岡山大学大学院医歯薬学総合研究科ヒトES細胞倫理審査委員会 第10回委員会議事録
日時:平成17年6月27日 午後1時〜3時
場所:歯学部第一会議室(歯学部棟2階)
出席者:A,B,C,D,E,F,G,H,K
欠席者:I
資料:研究計画書
   資料5「ヒト胚性幹細胞の肝細胞への分化誘導およびその対外式バイオ人工肝臓への応用に関する基礎的研究」における研究指導方針
   文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理安全対策室における打合せ要旨
 
 
A : 時間も参りましたし,出席予定の先生方はおそろいになりましたので,ただいまからES細胞の倫理審査委員会を始めたいと思います。
 まず最初に,この春から医歯学総合研究科が医歯薬学総合研究科になりましたので,薬学部からK先生に委員としてお入りいただきました。簡単に自己紹介をお願いいたします。
K :薬学系の創薬生命科学講座のKと申します。ES細胞は扱っておりませんが,興味はあります。しっかりやっていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
A :それでは,他の委員の方,簡単に出身母体とお名前だけ,そちらから。
H : 一般市民の立場ということで参加させていただいておりますHと申します。よろしくお願いいたします。
F : 大学院法務研究科のFでございます。よろしくお願いします。
E : 医歯薬学総合研究科生命倫理学分野Eと申します。よろしくお願いします。
A : 私は,医学部の細胞生物学を担当しておりますAといいます。委員長を仰せつかっております。よろしくお願いします。
C : 医歯薬学総合研究科歯学系の口腔生化・分子歯科学のCです。
B : 医歯薬学総合研究科医学系神経機能構造学のBです。
D : 同じく研究科の医歯学系歯周病態学分野のDです。よろしくお願いします。
G : 新見公立短期大学のGでございます。よろしくお願いします。
A : このほかに,今日1名の先生が御欠席で,清心女子大学のI先生という委員がいらっしゃます。欠席の先生は1名だけですので,この委員会は成立してるということで,I先生にも後日,今日の議論の内容に関して御意見を伺いたいと思います。
 それでは,具体的に議事に入っていきたいと思います。今日急遽お集まりいただきましたのは,先ごろ文科省に提出してありました使用計画書に関しまして,文科省の方で事前にいろいろチェックをしていただいて,その御意見をいただきました。
 6月10日に文科省の方に,私と使用計画を出しておられる方から申請者B先生,それから事務担当さんと3人で文科省に行きまして,今日の資料を1枚はぐっていただきますとそこに資料がついてございますけれども,文科省ライフサイエンス課の生命倫理安全対策室というところの室長さんと専門官のお二人にお会いをいたしまして,御意見をいろいろ伺いました。
 まず,文科省の方としては,意見は言うけれども特にこういう対応をしなさいという指示ということではありませんということでした。実際には,7月15日に専門委員会が予定されていて,私と,それから使用責任者の申請者A先生がその場に出席することを求められておりますけれども,その場で付加説明をすることで対応してもいいと言われたんですが,内容をいろいろ考慮いたしまして,やはりこの際委員会を一度開いて,最終的なチェックをしておいた方がいいだろうということで急遽お願いをしたわけです。
 そのときに指摘された内容につきまして,事務担当さんの方でまとめていただいたのが資料についております。それが最初の1枚の紙の裏表がこれが内容です。後ほど内容について具体的に検討いたします。
 それから,その次についてありますのは,文科省からいただいたものでありまして,文科省としては使用計画書が出てまいりますと,ここに書いてありますような項目について一応チェックをするということです。マル印がついてますのは,文科省の事務サイドから見て,ほぼいいのではないかという意味であります。それから,ちょっと不足だなというのがバツ印がついております。これは専門委員会の委員の先生方に添付されて配られることですので,こういうことを参考にして,当日専門委員会での議論を行うということであります。
 本委員会での検討につきましては,全体としてかなり一生懸命議論しているという評価をいただきました。それは委員の皆様の御協力のおかげと感謝しております。
 ただし,不足点としてそこに幾つかバツがついておりますので,それについて説明を受けまして,その内容がこの前のページについてあります@,A,Bに分けられております。
 まず,それをごらんください。
 1番目に,「機関長の役割について」。指摘されましたことは,これは一々すべての文章を読みませんけれども,要するに機関長としての役割が必ずしも明確ではないというふうに感じられたということであります。当然に使用機関の長だから一切の責任を負うと考えることもでき,そういう対応も可能だけれども,もう少しはっきりさせておくということもありますねというような,そういうお話だったと思います。これが第1番目の問題。
 第2番目は,倫理委員会,この委員会における審査はおおむねいろんなことは議論されてるんですけれども,一つの問題は,ヒトのES細胞を使うに当たって科学的妥当性とか研究目的,必要性,新規性についての議論は細かくされているんだけれども,最も基本的な,本当にES細胞を使う必要性があるのかというところの議論が少し少ないのではないかと指摘を受けました。
 こういう指摘を受けて思い返してみますと,実は私自身がこの件に関しては比較的使用計画書の中によく書かれているという印象を持ったために,この場での議論が確かに少し少なかったかなという気がいたしまして,この点を今日使用計画書をもう一度見ながら検討したいと思います。必要であれば,使用計画者の方々に待機していただいておりますので,この場に来ていただいて補足の説明をしていただくことも可能です。
 それから3番目は,「使用責任者の役割」についてなんですけれど,これに関しましては使用責任者の申請者A先生から「基本的姿勢」ということで文書を出していただきまして,それを添付して文科省にも提出しておりますけれども,その内容を読んだところ,ES細胞の取り扱いについて技術的に大事に扱うということではなくて,倫理的・精神的な面で大事に扱うということがやや明確ではない点があったということが1つと,2つ目はどういう教育を今までもするのかというこの2つの点に少し不足があるような感じであるというような評価でございました。
 したがって,今日はこの3点について順次検討していきたいと考えております。
 4番目にありますのは,「今後のスケジュール」でありまして,ここで私たちが委員会を開いて,今回の議事録及び追加の資料は,可能な限り早急に文科省の方にお送りをいたしまして,それが最終的には専門委員会の委員に渡ることになっております。
 7月15日に専門委員会が開かれまして,研究責任者と私の2人が10分ないし15分程度の説明をいたしまして,質疑に答えた後に退席する,その後専門委員会で妥当かどうかという検討がなされるというそういう予定でございます。よろしいでしょうか。今回の委員会を開く理由といいますか,そのことについて御説明いたしましたけれども,何か質問がございますか,この時点で。よろしいでしょうかね。
 それでは,もし御質問がなければ,この@,A,Bというのを検討していくんですけれども,ちょっと都合上,この3番目の「使用責任者の役割」ということから,まず検討したいと思います。申請者A先生の方に文科省からこれこれこういう指摘を受けましたので,そのことをもう一度よくお考えくださって,研究指導方針の改訂版を出してもらいたいというふうに要望いたしました。それが添付資料5となっておりますけれども,この指導方針の改訂版であります。大体前回出していただいたものと内容はかなり似てますけれども,幾つか修正点がございまして,ちょっとお目通しください。
 読みましょうか,事務担当さんに読んでもらいましょうか。
事務担当: では,読み上げさせていただきます。
 「ES細胞は,生体を構成するあらゆる種類の細胞に分化する可能性があり,半永久的に増殖する能力があることを大きな特徴としている。1998年11月にウィスコンシン大学のトムソン教授らによって,ヒトのES細胞が初めて樹立されて以来,病気や事故で失われた細胞を補充し,組織を修復する新しい治療法に向けて当該細胞を応用する研究が世界で行われてきた。国内においても,平成15年に京都大学再生医科学研究所が国内で初めてのヒトES細胞を樹立し,また複数の機関が使用申請を行い,当該細胞からの神経細胞,血管内皮細胞,造血幹細胞,心筋細胞などの誘導に関する研究が始まっている。
