岡山大学大学院医歯薬学総合研究科ヒトES細胞倫理審査委員会 第13回委員会議事録
日時:平成18年3月24日 午後1時〜2時45分
場所:歯学部第一会議室(歯学部棟2階)
出席者:A,B,C,D,F,G,H,申請者A,申請者B
欠席者:E,I,K
資料:ヒトES細胞研究実施報告書
使用計画の一部変更(研究者の追加)について
 
A: それでは,皆様お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。ただいまから平成17年度の第4回,通算では13回目になりますけれども,ヒトES細胞倫理審査委員会を開催したいと思います。
 本日出席予定の中でF先生が10分ぐらい遅れるそうです。それで,今日は残念ながらE先生とI先生,K先生が欠席ですので,F先生が来られないと正式には成立しないことになっておりますけれども,時間もございますので,決定事項ではなくて話合いの方を進めたいと思いますけど,よろしいでしょうか。
 では,F先生が来られてから正式に委員会として成立するということで,少し予備的なお話し合いをしたいと思います。皆様にお配りした開催の御案内の中に,今日の議題としては主なものが1,2とありまして,一つは既に皆様の御協力のおかげで,昨年の11月に実際にヒトES細胞が岡山大学に搬入されまして研究が開始されました。全体としては順調に進行しているようですけれども,その第1回目の実施報告が出ましたので,それについて検討するというのが1番目の課題。それから,2番目はその研究に新たに研究者を追加したいという希望が出ておりますので,それについて審議をすると,この2つの議題がございます。
 ただし,本日はその議題に入る前に,皆様に今お配りいたしました1枚の資料がございますけれども,これは平成18年2月7日に文科省の方から連絡がありまして,最近のES細胞の倫理審査について説明をしたいので,来てほしいという要望がありまして,私とそれから使用責任者の申請者A先生,それから事務担当さんの3人で伺いました。そこで,そこにありますように,1時間余りいろんな説明を受けまして質疑をいたしまして,その内容の概要がここに紹介してあります。まず,それを紹介した上で質疑に入りたいと思います。
 お読みいただければ分かるんですけれども,最初石井室長から最近の動向についての説明がございました。その中で特に強調されたことは,申請書の中に,最近いろんな大学から次から次へと申請書が出ているらしいんですけれども,その中で気付くことは,指針の条文に計画書のここが対応しているという,そういうチェックが不十分な例が非常に多いと。そこで,文科省としては対照表をつくってチェックしているということと,それからQ&Aをつくってその中身を広報しているというお話がございました。そこで,私が質問いたしまして,我々は指針の条文に照らして○×をするのではだめだという議論が専門委員会の中であったというふうに理解しておりまして,つまりそれよりも一歩踏み込んできちっとした議論をしてもらいたいという希望だったのではないかということを確認したところ,それはそれでたしかにそのとおりなので,岡山大学の取り組み自身はちゃんと評価しているけれども,その上に立ってやはり指針の条文のどこがどこに対応しているのかということをやってほしいという,そういうことであるということでありました。
 それから,さっきも言いましたけれども,文科省の事務レベルでチェック表をつくって,どの項目に対応していて,問題があるとすればこういうところに問題があるという下調べをして,それを専門委員会に上げているという説明がありました。
 それから,Q&Aはホームページにも載せているそうでして,その中身については随時充実させていきたいということがありました。したがって,それをよく見てもらいたいということを言われました。
 それから,いろんな質疑を行ったわけですけれども,その中で出てきた要点をその下に書いてあります。そこに1から6まで書いてありますけれども,一つはまずサルES細胞での予備研究を義務化するかどうかということについてもいろんな意見があったそうで,現在もあるそうですけれども,大勢はどちらかといえばマウスのES細胞の実績があれば,そのままヒトES細胞に移行してもいいのではないかという考えであるという説明がありました。現実に本学の申請者A教授の計画もマウスのES細胞から直接ヒトのES細胞に行っているということであります。
 それから2番目は,研究参加資格としては以前よりは多少柔軟に考える方向にあるという説明がありました。これは私たちもそういう感じを受けていますけれども,要するに,倫理的な研修を受けてマウスES細胞での技術的実績があれば,ヒトES細胞を使う研究に参画させてよろしいと。参画させるに当たって最初にヒトES細胞を使って研修を行えばいいという,そういう考え方のようであります。この中には大学院生でも構わないし,留学生でも構わないと。したがって,ここは我々の審議の過程でも出てきましたけれども,大学院生は特にパブリッシュされた業績があることはほとんど期待できないんだけれども,それは構わないと。つまり客観的な証拠によってマウスのES細胞を使っての技術が十分にあれば,特に印刷された業績がなくてもよいと,そのような認識であるということでありました。
 それから,3番目に書いてありますのは,留学生を研究に参画させることには問題はないと。ただし,言うまでもなく倫理的,技術的に国内研究者と同等の条件が求められるということであります。
