岡山大学大学院医歯学総合研究科ヒトES細胞倫理審査委員会 第5回委員会議事録
日時:平成16年4月26日(月)午後1時〜午後3時
場所:歯学部第一会議室(歯学部棟2階)
出席者:A,B,C,D,E,F,G,H,I
欠席者:なし
 
資料:岡山大学大学院医歯学総合研究科ヒトES細胞倫理審査委員会第4回議事録(案)
   第4回議論の要点と合意事項のまとめ(案)
   ヒトES細胞使用計画審査項目および基準のまとめ
 
A : それでは時間になりましたので,平成16年度の第1回ヒトES細胞倫理審査委員会を開催したいと思います。今日の議題は開催通知に予め示しております。最初に議事録の確認をしたいと思います。今日机の上に,H委員から追加の修正が入っています。ほとんど内容にかかわることはないと思いますけれど,よろしいですか。何か特別御意見ございますか。
 よろしいですかね,もし御意見がないようでしたら,これを修正部分を抜いて,抜いてというか,だから修正の記録を消して保存版ということにいたしたいと思います。
F: 先生,1点,議事録でよろしいですか。
A : ああ,どうぞ。
F: 瑣末なことなんですけど,1ページ目,委員長が2人いる状態になってるんですが,C先生は副委員長ですよね。それだけです。
C: 直していませんでしたかね。
A : ありがとうございました。気がつきませんでした。
 はい,じゃあその分だけ修正をいたしまして。
    では次に,毎回つくっておりますけども,議事の要点,合意事項のまとめについてということです。資料2をごらんください。
 第4回「議論の要点と合意事項のまとめ(案)」としてありまして,初めて出席されたH委員及び各委員の自己紹介があった。第3回委員の議事録を承認した。H委員からこれまでの議事録資料を読んだ上での意見表明があった。そのことに関して種々意見交換の末,おおよそ病とか死は免れ得ないものであり,人はそれをいかに受容するかということに取り組んできたと。と同時に,病・死の負担を多少とも軽減することに努めてきた医療の歴史・成果は評価すべきである。結局,特定の医学研究,医療行為を容認,するかどうかは程度の問題であって,個別に判断せざるを得ないという,この前の議論の前半を考えれば,大体そういうところに議事録を読んでみても落ちついたのではないかなと思うんですけれども,この点はいかがでしょうか,I先生何か御意見ございますか。
I : 結構だと思います。
A : はい。そのほかの委員の先生方,よろしいですかね。
 それでは次に,審査項目及び基準の具体的内容について少し議論をいたしました。その部分をまとめたのがここでして,前段の分の文言の修正,それから「樹立」という言葉を削除する。それから,共同研究についてもいろいろ議論がございましたので,全体計画をおのおのの機関内倫理審査委員会で承認を受ける必要があるということを確認したということであります。報告は,半年に1回程度。公開は,この前の議論では進捗状況をインターネット上で公開するということになりました。研究目的に科学的妥当性に加えて,倫理的妥当性も強調すると,それから批判があったときには速やかに機関の長に連絡して必要な措置を講ずるということを入れましょうということになりました。
 よろしいでしょうか,何かこの部分に御意見ございますか。
 特に,ほかにもこういうことがあったのではないかということがあれば是非指摘していただきたいと思いますけれども。
 よろしいですか。
 それから次に,以上で審査項目及び基準策定の検討,我々の勉強のプロセスだと考えられますけれども,その作業を終えて,次回から,すなわち今日の委員会からは具体的な申請案件の検討に入るという合意をいたしまして,最後に次期開催日ということであります。
 全体ごらんになっていかがですか。よろしいですか。
 それでは,お認めいただいたということにいたしまして,これも記録として残すことにいたします。
 では次に,いよいよ今日の本題ですけれども,申請書の審査に入りたいと思います。
 既に委員の皆様にあらかじめお送りいたしましたけれども,現在使用計画の申請書が1件出ておりまして,これについての検討を既に先生方にしていただきました。
 まず,お配りした資料はお持ちいただいたと思いますけれども,それについての具体的なコメントをお願いしたいというふうにいたしまして,ここに資料3という形でA委員からF委員までの意見が出ております。それで,すなわちこの中には1名の委員からの返答をいただいていないということで,それから委員長は特にここでは意見を述べておりません。当初からと思ったんですけれども,議決のときに最初に委員長を除いて議決して,その後に同数のときに委員長が何か関与するというようなことがございましたので,この段階では,もちろん私なりに検討はいたしておりますけれども,特にこのリストには載せませんでした。
 それから,1名のF委員は,少し依頼事項が伝わらなかったのかもしれませんで,そうですね。
D: どうも誤解したみたいで,2つ目の細則の方の送られてきた添付の書類にささっとそれを修正しただけで送ってしまったわけです。済みません。
A : では,今日具体的に審査を進めていく過程で意見を積極的に述べていただければと思います。
 資料は,これを参考にしながら具体的な検討をしていきたいと思いますけれども,まず第一にこの全体を眺めてみて,この書式とか体裁について多少疑問があるんですけれども,私自身が。これは,まず事務の方から書式についての説明をちょっとしていただけますかね。
事務担当: はい。まず,「仕様計画書の概要,様式2」と書かれてある部分ですけれども,この3枚目までの様式が定められている様式です。4枚目からの略歴と研究業績のページからは,この計画書の概要に書かれた参考資料になります。
 それから,7ページ目に倫理審査申請書,岡山大学医学部倫理委員会委員長殿という様式がございますが,これは平成15年11月6日に申請が出されましたときには,まだ様式等が決定されていなかったということもございまして,これは医学部倫理委員会に提出する様式になっております。
 様式については,以上でよろしいでしょうか。
A : はい,ありがとうございました。
 まず,様式についての議論をしなくちゃいけないんですけれども,実はくっついてる資料が一番最後の添付資料5に「京都大学でのヒトES細胞の樹立研究計画承認に至る審議過程」という資料がついてございまして,そのセクションの一番下を見ていただきますと,31分の幾つ,幾つということになりまして,トータルが34ページあって何ページ目ということになっておりますけども,これの14の真ん中からちょっと上のところに,4章「ヒトES細胞の使用」というのがあります。それから,31分の24ページのところに,やはり第4章「ヒトES細胞の使用」というふうになっておりまして,これはちょうど同じことが繰り返されてるんです。しかも,この4章というのはヒトES細胞の使用といって,ヒトES細胞の文科省から出た指針の中の使用に関するところをコピーしてここにはめ込んであるんですね。これが,しかも二重になっているというのは,それはずさんな話で,何かのミスだと思いますけども,必ずしもこういうことは必要がないというふうに思います。それは後でどういう資料を整理すればいいかというところで議論をしたいと思いますけれども,全体としてはそういう構造になってるということであります。
 つまり,最初にヒトES細胞の使用に関する様式が出ていて,並行して岡大の倫理審査委員会に出す様式の両方の申請の形になっております。それから,それプラス資料がついてるという,こういう格好なんですけれども,まず第一にちょっとお考えいただきたいことは,申請書の様式をどのようにするかということなんです。この委員会は,岡山大学の医学部の倫理審査委員会の下にあるんじゃなくて,研究科委員会に直接くっついてる委員会ですので,必ずしもほかの倫理審査委員会の書式にとらわれる必要がないと。
 それから一方で,文科省の専門委員会に,いずれにしても申請書を提出して審査を受けるという,ES細胞に関してはそういう特殊性がございますので,むしろ一つの考え方としては専門委員会に提出する申請書をそのままここに出してもらって,その一本について審査をするということでいいのではないかとも思われますけれども,その点についてはいかがでしょうか。
 G先生,特に倫理審査委員会のことがあったら。
G: 今,A委員長が言われたことに賛成ですね。それでいいと,私は思います。
A : そのほかに御意見ございますか,この一本,特に岡山大学独自に申請書の書式を定めて云々という必要性がございますかね。
 C先生,いかがですか。
C: 今委員長がおっしゃったようで結構だと思います。
A : ほかに御意見ございますか。
 それでは,その方が筋が通るでしょうから,専門委員会に提出するということを前提に,その書式に従って書類をつくっていただいて,それを審査するという形にしたいと思います。ということは,もう一度この「使用計画書概要,様式2」というものと,それから先ほどの「別紙様式第1」というものを統合して一つの申請書にまとめていただいて,それについて審査をすると,それの後に必要な資料をつけていただくと,全体の形式としてはそのように考えて進めたいと思います。
 今日の議論は,それをあわせた形で何が不足していて,何がどういう記載が適切であってどういう記載が不適切であるかということを判断していただければと思っております。
 それで,実際にどういう基準について審査をするかということを概要を定めて,ここで一覧表を出していただいたわけですけれども,これに従って議論をしていきたいと思いますけれども,基本的に重要なことはこの計画に科学的妥当性があるのか倫理的妥当性があるのか,それから使用機関というか計画を推進する体制が十分であるかという大きく言ってその3つだと思われます。その3つのグループに分けてあらかじめ議論するのも一つの方法ですけれども,これまでつくってきた基準を,今言った3つのことを意識しながら頭からざっと見ていくということももう一つの方法でして,せっかくここで皆さんに御意見をいただいておりますので,先ほどの3つの項目を意識しながら頭から少し見ていって,そして最後にもし不足であればそれを統括した感じで評価していただきたいというふうに思いますけれども,それでよろしいですかね。
 はい,どうぞ。
D: この申請される方には,こちらが要求する基準というのは伝わっていない状態で,審査を受けられているのですけども,今後提出される方にはこちらの方の基準というのは公表されるものなんですよね。
A : はい。そのとおりでありまして,実はこの申請書を私たちが一回ここで見て,中間的な判断でも今日意見をまとめて,そしてその意見をつけて,それから先ほど言った様式の統合ということとその意見をつけるということと,それからここでつくった審査の基準,この3つを研究計画責任者にお知らせをして,そういうことで判断して新しい計画書をつくっていただこうかなと,そういうふうに思っております。