 ヒトES細胞は,人の生命の萌芽たる発生初期の胚(胚盤胞)内の,将来胎児となる内部細胞塊から作成されるものであるため,倫理的に尊重され,誠実に取り扱われる必要がある。ヒト胚は人権を認めるべき「人」であるとは言えないまでも,胎内で正常に発生を経れば「人」となり得る存在であるからである。また,ヒト胚性幹細胞は,生殖細胞にも分化する可能性を持ち,新たな人個体の産生に関与し得るといった倫理的問題を含み,この観点からも慎重に取り扱わなければならない細胞といえる。さらに,この細胞が難治性疾患治療のために善意で,また無償で提供されたヒト胚より樹立されたことを熟慮するならば,「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針」が示すように,当該細胞を用いた研究は,その濫用を避け,ヒトの発生・分化・再生機能等の解明を目的とした研究あるいは新しい診断法や治療法の開発,医薬品の開発に限られるべきである。今回,我々は重篤な肝疾患患者への新しい治療法の確立のため,ヒトES細胞から幹細胞への分化誘導法を検討するとともに,体外式に着脱して利用できるバイオ人工肝臓開発を目指す研究を計画した。これまでの経験から,バイオ人工肝に応用する細胞として,ヒトES細胞は他の細胞にはない有用な性質を示す可能性が高いと判断したためである。研究の推進に当たっては,当然「指針」を遵守し,またヒトES細胞に関しては,同指針に定められた厳格な条件下で樹立されたものを使用するため,京都大学再生医科学研究所から提供を受ける予定である。
 ヒトES細胞の使用に関するもう一つの問題は,胚提供者のプライバシー保護である。樹立機関により受精胚の提供者の個人情報を保護するための措置を講じられているが,使用者としてもヒト胚提供医療機関に対しヒト胚に関する情報の提供を求めないなど,個人情報の保護のため,提供されたヒト胚とES細胞の関係が特定されないよう努めなくてはならない。ヒト受精胚の提供者の病歴や年齢等の個人情報は,ヒトES細胞の解析において有用となる場合が考えられるが,それ以上に提供者の個人情報の保護は優先されるべきとした樹立及び使用に関する国の指針を遵守する。
 本研究計画の実際の遂行にあたり,我々は,ヒトES細胞専用実験室を設置し,海外でのヒトES細胞及び国内でのマウスES細胞の取扱い及び知識のある人員を動員する。使用計画に沿った研究が行われているかを確認するために,定期的にカンファレンスを開いて進行状況及び結果を把握し,必要な指示を行う。ヒトES細胞使用記録に関しては,個々の実験においてこれを作成し,保存する。また,これらを含む資料の提出,調査の受け入れ等,文部科学大臣が必要と認める措置に協力する。
 使用責任者の大きな役割として,ヒトES細胞を使用する共同研究者等への指導がある。責任者は月に1回,研究分担者を含めた報告会を開催し,研究の進捗状況と研究の実態をES細胞取扱実験ノートと実験室入退室ノートを下に確認するとともにES細胞の特性を十分に考慮した「誠実な取り組み」が行われているか確認する。ここで言う誠実な取り組みとは,ヒトES細胞は胎内で正常に発育を経れば「ヒト」となり得る細胞であり,生殖細胞にも分化する可能性を保持した新たなヒト個体の産生に関与し得る細胞であることを常に認識し,我々申請者は,1)ヒトES細胞を使用した実験の詳細な記録をとる。2)施錠を原則としたヒトES細胞専用実験室への入退室の記録をとる。3)適切な実験計画とその達成を全力で心がける。そして,4)実験終了時には適切の細胞をオートクレーブにて滅失し,それを詳細に記録するということである。
 上記項目を遵守し得なかった不適切な使用者に対しては,実験の参加を即座に中止させ,直ちに倫理委員会に報告する。当該者には再教育後,再度倫理委員会に申請し,承認された後に実験の参加に復帰させる。使用責任者は,こうした指導,監視,報告,相談,連絡体制を常に有効に発動させる。
 使用責任者は,申請者に記載されている研究者だけではなく,将来の大学院生を含めた研究者のために教育を行うことも使用責任者の重要なテーマと考えている。
 したがって,1)本学の法医生命倫理学講座,生命倫理学のE教授を中心に倫理的な教育・指導を行うとともに,2)少なくとも年に2回は学外の有識者による学術講演会を開催し,テクニカルのみならず,倫理や指針についての教育・指導を行う。対象は,研究従事者だけでなく,職員,学生を広く含める。既に我々はヒトES細胞の取り扱いに関して,平成16年7月12日にジェロン社(米国カリフォルニア州)のレブクウィスキー博士を本学にお招きし,講演をお願いした経緯を有する。また,当面,岐阜大学大学院医学研究科再生医科学専攻(再生応用学)の塚田教授に「再生医療研究の倫理の現状と問題点」と題し,御講演をお願いしている。将来,新たな分担者が参加する際には,使用責任者を含め,現在の分担者がマン・ツー・マンで新しい研究者に実験指導と倫理的な教育・指導を行う。
 以上のような基本方針と具体策に基づき,今後も多方面からの意見を受けて,常に自己点検を行いつつ,同時に胚提供者の意思と肝不全に苦しむ患者の想いに早急かつ有意義にこたえるよう研究を推進する所存である。
A : どうもありがとうございました。かなりタイプミスがあるかと,皆さんお気づきになったと思いますが,私がちょっと気づいたことだけ先に申し上げて,それから後追加していただければいいんですけれども,1ページ目の本文中の7行目に「造血肝細胞」とありますけど,これは肝臓の「肝」ではなくてステムセルの方の「幹」であるというふうに思います。
 それから,次のページの下から5行目の「退室ノートを下に」という「下」というのは,これは「下」という字じゃないですよね,ここ。
E : 平仮名の方がいいでしょう。
A : 平仮名がいい,じゃあ平仮名にします。
G : どこですか。
A : 2ページ目の下から5行目の真ん中あたりです,「取扱実験ノートと実験室入退室ノートをもとに確認するとともに」と。
 そのすぐ1行下ですけれども,「誠実な取り組みが行われているか確認する」と,「いるかを」,「を」を補った方がいいかなと思いました。
 それから,次のページの上から2行目の4番「実験終了時には適切の細胞をオートクレーブにて滅失し」というのが,これはちょっとよく分かりませんよね。「適切の」というのを取っちゃう方がいいんですかね。
E : そうですね,適切に,する。
A : オートクレーブで滅失することを適切に行うという意味ですか。
E : そうとれないこともないですけど,どちらかですね。
A : このところは取ってしまう方がいいような気もしますけど。
 それから,その五,六行下ですけども,「生命倫理学のE教授を中心に倫理的な教育・指導を行うとともに」の「s」が入っちゃってますよね。
 それから,先ほどの塚田先生の研究題目のところに「再生医療研究の倫理の現状と問題点」ということでしょうね,きっと。
 ざっと見て,とりあえず気がついたとこはそのあたりなんですけど,そのほかにございますでしょうか。
E : 「における」ですか。
A : 「における」。ただ,これは恐らくは塚田先生が出されたタイトルだと思いますので,こちらが勝手に修正するわけにいかないんです。タイプミスは修正できますけど,内容についてはちょっと変更は……。
事務担当: 今日お配りした資料にあります。
A : 再生,全然違うね。これに置きかえてもらったらいいんじゃないですかね。
 そのほかにございますでしょうか。
G : ちょうどそこら辺ですけれども,日本語だけの問題だけど,例えばカリフォルニア州のレブクウィスキーを招き,講演を行った,とかぐらいで,その下も塚田教授に講演を依頼している,とか,ここだけ敬語というのは何か変な感じです。文章の統一をお願いします。
A : はい。
E : そうですね,「と題する」とした方がさらに。
A : 「題する講演を」。
E : そうです。
A : はい。
G : 「依頼している」,あるいは「本学に招き,本学で講演を行った」でもいいんじゃないかと思うんだけど,上。
A : 上ですね。はい,分かりました。ちょっと多少手直ししていただきましょう。
 そのほかにございますでしょうか。
E: 2ページ目の下から4行目なんですが,「ヒトES細胞は胎内で正常に発育を経れば,ヒトとなり得る細胞」とありますね。そのままではならないんですね。前のページにも似たような記述があるんですが,下から9行目のとこですね。「生殖細胞に分化する可能性は新たなヒト個体の産生に関与し得る」という,それだけではだめなんですね。だから,胚だったらヒトとなり得ると。それは当然ですけども,この2カ所は書き方がちょっと違いますね,同じことを書いてるんですけど。
A : ここでも話題になりましたけれど,ヒトES細胞から直接に個体ができてくるということはない,考えられないというのが今の常識だと思います。したがって,2ページ目の「ヒトES細胞は胎内で正常に発生を経ればヒトとなり得る細胞であり」というのは,これは正確ではないと思います。そこのところは修正をした方がいいのではないかと。
 前のページの生殖細胞は,これはまた話が別ですので,もしも生殖細胞に分化をさせて,そしてそれが受精を経て,次の個体を作るということは可能ですので,この部分はまあまあこの記述でいいのではないかというふうに思います。
E : こちらが正しいです,前の方を……。