 それから,4番目としては,研究が始まった後のモニタリング,まさに今私たちがやっているところですけれども,そこで注意すべきことは,計画を逸脱せずに予定どおりの範囲でやっているかどうか,指針を遵守しているかどうか,研究のプロセスで自然に内容が変更になってないかどうか,そういうことを確認してほしいということでありました。それに関連して報告書を見て書類審査をするだけではなくて,状況によってはES細胞の管理状態とか研究現場の視察に行くことも考えられるであろうと。これは文科省として強制をするとかということではないんですけれども,そういうことも考えられるでしょうねという示唆がございました。
 それから,5番目に今話題の韓国で起こった事例についてですけれども,この韓国で起こった事例については,研究内容の捏造だけではなくて,倫理的な管理体制の問題も様々に指摘されております。ただし,この点に関しましては日本では随分違った取り組みをしてきておりまして,そのことは世の中もマスメディアも十分理解をしているのではないかと。したがって,このことによって今のあるいは近い将来の日本の方針が大きく変わるということはないのではないかという認識でありました。私たちも実際このところのマスコミの動向を見ましても,その点に関しては,急に反応が変わったということはないという感じを受けております。そこで強調されましたことは,私たち自身も認識していることですけれども,やはりそういう信頼を築いてこれたのは,公開性ですね。審査過程の議事録は専門委員会もそうですし,私たちのこの委員会もそうですけれども,議事録の詳細に至るまで公開をして,皆さんの御理解を得るよう努めているということがありますので,今後ともそういう方向でやりたいというお話でありました。
 それから,最後に,現在は機関内倫理審査委員会と,文科省の専門委員会という二段階審査の体制をとっておりますけれども,現実にこういうプロセスが次第に根づいていけば,将来は必ずしもそういう二段階審査ではなくて,機関内倫理審査委員会に決定を移譲するということも可能性としてはあるであろうと。そういう方向に向かって徐々に進んでいっている状況にあるという御説明がございました。
 以上が打合せの概要でありまして,今後の審査を行う上で御参考になると思ってご報告いたしました。もし何か御質問がありましたら,どうぞお願いします。
G: これは,ES細胞を使っているすべての大学が呼ばれたわけですか。それとも,別個ずつ呼ばれたわけですか。
A: お答えいたします。実際に呼ばれたのは個別です。ここで話合いをしたのは私たちだけでした。ただし,岡山大学が特に問題があって呼ばれたということではないようでして,一応,今,現実に計画を持って行っているところには,順次こういう説明をしていると。時には文科省の方から大学に出向いていくこともあるし,状況によっては文科省に来ていただくこともあると,そういう説明だったと思います。そうですよね。
G: 文科省がこういう「ゼネラル」なことを説明するのを,大学を個々に呼んでやるというのは能率が悪いね。一遍にまとめてやればいいと思うんだけど。
A: 確かにそうですね。ただ,逆にこういう会だから,それぞれの状況に応じて割合親密にお話ができるということもありますので。
G: うん,それはありますけどね。
A:かえって文科省の方が大変でしょうけれども,こちらの側としてはいずれにしても行くわけで,個別に話をしていただいた方がかえってよかったかなという面もございますけど。
 ほかにございますでしょうか。どうぞ。
D: 指針の26条から34条の部分というのは,具体的には主にどういう内容だったんでしょうか。
A: 今,手元にその指針がないんですけど,指針というのは,基本的な考え方から始まって,それからかなりの部分が樹立機関についての記述で占められています。だから,これは使用機関についての規定を定めてある部分の条文だと思いますけれども。
 ほかにございますでしょうか。
 今日の審議で特に関係がありますのが,4番の研究開始後,どのようにモニタリングするかということと,それから,その上ですね。2と3の研究に参画する資格なので,そういうところを特に注意してお考えいただければと思います。よろしいでしょうか。
 では,ないようでしたら,これが打合せの概要報告でございます。
 それでは,次に実際の議事に入りたいと思うんですけども,1番目の議題はモニタリングのお話でございまして,既に皆様にお送りしてありますよね,実績報告につきましては。これが申請者A先生のところから出てきた報告書でございます。今日は報告書だけではなくて,現実にどういうように行われているかということを詳細に伺うために,申請者A教授とそれから申請者B先生に1時半に来ていただくようにお願いをしてあります。そこで簡単なプレゼンテーションをしていただいて,必要によっては研究室の入退室の記録とか,そういうものも皆様の御意見によっては見せていただくということも可能ですので。今は1時15分過ぎですから,あと15分ぐらいのうちにお二人が見えますので,それまでにちょっと予備的な議論をしておきたいと思います。
 これをご覧いただいて,割合簡単な記述になっておりまして,主なことがどちらかと言えばサイエンティックな進展の部分が中心になっておりますけれども,この研究報告書について,委員の皆様方からまずあらかじめ予備的な御意見を伺えればと思います。ございませんでしょうか。