D: そうなりますと,こちらの基準に対して申請者の方でチェックしていただく形ですよね,この部分は,確かにそのように書きましたと,自己申告制になるんでしょうけども,事前にセルフチェックされていますと,審査する方もその目で見ることができると思いますが,いかがでしょうか。
A : そうですね,そのようにいたしましょう。
 それから,これ私の提案なんですけれども,そのときに同時にこれまでの議事録をすべて計画をこれから使おうとしている方にお渡しして,そしてどういう議論が倫理審査委員会で行われてるかということを理解していただいた方がいいのではないかと思うんですけども,その点はいかがでしょうか。
D: 本来ならば,議事の内容,議事録というのは,ホームページなどに公開される形になるわけですよね。そうなりますと,申請しようと思う方は,このES細胞倫理審査委員会のホームページを見て,ある程度のことを判断されるところもありますが,それとの関係もあるんでしょうけど,ホームページにまだ掲載されてない状態でしたら,今委員長の言われた方法が一番望ましいと思います。
A : 申請者に議事録をお渡しするということについて,反対の御意見ございますでしょうか。
 よろしいですか。
 それでは,今日の議論が終わってからですけれども,できるだけの情報を申請者にも提供して,そういう方向で考えていただくというふうにしたいと思います。
 これの意図は,もちろん言うまでもないことですけど,この委員会は何か申請者に対して試験をして,それに合格か不合格かというような考え方ではなくて,むしろ倫理審査委員会の議事のプロセスもよく検討していただいて,共同作業で我々自身の倫理基準を高めていくというか,倫理意識を高めていく,あるいは研究を進めていく研究者がそういった問題をちゃんと認識してよりよく対応できるようにするということが大事なポイントだろうと思われますので,そういう意図から議事録も提出して審査基準も明らかにして,そういう方向で考えていただくというふうに私自身は思っております。
 それでは,そういう方向でやらせていただくとして,少し具体的な,頭からちょっと見てみたいんですけれども,「使用機関の要件」というセクションがございます。ここは必ずしも申請者がすべて申請書に,ここに満たされている項目をすべて書く必要があるというわけではございません。
 例えば,1番の「使用責任者,機関の長の役割,責任は明確になっているか」と書かれておりますけれども,申請書の段階では,もちろん機関の長の役割云々は申請者には直接関係がないので,ここでは使用責任者の役割,責任ということになると思います。
 皆さんの御意見を見ますと,「整備が必要である」と,「大体オーケー」という御意見がございますし,「不明なので確認をしたい」という御意見もございますけれども,特に整備が必要であろうということに関してはちょっと御意見をいただければと思いますけど。
 E先生,いかがですか。
E: それぞれの委員のこの意見を集約する前に,A,B,C,D,Eとある,この4件の項目のところですけれども,ここを少し整理した方がよいのではないかと思います。例えばAの2,3,7などは,樹立機関の方の問題ですね。7番,済みません。2番は,この委員会の側の問題ですね,もう既にあると思います。
A : そういうことです,そうです。
E: 3番も,これ既に設置,今この委員会があるわけですから設置されていますね。
A : そうです,そうです。
E: 7番も,これはむしろ使用機関の側の問題ではなくて,樹立機関である京都大側の問題ですね。
A : そのとおりですね。
E: だから,もうちょっと簡略化,ほかの項目もそうなんですが,こちらを簡略化できるのではないかと思いました。
A : そうですね。おっしゃるとおりで,実際にこれは基準を全体としてつくったときから,項目だけを外してきて並べてみますと,今E先生がおっしゃったとおり,必ずしも必要でないものも含まれているし,それからちょっと重複ぎみな項目もございます。
 どうしましょうかね,これ整理する。この場でややちょっと煩雑ですな。
E: それをすると,今一つ一つやっていく時間が節約できますね。先に項目を整理するならやっぱり。
A : どういうふうな整理をするかちょっと御意見出していただけます。
E: このA,B,C,D,E,F,G,H,Iですね,まずこの大きい項目のところをこれでいいか見て,そしてその後,その中身を一つずつ見ると,最後にそれぞれの委員の意見を集約するというふうにしたらいかがでしょうか。
A : 分かりました。
 それでは,この項目を今どういうふうにまとめて云々というよりも,少し検討をする方向をもうちょっと整理した。先ほど僕申し上げましたけれども,結局大事なことは研究目的が倫理的に妥当性があるのか,科学的に妥当性があるのかということ,それから研究体制ですね,研究体制が適切なものであるかどうかということ,そういう柱がございますので,その柱から検討していくという方がいいかもしれませんね。そうすると,自然にこの項目がまとまってきますので,それに応じて少しここである各項目をその観点からまとめることができるかもしれません。そういうふうにやりたいと思います。
 それでは,まず最初の研究計画の倫理的妥当性,このCという項目ですけれども,ここでは研究目的や倫理的妥当性の範囲を逸脱していないか,それからこれは研究者が倫理的な問題を認識しているか,代表者が措置を講じているか,ES細胞が要件を満たしているものかということですけど,まずどうですかね,ここで提案されてる研究の目的が倫理的な観点から見て容認できるものであるかどうかということで御意見をいただきたいと思いますけど,いかがでしょうか。
 E先生,まず口火を切ってください。
E: この使用計画書と昨年の倫理審査申請書を見る限りでは,倫理的な問題はないようにも思われますが。
A : ほかの先生方,御意見ございますですか。
G: 私も大体よろしいと思います。ただ5番目の十分な研究環境については,やはりこの委員会で本当にその研究する場所を見させていただくとか,そういう具体的なものがあってもいいんではないかと思います。あとは私は大体よろしいと思います。
A : 分かりました。G先生が今指摘されたことは私自身も感じておりまして,恐らくその申請書の,こういうふうに申請書を書きなさいということを十分伝えれば,多分解決するだろうと思ってるんですが,この問題に関しては,私はこういう基準の案をつくっておいて言うとおかしいんですけど,よく考えてみるとやっぱりこれは研究体制というか研究体制の問題なので,そっちの方向に入れて,後でまとめて議論したいというふうに思います。
 今は,できれば目的そのものが倫理的な観点からこれが許されるかどうか,容認できるものかどうか,そこを中心に御意見をいただければと思いますけども,Hさんどうぞ。
H: 事前に送っていただいた資料を,自分なりにこういうことなのかなあと考えながら読ませて頂きましたが,この計画はどういう研究で,どういうふうに役に立つといったことが書いてはあるんですけれども,自分が正確にそれを理解できているのかということ自体に非常に不安があるので,事前のコメントにも入れておいたのですが,この委員会には専門家の先生もいらっしゃるので,もちろん計画書を提出された御本人の先生でも結構なんですけど,できれば説明をして頂ければ助かります。まずそれを分からないと判断できないという気持ちです。
I : 私も全くそれは同感で,目的は大体分かるような気はするんですけれども,その手段の部分といいますか,中空糸・不織布型バイオ人工臓器モジュールというのは何なのかというのが全く分かりませんで,ちょっと理解するのに苦労したんですけれども。
A : いずれ一度来ていただいて,全体の説明から具体的な実験の設備とか器具についても説明していただく機会を設けたいと実は思っておりますけれども,現在の段階で少し補足説明,私が理解してる限りでの補足説明をいたしますと,ES細胞というのは本来非常によく増える細胞なんです。いわゆる単層の,普通の培養器の上に張りついて平面上に増えていくというのが一番普通なんですけれども,そうやってどんどん細胞を増やすことができる。この使用計画書は,そういうふうな通常の容器の底面に張りついて平面上に増やすというのではなくて,細胞をもっと大量に培養しようとしますと,三次元的な立体培養するわけです。そのときには栄養補給とかガス交換を効率よくやってやらないとだめなわけなので,要するに管状のものを容器の中に入れて,そこに培地を通すと,その管と管の間に細胞がいっぱい入っていて,そうすると管の中をいつも培養液がわっと流れてるもんですから,細胞の密集度が非常に高くてもちゃんと細胞の生きてる生存状態を維持できるというそういうシステムなんですね。そのシステムを中空の管をどういう管を使うのか,あるいはどのぐらいの細かい管を詰め込んで,どのぐらいの孔径のものを詰め込んでどのぐらいの細胞を巻き込むのか,そのあたりにさまざまな工夫があって,皆さんがより効率よく大量の細胞を培養できるようなシステムを少しでも改良していこうとやってるのが今の段階なんですね。
 今まではいろんなところに,いろんな細胞の培養に使われてるんですけども,一番多分よく使われてるのは,例えば肝臓の細胞なんです。もし肝臓の細胞を,機能がある肝臓の細胞をそのような型に詰め込んでやりますと,その肝臓の細胞が機能しますので,肝不全に陥った患者さんの血液をとってきてそこにつないでやると,ある限定された期間,肝臓の役割を果たすことが期待されます。そうすると,短期の間ですけれども,急性の肝不全でそのままだったら亡くなってしまうような患者さんはしばらく生かしておくことができる。そうするとその後にドナーがあらわれて肝臓移植ができるかもしれないし,あるいは状況によっては本人の肝臓が再生して,また命が助かるというようなことで発達してきたシステムなんですね。そのシステムをES細胞の培養に応用して,少なくともここでの計画だと大量にES細胞を培養してやろうという,そういう話なんです。
 それから,それプラス,この人たちの計画のもう一つは,細胞というのは一たん増やすと,凍結して保存するわけですけれども,ES細胞,特にヒトのES細胞は必ずしも凍結保存が非常にうまくいってる細胞ではないんですね。それはうまくいかないということは,一番基本的にはどういうことかといいますと,凍結して保存しといて起こしたときに生きてる率が低いんです。だから,そのあたりの改善をするための計画も入ってて,その2本立ての計画になってるわけです。これが今の概要です。
 ただし,それに科学的な妥当性が本当にあるのか,つまりそういう研究をすることが今の段階で非常に意味があるのかどうかということについては,これはまたここで議論をしくちゃいけないことでありまして,これは後で,次の段階で議論したいというふうに思っております。