A : そうです,そうです。だから,2ページ目については,修正をしていただく必要があると思います。
 そのほかにございますでしょうか,どうぞ。
D : 先ほどG先生がお話になった部分ですけども,そこのところをよくよく見てると,どうも前のページと文字のサイズが違ってたりとかするのに気がついたんですね。どうも後からつけ足されている部分だと思いますので,合ってないんじゃと思うんですね。よくよく見ますと,そうすると半角,全角の書き方もそうなんです。英文の関連の文字ですね,数字とかES細胞のESとかがそこの部分だけ違うんですね。そうしたところを統一していただきたいなと思います。
 それから,複数あるんですけども,文科省の方から指摘されていた部分ですね。機関の責任者との関係といいましょうか,機関責任者の責任の範囲内を明確にしておくということがあったんですけども,実はここに書いてある研究責任者の方の書き方からいくと,機関を全く無視しているような表現のものになってるのではないかと思うんですね。やはり機関と連携をして,つまりこの倫理審査委員会だけをターゲットにしてる感じがするんですけども,そうじゃなくて研究科長との十分な連絡はあるというような表現をどっかにされた方がいいんじゃないかと思います。
 そう考えますと,E先生の「倫理的な教育・指導を受ける」というふうにあるんですが,実は学内の他の活動との連携ですね,E先生御自身がやられてるような研究会があったりしますが,そこにもたしかES細胞の関連とか倫理に関する話というのは頻繁に出てきたと思います。そうした部分も上手に使われた方がよろしいんじゃないかと思います。
 それから,使用責任者の大きい責任の一つとしての教育・指導の部分にまた戻るんですけども,学術講習会ですか,それから講演会ですけども,それがどうも職員,学生を広く含めるという形で学内の,もしか岡山大学という研究機関の中での話が,雰囲気があると思うんですが,研究成果に関して適切な範囲内で十分に公開されるというような,そうしたことも書かれたらよろしいんじゃないかと思います。
 この公開に関しましては,実は使用責任者の主な責務ではなくて,これは機関の責任者としての主な責務になると思うんですね。そうしたインフラをちゃんと作っておくという部分もその付近の連携が必要だと思います。
 以上です。
A : 分かりました。いかがでしょうか,今の御意見。私自身は今の御意見は非常に適切なものだと思いますので,是非これを使用責任者にお伝えをして,必要な修正をしていただきたいと思いますけれども。今の御意見に対して,あるいはそのほかに何か御意見ございますでしょうか。
E : これはこちらのことではないんでしょう。「確認申請書チェック表」というのがあるんです。細かいことなんですが,真ん中より少し上あたりの「岡山大学大学院医歯科」になってますね。向こうが間違って打ったんでしょうか。
事務担当: 向こうが間違ってるんです。
E : でしょうね。医歯薬学総合研究,医歯薬学のとこですね。
D : 使用機関名も全部違うんですね,これ。だから,相当に文科省の方はエラーを報告してると思います。
A : そのほかにございますでしょうか。
 今,最初に少し文言のお話がありまして,それからD先生がその内容について御指摘くださったんですけれども,そのほかに内容についていかがでしょうか。多少といいますか,かなり補われて,一応文科省の指摘に対応する形にはなってきたかと思いますけれども,もう少し,例えばこういうところが不足だとかということがございますでしょうか。
D: もう一点よろしいでしょうか,文科省の指摘の部分が倫理的な面とか,それからES細胞を使うということで,感情の面を相当注意をしなさいよというふうに言ってきていると思うんですね。そうしますと,使用責任者が書かれている文章で,第1段落と第2段落の最初の付近ですね,これを逆転した方が,逆にインパクトが強くなるんじゃないかなというような印象を持ったんですけども,ただ第2段落の最初に持ってくるというのは,なかなか構成を変えなくちゃいけませんから難しい部分があるんですけども,第2段落の流れがきれいになっているので難しい部分があると思うんですけども,ただやはり要求されている部分は何かなと思うとこの部分じゃないかと思うんです。いかがでしょうか。
A : どうですかね。
F : 段落の話は,研究指導方針の最終ページの話なんですか。
A : この最初の頭です。
D : 最初のページですね。「ES細胞は」ということで,第1段落は技術的な面がざっと書かれているわけですね。ところが,第2段落の方はヒトES細胞の由来と倫理的な面を相当に重要視されて書かれているんですね。その倫理的な面の方が先に来た方が審査する,もしくはチェックされている室の方ですかね,対策室の方としては心情がよくなるんじゃないかなと思った次第です。
A : 私自身もこの文章の実は第1段落は要らないかなとも思ってるんです。要するにこの第1段落というのはヒトES細胞はこういうものだと認識をしておりますよということを科学的な,歴史もちょっと含めて書いてあるということですよね。これは当然のことだという前提に立てば,指導方針と考え方を提示するときには,これは必ずしも要らなくて,これがあるために焦点がかえってぼけてしまうというところもあるかなという気もします。
 最初にこれを読んだときに,いろいろ人には文章展開の論理や考え方にも個性もおありでしょうから,あえてあったらいけないとも思わないので,まあと思ったんですけど,今D先生の言われたことを考えてみますと,これ全部取っちゃったらどうかという気もしますけど,どうですかね。
G : 私もここを読んで,例えば4行目の「研究が世界で行われてきた」と,こんなことは当たり前のことで,しかも過去形で書いていて,「現在行われている」でしょう,これは。だから,何かここのあたり,むしろ泥臭いなというのか,要らないんではないなという気がしてお聞きしましたけれども。
A : ほかの先生方はいかがでしょうか。K先生,初めて出席されて,今のところは。
K : 確かにそういう感じは受けますですね。特に研究指導方針の中で述べる必要はないんじゃないかというふうに思いますけども。
A : ありがとうございました。そのほかに御意見ございます。
H : 今回のこの文科省の指摘を拝見しますと,結論としてES細胞を大事にしなければならないという結論になっていないように読めると,取り扱いも慎重にということではなくて,誠実に取り扱う必要があるということなんですけれども,素人の感想で言うと,ES細胞というものがどういうふうに大切にしなければいけないものかという文章のところは,指針を初めとした文章をそのままコピー・アンド・ペーストしたという感じがちょっとするわけです。もちろん,これは非常に練り上げられた文章なので,自分の言葉で書き変えるのは難しいというのはよく分かるんですけども,ただ申請者A先生の生の言葉みたいな,その思いという,まさに精神的な部分というものはなかなか酌み取りにくいといいますか,そういう印象がするのは事実なんですね。
 2ページ目の下のあたりに誠実な取り組みというのはどういうことかということで,具体的に4つほど挙げられているんですけれども,実験の記録をとるとか施錠をして入退室の記録をとる,そういうことが心持ちをあらわす手続として慎重な取り扱いを超えたものと言えるのかというのは,ちょっと素人の感覚とすると通じにくいところがあって,むしろ「適切な実験計画とその達成を全力で心がける」というのは,抽象的ですけれども,その思いを感じる部分があるとか,そのあたりがもう少し踏み込まれると伝わりやすいかなというふうに思ったことが1つです。
 それからもう一つは,そういう上記項目を遵守し得なかった場合には,実験への参加も中止させて再教育するというようなことがあって,では現在一緒に研究を分担される方として名前が挙げられてる方についてどういう基準をクリアしてるというふうに申請者A先生は考えていらっしゃるのかということが分かりませんし,今後再教育といったときにも,それを倫理委員会が承認するということになっているわけですけれども,そうするとまさに責任体制なり確認するステップという文科省から指摘されている部分というのがこれだけで実際そういうことが起きたときに一体どうやってやるのか,責任分担なり,その基準なりというものが,ちょっとあいまいな感じがするということ。
 それからもう一つ,E先生を中心に倫理的な教育・指導を行うというのはすごく重要なことですし,文科省にとってもそういう具体的な教育をやってることをできれば聞きたいとありますので,E先生の方でなされたこととか,あるいは計画がおありなのであればお聞きできればと思います。
E : この話は,数日前にお聞きしたんですね,大事なことなのでやりましょうと。具体的にどういうふうにするかということは全く決めていません。というか,私が決める立場ではないんですが。いろんな研究会がありますが,そういうところにも,岡山だけじゃなく,学会等でもこの問題は積極的に出していただいて,そういうところでも扱っているということをアピールした方がいいんじゃないかと思うんですね。