D: 科学的な内容について書いてあるということだったんですけど,さっとこれを最初にいただいたときに読んだとき,あれっと思ったんですが。何て言いましょう。科学的な内容を書いてあるにはあるんでしょうけども,いざ読んでみると,本当に専門の人が書いたのかなという表現があったりするんですよ。「Gibco RBL」とBRLがRBLとなってたりとか。それから,英語と片仮名が混在しています。Corsterが英語であった後コーニングが片仮名であってというような書き方って余りされないと思うんですよね。どなたかが代筆されたのかなと最初は思ったぐらいなので,そうした部分,どんなでしょうか。これはたしか公開されるはずですよね。何かあったときには,機関として恥ずかしいなと思ったんですけど。
A: そのとおりですよね。これは後で質問してください,当事者に。多分僕の予想では,これは誰かが代筆したのではなくて,実際に書いた人の不注意だと思います。
D: そうですか。
A: では,その点は後で確認することにいたしましょう。
 ほかにございますでしょうか。
 それから,今,F先生が来られましたので,この委員会は正式に成立をいたしました。よろしくお願いします。
F: 申しわけありません。
D: もう1点よろしいでしょうか。最後にホームページ公開内容とあって,研究の概略を公開したということも記載されているんですけども。これを読んだところでまた思い出したんですが,新聞社の方にも記事として出ていましたよね。そうした内容はここには逆に書かなくてもいいんでしょうか。公開したということですから,いい意味でホームページで勝手に上げただけではなくて,より積極的に公開されていますというような表現もよろしいのではないかと思うんですが。
A : ただいまの御意見いかがでしょうか。たしかに新聞に出ていたようですので,このホームページ上にもここの新聞の記事も見てくださいとか,新聞に報道されましたということで付け加えたらどうかという御意見ですけど。よろしいですか。
F: 新聞記事を見てくださいというのも一つの手ですけど,いっそ新聞記事をPDFでホームページにそのまま載っけられてはどうでしょうか。
A: 分かりました。それは何らかの形で,具体的にはホームページ上にどういう形で載せるかということは検討するといたしまして,そういう情報も加えたらいいのではないかということを,この委員会の意見として加えるということにいたしましょう。
H: 恐らく新聞記事をそのままPDFなりデータにしてホームページに掲載するというのは,著作権法上の問題がありますので,そこはちょっと配慮されるか,若しくは,許諾を得れば掲載の可能性はありますので,手続を踏まれた方がいいと思います。
F: もちろんそれが前提ですね。
H: でも,オーケーされる可能性は高いと思います。
F: そうですね。
A: これは第1回目の報告書ですので,今後こういう形でものが出てくるということになります。この中には研究の実施状況,管理に関して,1番のところで5行にわたって書かれてありますけども,これでよしとするか,あるいは入退室記録とか,そういうものをもうちょっと何らかの形で具体的にこの委員会には出してもらうということにするのか,そのあたりはいかがでしょうか。
 つまり今回は実際に後でお二人に来ていただいて内容の説明も受けるわけですけれど,毎回必ずしもその必要はなくて,報告書で済ますということになりますので,そういうときにどういう形での報告書を出してもらえれば,今の進行状況を私たちが把握できると判断するのかということだと思うんですけどね。
 G先生,いかがですか。
G: ちょっと,ほかのことを考えていて,前を聞いていなかった。申し訳ないけれどもう一回その最初のところを聞かせてください。
A: つまりこれが第1回の報告書ですね。それで,実際に出てきたのはこれだけですから,委員会としてはこういう形式の報告書でよしとするか,あるいは,倫理審査委員会としては研究内容の細かい状況も大事ですけども,それに加えて適切な取扱いがなされているか,管理がなされているのか,記録は約束されたとおりつけられているのかということのモニタリングが必要ではないかと。そのときに,ここにあるような特に問題はなかったという記述でそれでよしとするか,あるいは,もう少し具体的な資料の提出を求めるのかということですけど。
G: 私はこのぐらいでいいかなと思います。どうでしょうかね。私は今これを読ませていただいて,いろいろ不適切なところはあるけれども,形式的にはこれでいいのではないかなとは思います。
A: 分かりました。H先生,いかがですか。
H: 概要としてはこれでいいのではないかと思います。それで,ここに掲載するかどうかは別として,先生が御提案になったように,記録を拝見するというのは,確認の意味では有効かなと思うことが一つと。それから,私のような素人から見ると,目指す研究成果に向けての一定の成果が得られたのであろうということは何とか分かるわけですが,例えば,アルブミン発現が増強していたというのは,もともとの計画の中に書いてあったので,そっちに向かっているんだろうなという印象はあるんですけれども,例えば,このリドカインを代謝する能力を有していることが確認されたというのは,どういう意味があるのかとか,そのあたりが素人にはちょっと分かりにくいので,ホームページに公開されるところということでもいいかと思うんですが,一般の人向けの説明が,この段階まで来ていますよとか,プラスですとかマイナスですとか,何かそういうことがあってもいいのかなとは思いました。
