のものともつかない話ですし,たとえシステムがうまくいき始めても莫大なお金を生むかどうかというのは,それこそ相当先の話なんですね。だけど,もしもひょっとしてそういうことが幸いにして生まれたら,そのときにヒトES細胞を使って利益が生まれたということを慎重に配慮して使い道を考えていただきたいということを言いましょうという話はしました。そういう抽象的な段階でいいんではないかとも思いますけれども。莫大な利益が生まれたらああしなさい,こうしなさいというところまで今言う必要があるかどうかということなんですけど。
G: 私はないと思いますけど,やはりこの研究内容からするとまだ相当遠い問題だと思いますので,そこまで突っ込んで議論することはないと私は思います。
A : E先生,よろしいでしょうか。
E: 先にどれくらい利益が出るかということよりも,現在の契約がどうなっているかということが重要だと思うんですね。
A : またちょっと話が戻りますけれども,契約書のコピーを現実に提出していただいて,我々の目でチェックをする必要があるのか,あるいはここに前回申請者B先生が説明されたような内容をこの計画書の中に書き加えていただいて,我々としては申請者B先生の説明を受け入れると,信用して受け入れるという立場をとるのか,その点いかがでしょうか。
G: ここへ研究内容の契約を1行か2行か加えてもらえばいいんじゃないですか。
A : 契約書をどうしてもチェックした方がいいのではないかという御意見の委員の先生いらっしゃいますか。
F: もしこれが本当の正規の契約書であるならば,チェックをして云々というふうに,それに対する評価をするのは非常に難しく,本委員会の責任も一層重くなります。もしこれが弁護士が間に立って正規に作成された,非常に細かな規定を含む契約書であるならば,これはもう倫理審査委員会で手に負えない中身でありますので,それはタッチしない方がいいと思います。また,逆に大まかな,それこそ研究連携覚書みたいなことであれば,特にこれもチェックする必要がないわけでありまして。ですから,既に結ばれている契約をここで審査の対象に加えるというのもちょっとあれですので,委員長メモの最後のところに,7番に,本研究計画の内容推進体制に特徴があれば記載してくださいという,推進体制の特徴であると,つまりジェロン社との協力関係は推進体制の特徴であるというふうに善意に解釈をして,プラスの評価をして,その上で研究契約について今G先生言われたように少し説明を加えていただくということでよろしいかと思います。これはあくまでも私見でありますが。
A : ありがとうございました。大体そのような方向に御意見がきてるようにも思いますけども,よろしいでしょうか,そういうことで。何か反対の委員の先生方いらっしゃいます。よろしいですか。
E: 懸念がありますが,今,F先生がおっしゃったような,そんな弁護士が介在してる契約だからといって,それを我々が全部契約自体を是認するとかしないとかの問題じゃなくて,その中に盛り込まれてる内容について倫理的観点からどうかという見方はできるんですね。やはりこの契約というのは重要なものである可能性がある。もちろん,見なければ重要だとは分かりませんけども。一応,もしそういうものが簡単に見せてもらえるものであれば見せていただいて,ああ,これは何ら問題ないとか,委員会としては是認できるとか,という結論を出すことも一つのミッションかなあという気がします。念のために,老婆心でもありますが。後で問題にされないためにも,という気がします。
A : F先生,いかがですか,今の御意見に対して。
F: 一応法律をなりわいにしている者としては,実は契約書をきちんと確認をして,問題がないかどうかチェックをした方がいいだろうというのはもちろんそうなんですけれども,内容によってはかなり労力がかかるなっていうのでちょっと及び腰になったんです。E先生が指摘されたように,中身がどうこうというふうに分析するというよりは,その契約内容が倫理的に,手続き的に問題あるのかないのかということを中心に見るということであれば,それは非常に重要な作業だと思いますので,申請者の方には結構お手間をとらせますけれども,意見が分かれているようですので契約書本体をちょっと閲覧させていただいた方がよろしいのかなと。
 それからまた,もしそれが添付資料として外部に出して差し支えのないものであるならば,実施協力体制を示す書証として添付されればよろしいかというふうに思います。
A : 分かりました。それでは,この点に関しましては,先ほども申し上げましたけれども,この委員会はできるだけコンセンサスというか,やるべきことではできるだけのことはやりたいというふうに思いますので,契約書に関しましては基本的に我々の方に倫理的な観点からチェックをするということをさせていただきたいというふうにお願いをしてみましょう。
E: もし,契約書閲覧自体が問題ならば,それはもうそれで,こちらはリスクを負わないという,出なかったということで……。
A : 分かりました。向こうの御意見も伺って,できるだけ……。
E: 無理に出していただくということではないんです。
A : はい,じゃあそのようにさせていただきます。
 では,研究体制,研究者のことについて,C先生,どうでしょうか。
C: 研究者の方々のキャリアについては特に問題ないと思います。
B: 研究者の方々については問題ないと思います。
A : I先生,いかがですか。
I : 問題ないと思います。