A : そのほかに意見ございますでしょうか。はい,G先生。
G : ついでに厳しいことを申しますけれども,例えば1ページ目の2段目の文章で,セカンドセンテンスですかね,3番目か,「さらに」というとこ,「この細胞が難治性治療のための善意で何々」と,こう書いていて,そしてその下の方へまた「ヒトの発生,分化,再生機能等の解明を目的とした何とか」で,非常にここはちゃらんぽらんなんです。書き方が。もう少し締まった文を書いていただきたいなと思います。
 それで,「今回我々は」というのは段を変えててもいいから,それは今回の研究の目的でしょう。ここは非常に矛盾した書き方に私はなっていると思います。上から読んでいって,何が「さらに」か,その「さらに」の意味がさっぱり分からないですよ。
A : 分かりました。G先生の御意見あるいはH先生の御意見,両方とも非常に大事なポイントだと思います。特にH先生が言われた個人の思いがもう少し入ってないのではないかということで,まさに指針の言葉が入り込み過ぎてるという感じは確かにするんですね。そういうところをもう一度整理をしていただいて,文章を修正していただくと,その際にはもう少し分かりやすいというか,練り上げた文章にしていただくということにいたしましょう。そもそもこれだけいろんなミスプリというか,読んでみて明らかにおかしいことがあるままというのは,時間的にちょっと限られてたこともありますけども,少しラフに過ぎる感じがいたしますよね。そのことはまたお伝えいたします。
 そのほかにございますでしょうか。はい,どうぞ。
F : 先ほどHさんの方からも少し触れられたところですが,文科省の指摘の中で,使用機関の長の役割であるとか使用責任者のところが非常に厳しい指摘を受けております。使用責任者に関しましては,今回御修正いただいた研究指導方針の中にある程度改善されたものになっているとはいえ,やはり使用機関の長,それから使用責任者,それから本委員会,この三者の関係性,位置づけというものがいま一歩明瞭になっていないということは問題ではないかと思います。
 それに関連するんですが,計画書の添付資料11の方に,分厚い方の一番後ろにくっついてる分ですね。これに「ヒトES細胞使用規則」というのがついておりますけれども,まずこの使用規則において機関の長の役割,使用責任者の責任,および三者の関係,各権限が明瞭になるように規則化をしていく必要があるだろうと。これは文科省の指摘の方でも「規則の中にある方が分かりやすい」という指摘をいただいておりますので,規則化した方がいいんではないかと。その場合に問題となってくるのが,この添付資料11は,講座の使用規則ということで,内部規則的なものとして位置づけられていることです。これはこのままでよいのか,それとも審査委員会あるいは研究科教授会なりでオーソライズする必要があるのか,こういうことも検討しなければならないんではないかということを感じております。
 例えば具体的には,オーソライズするかどうかは後にするとして,使用規則の中に,例えば指針第31条1項2号関係として,「機関の長は,研究科教授会において本研究の進行状況及び結果の把握を行い,必要に応じ研究に当たって留意すべき事項及び改善事項等の指示を行う」,3号関係については,「機関の長は,本研究におけるヒトES細胞の使用が適正かつ誠実に行われているかを監督し,疑義が生じた場合には使用責任者から意見を聴取し,必要な場合は倫理委員会の議を経てヒトES細胞の使用禁止等必要な措置を命ずることができる」というような形のものを規則の中にまず盛り込んでいく必要があるんではないかと,それによって文科省の指摘はクリアできるだろうというふうに思います。ちょっといろんな側面から申し上げたので,ちょっと分かりづらかったかもしれませんが。
A : どうもありがとうございます。先生が今機関の長は云々とおっしゃったのは,それは。
F : これは今日お配りいただいたものですかね,「確認申請書チェック表」の中にペケ印がついておりますし,また今日お配りいただいた,1枚めくったところに担当者からの説明の中で,「機関の長の役割について」ということで,「すべてを明文化すべきと言っているわけではないが,指針に記されている以上,何らかの対応が必要である」「委員会の中で話し合ったということでもいいが,規則の中ある方が分かりやすい」という指摘を受けておりますので,口頭による指摘とチェック表の×印をあわせて考えたときに,じゃあ機関の長の役割というものをどっかでか明文化したほうがよいだろう,明文化するんであればどこであろうかと考えた場合に,添付資料11の部分なのかなということです。
 申請者A先生の研究指導方針の方では,恐らく機関の長との関係というのを文章であらわすのはなかなか難しい,「研究指導」というタイトルになっている関係上,難しいであろうから規定するのであれば,使用規則の方だろうと思います。そうした場合に,内部規則でいいのか,それともオーソライズする必要があるのかというところもあわせて議論しなければならないということです。
A : ありがとうございました。話が機関の長の役割のところとちょっとオーバーラップしてるんですけれど,ただしF先生が今おっしゃったとおり,この添付資料11についておりますのは,これはあくまで部内の使用規則なんですね。したがって,この中に機関の長の役割を記述するということは,ある意味では矛盾してると,つまり機関の長というのはもっと上の大枠ですので。だから実際に機関の長のところで議論していただこうと思ったんですが,要するにこの機関の長の役割を明確にするということをどういう形で行うのが最も適切であるかということを議論していただく必要がある。
 1つは,今,F先生がおっしゃったように,このヒトES細胞使用規則ということを研究部内ということではなくて,この研究科でこれから他の部門がES細胞を使うというときにも適用できるような形の,全体の使用に関する規則を定めるという観点から行う。そうするとその中には機関の長と,それからこの委員会と,それから使用責任者の関係ももちろん規定することができるし,それぞれの領域も記述することができるということですね。それが必要かどうかということをちょっとお考えいただきたいんですね。
 機関の長に関しましては,当然何らかの形でその役割を明確化することは必要であっても,指針の中にかなり明確に提言されておりまして,あらゆる意味で全責任をとるということからいえば,また新たにそういう規則を定める必要があるかどうかということは議論の対象ですし,それからES細胞のこの委員会に関しましては,この委員会の設置のための規則,委員会規則というのがございますので,そこにある程度どういう役割をするのかということが書いてあるということで,全く対応がされてないわけでもないんですね。
 このヒトES細胞の使用規則ということが出てきたときに,各大学にいろいろ問い合わせをして現状を調べてみましたら,確かにちゃんとルールを定めてるところもあるし,実際にはそういうものはほとんどないというところもありました。それではどういう対応にしましょうかということで,部内の規則があるので,それをこういう形でやりますということで出したんですけど,その点いかがでしょうか,使用機関の長のことも含めてなんですけど。
F : ちょっと勇み足をしてしまって使用機関の長の方に私が及んでしまったので,混乱を招いたかと思いますが,済みません。
 まず,部内規則でいいかどうかという問題につきましては,私は余り部内規則という形は望ましくないだろうと。要するに,今後も他の講座がこのヒトES細胞を用いた研究が行われるであろうということを考えますと,その講座ごとに内部ルールが異なるということは,恐らく文部科学省に対しては非常に印象の悪いものになるんではないか,つまり大学としての一貫した基準に基づいてやっているということが必要なんではないかと,こういうふうに考えております。
 また,ちょっと勇み足をしてしまいましたので,話を引き戻しまして申請者A先生の研究指導方針の改訂版の方にちょっと戻って,1点ほど研究機関の長とのかかわりで一言申し上げたいと思います。申請者A先生の2ページのところの真ん中あたりに,「本研究の実際の遂行に当たり」,そこの段落ですね,真ん中のあたりの,「使用計画に沿った研究が行われているかを確認するために定期的にカンファレンスを開いて進行状況及び結果を把握し,必要な指示を行う」というようなことはあるんですけれども,結局研究機関の長とのかかわりというところで考えますと,むしろ研究科教授会あるいは研究科の何かの委員会などで,そういった情報提供することで機関の長もきちんとこういう情報を得るという仕組みがあるんだということをここの部分で強調された方がよろしいんではないかと。そうすると,第31条1項2号関係をこの研究指導方針の中できちんと語ることができるというふうに考えました。ですから,規則化しないということであれば,この文章を少し工夫することで第31条1項関係の機関の長との関係はクリアできるんではないかと,こういうふうに考えます。
A : ありがとうございました。今のF先生の御提案は,私はなかなか筋の通った御意見ではないかというふうに感じました。