A: たしかにそうですね。ただ,ホームページのところにたしかもうちょっと解説的な,フレーズとか,それがあれば欲しいかなという気はしますね。一応薬物代謝機能を有するって書いてありますので,このリドカインの代謝というのを薬物代謝を見ているんだということですけれど。やはり,体内に薬が入ったときに,薬物代謝の一番主な場が肝臓であるとか,そういう付随的な記述があれば一般にはもう少し分かりやすいかなと思いますけどね。そういう工夫をこれからできるだけしていただくようにいたしましょう。
H: ではこれは,より肝細胞に近いということですか。
A: そういうことです。このリドカインの代謝が行えるというのは,全身すべての細胞を調べられたわけではないでしょうけれども,その主な場が肝臓であるということがコンセンサスでして,だから,そういう能力があるということは,肝機能の一部を反映しているということです。
F: この実施報告書は文部科学省の方にも提出をされるわけですよね。
事務担当: 委員会報告は委員会から研究科長に提出はされます。
F: では,逐一文科省には,これは報告書を上げるということではないんですか。
事務担当: ないです。
F: いつ上げるんでしょうか。
事務担当: いや,上げることにはなってないです。
F: そうなの。なるほど。
A: 研究科長にこの報告書にこの委員会の評価といいますか,意見をつけて研究科長に上げるということですね。
F: そうしますと,先ほどの委員長の御指摘,やはりその部分が必要かなと思いまして。もう少し具体的に申し上げますと,要するに規則とか指針とかあるわけですから,それを遵守しているということが分かるようなコンプライアンス,服薬の方ではなくて,法令等の遵守の方のコンプライアンスですけれども,それをちゃんと行っているということが報告書からも伺えるようにしておいた方がいいのではないかと。倫理委員会としてはやっぱりその点に注目したいという感じがいたします。
A: ありがとうございます。ほかの先生方,どうでしょうかね。
D: 今,F先生の言われたコンプライアンスの部分ですけども,4の1)のところに,5行ある部分ですけど,そこのところをよくよく読んでみると7項目ぐらいが小さく分け合える形になると思うんですね。これが指針とか,私たちが決めた決まりに沿っているというのを表現されている部分と思うんですね。そうしますと,ここのところをもう全部書き出しておいて,チェック項目だけでもするようにしていただくか,毎回同じことが出てくるのではないかなと思うんです,ここのところがですね。そうすると,それぞれが守られていますかというのを御自身でチェックされる,そうしたものにしてもいいのではないかと思いました。そこは一番気になる部分です。
 それと,もう2つあります,済みませんが。今回初めてですから,3番目の前回までの報告の概要というのは,余りないわけですけども。初回提出ですから,今回は初回提出というふうに記載されないと空欄のままで出された形になりますので,ちょっとまずいのではないかと思います。今後はここの部分がある程度の場所を占めるようになってくるんだと思います。
 それから,もしこの成果を出されて学会発表をされたりとか論文で出された場合には,その発表なりの雑誌とか学会の名前を出されて,何を発表されたか,どういうことを発表されたかということを2行ぐらいでさっと説明をされるというのがあると,H先生が最初に言われましたように,どういうことが進んできているかというのが分かるのではないかなと思いました。いかがでしょうか。
A: そうですね。先生の御指摘の1つは,もう少し判断をしやすいように項目を整理をして,ある程度それにチェックというか,そういうやり方ができるような形にした方がよいということは,そのとおりですので,これはこの委員会で少し整理をして考えてみます。私が案をつくってみますので,またそれをご覧ください。
 それから,発表した内容をここに簡単にでも記述していただくというのは,これはもうそれもそのとおりだと思いますので,これは今後お願いすることにいたしましょう。これまではまだ発表されてないと思いますので,これからの話だと思います。
G: その発表のことがちょっとさっき分からなかった。新しいことですね。この研究に携わった方の名前を入れてもらえばいいと思います。代表者だけでなくてこの研究は誰々がやられたのかというのを入れていただかないと,いつも申請者A先生がやっておられるわけではないので。
A: 分かりました。
G: 実際,申請者A先生は指揮は執っておると思いますけれども。
A: 分かりました。ここをでは一覧で入れていただきましょう。その方が見て一目で分かりますから,一々ひっくり返さなくても。
 それでは,後ほどまた検討することといたしまして,1時半になりまして申請者A先生と申請者B先生がおいでですので,まず,現状についての概説をパワーポイントを使って御説明いただいて,その後に皆さんから質問をしていただきたいと思います。
では,お願いします。
申請者B: 今日はお忙しいところ,どうもありがとうございます。ヒトES細胞を使いました研究の経過を報告させていただこうと思います。
 とりあえず第一にヒトES細胞につきましては,全く問題なく安全に実験ができたということを最初に報告させていただきたいというように思います。
 そして,今回の研究の名称でございますが,「ヒト胚性幹細胞の肝細胞への分化誘導および体外式バイオ人工肝臓への応用に関する基礎的研究」ということで,岡山大学医歯薬学総合研究科8階のES細胞専用実験室の方で研究を施行させていただきました。
 ES細胞の実験記録としまして入室の記録簿,そして,誰が使用したかという使用者のメンバー,そして,実験の詳細に関しましては,随時毎回記入するような形で保存をしております。