A : ありがとうございました。それでは,ただいま出ました保留事項,留保する事項は当然あるわけですけれども,基本的には研究者,研究体制というものは容認できるであろうという結論にしたいと思います。
 それでは,最後にその他のところで,この計画書の書式その他です。基本的な構造は事務の方でも確認させていただいてますので,基本的にはいいのではないかと思います。文言は皆さんいろいろお気づきかと思いますけど,私はかなり前のと比べるとよくなって,ミスタイピングも減ってと思うんですけども。文章というのはどうしても個性が出ますので,個性は個性としていいんですが,全体として少し文章が長くて分かりにくいですね。ところどころにちょっとどうかなという表現もあるので,どうでしょうか。委員の皆さん方,気づかれたところがありますか。今のこの段階でここがおかしいから直した方がいいということがもしあれば伺っておきたいんですが。
I : 私は無知で分からないのか文章が悪くて分からないのかが分からないんですけれども,それ以外のことで,目次をつけていただくとぐあいがいいと思うんですけれども,どこに何があるのかが分からないので,全体の構成がどうなってるかが分かるような,計画書全体の目次を是非つけていただきたいと思います。
A : 分かりました。様式が決まっているので,どこかに目次をつけることができるかどうか,ちょっと工夫してみてそういうお願いをしたいと思います。
I : あるいは最後でも構いません。
A : そうですね,はい。
 そのほかにございますか。
E: 誤字,脱字とかもですか。
A : はい,もしあれば,今言ってくだされば。
E: そうですね,これ文科省に送るわけだから……。
A : そうなんです。
E: もう全部チェックしておかないといけないですね。
A : そうです。
E: 1つだけ,最後の申請者A先生の研究指導指針のところで,上から7行目,「尊守」の箇所ですが,国の指針を「遵守」するの間違いなのか,それとも,そもそも,とうとび,守るという意味なのかよく分からないんですが,通常は遵守するという言い方しますね。
C: 4ページの体外式バイオ人工臓器の細胞源としてES細胞という項目の一番下の行ですが,危険性を,これ「回避し」ではないかと思うのですが。
A : あっ,そうですね。
C: 「開始し」になってますが。
A : はい。私,何カ所か,少し文章を切った方がいいかなと思うところもあって,これは強制でなくて御意見として後でちょっと申し上げようかとも思ってるんですが,一言ひとつここで皆さんに教えていただきたいのは,2ページの上から,研究の背景でバイオ人工肝臓開発の必要性というのがありまして,本文に入って3行目の右端の方に,「例えそれが一時的なものであれ」っていう表現がありますけれども,この「たとえ」というこういう場合の「たとえ」というのはこの「例え」という漢字を当ててはいけないんじゃないかと思うんですけど。
E: 「例」,平仮名でしょうね。先生,そもそも「たとえ」というのはこの字じゃないですよね。
A : そうですよね。
E: 最近は,「きわめて」も,これも,平仮名になってきてますね。何々と「いえる」というような場合も平仮名に最近は統一されてきています。
B: 8ページの上から3行目なんですが,「平面培養することにより」ではないかと思うんですが。
A : ああ,そうですね。
C: 「ことに」ではなくて「ことより」じゃないですか。
I : 平面培養よりモジュールの方がという……。
B: 「ことより」ですね。ああ,そうですね,はい。
I : 「平面培養した場合よりも」というふうにでも言った方がもっと分かりやすい。
E: 「する場合」の方がいいでしょうかね,「こと」よりも。
B: 「場合」。
E: 「場合」ですかね。
B: 「よりも」の方が分かりやすいですね。
A : 先ほどI先生おっしゃいましたけど,確かに内容をとるのが難しいんですよ。文章が長くて,どことどこまでつながってんのかよく分からない。もう少し文章切ってくれた方がいいと思うんですがね。だけど,余りスタイルのことまで言うのもどうかなと思って。
I : 形の問題ですけど,14ページの申請者B先生の2行目ですね,生物学的っていう後の字が抜けてて……。
A : ああ,そうですね。
I : 次につながるんでしょうけれども,空白が……。
E: ああ,そうですね。つないだ方がいいですね。
A : すべてを尽くすことはできませんので,申しわけありませんが,できるだけそういう問題点をこの後でも問題点があるごとにちょっと,例えばメールでお知らせいただければありがたいと思いますけれども,文言についてもまだもう少し練りが必要であるということをお伝えしたいと思います。
 あとは,使用機関の条件といいますか,この研究機関の条件に関しましては,一応いろんな観点から倫理委員会をつくっていて,倫理委員会の構成その他は取り扱い基準に一応適合してますし,それは初期のころに確認いたしました。それから議事録も基本的には全部公開するという予定ですので,そのあたりのことは大体満たされているのではないかと考えておりますが,この件について何か御意見ございますか。今からだと使用機関に関してはもう遅いといっていいんですけど。
 I先生,特に外からごらんになっていかがでしょうか。
I : 全く初めてのことですので分からないんですけれども,かなりきちんとやってくださってるんじゃないかと思いますが。
A : ありがとうございました。