 それで,部内の使用規則ということで,今ざっと見てみたんですけれども,というのはこの部の特殊性が余り出ているようですと,それをベースにして一般化することも難しいかなと思ったんですけれど,これを見ますとそれほどこの部に特徴的という,例えば研究室の構造上,この部だけで可能なこととか,あるいはこの部だけに必要なことということも特にないようですので,これを下敷きにして,そうして先ほどちょっと申し上げましたけれども,機関の長との関係とか,あるいはこの本委員会との関係等をつけ加えて,そして全体を縛る使用規則にしてはどうかというふうにも思いますけど,いかがでしょうか,皆さん。
G : 私はいいと思います。この第31条1項をこの中へ入れてやっていただければよいと思います。
A : どうぞ。
H : F先生に教えていただければと思うんですけれども,今の使用機関の長との関係を規則に入れていくというのは非常にわかりやすくてルール化されるのはすばらしいと思ったんですが,このチェック表で見ると第32条の1項3号,6号も×がついてるわけですよね。使用責任者の役割が明確でないという指摘が2点ともされています。
 3号は,ヒトES細胞の使用総括,使用及び研究者に対する必要な指示をする。6号は,使用計画を総括するに当たって必要となる措置を講ずるというのが使用責任者の役割であると書いてあるが,それが提出された書類の中では明確でないということですよね。であれば,この規則の中にこの点も入れるということはできないでしょうか。
F : 恐らくこれは申請者A先生の修正バージョンが出る前のものに対する指摘ということでございますので,この申請者A先生の修正バージョンの中では,例えば不適切な者に対して参加を中止させると,それから再教育をさせるというような形の使用責任者の権限,責任規程が一応修正バージョンの中では入っておりますので,文科省の指摘には一応耐え得るんではないかと。ただ,私としては先ほど来から気になっている三者の関係ということを明確にするために統一的なルールとして,この部分,使用責任者の権限規程,責任規程についても規則化することが望ましいというふうに考えております。
H : できれば規則の中に入れていただいた方がいいのではないかという私の思いと,加えて申請者A先生の指導方針は,研究の専門的な部分と倫理的な部分というのが,方針ということで混然一体と書かれている部分がありまして,その研究指導ということで言うと,例えば2ページ目の下の取り組みのところで,定期的な報告会やノートによって確認するという書き方にとどまっているわけです。その後のことは全部倫理的なことですので,そのあたりをこちらの方針の中で書くのであればそれを整理するなり,あるいは規則の中で明示するなりということが必要ではないかと思いましたが,いかがでしょうか。
A : 今の御意見の中の取り扱いのルールですよね,この取扱規則に書くということはどういうことをおっしゃったんですか。
H : この取り扱いの使用規則が担当者から始まっているということ自体も分かりにくいのではないか,普通はその責任者というところから入るのではないでしょうか。しかも文科省のチェック表でも指摘されていることですので,どこかで明記されている必要があるでしょうし,ルール化するのであれば,そこに入れるのが適切ではないかと思ったということです。
E : これまでの議論は大変有意義なものと思うんですが,細かい点でちょっと確認したいんですが,使用責任者の役割が明確でないという指摘は確かにそうですね。
 これ先ほどF先生がおっしゃったとこなんですが,不適切な使用者に対しては実験を中止させるとか,こういうのも役割なんですが,使用責任者が何かあったときにどう責任をとるのかという,使用責任者自体へのペナルティーのようなものもどこかに何か入れる必要が,規則をつくる場合に必要だと思うんですね。
 もう一点ですが,ここで言う使用機関の長というのは,そもそも何を誰を指しているのか,ここで言えば医歯薬学総合研究科長なのか……。
最近,ゲノム指針などでは,個人情報保護法ができたことを受けて,「法人の長」だとかいろいろ変わってきてるんですね。これをはっきりさせておく必要がある。恐らくここで「研究科長」でいいのであればそれでもいいんですけど,そうだとすると研究科規則という形でこのES指針のようなものをつくるべきであろうと思いますね。
A : たしかこれはどの段階を使用機関とするのか,つまり使用機関が研究科ということであれば,これは研究科長が長ですし,それから使用機関が大学ということであれば学長ということになると思うんですけど,最初のときにそれを確認したら,たしか研究科長でよろしいということは,たしかありましたよね,事務担当さん。
E : 研究機関の長というのは,以前は研究科長等を指してたんですが,ゲノム指針では個人情報保護法施行後,「法人の長」と読み替えていますね。
F : 今E先生が御指摘の点は,恐らく個人情報保護法とのかかわりだと思います。あれは個人情報を考える場合に,事業所単位でなく事業者単位であるという考え方のもとで,結局個人情報に限ってはそのような法人の長という理解になるんではないかと。
 ですから,このES細胞については機関の長を研究科長とみなすことについて,特に法的な問題はないんではないかと,個人情報保護とのかかわりは余り気にされなくてもよろしいんではないかというふうに思います。
A : 分かりました。そういうことで,長に関しては今のところ特にその点は指摘を受けておりませんし,先ほどのチェック表でも使用機関は研究科ということになっておりますので,研究科ということで使用機関の長は研究科長ということで進めたいと思います。
 それでは,そのほかに御意見ございますか。今のところは,ちょうど使用機関の長の問題も含めての議論になりまして,結局この使用規則というものを大幅に修正,加筆をして,これを研究機関の定めにしようと,その中に機関の長の役割も入れるし,倫理委員会の役割も入れるし,それから使用者,三者の関係も入れるということでやりましょうということですね。そうしますと,当然この使用規則そのものはどこが原案を練るのかということになるわけですけれど,これは当然使用責任者が練るということにはなりませんので,本来だと研究科長が考えてプロポーズをするという形でしょうけれども,その下書きは私も含めてちょっとの委員会で協力をして,下書きをして研究科長に承諾いただいて,最終的には研究科で公式にはアプルーブするということになると思いますけれど,それでよろしいでしょうか。
D : このES細胞の倫理審査委員会の規定みたいなものがあったと思うんですけども,それに今のような役割というのは決められていなかったんでしょうか。
A : 正確には覚えてないんですけど,要するにこの委員会はES細胞の使用に関して審議して,研究科長に答申するというようなことだけで,あとはかなり何ていいますか,テクニカルなこと,つまり委員をどういうふうに選ぶかとか,何割以上の賛同を得れば認められるとか,そういうことが多かったように思いますけど。
D : 申請されている書類をもう一度最終バージョンと今回メールで来たものともう一回見直ししていたんですが,この申請書類の中では,京都大学の資料でいけば31ページぐらいからになるんでしょうかね,第何条からずっと始まっている分があるんですけども,それを根拠にお話は進んできているんじゃないかなと思う部分があるんですね。このようなものが恐らく必要となるんじゃないなと思うんです。この中には,もちろん使用責任者とか機関の長の責任とかかがいろいろ書かれているんですけども。
G : これは京都大学がES細胞を作るためにこういう規定をまず作ったのでしょう。だから,今度ES細胞を利用していく場合は,京大の規程を参考にしながらこの申請者A先生の文章の中に入れてもらえば,私はいいんではないかと思います。こういう大きな規則をこの倫理委員会で作るというのはオーバーワークで,私はやめさせていただきたいなあ。
D : まさにこれを根拠にされているわけですから,それをそのまま具体に使わせてもらえばいいと思ったんですね。
G : それをこの中に入れさせていただければいいと,思いますが。
D : ただ,ちょっともう一度見直しているときに気がついたんですけども,何か重複しているページが,ページの番号は合ってるんですけども,中身が重複してるとこがあると思うんですね。何条というのが入れかわっていたりとか,済みません,古い方で今僕見ているんです,ごめんなさい。新しい方で言いますと,例えば34ページぐらいじゃないかと思うんですけども,ダブっていますよね。第26条というのが2回出てきたりとかしているんで,34ページと37ページが一緒じゃないかなと思うんですね。
A : たしか,こういう指摘をして修正されなかったんですか。
D : たしか前も御指摘したことがあるんですが。
A : そうそうそう。
E : ああ,本当ですね。
A : 本当ですね。
E : これは一度出したんですよね,またこれを作り直すんですね。
A : これ事務担当さんの方でコンヒューズしてるということない?