 概要としてはそのあたりですけど,何か御質問があればどうぞ。
E: 今先生がおっしゃったように,最初の方は人工肝臓をどうにかしてほしいんですか。その出所というかソースは何なんでしょう。
A : ソースというのはどういう意味ですか,人工肝臓の細胞のソースですか。
E: そうです。
A : それは世の中ではいろんなものが使われておりまして,例えばドイツあたりで実際に臨床応用されてるのは,移植に使われなかったヒトの肝臓をばらして,そしてその細胞を使うということをやられておりますし,岡山大学でこの申請者のグループの人たちが検討してるのは,例えば豚の肝臓をばらして,そしてそれを詰めて,もちろんそれは臨床応用はしてませんでして,機能検定をしてると,あるいはヒトの肝臓の細胞を遺伝子操作をして,ある程度増えるようにしたものを詰め込んで機能検定をすると,そういうあたりの細胞が使われてると思いますよ。
E: 他人由来の肝臓の細胞を用いた場合に,少し倫理問題にひっかかってくるんですが,それはこの段階ではなくて,もっと前の人工肝臓そのもののところでは,出てきますね。あるいは……。
A : 今人工肝臓そのものは全然関係がないんです。私は人工肝臓の例を挙げたのは,このシステムがそういう目的で使われてきた歴史を持ちます,そういう特徴がありますということを説明するために例に挙げただけでありまして,この研究計画では肝臓細胞を培養するとか,あるいはそれを臨床応用するとかという話は一切ありませんので,とりあえずここでの話題ではないということだと思います。
D: では,少し話を培養の方でお聞きしたいんですけども,このCの3ですかね,倫理的要件を守るため研究代表者が十分な方策を講じているかという部分ですが,「十分な」という部分が気になるんですけども,どうやって十分を判断するのかちょっと分かりにくいと思うんですね。文章の中ではこのように説明しました,お互いに勉強しましたとあるわけですけども,その記録があるわけでもないので,その点が1点気になりました。
 それと関連して,使用計画書の概要の2ページ目,使用完了後の細胞の扱いに関する部分なんですけども,これは完了した後は焼却するとあるわけですね。ところが,本来のこの申請の研究目的からいきますと,どのようにすれば一番効率よくES細胞を増殖させることができるかということになりますので,これは予測ですが,非常に大量の細胞が結果的に生まれてくると思うんですね。それをすべて焼却処分でよろしいかどうかとなってきますと,ちょっと倫理的にいかがなものかと考えてきます。例えば大量増殖したものを機能の面からとか,それから遺伝子の変異という場面でもう少し解析しますよという観点がありますと,大量になったとしてもそうしたものに解析のために使いますので,蛋白質なり遺伝子がたくさんとられてきていいと思うんですが,ただ単に増殖だけでどの程度まで見ていかれるかというのが分からないので,私は倫理面で少しひっかかるものがあると思います。
 以上です。
A : 先ほど先生が前段でおっしゃった研究代表者が倫理的な条件を遵守するために十分な方策を講じているかということは,ちょっとまた後で議論したいと思います。というのは,先ほど申し上げましたように,研究体制と従事する研究者の問題のところでやっぱりそっちに移して議論した方がいいかなと思うもんですから,そうさせてください。
 それから,後半におっしゃったことは,これは一つのポイントではないかと思うんですけれども,焼却するということが倫理的な観点から見てどのように判断されるかということなんですね。これは実は恐らく専門委員会での議論でもそこのところが少しちょっと詰め切れてない部分かなと,私自身はそういう印象を持ってたんですけれども。つまり本来ヒトの胚に由来して胚というものは滅失するという言葉が今使われておりますけれども,滅失してES細胞が生まれるわけで,軽々に扱わないようにということは当然のこととして受けとめられてるわけですけれども,そのときにこういう,つまり胚のときにもそういう議論があります。ヒトの胚があって,もう既に使用しないと,廃棄しますということが確定した胚を倫理的な観点からより生かす道はどういうことなのか。一方では,それは焼却するのが一番丁寧な姿であるという考え方もありますし,一方では意味のある形で使う方がその胚を尊重することになるんだという意見があって,この点は必ずしも世の中で決着はついてない問題のように私は受けとめております。今のES細胞の話は,胚ではなくて,今度ES細胞で少し違うんですけれども,多少似通った部分があるんじゃないかというのが私の印象です。
 ES細胞は,先ほど申し上げましたように,通常の状態で培養いたしますと,厳密な意味で無限ということは言えないにしても,実質的には非常によく増えまして,しかもかなりの期間性質が変わらないで増やすことができますから,量が問われてるわけではないんだと,ないんですね,大体。そうすると,余ったものはどうすればよいのかということの議論になって,それを今D先生が指摘された問題のところに行くんですね。
 それで,実はこれに関連することですのでちょっと申し上げときますと,信州大学で実験計画書を出したときに,ES細胞を使った後はそれを誰かリサイクルするというようなプロポーザルを出したんですね。出した方はリサイクルするということで,大事にするという意図を強調したくてそういう言葉を出したんじゃないかと思うんですけれども,それは専門委員会でかなり批判を浴びておりました。それはちょっと筋が違うんではないかと。専門委員会がどういう意図で批判したのかということは私十分理解できなかったんですけれども,私自身は考えてみますとやはりES細胞というのは,量が問題ではないので,リサイクルすることが非常に価値のあることではないというふうにも思います。
 だから,今のこの焼却するということが,じゃあずっととっとく方が尊重することになるのか,焼却してもよいのかということについてはいかがでしょうか。
I  : 恐らく私も全く素人で分からないんですが,その後のことが問題になるのは,もしどっかに保存しておいて管理があやふやになった場合に,クローンというような方向での使い方も可能だということを伺いましたが,管理のあやふやな状態でどこかに残されているという危険を避けるということが重要なのかなというふうに思いましたが。
A : ということはむしろ焼却するということは,倫理的な面から見ると積極的な評価ができるということですかね。
I : ちょっとそれはよく分からないところも判断が難しいところもあるんですが,とにかく研究が終わった後の管理があいまいにならないようにするというのが非常に重要ではないかと思います。
H: さっき説明していただいた計画の概要ともちょっと関係があるのですが,大量に培養することができるかという研究と凍結保存ができるかという研究は関係があるのですか。別の研究ですか。
A : 直接的には関係がない2つの独立した話だと思うんですね。サイエンティフィックに言えば,恐らく直接的な関係はない。つまり大量に培養できる条件が直接凍結保存がより容易になるとかということにはつながっておりませんので,科学的には独立した話でしょうと思います。
 ただ,実際問題から考えてみますと,大量に培養できても,それが凍結保存ができなければ,結局いつもメインテインしてなくちゃいけないので,余り現実的な意味がないんですね。だから,実は僕はこの科学的な妥当性の段階で一体大量に培養するということがどういうことなのか,もう一度検討が必要だなと思っています。そこで明らかとなってきますけれど,大量に培養して,例えば10の10乗の細胞がここにありますよといっても,それがもし凍結保存できなければすぐに使われない限りはもう意味がないことになりますので,実際に大量に培養した技術が現実に生きるためには,やはり凍結保存とセットになってなければいけないという意味での関係はあるというふうに理解しております。
H: なぜこの質問をしたかといいますと,D先生のお話を聞いて,例えば大量に培養ができた場合に,それが凍結保存ができるかという研究に生かされるといったことがあるとすれば,意味が出てくるかもしれないと思ったからです。つまりこれが本来別々の研究であるならば,一つの申請である理由はまず問わなくてはいけないと思うので,そのときに一つの理由になるのかなと思いました。
 焼却か否かということですけれども,出発点としてES細胞をつくるとか,あるいは培養の研究を認めるというところから考えると,D先生がおっしゃったように,その後何らかの研究に,例えばもっと分析が進むとか,凍結の研究に生かされるとか,そういうことがあった方がいいのかなという気持ちはあります。ただ,管理の問題と,それから礼意を持っているという意味で,廃棄物として捨てるのではなく責任を持って焼却する姿勢は評価できるような印象があります。
A : そのほかに,その目的に関して倫理的な観点からいかがでしょうかね。目的が,一つは倫理的な基準の範疇に入って容認できるかどうかということと,その中で要するに研究目的がどうであるかということなんですけど,これについては一応範疇に大体入ってんじゃないかという御意見が多い,少なくともあらかじめいただいた中では,ほぼそういう御意見だったろうと思います。
 それから,焼却の問題に関しましては,今議論に出まして,それはむしろプラスの考え方であろうということだろうと思いますけども,そのほかに何か御意見ございますかね。
 はい,どうぞ。
D: もう一点,つけ加えさせていただきます。
 凍結保存の保存方法が可能か否かを検討するとあるんですけども,その前に必ずついてるのが「機能的な」という言葉がついてるんですね。そうしますと,研究の妥当性にも関係すると思いますけども,機能的なとなりますと何をもってその機能を評価されてるのかというのがないと,なかなか理解しづらい部分が出てくると思うんですね。
 先ほど私が例として出しましたたんぱく質とかDNAの変化とかという話もしましたけども,分化能を持ってるかとか,あと他のところに移植できるかとかいろんな意味での機能的というものが表現できると思うんですね。ですから,基本的なものの定義をもう少し絞らないことにはちょっと意味が広過ぎると,私は思います。
A : 分かりました。私もちょっとこれは確かに突っ込みが浅いなと,記述するスペースも多少は影響してるのかもしれませんけど,やっぱりそこをはっきりさせないとどういう意味なのかよく分かりません。恐らくは,類推するに凍結保存をして起こしたときに機能が変化してないと,一番肝心なのは多分化能ですから,多分化能が変化してないということを言いたいんだと思うんですけども,そこをどういう基準で判定するのかということの記載が不十分であるということだと思います。
H: 先生,簡単な質問をしてもいいですか。
A : どうぞ,どうぞ。