 実験室でございますが,これは8階の方の消化器腫瘍外科教室の一番奥まったところでございますが,ヒトES細胞専用の実験室を用意させていただきまして,施錠をするというような形で入退室時に鍵をきっちり確認するというような形で実験をさせていただきます。
 安全キャビネット,オートクレーブがございます。そして電子顕微鏡,そして各種のピペット類,そういうようなものをこういう形で装備させていただきまして,ヒトES細胞以外の細胞は一切こちらの方では扱っておりません。専用のインキュベーターがこちらの方に設備されております。
 それで,今回のES細胞の概要でございますが,こちらは先ほどの実績報告書の方に書かせていただいていますが,京都大学の中辻先生から御提供していただきました日本で樹立されましたヒトES細胞を使いました。
 培養の方法に関しましては,ジェロン社がフィーダーフリーで行えるということをウェブサイトの方に報告しておりますので,これはどなたでもアクセスすることができます。その方法に準じて実験を行いました。実際にはフィーダー細胞を使う替わりにマトリゲルを使いました。そして,ノックアウトミディアムとしましてR&D社から,少し金額的には高価でございますが,こういうような培地を使いました。そして,普通の継代培養に関しましては,basic FGFを使用しました。そして,継代に関しましては,コラゲナーゼのタイプフォーの溶液を使いまして,10分間コラゲナーゼ溶液を反応させることによって,二段階法でES細胞の継代培養を行いまして,現在のところ特に大きな問題もなく順調に実験が進んでいる状況でございます。
 そして,ES細胞から肝臓細胞への分化誘導でございますが,まず,胚様体を,これは未分化な状態のヒトのES細胞でございます。フィーダーフリーで培養しておりますが,一部の細胞がフィーダー様の細胞に分化するというような特徴がございますので,形態的にはこういう形になりました。そして,これを胚様体形成用の培養皿の上で培養しますと,エンブリックボディ,胚様体をヒトES細胞が自然に形成いたします。そして,できた胚様体を普通のマトリゲルの上と,そして,実験群としますと不織布の上で培養するという形で,肝細胞への分化誘導を14日間行っております。
 それで,今回の我々の提案書にありますように,ヒト由来の欠失型肝細胞成長因子dHGF,これは第一製薬から提供いただいたものを使用させていただきました。
 そして,これは実際にクラレメディカルから提供を受けました細胞接着性のポリアミノ酸ウレタン(PAU)で加工されましたPTFE不織布の上で胚様体を培養しますと,このような形で胚様体が付着します。そして,胚様体がこの不織布の上で分化誘導を行うということを我々の戦略といたしました。既にこの素材はバイオ人工肝臓デバイスの素材として非常に細胞接着性,機能面で優れているという基礎的データがございましたので,こういう素材の上でヒトES細胞の肝細胞への分化誘導を行ったわけでございます。
 それで,これはヒトのES細胞から分化誘導されました肝細胞様細胞の遺伝子の発現を経日的に調べたものでございますが,まずアルブミンとインターナルコントロールとしましてβアクチンの発現を検討いたしました。アルブミンに関しますと,未分化な細胞の場合は発現が当然ございません。そして,胚様体を形成した段階では,やはりこれはアルブミンの発現がございません。マウスの場合は胚様体を形成することでアルブミンの発現が出るというような報告がございますが,ヒトの場合はございませんでした。そして,普通のマトリゲルの上で培養しますと,アルブミンのバンドはやや薄く出ます。しかしながら,不織布の上で14日間培養することによって,非常に強いバンドが検出されました。そして,スライドの6番目は正常なヒトの肝臓細胞でございまして,ポジティブコントロールとして使用をさせていただきました。インターナルコントロールはこういう形でございます。
 それで,実際に培地中に出てくるアルブミンの量を測定いたしますと,349ナノグラムという量が検出できました。そして,また,14日間培養した後に培地中にリドカインを付加いたしまして,リドカインの代謝率を測定いたしました。未分化の細胞の場合では,リドカインの代謝率はゼロでございましたが,不織布の上で代謝することで23.2%の付加したリドカインを代謝するという能力を見いだすことができました。以上がこれまでの実験の経過でございます。
 本実験を通しまして研究者の間で感じたこととしますと,これまでのところ細菌などの汚染を認めず順調に継代をしておりますが,将来的なそういう危険性を考えますと,細胞を適宜凍結保存できれば将来的に望ましいなというふうな印象を持ちました。
 そして,我々は将来的にはヒトに応用したいということを考えまして,マウス由来のフィーダー細胞を使わない方法ということで,フィーダーフリー法というものを適用して実験を施行しておりますけども,やはり培地の代金が少し高い。経済的には少し高いという印象を受けました。
 それと,現在の手法では肝臓様細胞にだけ分化した細胞を効率よく取り出すということは不可能でございますので,将来的にはそういう細胞だけを取るような方法も考慮していかなければいけないのではないかということを考えました。そして,誘導されました肝細胞様細胞に腫瘍性があるのかどうかというようなところは,科学者として少し興味を持ちました。そういうことに関しましては,動物実験をすることによって明らかになるのではないかというようなことを少し思いました。