E : これは何かメッシーですね。それはいいんだけども。
事務担当: コピー・ペーストで全部やってる作業ですから。
D : 済みません,この文科省から来ている分はまとめる部分のCにありましたけども,もう6月22日には現在提出されている資料を各委員に送付予定となっていますから,このままのがもう行っているんじゃないでしょうか。今日27日ですよね。ですので……。
A : この委員会で議事録にもちゃんと残ってて,重複してるからこういうとこをちゃんと直しなさいと言ったはずなんですけど,そういう議論ありますよね,これはやってないということなんですかね,これは。これは文科省に送ったやつですか。
事務担当: です。
A : 非常にまずい。
D : 文科省に渡っているんですか,向こうに。
事務担当: いってます。
A : 非常にまずいです。
事務担当: 資料の修正というのは可能ではあるんですけれども,ただ……。
A : 大体ちょっとチェックが甘いですね。そういう意味からいうと,我々も。でも一応これは倫理審査委員会としてはチェックをして指摘してあるんだから,そういうとこをちゃんとやってもらわないと困ります。使用者の申請の文章ひとつにしてもミスプリやタイプエラーが山ほどあるような文章を平気で出してくるというのは,やっぱりちょっと問題ですね,これは。それはそれでちょっと指摘をして注意していただきましょう。
 ちょっと話が戻りまして,使用機関の長に関しましてそれでよろしいでしょうか。どの程度詳しくするかということは,また研究科長とも相談をしながらやりたいと思いますけれども,よろしいですか。
 それで,使用機関の長の問題はそこでクリアをするということで,あとは申請者A先生の文章に関し,使用責任者の問題に関しましては,今日出た御意見をお伝えして,新しいバージョンをつくっていただくということにしたいと思います。
 それで,実際には文科省にいろんな追加の資料を送りたいんですけれど,日程がかなり限られておりまして,多分もう一度この委員会を開いてそれまでにチェックをするということは時間的に難しいんじゃないかと思うんですね。それで,申請者A先生の修正版に関しましては,修正版ができ次第,皆さんのところにお送りをして,もしも非常に重大な問題があれば別ですけれども,なければ持ち回りというんですか,そういうことでやってはと思うんですけど,いかがですかね。よろしいですか,それで。
C : タイムスケジュールはどのようになりますか。例えば規則を作って,そこに使用機関の長の役割などを明記すると,この申請者A先生の文章も,例えば3ページのセカンドパラグラフなどは書きやすくなると思いますが,タイムスケジュールとしては間に合うのでしょうか。
A : タイムスケジュールは,今日の資料の2ページ目に,「専門委員会開催にかかわるCの具体的スケジュール」と,こう書いてあります。それで,6月22日が現在提出されている資料を各委員に送付の予定ということですので,これはもう送られているということですね。29日に2回目の資料を発送,変更申請等にかかわる書類をお送りして,7月15日に専門委員会ということになっております。その間に追加の資料があれば配付していただくことも可能ですし,それから当日委員にお配りするということも大丈夫というふうに言われております。
 ただし,先ほどちょっとお話に出ましたけれども,研究科で正式な使用規則を定めるといたしますと,各教授会を通る必要があって,正式にはそれはもう間に合わないと思います。したがって,これこれこういう規則を定めますということを,機関の長にその方針を確認していただいて,それで機関の長の責任で現在のところはこういうふうにするということで出していただくしかないんじゃないか,その後でアプルーブをしていただくという,そういう方針しかないと思うんですけどね。よろしいでしょうか。
 それでは,以上の2点はこういうことにさせていただいて,3番目の問題ですね。この使用計画がヒトのES細胞を本当に使う必要性があるのか,倫理的な側面,非常に貴重な材料ですから,どうしてもそれを使わなければならないのかというところの議論がやや不十分ではないかという御指摘がありました。
 チェックリストからいいますと,ここに相当するのかな,チェックリストのところには余り出てないんですかね,第33条ですね,△なんです。
 それで,私がお話を伺って私なりに理解したところでは,先ほどもちょっと申し上げましたけれども,ES細胞を使ってより効率よく肝臓にするにはどうかということはかなりここでも議論をして,科学的妥当性があるのか成功の見込みはあるのかということをいろいろ議論をいたしましたけれども,ちょっと足りなかったかなと思ったのは,本当にES細胞を使わなければほかに代替で使えるような細胞のソースはないのかという,その検討が少し不十分なのではないかというふうに理解したんですけどね。そのことについて,私自身がちょっと反省してますのは,私たちもそういうたぐいの仕事も少ししてますもので,開発の必要性,特にバイオ人工肝の細胞源というあたりのことが,比較的理解がしやすかったので,少し軽く飛んでしまったかなという印象なんです。そういう意味からいいますと,むしろ実際にそういう方向での研究をされてない方が本当に納得できるのかどうかということあたりから意見をいただければと思うんですけれど。もし不十分な点があれば追加のチェックをして,実際に申請者B先生も待機していただいておりますので,必要があったらお呼びすることができますが,何か御意見ございますか。
F : 恐らく使用計画書の方には,ある程度,なぜヒトES細胞でなければならないかということは書いてあるとは思うんですけれども,文科省の方で不十分だというんであれば,要するにもう少し強調する必要性があるところがあるのかなというような感じを受けまして,例えば計画書の2ページの(2)のところに「バイオ人工肝臓の細胞源」というところで,豚だとこういう問題があるとかというふうに,他の細胞だとこういう問題があるということはきちんと指摘がされてあるわけですけれども,次に出てくる2)の「ヒトES細胞を研究対象とする理由」というところは,すべていわゆる積極的理由のみが記載されていて,ちょっと重複の危険はありますけれども,要するにヒトES細胞じゃなく,他の細胞をやったときにどうなのかという,いわゆる消極的理由といいますか,そういう側面からも2)の方を構成すれば,もう少し思いが伝わるんではないかと。つまり,2)の方は,ES細胞はこれだけメリットがありますという書き方ばかりなんですね。そうじゃない場合のデメリットというのは,確かにその前の部分には書いてあるんですけれども,ここのところにも書いた方がいいんではないかと思います。他の細胞だとこういうデメリットがあるからというようなことを,やや重複記載ですけれども,強く印象づけるというほうが良いと思います。
A : ありがとうございました。私の理解は,これ倫理委員会に対する意見だということです。つまり,研究計画書の記述が不十分というよりも,この委員会がそこのところをちゃんと意識して,委員の皆さんが本当に納得したんですかということを聞いているのではないかと思うんですよ。ただ,そんなに軽く納得しちゃっていいんですかと。私が先ほどこういう研究に直接携わってない委員の方の御意見云々と申し上げたのは,それ程なじみがない目で直接見たときに本当に納得していただいたんですかという,私はこういうところを聞いてもこの点はどうも納得できないというようなことがあればいいかなと思って,そういうお伺い方をしてるんですけど。
F : それは考え違いをしておりました。
A : G先生,何か。
G : ここはやはりちょっとF先生が言われたですけども,2)の書き方がちょっと単純過ぎるような思いはしましたね。マウスでいいようにいっているとか何とかかんとかだけで,なぜヒトのES細胞を使わないといけないかを少し説明する必要があると思います。
A : 申請者B先生をお呼びすることはできるんですけど,お呼びして少し質疑をいたしますか。
G : 皆さんに質問していただければいいんじゃないですか。
A : やっぱりせっかく待機していただいてるのにちょっと来ていただきましょうか。皆さん自由に納得できるまで質問をしていただければと思いますけども,そうしましょうか。