H: 使用の必要性というところがこの概要の中に目的の下にありますけれども,これはさっきの説明を伺うと,最初の1番だけがこの研究についての使用の必要性というふうに考えていいのでしょうか。つまり後段は,さっきの説明を聞く限りでは,一般論としてのES細胞とか再生医療の意義としか私には読めなかったのですが。
A : ある意味ではそのとおりなんですけれども,要するにここはヒトES細胞を大量に培養するということの,つまりヒトES細胞の有用性というか,そういうものが位置づけられなければそれを大量に培養することの意味もなくなるわけで,そこの説明がつけ加わってるんじゃないかというふうに思っておりますけど。
 ほかに御意見ございますか。
 もし御意見ございませんようでしたら,計画の科学的妥当性というところに進んでよろしいでしょうか。今幾つかの話の中で既に科学的妥当性に相当することがいろいろ少し出ております。それで,科学的妥当性のところを検討して,その中でまた倫理的な問題が出てくればまた戻ってもいいんですけれども,科学的妥当性の検討を始めてよろしいですかね。
 科学的妥当性に関しましては,先ほど申し上げましたようにこの計画は2つの要素から成り立っておりまして,1つは大量培養ということです。それから,もう一つが凍結保存。私は,この2つについて,中身が不十分な記載で十分理解できないことが多々あるんですけれども,その前に少し委員の先生方から科学的妥当性について少し御意見を伺いたいんですけど,余り先に委員長がしゃべるんではなくて,C先生いかがですか,科学的妥当性について。
C: この計画書を読ませていただいて,3番目のところに動物のES細胞やヒトの組織幹細胞で研究が十分に行われているかどうかという項があるんですけれども,それに関しては動物のES細胞に関する記述というのは特になくて,ヒトの組織幹細胞はないけども,ヒトの肝細胞,リバーの方ですね,肝細胞では実験をやっているというそういう記載があります。ここの動物のES細胞やヒトの組織幹細胞で研究を十分にするということが絶対的に必要なのかどうかというようなところをどう判断すればよいのかその辺がちょっと気にはなっているんですけれども,この計画書の研究目的から察すると,組織幹細胞でなくても,肝細胞,リバーの方ですね,リバーセルとかそういうものを使ってやっていれば,この目的に関しては,次はヒトのES細胞に進まないと,動物のES細胞でやることの意味がどれだけあるのかと考えておられるようにも見受けられるのですが,ちょっとその辺についての皆さんの御判断をお聞きしたいというふうに思いますけども,1点それがあります。
A : 分かりました。これは大事なポイントなんですね。つまり指針が要求してることは,ヒトES細胞を扱う研究を推進するに当たっては,動物細胞を使って十分な科学的根拠があると,ヒトの細胞の段階に進む必然性があるということを要求してるわけでして,その必然性というものをどのように判断するかということが非常に重要なポイントだと思います。
 これは後でまとめて一つの項目として議論したいと思います。
 B先生,御意見をお願いします。
B: 科学的な妥当性に関しては,倫理的な妥当性のところで一部議論が始まっていて,皆さんが既にご指摘されていることですが,私もこの計画書を読んだときに,それらの点についてもっと知りたいと思いました。
 凍結保存の方法を調べる,機能的な凍結保存のいい方法を見つけるというのが目的の一つだと思うんですが,細胞を起こしたときに本当に機能性を保持しているか,多分化能を保持しているかというのが最も重要なこの研究のポイントだと思います。凍結保存の後,細胞を起こしたときにどのくらいの細胞が生きているかというのは簡単に調べられますが,多分化能を保持しているかということを調べるには,分化するかどうかということを調べるしか方法がなく,凍結保存のいい方法を見つけるという研究がこの計画でできるんだろうかというのが浮かんできた疑問の一つです。
 もう一点は,大量培養の方法。彼らがこれまでヒトの動物及びヒト幹細胞を使って開発してきたこの大量培養の方法がヒトのES細胞でうまくいくかどうかというのを調べるというのがこの研究のポイントであるとすれば,もし違ってれば別なんですが,京都大学でES細胞を供給している研究施設で幹細胞の培養方法,あるいは凍結保存の方法について改良に改良を加えて現在に至っているという審議経過の報告がありますから,京都大学である程度大量培養が行われてるとすれば,いろんな研究機関に細胞を供給するためには十分な培養が既に行われているとすれば,その方法と今回岡山大学でやろうとしている方法との違いといいますか,意義というものを明確に記載しないと,大量培養を行う研究の意義づけが希薄になるのではないかと思いました。
A : ありがとうございます。
 今,大事な御指摘をしていただいて,これもきちっと議論を,先ほどからも少し出始めてますけれども,きちっと議論をしなくちゃいけないことで,1つは機能的なというときのアッセイをどうするのかということですが,一方で分化誘導実験は一切行わないと書いてあるんですね,申請書の中に。そうるすと,分化誘導実験を行わない,それからマウスと違って移植して,多分化能を調べることもできないと,そうすると一体機能的というのはどのようにしてアッセイするのかという疑問が当然出るわけでして,そこを詰めなくちゃいけないと思います。
 それから,今もう一つ御指摘いただいた京都大学との違いということなんですね。恐らく私が理解してるところでは,京都大学では通常のモノレイヤーカルチャーで細胞を増やそうとしてるんです。ただし,その程度でも十分皆さんに供給できるだけの細胞は幾らでも増やせるんですね,ES細胞の場合は。だから,僕は,実は心の中に思ってることは,一体ここで言う大量培養の規模というのはどのぐらいを目指してるのかということの具体的な数値として示す必要があると。その数値が,例えば1オーダー,2オーダー,3オーダー上がるということが現実に意味のあることなのかどうかということなんですね。今のほとんどES細胞に関して言うと,モノレイヤーカルチャーで増やして,それを実験に使用するということに関しては,通常の実験を考える限りは,余り数としての支障はないはずなんですね。それを2けた今増やすことが本当にどれだけ意義を持ってんのかということはやはり検討しなくちゃいけない問題だと思いますので,後でこれも項目として取り上げたいというふうに思います。
 では,どうぞ。
D: 先生言われました最後のモノレイヤーか三次元で培養しているかによっての違いですけども,私たちの認識からしますとやっぱり三次元で培養しているものは相当分化が進んでくるというような考え方もあるんですよね。特に私が対象としてる細胞などはそうなんですけども,そうなってきますとこの申請者の方々は自分たちの培養型によってどういう種類の細胞群,クローンと言いますけどもそのクローンが増えてくるのかというのを見たいとされてるのだろうと思います。
 それからまた,凍結してそれを回復させることによってもクローンの選択というのはあるはずですから,それについても考慮されると思うんですね。そうなりますと,その視点の部分,何を観点として見ているかということに関しては,やっぱり記載されないと判断しづらいと思います。
 以上です。
A : 三次元培養でES細胞で何が起こるかということは,実はES細胞そのものは三次元培養で余りされてないみたいですね,調べてみても余りひっかかってこなくて,ごく限られた分化誘導実験は確かにあるんですけど,それはやっぱり分化誘導実験なんですね。だから,三次元培養することが,いわゆる分化状態,多能性を維持したまま増殖できるということに平面ではある条件が見出されてるわけですけれども,それに三次元培養がどういうふうな違いを持ってるのかということは未知数ですね。だから,大量培養そのものというふうに単純にそこには行きにくいのではないかというふうに僕自身は思っております。
 H先生,科学的な観点,科学的妥当性について何か御意見ございますでしょうか。
I : そうですね,科学的妥当性と言われると全く分からないんですが,今,A先生のお話し伺って,今いろんな細胞に分化する,この研究では行わないと言っている部分の研究が今全体としてはどのように進んでいるのかということを知りませんので,そういうこととの兼ね合いもあるような気がいたします。非常に大量に必要とされる時代が来ているのか来ていないのかということが素人には全くわかりませんので。
A :まずですね。分化した高度の機能,たとえば血管内皮なら血管内皮としての機能,肝臓なら肝臓としての機能,神経なら神経としての機能を持った細胞を大量に調製したいということはみんなが待ち望んでいることであって,まさにそれが期待されているわけですね。それは分化した細胞を最後に大量に手に入れるということで,そのためにはどういう筋道が一番いいのか。例えば未分化なES細胞を大量に用意して,一挙に100パーセント分化させることができるのか。あるいは比較的少量のES細胞から出発して,分化誘導しながらだんだんプロパゲートして最後にある一定の量の細胞を確保するのが現実的なのか。そこのところが決着していないと思います。ということは現在の段階でたとえばキログラムのES細胞を用意しても,それが有効に使われるかどうかの保証は全くない。だからみんな分化誘導の実験がほとんどなんですね。どういうやり方をすれば効率よく特定の機能を持った細胞を作ることができるかということに集中している。だからこの研究はある意味ではみんながやっていることではないことを目指していると言えば目指しているけれども,それが本当に科学的妥当性があるのか,本当に役にたつ可能性があるのかということはちょっと考えなければならないと思います。
H:一つ教えていただきたいのは,二次元か三次元かという問題があるのだと,さっきD先生が三次元の方がというようなことをおっしゃってましたけども,何かその違いというか,三次元でやることに意味があるのかということをもう少し伺えればと思います。
G: この人工モジュールでは二次元ですよね,三次元ではない。二次元培養だと,私は思いますけれども。
A : 正確には,多分中間的なんだと思います。完全な三次元とも言いがたいし,でも完全な二次元でもないと,間に入ってる細胞はお互いくっついてある種のアグリゲートのような部分もございますので。
 先ほどのHさんの質問に関して言いますとこういうことなんです。普通私たちの体の中にある細胞というのは,組織の中にあるわけですね,ある構造の中にあると。それは基本的には特定の,例えば血液などを除けばすべて三次元的なわけです。お互いにどういう細胞と接してどうなってるかということは三次元的なんですね。それを普通の,最も普通の培養ということをやるというときには,プラスチックのディッシュの上に生やしますので,それは平面的にしか増えないんですね。細胞はどっかにくっついてなくちゃいけないんです。そのために多くの場合,細胞の機能が悪くなって体の中にあるときほどの機能が出てくれないんですよ。それをもう一度いろんな工夫で三次元的な相互作用をするようにしてやりますと,そうすると多くの例で機能が高まるということが観察されています。だから,そういう意味では二次元的な培養と三次元的な培養というのは,かなり基本的な違いがあると。