 それで,今後の方針,課題といたしますと,研究者が常に細菌等のコンタミネーションの危険性を危惧して実験をしているような状況がございますので,もし適宜未分化,ないしは分化の過程の細胞が凍結保存できれば精神的なゆとりを得ることができるのではないかというように考えております。現在のところ,盗難とか不審な人物の侵入等,管理面について問題がございませんので,将来的には凍結保存というような方法も提案をさせていただけたらどうかというように考えております。
 そして,1日から2日に1回は培地を替えないといけないということになりますと,かなり培地の値段がかかりますので,より安価な培地の開発ができれば望ましいというように考えました。
 そして,肝臓様細胞に分化したものだけを取るような手法としますと,我々はマウスのES細胞の場合は,これは一過性にアルブミンのプロモーターが発現しますとクラゲの緑色蛍光タンパクGFPが発現するコンストラクトを一過性に発現させて,アルブミンプロモーター陽性の細胞を取ることによって,マウスのES細胞から肝臓様細胞に分化した細胞を順化するということができていますので,ヒトの場合でも同じようなことができれば,肝臓様な細胞になったもの,いわゆるアルブミンプロモーターが陽性の細胞だけ取ってくるというようなことは可能であろうと考えておりまして,将来的には組換えDNA実験安全管理委員会の承認が必要でございますが,考えていきたいと思っております。
 そして分化された,誘導された細胞がまだテラトーマ(奇形種)をつくる能力を持っているのかどうかというようなところを科学的に知りたいなと思っております。そういうことになりますと,将来的には動物に移植するというような実験も考慮させていただきたいというような感じを受けました。
 まだまだ今後,基礎的な実験の積み重ねが必要であるかとは思いますが,以上が今回実際の実験をしてみて研究者が思った課題といいますか,率直な意見でございました。
 それと,昨年の8月30日に神戸の理研でヒトES細胞講習会と生命倫理セミナーがございましたので,申請者A教授と私とで出席をして,倫理的な問題というようなところにも取り組んでまいりました。
 これは本年の3月10日でございますが,学内でヒトES細胞を使用した細胞療法の開発と倫理問題点の考察といたしまして,再生医療学会に御出席をしていただきましたネブラスカメディカルセンターのアイラ・J・フォックス先生とジェロン株式会社のジェイン先生とディスカッションをさせていただく機会を設ける形で,ES細胞に対する研究を深めていこうと,研究会を学内で開催させて頂きました。
 これまでのところ有益なデータが出ておりますので,より研究の充実を図りたいというように考えまして,研究者を2名追加させていただければと思いまして,本日提案をさせていただきました。
 1名は中国出身のチン・ユウ先生でございまして,マウスのES細胞から肝細胞の分化誘導等の研究を行った実績を有しております。そして,欠失型の肝細胞成長因子が正常なヒトの肝臓細胞の機能維持に有効であるということを彼が大学院生のときに見いだした研究でございまして,本日めでたく岡山大学大学院を修了しまして医学博士の称号を取得しました。彼がマウスES細胞を取り扱った研究業績としますと3編がございます。
 そして,もう1名はメキシコからの留学生でございまして,アンドレッドロ・ソト・グレッチェ先生でございます。彼は,現在マウスのES細胞から肝臓細胞への分化誘導の研究を大学院の学位のテーマとして行っております。マウスのES細胞を取り扱った研究業績としますと,2005年に1編,共著者として発表しております。そして,学会発表のこれはいずれもマウスのES細胞から肝臓細胞への分化誘導でございますが,特に3番目に関しましては,これは札幌で行われました会議でございますが,ヤング・インベスゲーター・アワードを受賞したという非常に優秀な人物でございます。
 教育面に関しましても,昨年の8月22日に私とジェロン社を訪問いたしまして,ヒトES細胞の培養法を直接習ったという経緯がございます。そして,彼は昨年行われました神戸での理研でのセミナーにも出席した経緯もございますので,非常にES細胞を取り扱う教育的な講演に対しても熱心でございますし,マウスのES細胞を肝細胞へ直接分化誘導しているという実験の実績もありますので,追加ということを御検討していただければと思います。そして,これはソト君が理研の生命セミナーに出席したことを証明する受講証でございます。そして,これはジェロン社でヒトES細胞の取り扱いを行いましたということをジェイン先生の方から証明していただきました証明書でございます。
 これまでの研究の総括とさせていただきますと,研究者は常に胚提供者への感謝の念を持ちまして,ヒトES細胞の実験を施行してまいりました。ES細胞専用室で当該実験を施行し,入退室に関して記録を取り,施錠しまして実験内容についてもその都度記載を残しております。盗難,不審人物の侵入もなく,管理面でも一切問題なく,安全に研究を行うことができました。そして,使用計画書どおりの研究成果があがっているというように考えております。
 そして,こうした有用なデータが出ておりますので,研究のより一層の充実を図るために,研究者の追加を希望したいというのが本日の発表の趣旨でございます。
 以上,御静聴ありがとうございました。
A: どうもありがとうございました。
 これまで特に問題なく研究が推進されてきて,しかも目的に向かって既に成果を得ているということで,その点は非常に喜ばしいことだと思うんですけれども。幾つか私の方からも指摘がございますし,あと委員の先生方から質問をしていただきたいんですが。