 それでは,全体として大きな項目について委員の皆様それぞれに御意見を伺いました。きょうはH先生,それからD先生お二人が御欠席ですけれども,お二人についても今お伺いしましたように各項目について丁寧な御意見をお伺いして,また委員の皆様方にお配りしたいと思います。
 最終的にもう一度12月に委員会を開いて報告書も含めて計画書の最終バージョンというものを検討したいと思っております。この倫理審査委員会は研究科に附属してる倫理審査委員会ですので,研究科長に答申された内容についての報告書を出すことになっております。先ほど申し上げましたように,その報告書の取りまとめは私の責任で行いますが,その資料となります先生方の御意見をお願いしたいんです。この使用計画についての評価基準はもう皆さんお配りしてありますけれども,これの一つ一つの細かい項目についてイエスとかノーとか書いていただく必要はございません。例えばAならAの細かいところをにらみながら研究計画の倫理的妥当性について自分はこういう考えでこの計画書をこのように判定したというふうなことを文章でお答えいただければありがたいと思います。できるだけ詳しく,丁寧に書いていただいた方がありがたいんですけれども。例えば,Bについての研究計画の科学的妥当性については,これこれこういう背景があって,こういうことをやろうとしてるから私としてはこれは容認できるものと考えるとか,あるいはこういう点についてはここを留保した上で容認できると,そういうような形で各項目についての文章をまとめていただければありがたいと思います。お忙しくて申しわけないんですが,それをまたまとめる作業もございますので,できれば2週間程度を目処に書いていただけるとありがたいんですが。よろしいでしょうか。
E:議論の過程を書いて,こういう風な考えを持っていてこういう結論に達したというあたりを適宜取りいれて,先生の方でまとめて頂けるということですね。
A : はい,そういうことですね。例えば,先ほどのことからいいますと,委員の中にはヒトのES細胞を使っての臨床応用に向けた研究というものは積極的に推進して医療福祉に役立てるべきであるという観点でこの研究はいいという判定もあり得るし,それから本来であれば人の社会は余りこういうことはしない方がいいのではないかと,そういう考え方はしっかりお持ちだけれども,今の世の中の流れでこういうところまで来てるんだから,その部分だけ,例えばこの研究計画だけみずからの委員会で押しとどめても,これはあまり社会全体としては効果がないと。だから,むしろそういう観点に立った活動はまた別のところでやるんだけれども,この流れの中では,この計画は容認できるというそういう立場の御意見もあると。そうすると,それを全部まとめると,結論としてはこの研究計画は妥当な範疇に入るとして容認できるけれども,委員の中にはそういうヒトES細胞を使っての臨床に向けた研究を積極的に推進するということにある種の危惧を示す意見もあったというふうに書き添えるという,そのような格好だと思いますけど。
 よろしいでしょうか。
 それでは,ちょっと時間が過ぎまして急いで終えたいんですが,また締め切りその他は後で事務的に連絡させていただきます。
 最後にちょっと時間があれなんですが,前回の議事録は既にもう皆さんのお手元に修正したバージョンをお配りしてありまして,きょう追加がございますが,議事録はいかがでしょうか。特に何か問題があるところがありましたでしょうか。
B: 修正の仕方がまずかったんだろうと思うんですが,18ページ,修正の追加をお願いします。
 18ページで上から一,二,三,四,5人目のBのところなんですが,その意見の2行目で「シャーレ」が全部「シャーレー」になってて,バーが入ってるんです。消したつもりなんですが,これ,消すのが結構難しくって,ここのバーが残ってます。
A : ああ,なるほど。
B: それから,同じ発言の最後から2行目なんですが,「データをお持ちですか」の後ろにクエスチョンマークを入れてください。「か」は消さないで,「か」はイキで……。
A : ああ,そうですね。
B: その後ろにクエスチョンマーク。ちょっと文脈がつながらなくなっていましたので,お願いします。
A : そのほかにございますでしょうか。
 それでは,もしどうしても何かあれば,また多少の修正はできますので。とりあえず現在の段階ではこれは議事録としてお認めいただいたということにしたいと思います。
 それでは,以上で本日の検討を終えたいと思いますけれども,次回についてはどうしましょうか。
事務担当: 定例でしたら,第4月曜日は27日になります。
A : それはちょっと無理なんじゃないかと思うんですね。つまり,2週間で御意見をいただいて,それから全部まとめて,まとめたものもお送りしてということになると1カ月は欲しいですよね。ちょっとまた後でスケジュール調整をしていただけますか。それで,12月中にとにかくやると。
事務担当: 2週目,3週目あたりで全員がそろう日と考えてよろしいですね。
A : はい。
事務担当: じゃあ,それでまたメールか何かで連絡させていただきますのでよろしくお願いします。
A : 今度は是非全員で最終の委員会を……。
I : 今度で最終ということに……。
A : 一応,最終といってもこの委員会がなくなるわけでは全然ありません。これからずっとモニタリング,監視しなくちゃいけないので。ただ,委員会そのものは毎月やるわけじゃありません。例えば半年に1回とか3カ月に1回とかっていうぐらいだと思います。一応この計画書についての結論を出すのは今度で最後ということであります。よろしくお願いいたします。
 それでは,どうもありがとうございました。