 今,G先生に御指摘いただいたように,確かに三次元,三次元と一言で言っちゃいますけれども,実はこういうモジュールの中に細胞をまきこみますと,顕微鏡で見てみるとかなりの細胞が実は二次元平面上にしかいないと。つまり,こういうように中空糸がありますと,その表面とかそういうのにくっついて……。
H: 表面に。
A : そうなんです。
G: 外側へつくっている。
A : そうなんです。
H: 相互に三次元になっているわけではない……。
A : 必ずしもなってはいないんですよ。ただ,僕はちょっと中間的というように言ったのは,そういうふうにして,でも濃密に細胞が入ってますので,細胞は増殖能が大抵ありますから,そうすると増えて栄養状態も十分補われているので,局所ではある種の三次元的な細胞の固まりというようなものを形成してる部分もある。そうすると,全体として見れば,ある場合には二次元的だし,ある場合には三次元的だし,そういうもののコンプレックス,混合物になってるんじゃないかというのが実態の姿かなと思ってるんです。
G: ちょっと追加します。この膜に蜂の巣のように小さな穴をたくさんつくってやるとか,そういうふうにやって,そこに三次元構造を持たすように工夫されている膜もあるわけですね。だけど,私は基本的にはここへ出されてるのは二次元培養かなと。ただ,そういうふうに膜の表面に非常にたくさん蜂の巣のような穴をつくって,その中に細胞をいっぱい入れて三次元構造をつくらせて細胞の機能を出させよう,特にこのグループは肝臓をやってますから,肝臓としての機能を出させようと,そういう考えがあると思います。
H: 質問をしたのは,2.5か3か分かりませんけど,そういう研究に,どれぐらい意義なり新しさがあるのかなと思ったんです。
A : これは一番いいのは当人たちに説明してもらったらいいんですけど,私が理解してる限りでとりあえずは意見を言いますと,先ほどちょっと申し上げましたように,例えば肝臓の例をとると,我々の肝臓はどうですか,1.2キロ,1.5キロぐらいの重さがあって,膨大な細胞が詰まってるわけですよね。その単層培養でその10分の1の細胞も用意をして,そして人の肝臓とつなごうと思うと,もうべらぼうな広さになっちゃうわけです。そうすると培地の流量,その他でとても人工肝臓の役割をすることはできないと。ところが,こういういろんなタイプがあるんですけど,バイオリアクターの中に詰めてやりますと,相当の細胞をある規模の中にぎゅっと詰め込むことができて,その意味では先ほど言いましたように,ドイツでは現実にブリッジユースと言って急性肝不全に陥った患者さんが次のドナーが見つかるまでの何十時間の間ブリッジユースをして,それで命が助かってる例がかなり報告されてるわけですね。それが現実に臨床応用までも可能であるということなんです。
 この研究グループは,そういうことを目指して研究を重ねてきて,だからそういう意味で,つまりこのバイオリアクターそのものは有用性があることは明らかなんですね。ただし,ES細胞にこのバイオリアクターを直接応用することが有用性があるのかどうかということは,これは検討しなくちゃいけない。僕が先ほど言いましたように,これはどのぐらいの次元の細胞を欲しがってるのか。つまり今100しか必要がないと,100細胞があればいろんな実験に十分いろんな実験に供することができるときに,今1万の細胞を用意することが本当に意味があるかどうかと言ったら,それはどうでしょうかねという話になりかねません。
 G先生,そのほかに追加することございます。
G: 今,皆さん非常にいい御意見を出されていまして,私の結論はやはりこういうバイオ人工モジュールで果たしてヒトのES細胞が増えるかどうかということが一番の問題です。やはりその前にマウスとかほかのES細胞で実際やってみてほしいと思います。なぜヒトのES細胞をここでいきなり使わないといけないのか,理由が私には分かりません。
 とりあえず,マウスなりのES細胞でやってみていただきたいと思います。そして非常に好意的に解釈すれば,このグループの研究目的というのは,先ほど委員長が言われたように,こういう中空糸に細胞を大量に増やして,一挙に肝細胞にすればそれを肝臓の代替えとして用いられる。そういうことをねらっていると思います。けれども,いきなりは非常に難しいですから,貴重なヒトのES細胞を使ってやる必要はないんではないかと私は思います。研究の計画で私は反対です。
 それから,凍結の方はまた別の問題でして,何も大量培養しなくても凍結の条件は検討できるわけでして,例えばウィスコンシン液の中にどんなものが入っているのか。例えばよくDMSOなんか使いますけれども,DMSOというのは細胞の分化誘導にも使われる薬でもありますね。だから,細胞の性格が変化しないかどうかとか,少数のヒトのES細胞でも検討できるわけですね。そうしてやはり先ほどからずっと問題になってる機能的な問題は,非常に難しい。機能的と言われるとやはり多分化能を持ってるということで,大量に保存して焼却してしまうという研究の目的との関係がよく理解できません。
 そういうことで,結論とすれば,ほかの動物のES細胞で,まず,中空糸のどれがいいのかぐらいは選ぶべきではないかと思います。
A : ありがとうございました。
 E先生,どうでしょうかね。
E: 気がつかなかった点をいろいろ勉強させていただきました。
G: それちょっと追加させていただきますが……。
A : はい,どうぞ。
G: そして,この3人の研究者の方の業績を拝見させていただいて,文献21から23までのとこですけれども,これも結局,肝臓細胞を凍結したという経験だけであって,マウスのES細胞を凍結したとかそういう経験は書かれてないんですよね,業績としては。だから,まずそういう基本的なところからの本当にやられてるのかどうか,データがあるのかどうか,この進めるユニバーシティー・オブ・ウィスコンシン液とかパスクルピックアシッド,ツーグルゴシッドサイドですね,こういうものを使って本当にどれだけいいのかという,ES細胞に対してですよ,マウスでもいいんですけれども,そのエビデンスはないように思うんですね。
 以上です。そういうことで,もう少しマウスのES細胞で検討をやられたらいかがかなと,私は思います。
A : ありがとうございました。
 F先生,何か。
F: 皆様方の議論を聞きながらちょっと混乱をしているんですけれども,今は今回上がってきたこの計画を実質的に審議しようとしているのか,それとも項目の整理をしようとしているのか,それとも審議を通して項目を整理するということをしてるのか,どれをやってるんでしょうか。
A : 項目の整理は一応前回したつもりだったんですけれども,実質に評価しようと思ってみるとオーバーラップとかいろいろあって,項目の整理が必要だなというふうにE先生が言われて,私もそう思います。ただし,改めてまた項目の整理だけをやってということでは能率が悪いので,今実質的な審議をしてるというふうにお考えください。
F: 分かりました。
A : 実質的な審議を通して,最後に項目をもう一回整理をしてみようと。
F: 分かりました。さすが専門家の方々の御意見。私自身,大変勉強になりました。まだ書式が十分に完成してない段階で申請をなされてるということですので,そのあたりを差し引いて考えたときに,多分文部科学省の様式をベースにこれから行われていくとすれば,倫理委員会向けに出された,ちょっとページが打ってないのでわかりづらいのですけど,実施計画の文章で出されている方ですね,そこの「研究者への教育訓練について」と,分かりますでしょうか,「別紙様式第1」のところから数えまして4ページ目の「3.研究の実際(3)研究者への教育訓練について」のところです。ここで要するに倫理的な教育もしてますよということをこちらのペーパーでは書いてあるんですけど,文科省の方の書式の方には,様式2の裏側の「使用機関の基準に関する説明」というところに該当すると思いますけど,ここには書かれてないわけなんですよね。恐らく文科省のこれまでの考え方からすると,倫理的側面を十分に認識してるかどうかということが,研究を認めるかどうかの非常に大きなメルクマールのひとつであるわけですから,申請者は倫理委委員会様式に書かれているようにこちらにもきちんと書かれた方がいいんではないかと。
 ただ,そのときに文科省の「使用機関の基準に関する説明」というのは,一体その組織体制,言い換えれば,ハード的なところだけを記述するものなのか,それとも今私が申し上げた倫理も含めた教育・研修ですね,そういったようなところも含めて「使用機関の基準に関する説明」という項目は設けてあるのか,後者とすれば岡大に申請されてる分もこっち側に変えた方がいいだろうし,ただ単にハード面だけだというんであれば書く必要はないしと,そのあたりちょっと正式に書類をつくってもらうに当たって,倫理委員会として申請者に対して方針を示しておかないといけないなというふうに思いました。
 それと,この項目の方なのですが,Dの4のところです。やはり今委員の先生方の御意見を伺っていると,ES細胞を使ってやることの意義というものであるとか,この研究の意義あるいは新規性といったところ,これを非常に重要視されておられるわけで,確かに項目にもDの4があるわけなんですが,そこで一つ気になったのが,この項目だけでやってしまうと追試的な研究はこれはできないということになるわけですよね。新規性,独自性を含んでいるかというふうに問いかける項目のみであるとすれば,追試的なものができないということになりかねないのではないかと,そのあたりどう考えればよろしいでしょうかという,ちょっとこれは問題提起であります。ひとまずそれが気づいたところです。
A : 現在の段階で追試的な研究を,そもそも研究をしようというときに,計画全体が追試的なものにとどまるというのは研究計画とは言えないのではないかというのが第1点ですよね。つまり追試をするというのは,次の研究計画を進める基盤として追試をするのであって,追試のための追試ということは通常はちょっと想定しにくいのではないか,それが今のお話を聞いての第1点の僕の感想です。
 それから2点目は,現在の段階では,一般的に言ってしまいますとヒトES細胞を使用する研究は余り広めないというのが今の恐らく文科省の専門委員会の考え方でもあるし,そうなってるわけです。それはなぜかというと,まだヒトES細胞を使う研究というのが社会にどのように受け入れられるのか,あるいは研究を進めたときにどういう問題が起こってくるかということが十分よく分からないと。だから,小規模で慎重に進めていこうというのが今の段階じゃないかと思うんですね。だから,樹立機関も1つに限って,使用機関に関しても非常に厳しい制限をしてると,厳しい基準を求めてるという段階だと,そういう段階で単に追試を目指した研究をいたしますということになっても,まあそういうのは認める必要がないんじゃないかという話になるのではないかなというのが私の理解なんですけどね。