 まず第1は,この委員会は倫理審査委員会でありまして,したがって,もちろん科学的内容が計画どおり行われているかということも大事なわけですけれども,同時に実施状況をよく把握をするということが我々の大きな義務です。ということは,入退室の記録とかそういうものを,これは特に最初ですので,現実にどういうふうに行われているのかということを少し見たいという意見もありますので,今,お持ちでしょうか。
申請者B: 3冊の入退室記録,そして使用者記録,そして実験ノートに関しては,常に8階のES細胞室の方に置いていますので,もし可能であればそちらの方においでいただくか,それか,これから持参をしますが。
A: 皆さんイメージがちょっと。あらかじめお願いしとけばよかったんですけど,どうしましょうかね。ちょっと見た方がイメージがわくのではないかという気もいたしますけれど。
 もし可能でしたら,今皆さんに回覧をしていただければと思います。
申請者B: はい,分かりました。はい,もって参ります。
A: それが一つです。それから,2番目につきましては,計画内容について,この前,申請者A先生と文科省に行ったときも,実験開始後のモニタリングについては,計画内容が逸脱して自然に変化していくようなことのないようにということをかなり言われまして,それは当然のことだと思うんですね。しかし,どんな研究でもそうですけれども,やってみて,こういうところはもうちょっとこうしなくちゃいけないなということが,いろいろ出てくると思います。最初に提出してある計画書には明確にやらないと書いてあることが必要になってきはじめているんですね。例えば,細胞の凍結も一つですし,それから,動物の体内に戻さないということも一つですので。いずれ計画内容の変更ということを検討しなくちゃいけないと思うんですけれども,毎回細かいことを一つ一つやるわけにもいかないでしょうから,そこを慎重に検討していただいて,一定の期間内にこういうような計画変更した内容でやりたいということを詰めていただいて,まとめて出していただければ対応できるのではないかと思うんですね。現実には細胞を凍結することも,それから,動物に打つことも,必ずしも原則として禁止されているわけではございませんので,きちんと必要性を書いて理由を示せば変更は認められるというふうに思います。その点,御考慮いただければと思います。
 それから,3番目は,先ほど既に委員の中からも指摘があったんですけれども,この報告書の記載がやや不正確で公的な記録として残すには問題ではないかということです。例えば,先ほど出たのは,「GIBCO RBL」って書いてありますけど,これはBRLの間違いではないかって。恐らくそうだと思いますし,それから,会社の名前も英語で書いたり日本語で書いたり,いろんな形がミックスされているので,やっぱりそういう細部に至るまで少しきちっと点検をしてもらいたいという意見がございました。その点,御協力お願いします。
 委員の皆様から質問をどうぞ。
G: いいですかね。
A: G先生,どうぞ。
G: 今,研究が計画どおり進んでると私は思いますけれど。そして,研究のことでお聞きしますが,例えばアルブミンを分化のマーカーにされていますが,これは何%ぐらいの細胞がアルブミンを産生していますか。蛍光染色で分かると思います。
申請者A: 済みません,それは申請者Bが今いないんですけども。
A: はい,そうですね。
申請者A: 私はまだその報告を聞いておりません。
A: では,申請者B先生が今資料を取りに行っておりますので,では,それは後でまた申請者B先生にお伺いしましょう。
 そのほかに。
G: 生体の肝臓細胞をアルブミン抗体で染めても100%は染まらない。100%の細胞が本当にES細胞から肝臓に分化したことを証明するためには,何か別のマーカーが必要だと思います。それをお聞きしたいと思います。
A: では,それも申請者B先生が帰ってかられてから,少し実験の中身については検討いたしたいと思いますけども。
 そのほかにございませんでしょうか。F先生どうぞ。
F: 今,この時間はあれですか,先ほど依頼のあった2名の研究員の追加というのも併せてということですか。
A: せっかくその話も出ましたし責任者の先生が来られていますので,その点についての質疑もいいんですけど,それはちょっと後でやろうかなと思います,この後。
F: 分かりました。
A: まず,報告書について特に集中的に。
 H先生,何かございますか。
H: 全く素人なのでいろいろ教えていただきたいと思うんですが。まず,今回報告書を出されたのは,一定の成果が出た一つの段階だからということもあるのかと思っておりますが,最終的な獲得目標から見て,今どれぐらいのレベルにあって,次はどういう段階になっていくのかというようなことを教えていただければということ。それから,研究の問題点や今後の方針の3番で,最後の概略を見ると,肝細胞に分化したことを確認したとありますが,すべてが分化したわけではないのですよね。どうなっているのかということを教えて頂けますか。それから4番に書かれている腫瘍性というのは,どういう課題なのかがよく分からないので,それも教えていただければと思いました。