D : その前にちょっと済みません。12月17日に開催した会議では,様式5―3という書類で,「倫理審査委員会における審査過程及び結果概要」というものをまとめたと思うんですね。そのときには,相当今の議題というのは出てきて,文面を直した形跡があるんですよ。だから,決してこの審査委員会がその部分を軽視しているわけじゃないし,別に検討していないわけでもなくて,要は委員会として報告する書類にその部分がうまく出ていないんじゃないかなと私は思うんですけども,G先生がおっしゃられた部分も何度もディスカッションになっていると思いますし。
G : だったらそれがあるというのを文部科学省に出せばいいんじゃないですか。
D : と,私は思うんですけども。
G : ここの回答として,ディスカッションを十分したという,もちろん送ってるんでしょう,それを。
D : 様式5―3は送られているんですね。
G : 送ってるんでしょう。
A : 送ってますよね。
G : だから,そこに十分ディスカッションしてるということを示して反論すればいいんじゃないんですか。
A : この委員会がそういう反論して,向こうが納得してくれるかどうか。もちろん文科省の担当の方もおっしゃってたんですけど,これはあくまで事務サイドで見た意見を参考のために述べてるだけですよと。実際の審議は専門委員会がちゃんとやりますので,専門委員会の委員が同じ意見になるかどうかは全く分かりませんということだと私は理解してますし,文科省の担当者が指摘されたところは,専門委員会の委員にとってみたら,それはもういいんじゃないのということになるかもしれませんし,あるいは文科省の担当者がオーケーと言っても専門委員会の目から見ればまた違うという御意見もあるでしょうと思うんですけどね。ただ,私たちとしては,最大限対応できるところは一生懸命対応しましょうということでこの委員会をやっとるわけですけど。
G : それに何かコメントを出すことはできるんじゃないんですか,この文科省からのチェック表から,いま,先生がおっしゃられたような,既に倫理委員会で十分検討した資料があるとかというのは審査委員会の方々も分かると思いますけれど。
A : どうでしょうか,皆さん。ほかの委員の先生方,K先生はそのときいらっしゃらなかったからあれですけど。
F : 先ほど来からの先生方の議論を伺ってると,確かに私も記憶している範囲では,例えば,何でじゃあサルじゃだめなんだとか,いろんな議論をたしかやった記憶があるんですね。にもかかわらず,文科省の担当者からこういう注意が来るということは,結局,何ていいますかね,その様式5の3でしたっけ,私持ってきてないんですけれども,そこにもう少し具体的にその部分の議論の内容を載せる必要があるんだろうと思います。特に,恐らく私やHさんのような非医療人のそういう素朴な疑問に対しての的確な答えもあったというようなことが分かるように,もう少し具体的に報告書を作り直せば伝わるんではないかなというふうには思います。
A : どうですかね,かなり議論をしたんじゃないかという御意見で,要旨をまとめるところで少しバイアスがかかったというか,少し抜けちゃったのかもしれませんので,そのところをチェックすればいいんではないですかという御意見ですけど,それでよろしいですか。
G : そのコメントを出せばいいんじゃないですか。
H : 文科省の指摘は,「全般にES細胞という生命の萌芽たる受精卵を滅失して使うということに対する議論が少ない」というふうにここにもありますけれども,研究者の中では,当たり前かもしれないけれども,そのあたりの議論をしてほしいということですが,最初に抽象的な議論はしましたけれども,それが具体的なこの計画においても,それを乗り越えてでもやっぱりやらないといけないことですよねっていうことについてみんなが合意したかということが求められていると思います。
 それで,素人として念のためにもう一度こういうことでしたよね,ということを確認するとすれば,この研究というのは体内に入れるものではなく,体外の人工肝臓ですよね。なぜES細胞かというと,日本ではドナー肝は適合しなかったものは焼却するようになってるから使えないということと,ほかの肝細胞へ誘導できる可能性がある細胞については増殖能が乏しい,それから感染の問題がある。このことについては,丁寧に説明していただいた記憶があります。研究者の方からして,この3つ以外に,ES細胞でなければいけない理由がもしあれば挙げていただければと思うのと,それから移殖が不適合だった肝臓は焼却する規定になっているが,欧米ではそれが臨床応用されているということですが,これはなぜ日本では焼却することになってるかというのをもし御承知の方がいらっしゃったら教えていただければと思いました。
E : 今おっしゃった点を私が申し上げようと思ったんですが,なぜこの議論が足りないという指摘がされたのかというのは,ES細胞を使う必然性ですね,メリット等は当然書いてありますけども,「どうしても使わざるを得ない」というそこのところをもうちょっと詳しく説明してくれと。だから,この(2)のとこですね,2ページの,ここを読む限りで必然性が,申し上げにくいんですが,あるということはちょっと理解まだしにくい。例えば,今,Hさんがおっしゃった,臓器移植法では日本では焼却する規定になっていると。これはほかの目的に使う,あの法律を作るときにガチガチに固めて,何とか一部の人からでも脳死移殖を行いたいということで,ほかのとこを全部倫理面に配慮してあんな規定になってしまって,いずれ見直すと。しかし,それを見直したら,もう焼却しないで使っていいという規定にしたら,この研究は要らなくなるのか,という疑問が生まれてくるんですね。
 それから,その下にもいろいろ書いてありますけども,今後の進展は厳しい,ブタ肝とかですね。しかし,やってる人もほかにいらっしゃるんで,そちらをやる必要があるんじゃないかとか,それからその下のあたりの記述は,「今後かなりの時間を要する」と書いてありますけども,かなり時間を要して,それをちゃんとやられたらどうかとか,言葉の上からはいろいろ考えてしまうんですね。さらに,「慎重な姿勢で対処する」と,いろいろありますが,じゃあ慎重な姿勢でこちらをちゃんとやられて,それでもどうしてもだめならばES細胞を使えというふうに,おっしゃってるのかもしれないと思ったんですね。
A : 幾つか私が理解してる範囲でお答えできるところをまずお答えしたいと思います。
 1つは,先ほどおっしゃったドナー肝が使えないということと増殖に限界があるということと感染の危険性ということですけども,もう一つの壁,問題は,分化機能が不十分なことが多いんですね,細胞によっては。つまり成熟した肝臓から取った細胞を何とか増殖するようにして,それで中にはパーマネントに増やすことができるんですけれど,そうすると機能が落ちてしまうということがあります。それがもう一つの理由ですね。
 先ほどE先生がおっしゃったドナー肝が使えるようになれば問題は解決するのかというと,これはドナー肝はばらしてそのまま詰めますので,量的な制限が非常にあるわけですね。確かに臨床応用されてるんですけれども,それはごく一部にすぎません。つまり,先ほどの細胞の増殖という問題が解決されてないんですね,全然。だから,たとえ日本でドナー肝が使える時代になっても,恐らく量的な不足という問題は全く乗り越えることができないというのが私の理解なんですよ。それに対してES細胞のアドバンテージは,とにかく無限に近い増殖ができますので,大量に細胞を用意することが可能であるという点は大きなアドバンテージなんです。
 それから,それをうまく分化誘導したときに,どこまで機能が到達できるのかということは,これはやってみなくちゃ分からないということなんです。これもそのときに議論になったと思いますけれど,最終的にはES細胞でやったときに本当にうまくいくのかどうかという保障が100%あるわけじゃ全然ないと僕も理解しています。ただ,細胞のソースが違うと最終的な到達できる分化機能のレベルにもさまざまな差があって,ES細胞から分化誘導した細胞もかなりの機能を持ち得るので,ひょっとすると無理をして成熟した肝臓の細胞を増殖に持っていったものよりも機能がよくて使える可能性がある。もしそうだったら非常に大きなメリットになるだろうということで,その可能性を考慮すれば価値があるんではないかという判断をしたというふうに理解してるんですけど。
 そのほかにございますでしょうか。
H : 理想であるが,というのはちょっと違う・・・?