F: 済みません,私はいわゆる実験と名のつくものと全く縁のない専門をやっておりますので,的を射ない質問だったのかもしれませんが,通常理科系の方々はいろんな実験をされて,その方法で得られたデータが正しいかどうかというのを全く同じやり方で繰り返して確認をされる,例えば理学部とか工学部とかよくされると思いますけれども,そういうようなことは本研究というか,このヒトES細胞を使ったものについては考慮する必要がないという,そういう趣旨なんでしょうか。
A : そういうことではなくて,僕は普通の研究の流れということを申し上げたんですけども,我々研究するというときは追試のための追試をやるのではなくて,あることがこういうことで報告されて,それのサイエンス性が確認されてない段階でも,その上に立って何か計画を立てるわけです。しかしその計画を進めるためには,みんなほかの人がやったことをもう一度やってみなくちゃいけない,その基盤に立つわけですから。だから当然追試をするんですけれども,でも計画自身が私はこれこれこの研究の追試をいたしますという形では出てこないということを言ってるんです。
G: ちょっとそれでよろしいですか。
A : はい。
G: このやってる研究者自身は,自分のやったことが正しいかどうかは何回もやって確認するわけですから,そして何回もやって確認して間違いがないということの結果は論文か何かで発表するわけですね。だから,追試がきかないとかなんとかということではないように思いますけれども。例えばこのバイオ人工モジュールで,例えば3番目のポリアクリロニトリールがいいということになれば,その実験を何回か繰り返して,そして間違いがないということをここで確認するわけですね。そういうふうに確認されれば,一応ほかの方がやってもうまくいくであろうと,そういうふうな方向で実験は進められるわけです。だから,追試がきかないということではありません。
E: このDの4のところは2つ問題がありますね。
 まず,新規性,独自性の方ですけれども,これは一般的に言えば単なる追試的な研究・実験等も許されるはずですが,特にES細胞を用いるものなので,そういうものはよくないと,明らかに新規性,独自性を含んでいるものに限るという趣旨なのかどうかという点が1点ですね。
 そして,もう一つの後段の方ですが,実際に治療法や薬品開発に貢献するかどうか,これは貢献する可能性があればよいというところまで読めるかどうか,この2点です。
A : 後の方の問題については,当然可能性でよいと,それぞれの委員の先生方が判断して,これは可能性があるのではないかと判断されればそれでよろしいということになります。それは現実にはあらゆる実験がそうですけれども,やってみなくちゃ最後の結果は分からないと。
 それから,新規性,独自性,だから追試なんですけど,今も議論がありましたけれども,なかなか難しいですよね。つまり僕は,先ほどから何度も言ってますように,現実に我々が研究計画を提出するときに,これこれの研究を追試いたしますという研究計画はちょっと想定できないわけです。だけど,繰り返し言いますけど,しかし追試をやってないんじゃなくて,追試を含めて次の研究計画を立てて,つまり自分たちがある新しいことをやるために必要な追試をちゃんとやるということになると思います。
 追試だけを目的にした研究が社会から,あるいは経済的にもサポートされるかどうかということは,特殊な場合ではサポートされるかもしれませんけれども,少なくとも生命科学の世界で研究費を申請するときに,私はこれこれの実験を追試したいので研究費を下さいと言っても一切くれませんでしょう。特に今のヒトのES細胞を扱う研究に関しては。ヒトES細胞のような非常に新しい研究分野では,追試だけでも容認してもいいのかもしれませんけれども,少なくとも指針にもこのように明確に書かれておりますので,我々としてはやはり研究計画の中にある種の新規性,独自性を含んで役に立つということを判定基準にする方がいいのではないかなと僕自身は思ってますけど。
E: よろしいですか。
A : どうぞ。
E: 今回の申請者の研究は,このDの4に関しては,では問題は少ないというふうに判断してよろしいでしょうか。
    もう一点,3について先ほどからいろいろ出てますけれども……。
A : ちょっと待ってください。それはそうではありませんでして,それは非常に大きな問題があると。私は皆さんに一応一巡御意見を伺って,それからもう一度立ち戻るつもりで今項目をざっと整理してるだけなんです。先ほどから出ています準備状況が動物のES細胞を使っての資料が不十分であったり,あるいは大量……。
E: それは3番です。それはDの3です。
A : ああ,そういうことですね。ああ,そうですか。だから,新規性,独自性も結局,そうか意味がある,ないということと新規性ということは別ですね,分かりました。すみません。
E: また戻っていただいて結構なんですが,先ほどの3番ですが,マウス等を使って十分実験が行われているかどうかという点で,私は判断,実は悲しいんですが,できないんですが,先ほどF先生がおっしゃったところですね,この実施計画書の3ページ目の真ん中あたり,「同意を得る方法」の上のあたりに,「さらにマウスインスリン分泌細胞云々」というところがありますが,こういうのは準備のところに当たるのでしょうか。
A : どこでしたっけね。
F: 私の申し上げたところじゃなくて……。
E: じゃないんです,それはまた別なんですね。
F: 私が言っていたのはこの左側のところです。先生が,今御指摘されたのは,こっちの右の方の……。
E: 今これですね,はい,はい。
G: 上から何行目ぐらい。
E: 上から15行目の後ろの方ですね,悲しいかな,分からない。
A : もちろんある意味での準備状況には当然当たると思うんですね。これは,だからバイオリアクターそのものの取り扱いとかバイオリアクターそのものがある種の細胞についてどういう意味を持ってるのかということの検討ですから,当然これは準備状況に当たると思います。
 ただし,それがヒトのES細胞に進むのに十分であるかどうかの判断は別でして,それは例えば先ほどG先生が指摘された,やっぱりこれは動物のマウスのES細胞でやっぱりやってみるということがなくては十分な根拠と言えないのではないかという,そういうことに議論が来てるんではないか。だから,これは準備状況であるけれども,十分であるかどうかということがポイントだと思っております。
D: 先ほどからのディスカッションを聞いて思ったんですけども,要は今まであったものとどこが違うかというのがはっきり分かるような書き方をされないといけないと思うわけですね。それをあらわすためには,恐らくこれ,私も観点は全く別にしてみたんですけども,ポジティブコントロールといいましょうか,対照が入ってないということに気がついたんですよ。何か,つまり京大でやっている今までの方法というのは対照として入ってきて,それと比較して私たちの方法はこうなんですよと言いたいのかなとも思うわけですね。そうなると,対照実験の方でもそれなりに細胞も使いますし,実験のプロトコルまで詳しく書けとは言いませんけども,ある程度やっぱり書かれないと理解できないところが出てくるんじゃないかなと思いました。その対照実験さえ入れば追試の部分というのも入ってくるわけですね。
 以上です。
A : ありがとうございました。
 今の御意見も重要なポイントだと思います。時間が既にあっという間に1時間半以上たってしまいました。ある程度集約した意見を先方に知らせたいということもございます。
 まず,この研究計画は2つの要素から成り立っている。1つは,大量培養するということであり,もう一つは凍結の条件を決定するということです。最初に,僕ちょっと申し上げましたけども,2つはあるところでは結びついていることではありますが,独立して推進できる研究であって,これをどうしても一つにしなくちゃいけないわけでもないんですね。
 それで,とにかくまず第1番目の大量培養に関する計画から考えますと,1つはこの計画の意味なんですけれども,僕は先ほどちょっと申し上げましたが,皆さんからも意見をいろいろいただいて,やはりここで大量に培養するということがどういう意味を持ってるのかということが言葉の上では一見分かったような気になるんですけども,でもよく考えてみると分からないんです。それはなぜかといいますと,先ほど申し上げましたように,今要求されてることは大量の分化機能を持った細胞を準備すること,これは要求されてるんです,明らかに。そこへの道筋としてES細胞を大量に今持ってるということが本当に必須のことなのか,あるいは必須と言わないまでも重要な意味を持っているのか,あるいはそうではなくて単層で培養した型で供給できるぐらいの細胞の量で十分であって,むしろそれから以後の分化誘導あるいは分化誘導しながら細胞を増幅していく,それから効率よく,つまり100個の細胞がいると100個ともある特定の細胞に分化するということが恐らく一番重要なポイントであって,ES細胞の段階で,いわゆる大量にするということにどの程度の意義があるのかということは,これは一つ,私はもう一つ理解できないんです。
 例えば単層培養でカルチャーディッシュで細胞を用意しようとしても,10枚や20枚のディッシュで細胞をさっと準備することは簡単なことですから,例えば20枚カルチャーしたらどうでしょうか,10の8乗やそこらは簡単に用意できると。そうすると,10の8乗の細胞,10の9乗にしようと思ったってそれはそんなに難しい話ではないわけですよね。それもどんどんどんどん増えながら分化誘導させていくわけで,分化誘導のシステムと何らかのリンクがなければちょっと説得力を持たないのかなあと思うんですけど,どうですかね,ほかに御意見ございます。
I : よろしいですか。
A : どうぞ。
I : 大分前にA先生おっしゃった,三次元というわけではないそうですけれども,でも部分的に三次元的なものができる可能性があると。それだと機能がいい可能性がある,そこがもしポイントであれば意味があるということですね。ただ,そういう可能性があるかどうかというのは,やっぱりG先生おっしゃったようにマウスとかそういう予備的な実験をして,それで違いがあればやってみる価値があるということのような気がしますけれども,量だけの問題だと確かに何かよく分からない,ただ量だけじゃなく質も違う可能性があれば意味があるということではないかと思いますが。
A : どうもありがとうございます。
 実は,私も今,I先生がおっしゃった意見とかなり近くて,こういうバイオリアクターのシステムでES細胞を培養したときに何が起こるのかということは非常に興味のある問題なわけですね。ひょっとすると,さっきからちょっと話が出ましたように,そのバイオリアクターの中で分化誘導をすると,最初大量に増やして,それから分化誘導して大量の細胞を回収するということができるようになりますと,それはポテンシャルには非常に有意義なことなわけです。
 ただし,それは少なくともこの実験計画からかなり離れて,我々が何か実験計画を考えてるようなものでして,ちょっと行き過ぎだなというふうに思うんです。ここで審査をしなくちゃいけないことは,単純に大量に増やすことにどれだけ意義があるのかということと,それに向けての十分な根拠があるかということなんですけど。
E: ああ,済みません。
A : 済みません,どうぞC先生。
C: 私もこれちょっと思ったんですけど,最初ES細胞を少しの量をこのモジュール内に植え込んで増やしてから分化誘導することを考えてられるのかなというような,でも分化実験はしないということでその辺でちょっと疑問に思ったんですけどね。ちょっとつけ加えさせてもらいます。
E: そのことをこの申請者に尋ねられたらいかがでしょうかね。
A : はい,G先生。
G: 今回の大量培養では委員長が言われたように細胞は二次元と三次元の中間状態になったとき問題がおきる可能性があります。ES細胞というのは動物に移植すると筋肉ができたり骨ができたりいろいろな組織を含む胎児性癌になるます。ということは,大量培養のカラムの中ですよ,あるとこは筋肉ができ,あるところは骨になったりいろいろな組織ができたりするとやはり目的のために使えないわけです。全部を肝臓にすることができれば肝臓として使えるわけですけど。そういうことからすると,大量培養で果たしてES細胞のキャラクターがどのようになるかをマウスの細胞で検討される必要があるんではないかなと思います。
 それからもう一つは,やはり非常に基礎的なことですけど,やはり分化への研究がもう少し進まないことにはせっかくこの大量培養をやっても余り意味がないんではないかと思います。今E先生がおっしゃられたように,この研究者が考えられてる案を聞かれたらいかがかなと思います。
 以上です。
A : ありがとうございます。
 はい,どうぞ。
E: もう一つつけ加えますと,あくまで仮定の話なんですが,仮にES細胞を用いて研究したいという人たちが,そういう研究者が増えてきた場合に,京大方式では足りないというような事態が想定されるとするならば,意味のある研究にはなるかもしれません。
A : もちろん先のことはなかなか予測ができませんので,通常の研究室規模でいろんなことをやるんですと,実際には細胞のアンプルを取り寄せて自分のところで増やせば,それこそ1継代か2継代する間に大量に増えますので,研究室レベルだと今までの対応で十分だと思うんですけど,近い将来,例えばもっと大きな,それこそいろんなことをバイオリアクターでやるような時代にもしなったとしますと,最初に大量に細胞が供給できるという体制も意味を持ってくるんじゃないかと思うんですけどね。だから,簡単に否定できるわけではないと思いますけど,でも単純に多いからいいというほど問題はシンプルではないと。
 より重要なことは,今G先生がおっしゃった,やっぱり何が起こるか分からないということの基礎実験が,今まで主にやられたのは分化細胞を使ってですから,やはりES細胞を使っての基礎実験をもう少しやらないと,ちょっとこの根拠が十分とは言えないんじゃないかということ,G先生の御意見がそうで,私もそうじゃないかなと思うんですけどね。
 はい,どうぞ。
F: 委員長,「別紙様式第1」の方は,正式の申請の際には全く要求しないという形にされましたっけ。
A : いや,むしろこの「別紙様式第1」に書かれてある内容を最初の方の書式の中にみんな詰め込んで,最初の方の書式というのは,あれは一つ一つの枠組みがあの大きさに限定されてるわけじゃないということなので,もっとそれを大幅に拡充して全部書き込んでいただくという……。
F: 要するに,そうすると様式2の使用計画書概要は,その文科省の出した最低限のひながたという形に理解してよろしいです。
A : そうです。
F: だとすると,別紙様式第1の方の裏面,7番「研究等における医学倫理的配慮について」というところで,やはり(1)の部分の書き方に申請者の方は御注意いただかないと。確かに人権問題とか人権擁護というところではないんだろうけれども,きちんとそういう倫理的な側面は理解してますよということをアピールしておかないと,批判を受けることになると思います。
A : 分かりました。
F: もう一つ,様式2の方なんですけど,「使用機関(予定)」の方ですね,「使用計画書概要」の「使用機関(予定)」のとこ,これはもうすでにみなさんご指摘の箇所ですが,これはやはり承認日から何年間とか,一応目安を示していただかないと。研究が完了した後はヒトES細胞は焼却するとこの申請者は言ってますけれども,いつ完了するのか,その辺のところをきちんと倫理委員会としてフォローしておかないと,そのES細胞は結局どうなったのかということに対して責任を持ってないじゃないかという,そういう指摘を受けかねないので,一応これおよその目安を正式申請の場合にはお願いをしたいと思います。
A : そうですね,当然必要だと思います。ありがとうございます。
 これまたあと15分ぐらいしか時間がないんですけれども,大量培養についての研究計画の科学的妥当性については,今出ました御意見を集約して一応文章に起こしてみます,議事録も振り返りながら。それで,皆さんにお送りしてオーケーということになりましたら,それを申請者の方にお知らせして,子細に練り直していただくというふうにしたいと思います。
 一言ちょっと余計な話なんですけれども,実際に申請者がこういう申請を出したことには多少,何ていいますか,仕方がない部分もありまして,というのは向こうもどういうふうな申請,研究計画を出していいかよく分からない部分があるんですね。しかも,これ大分もう以前に出てるということはこれを見てお分かりだと思いますけれども,それで申請者にたまたまこの前ちょっと伺いましたら,どういう研究計画にするかいろんな議論があってやりたいことはいろいろあるんだけれども,むしろいろんな本来やりたいことをまず第1に書くと,何か通りにくいような気がしたので,まず第1段階としては非常にシンプルな目的から我々としては出発して実績をつくりたいというのがちょっと正直なところだったというお話をしておりました。それは世の中全体が手探り状態であるので,そういう考えもやむを得ないことであると。
 ただし,今これを読んでみますとやはり検討不足の感じが否めないので,もう一度全体をよく考えていただいて,科学的妥当性について深めて計画を出し直していただくというふうにしたいと思います。
 それから次に,凍結細胞のセクションですけれども,ここでも幾つかの問題がございます。
 一番の問題は,機能的な凍結ということを言ってるのに,機能的であるということをアッセイする案が全く提出されていない。もし分化誘導実験というか,分化誘導実験とは,またこれも別ですけれども,どういうアッセイ法でそれをきちっとやるのか,その中にいわゆる分化をモニタリングするということがなくてアッセーが一体できるのかということが最大の疑問で,そこのところの根拠をしっかりしてもらう必要があると。
 それから2番目は,既に凍結の条件を検討されて凍結されてるわけですから,そういうものと比べてみずからの新しい凍結法がどういう基準から見てすぐれているということを目指すのかということも余り明らかではない。機能的という抽象的な言葉で終始しているので,もう少しここも詰めた議論が必要であろうということが先ほど皆さんからいただいた御意見だと思います。そのほかに抜けてることがありますでしょうかね。当然,ES細胞で今の目指している培地を使って凍結したらどうなるのかというような根拠となる研究は必要であろうということの御意見もございました。
 よろしいでしょうか。
 そうすると,科学的な観点から見ますとこの計画はかなり問題点が多いので,そういう点をお知らせして,もしこの計画にこだわるとすればその点をきちっと対応していただく,そうでなければ計画を練り直していただくと,それは向こうにお任せするということになるかと思います。
 あと次に使用機関,体制のことなんですね。これは1つは人の問題と,それから設備,その他の問題がございます。それで,設備に関しましては皆さんの御意見を見ますと,やはり設備が十分であるということの根拠が,納得できるだけの根拠が十分ではないという御意見が非常に多いと思います。私自身もそう思いました。というのは,ここでそういうことを書くスペースというか,そういう意識がなかったと思うんですね。審査の基準をつくる過程で,ここで議論になりましたようにやはり研究設備が,施設がどうなっているのか,あるいは個々の設備がどうなっているのかということを,例えば施設ですと簡単な図面を提供していただく,それから設備だと,例えば凍結する場合にはこれこれこういう容器を使って管理,盗難とかそういう問題もございますので,そのあたりの管理をどのようにするのかということの資料をつけていただくということが必要なんじゃないかと思いますけども,それでよろしいでしょうか。
 それが設備の問題でありまして,次にちょっと御意見いただきたいのは,携わる人としてのトレーニング状況というか,使用責任者の経験とか監督能力とかそういうことを含めてですけれども,それから使用者,実際に実験を行う実施者に関しましては,その人たちの経験が十分なのかどうか,あるいは倫理的な考慮がちゃんとされているということの何かそれを保証するような記述というか資料というのは必要だと思いますけれども,そのあたりに関してはいかがでしょうか。
 どうぞ。
H: 通常研究はどういうふうにされているものなのかが分からないのですが,ここには3人の名前しかないわけですけれども,この3名だけで研究をされるのでしょうか。専門委員会の方でも実際には,例えば大学院生とかいろんな人がかかわると,そういう人についてそれぞれどこまで記述させるか,あるいはどこまでトレーニングされているかといったことについての議論が随分あったと思いますが,それについてはどうでしょうか。
A : これは確かに非常に議論をされてたところだと思いますけれども,どうでしたっけね,大学院生に関しては,まず十分なトレーニングを経た後に関与させるということが大前提で,それで少なくとも直接タッチをする人はそうですよね。そのときに大学院生の名前をリストに載せるということが必要とされていたんでしたっけ。
E: ないように思います。
A : 載せなくてもいいということだった。
E: 特にこの「ESの委員会で必要とされる」ということが言われない限り,ほかの疫学とかヒトゲノム等要求されていないような。