A : どこですかね。
H : (2)ですけど。
A : (2)の,それはつまりドナーが山ほどいれば理想であるということだと思います。今のところ,その瞬間の機能からいえば,何も増殖誘導もしないでそのままばらして詰めたら一番いいんです。
 K先生,急にごらんになってあれですけれども,ここに書かれてあることで大体ヒトES細胞,やっぱりこの状況では使うのも仕方がないかというふうに納得されますでしょうか。
K : 大体私としては理解できます。特に,(2)の最初に書いてあるヒトの細胞ですけれども,こういうものが劇症肝不全の場合に必要になったときに,果たしてそういう正常な人からの細胞がその時点で直ちに得られるかどうかというのがやはり問題で,そういうドナーの肝がどんどん提供されればそういうことも可能かと思いますが,しかしなかなかそれは特に日本では難しいだろうというふうに考えられますので,そういう正常なヒトの細胞を適切に保存しておければ,また話は変わってきますけれども,そういうところがあるかと思います。あとは大体納得できるところであると思われますけれども。
A : ありがとうございました。そのほかに御意見ございますか。
 はい,いかがですか。E先生,納得されましたか。
E : というか,書き方の問題が一つあると思うんですね。ここの2)のあたりからメリットがあるということはちゃんと書いてある。しかし,必然性,例えばES細胞をなぜ使わないといけないのか,どうしても使わざるを得ない,という形で箇条書きにするなり,さっきA先生がおっしゃったことで納得はかなりできたんですが,そのような書き方をされて,もう一度当日の資料にするというのはどうでしょうか。
A : まず確認ですけど,これは使用計画書そのものをモディファイすることもできるんでしたっけ。
事務担当: 修正があれば全委員にお配りしますということでしたから,計画書の中もここが修正になりましたということが分かるようにして出せば,受理して配付していただけると思います。
D :そうしたら,何をしてたんですかと言われそうなんですけども。
 ただ,Cのところをよく見てますと,「資料の席上配付は可能だが,あくまでも補足としてである。原則は,文科省を通せばよいのであろうとのニュアンス」とありますから,当日にやはり大きく変えるというのはまずいという雰囲気ですよね。文科省の事前チェックが必要ですよというような意味合いが相当強いと思うんですが。
A : 最初にちょっと申し上げましたけど,少なくとも私の理解は文科省の意見の主なところは,むしろこの委員会に向けられてたというふうに思うんです。それで,確かに振り返ってみて,僕はちょっと軽かったかなという思いもあるんですけれど,今補足で御意見もいただきましたし,それから議事録を丁寧に見れば,議事録と要約のところに重みにおいて多少齟齬があったのかもしれません。基本的に大事なことは,この委員会の委員の皆様方が納得してるかどうかなんです,それなりの理由でもって。そこが非常に大事で,そのことが確認できれば基本的にはこのセクションに関してはまあまあいいんではないかというふうに理解してるんですけど。それで納得いただけますかということを言ってるんですけどね,先ほどから。どうですかね。
 B先生,いかがですか。
B : 私も過去この件に関しては議論した記憶がありますし,それほどこの委員会で軽視したっていう意識はなかったんです。ですから,こういう指摘を受けて,これ以上もう少し議論をする必要があったのかしら,じゃあ何に関してなんだろうかって自問自答してるところです。
F : 私も全く同感で,委員会としての議論が不足してるんじゃないかと,もう一遍じゃあ深めて議論しろと言われても,今まで議論した以上に,じゃあ何を議論すればいいんだという,私としてはもう個人的レベルで納得ができるぐらい議論したんじゃないかというふうに私も思いますので,要はそれが伝わるような書類を書くという工夫の問題なのかなというふうには思います。
 そこで,1つの方法論としての提案なんですけど,例えば委員の中で非医療者から出た素朴な疑問というものですね,そういったものに対して医療者側から的確な回答をいただいてます。先ほどのA先生とHさんの議論もそうですけれども,的確なやりとりがあるわけですよね。そういった非医療人からの多くの疑問とそれに対するやりとりが委員会で行われていることも伝わるように文章的な工夫をすべきかと思います。
A : 分かりました。そうすると,今日の補足の御意見も含めて,もう一度あのときの議論の議事録を見返してみて,今F先生がおっしゃったような項目をピックアップしたときにどうなるかということをちょっとやってみましょうかね。
E : そのピックアップしたものを1枚か2枚の紙にまとめて、倫理委員会ではこのようにやりました,というのではどうですかね。
A : この件に関してはそのような対応をすることにいたします。それでよろしいですか。
 そうすると,今日3つの問題点があったんですが,第1の,まず「使用責任者の基本的な姿勢」に関しましては,今日の議論に基づいて申請者A先生に再度修正していただいて,その文章を委員の皆様方にお送りをいたしまして,それでオーケーならよろしいですし,もしだめならまた必要な加筆修正をしていただくということで。それを文科省の方にお送りするということで対応したいと思います。
 それから,2番目の「機関の責任者」に関しましては,これは1番目のことと多少リンクしてるわけですけれども,先ほどの使用規則を研究科単位に格上げをいたしまして,それにふさわしい内容にして原案を練ると。それは私と研究科長と相談をして原案を練りまして,時期的に教授会で承認していただくのは間に合いませんので,研究科長の責任において当面はそれを提出して,一番早い時期に教授会で承認をしていだたくと,それが2番目。
 それから,3番目の問題であります,ヒトES細胞を使うことについての委員会の議論に関しましては,本日の議論も踏まえて,これまでの議論をピックアップをして,確かにこういうことを議論いたしましたということを整理をして資料を作成するということで対応することに致しましょう。改めて確認したいんですけど,委員の皆様方は,これはもう必然性があるということをお認めいただいたと理解していいんですよね?
 それでは皆さんから確認を頂きました。先ほどG先生にも確認していただきましたので,I先生には改めて確認をいたしまして,委員の皆さんが確かにちゃんと問題点を意識して納得いたしましたということも含めてそういう対応をしたいと思います。よろしいでしょうか。はい,どうぞ。
F : どうも何かスケジュールが結構過密なようで,多分今の御説明ですと正式な規則を専門委員会に出すというのは恐らく無理だろうと思いますけれども,その際に規則を制定する予定があって,なおかつ具体的なビジョンといいますか,そういうものが原案の段階のものはあるんだ,ということは専門委員会で示さないと,作るつもりですとか検討するつもりですじゃまずいですので。
A : もちろん,そうです。先ほど申し上げましたけど,そのつもりでその原案に対して研究科長が責任を持つという形で提出したいと思います。
F : 恐らく規則を本当に条文化しようと思ったら,A先生もかなりの労力が必要なんではないかと思いますので,例えば,じゃあ専門委員会でどういう規則にするつもりですかというようなことを尋ねられたときに,今×印のついてるところだけは,少なくとも条文のスタイルにしておいて,こうした指摘を受けた部分についてこうした条項を盛り込んだ規則を作成する予定ですという,つまり×印に対応する条項だけは用意しておいた方が,こういう感じですじゃなくて,条文の形で用意しといた方がいいんじゃないかと思いますという感想です。
A : 私自身が考えてますのは,条文の形の原案を作ろうということです。あまりこういう規則を作ったことがないのでどのぐらいのスピードで進むか分かりませんけれど,そんなに大変なことでもないかなあと。
F : いや,結構たいへんかと・・・。
A : そうですか,それは使用規則も非常にディテールにわたって書く場合もあるでしょうけど,今回はもうちょっとラフでもいいかなと実は思ってるんですけど,どうでしょうかね。私は大体F先生のように厳密に物を考えるタイプじゃございませんので,適当な案を一応考えてみようと思っているだけで,もしどうしてもだめでしたら,F先生がおっしゃるように,これこれこういう姿勢で案を作りますということで,何とかそういうことになって妥協してしまうかもしれません。いずれにしても,できるだけ早急にこれも皆様にお送りをいたしまして,承認を受けてから文科省の方に発送したいというふうに思います。
 以上が今日の議題ですけれども,そのほかに何か御意見ございますでしょうか,よろしいですか。
 それでは,最後に次回の開催日ということですけれども,文科省の最終的に専門委員会からどのような意見をいただけるか分かりません。それで,その文科省の専門委員会の結論を待ってから,待たないともちろん議題も決まりませんので,待ってから必要に応じて,また皆さんに御相談したいと思います,開催日に関しまして,それでよろしいでしょうか。
事務担当: 予定だけ入れといていただいて,結論が出ないようなら,また日程照会させていただくとか。
A : 例えば具体的なクレームがついたら,当然開催する必要がありますよね。承認されても,もし承認されたらどうなるんですかね。
事務担当: はっきり聞いたわけじゃないんですが,15日に委員長と責任者が退席して,その間審議しますよね。その後で結論を出していただけるんじゃないかと思ってるんです。もちろん,そこで出ないような何かが問題点があれば無理だとは思うんですけれども。
A : 例えば,もしもそのときに幸いにして承認されたとするでしょう。そうすると文部科学大臣が最終的に,はい,オーケーと言って命令書というか承認書を出すわけですよね。それが来るまでに時間がかかるじゃないですか。
事務担当: それはタイムラグはあると思います。
A : そうすると,その前に委員会を開く理由がありますか。
事務担当: ないですね。
A : つまり,この委員会はその計画が妥当であるか問題点があるかどうかを審議して,研究科長に答申をするという委員会で答申をしたわけですよね。そうすると,その研究が認められて研究科長が,はい,どうぞ,じゃあやりなさいといったときに委員会をやる必要があるかなあ。もう少し具体的なことをいろいろ決めた方がいいんですかね。
事務担当: じゃあ,15日の結論を待ってということで,また日程照会させていただいて……。
A : そうそう,そうしましょう。
 では,そういうことですので,とにかく15日の結論待ちで,私は大体悲観論者だから,すんなり合格できるかどうか分からないと思ってるんですけど,状況次第でまた御連絡を差し上げますので,どうぞよろしくお願いします。
 では,これで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。