A : ES細胞に関してはかなりそこのところが厳密に議論をされていて,でも最終的にはやっぱりリストに載らなくてもいいというような話ですかね。
H: 正確なところを言うためには確認した方がいいと思うので,今調べています。
A : そうすると,卒業して入るごとに何か計画書が変わらなくちゃいけないのにどうするんだというような,何かそういう議論がありましたね。
H: ええ。今最終的にどうなったかという専門委員会の議論のメモを探していて手元にないのですが,とりあえず論点整理のメモを見ますと,現行の指針では,学生が携わる場合には研究者として扱われ,計画事項に入ると。そうすると入学や卒業による計画の変更の手続が非常に煩雑なので違う方法にしてはどうかということが論点として上がっている。ということは,現状としては計画事項と思われます。
A : なるほど,分かりました。ということは,研究申請者にその点を確認をして,もし必要ならば携わる人は,直接ES細胞を扱う人は全員名前を載せてくださいと,そういうふうに言う必要があるということですね。
H: 研究従事者と研究協力者という位置づけが違うのかもしれません。
E: それは通常,実際研究する教官というんですか,教員の名前を載せるのみですね。院生の名前は「載せることを検討する」というふうには書いてあるんですね?そうだとすれば,論点として上がってるということは,そしてこの指針に上がってきてないとすれば,逆にそれは載せる必要は必ずしもないというふうに解釈できると思うんです。
H: 今,「Q&A」を発見して該当の項目を見ておりますが,専門委員会においては,これまでの議論を通じ,器具の洗浄等を洗うテクニシャンについては登録の必要はないが,直接ES細胞を取り扱う大学院生は研究者として申請書に記載すべきとなりましたと,ES細胞の取り扱い経験がない場合には習熟させた上,使用申請させなさいというふうに書いてあります。
A : 分かりました。そしたら,そういうことですね。
 それではその旨伝えて,もしも研究協力者がいる場合にはそうしてくださいということを言いたいと思います。
D: 今の件で恐らく大学院生が従事する場合には,リサーチアシスタントの申請もされてる場合があるわけですね。ですから,別のところに出てくる書類というのも意識していただいた方がよろしいと思いますので,是非研究協力者の方には認識していただいた方がいいと思います。
I : よろしいですか,今この3人の方の略歴,研究業績という書類を拝見してたんですけど,3人目の方の現在のことが記載されてないように思いますが,私の見落としでしょうか。ほかの方お二人,田中さんと小林さんは,「現在に至る」という項目がございますが,3人目の深澤さんという方の略歴,研究業績の書類のところに……。
A : 分かりました。これはもうちょっと日にちがたってますので,現在のこともちゃんと現在まで書くように指摘をしたいと思います。
 それから研究従事者,研究責任者もそうですけれども,この人たちの業績,経験がこの研究を推進するに当たって適当であるかどうかということに関してはいかがでしょうか。
G: ES細胞についての報告は見当たらないように私は思ったんですけど。ああ,ありますね。
A : そうなんですよ。
G: 18,19,20ですね,これはGeronで恐らくやられた仕事ですね。ここは3つありますね。前から7枚目の添付資料1ですね。だけど,et al.で書かれているからどなたが入られてるかなというのがここでは分からないけれども,申請者Cと言われる方でしょうかね。
A : そうだと思いますね,恐らく。恐らく研究室プロパーの経験というのは,14,15,16に,学会発表ですけれどもES細胞を使って遺伝子導入をしたということで,マウスのES細胞だと思いますけども,マウスのES細胞を扱って遺伝子導入等の経験はあるということだと思います。
G: そうですね,13もそうですね。
A : はい。
G: 分かりました。
D: 済みません,それは逆に言えば個人の業績のとこにも書いていただいた方がいいんじゃないですね,どの方がどういう経験をされてるかもっとはっきり分かりますよね,いかがでしょうか。
A : そうですね,個人個人で書いていただいた方がいい,それぞれリストにした方がいいですかね。
 そうすると,これ全体を見ていただければお分かりですけれども,使用責任者は広範な立場から研究全体を統括しておられて,恐らくは直接ES細胞がいろいろ実験に使われるころにはもう余り直接実験にタッチされてないかもしれませんので,全体を統括している立場であると。それから,お二人の研究従事者は,少なくともマウスのES細胞を取り扱った経験があって,それの遺伝子操作,遺伝子導入も含めた経験があって,しかもお二人ともヒトES細胞の培養のトレーニングも受けていると。特に3人目の方はかなりヒトES細胞の取り扱いも十分長い期間トレーニング,研究の実際の経験があるようです。それから2番目の方は,この人はヒトES細胞に関してはトレーニングを受けただけということで,実はこれを見たら期間が書いてないんで,どのぐらいの期間トレーニングをしたかということがちょっと見えないかなあと,Geronの手紙なんですけど,それが見えないので,それを入れてもらった方がいいかなとは思いましたけれども,全体としてはどうでしょうか。
G: D先生のとき,言おうと思ったけれども,この業績を書くとき各個人別でなくてフルの名前で書いていただけば,そして当該する人にアンダーラインをしていただく方が分かりやすいんですね。というのは,必ず教授というのは後ろの方に名前がついているからダブります。だから書類が増えるし……。
A : 増えます,明らかに。
G: だから,フルで書いてもらいさえすればすぐ分かるわけです。
A : ああ,そうです。
G: それで,当該者の人にアンダーライン,それでいかがでしょうか。
D: 私もっと考えたことは,逆にそれぞれの論文を書いて,その論文の中でどういう役割を果たしたかというところまで書いていただく。すなわち大学院の設置審のときに個人調査をつくりますよね,それと同じような形で書いていただくと,より働きが分かると逆に思いながらいたんですが,ただそれを余り要求すると逆に書類が増えますのでどうかなと思ってちょっと発言を控えていましたけど,今G先生のお話を聞くと。
G: 名前を並べていただいたら,どのぐらい研究にコントリビュートされてるかは大体分かるように私は思いました。
A : どうですかね。
G: 書類を減らす意味,ダブりを少なくする意味でです。
H: ただ,私は多分お名前があってもどの程度の貢献があったかということは判断できないので,D先生が言ってくださったように,ある程度個人でまとめてあれば多少判断ができるかなと,専門外なので,お手数をおかけして申しわけないのですが,できればそうしていただいた方がいいかなと思います。
 それから,倫理的な認識があるかといったことも個人のペーパーの中に何らか入れることができるんでしょうか。
A : それは要求することは当然できると思いますけど,もし必要であれば。
D: 経歴の中に,例えばいろいろな講習会に出たとかそういうのがあれば,逆に書かれた方がいいんじゃないでしょうかね。また,講習会へ参加証を出すようなところもありますから,参加証の番号を記載されると,より確実なものになると思います。
A : そうすると,今のいろんなお話を総合しますと,もう少し個人別に十分な経験と見識を持っているということを実証するために,まずヒトES細胞についての取り扱いの基本的な姿勢といいますか,それをどう考えるかということを,そんなに長くなくてもいいからある程度まとめていただくと,それから個人の業績に関しては論文リストをつくって,そこでどういう役割を果たしたかということを説明していただく,書類がやや多くなりますが,いろんな専門外の委員も含めて幅広く理解を求めるためには,その方が妥当であろうということですかね。
G: そのES細胞に絡んだとこだけでいいんじゃないかですか,どういうふうに絡んでるか。
A : ああ,そうですね。
G: 説明加えていただくように,全部でなくて。
A : ええ,もちろんそうだと思います,全部だと気が遠くなるほど膨大になるでしょうから,ES細胞に関してということで。あるいはES細胞だけではなくて,研究計画に直接関係するということにしたらどうかと思いますけどね。
 それではそのように,恐らく全体的にはそれなりの経験を持ってる方だと思いますけれども,それをちゃんと客観的に表明するためにそういう資料を提出していただくということにしたいと思います。
 時間が5分過ぎてしまったんですが,基本的に大事な部分に関しましては今日幾つかの論点が出てきましたので,今までの出たことを意見書としてまとめみて,それで皆さんにお送りして,それでオーケーだったらそれを申請者の方にお送りして,再提出,モディファイするなり,あるいは計画自身を変更していただくということにしたいと思いますけど,特につけ加える御意見がございますでしょうか,今の段階で,どうぞ。
H: 済みません,今回の事前のチェックをやっているときに,ここの研究科自体の条件がどうかという,「使用機関について」という項目については,申請者にではなく,一度この委員会で検討してしまえば終わるのかなと思いましたので,それが次回なりに行われればいいのかなと思いました。
A : はい,分かりました。全くそのとおりです。だから,そういう意味では,この基準自身もややいろんなものを含み過ぎてるということだと思いますので,その点ももう一度整理して考えてみたいと思います。
 それでは,そのようなことでよろしいですか。
 次回は,これは大体一月に1回開催することになっておりまして,この前のお話によりますと第4月曜日の午後ということになっているんですが,そういたしますと5月24日ですか,5月24日の1時から3時ということになります。
I : 申しわけないんですけれども,私はちょっとその日は先約がございまして,申しわけないんですが。
A : そうですか。5週はいかがですか?それでは5月31日の1時からどうでしょうか?みなさんよろしいですか?
   それでは,次回は5月31日月曜日の1時から開催したいと思います。この次はこの研究計画がマイナーな修正ですむとすると,研究者にこの場に来ていただきたいと思ってます。しかし計画が変更になるとすると,今回の議事録を起こして,連休明けにお知らせして,研究計画が変わるとなると,3週間で計画ができるのかどうかということがあります。そこで不確定要素がある。もそうするとこの会はスキップするかもしれません。
I :Hさんが言われた施設設備とかの面はどうですかね。計画に関わりなくできることでしょうか?
A :それはできますね。でも申請書が出てこないと,議論をする対象がないと。どうでしょうかね。一応31日ということを予定しておきまして,変更があればまたお知らせします。今日はどうもありがとうございました。