申請者A: 最終的な目的というのは,どう言うんですか,こういった肝臓の細胞に分化させれたものを使って,治療効果を十分期待できるようなものをつくり出すということにあると思うんですが,これは相当現実問題としては道のりは遠いと思います。というのは,これまでのマウスの実験でもそうなんですけども,一応ファンクション,肝細胞のファンクションが出てくる細胞,そういった細胞を誘導することはできるんですが,いったん誘導した細胞の機能をまた長期間維持することも現状ではけっこう難しいようです。先ほどG先生の御指摘もありましたように,では,それから得られた細胞集団の中の実際に,そういったかなり成熟した肝細胞に近い機能をどれだけのパーセンテージの細胞が発現しているのかについてもまだまだ課題があると思いますし。そういう意味では,どう言うんですか,技術になる前の科学的にまだ検証しなきゃいけない問題が相当あると思っております。
 ただ,マウスの実験からヒトの実験に移ったときに,正直言って細胞の継代であるとか,あるいは感染等のトラブルであるとか,そういう問題が余り起こってないことと,それから,予想したどおりの機能の発現が一応見られているということでは,むしろ我々の考えからいえば,当初の予想からいえば早いテンポで研究は進んでおるように感じております。
 それから,腫瘍性,腫瘍をつくるかどうかというのは,このES細胞というものを実際の動物に接種した場合,動物のES細胞ですけども,腫瘍をつくってきますので,実際にES細胞から分化さした細胞を臨床に持ち込もうとすると,そういった腫瘍をつくる能力を残した細胞と,それから,そういうものはなくなって分化した細胞と区別する必要があります。ですから,機能が発現している細胞を取り出すことと,それから,腫瘍をつくる能力は持ってない細胞と,この2つを区別して最終的には細胞として単離しなければいけないということで,そういった意味での検討というのをしなければいけないんですけども,そういう訳で,先ほども申請者Bが申し上げましたように,動物接種の実験をこの先認めていただきたいと思っています。
A: よろしいでしょうか。ほかにございますか。
C: 細かな研究内容になるんですけども,細胞を,現段階では肝細胞にだけ分化した細胞を効率よく取り出すことができなかったということですけども,今後,クローニングとかそういうことをして,肝細胞だけを取り出すとか,そのようなことを計画されているわけでしょうか。
申請者A: ええ。ですから。
C: それを考えて,いろんな段階の細胞をストックしてフリーズしておきたいということでしょうか。
申請者A: はい。そうなると思いますが,ちょうど申請者Bが来ましたので。
申請者B: 1点目の染色の方はまだこれは施行できておりません。RT−PCRのバンドの濃さですか,インターナルコントロールとの比較,それとアルブミンの産生量,そしてリドカインの代謝から推測しますと,4分の1ぐらいの細胞に分化誘導されているのではないかと。少し形態を見ますと,3種類ぐらいのタイプの細胞がいますので,2核の特徴のあるような肝細胞だけを順化できれば,よりファンクショナルな集団だけを選別できると思います。そういう意味では,100%未分化なES細胞を目的の細胞に持っていくということは,これは恐らく将来的に無理だろうと考えていますので,一時的にでもそういう細胞を順化するためには,肝臓細胞特異的なマーカー,そういうものを遺伝子導入していく,ないしはレセプターを介してマグネティックソーティングをするようなことを考えて純化をしたいなと思っております。
 ただ,アルブミンのプロモーター等を入れることに関しましては,これは組換えDNA実験安全管理委員会の承認が必要ですので,現時点ではすぐに行いたいというようには思っていませんが,将来的にはそういうことを考えていく必要があるなというように研究を通して思いました。
 それと,凍結保存に関しましては,ある程度分化した段階の細胞は凍結できるのかどうかというところは,将来的な臨床応用を考える上で一つ重要であろうというように思いますが,それよりも,一番,実際に実験していて思いましたのは,凍結保存を当初は盗難等の問題がございますので,ストックするのは極力避けたいというように思って実験をしておりますと,常に細胞を見るときに,コンタミネーションを起こしてないかなというところを一番,非常に注意を払いまして,精神的な非常にストレスが実はあるということです。それと,普通の細胞と違いまして,2日に1回は必ず培養液を交換しないといけないので。例えば,他の細胞を培養していると,例えば週に2回ぐらいでよいのですけども,場合によったらもう毎日替えないといけないようなステージが出てきますので,そういうときに非常に培養するときのストレスがありますので,未分化な細胞をある程度ストックすることができれば,万が一コンタミネーションするようなことがあってはいけないのですが,そういうような精神的なゆとりが研究者に生まれるのではないかと思いました。
A: ありがとうございました。
 細胞凍結に関しましては,これは培養するときの一番の基本で,凍結してものをストックしておいて,順次起こして使うというのが基本的な条件ですよね。だから,そういう方向に行くのは自然なことだと思うんです。それで,先ほど申請者A先生に申し上げたんですけれども,そのことも含めて,あるいは動物への移植も含めて,少し整理をしていただいて,全体としてある一定の期間,こういうふうな研究内容の変更をしたいということを整理していただいて,改めて計画書の変更の願いを出していただければ,それを検討して,専門委員会にもそのようにお願いすればいいのではないかと思うんですけどね。
申請者B: そうですね。先生のおっしゃるとおりだと思います。特に当初は管理面がどうなるのかなというのが実際不安でした。8階でかぎの施錠もするというふうな形にしておりますが,不審者等が入って,例えば細胞が盗難に遭うというような可能性もこれはやっぱり研究する当初は否定できなかったと思います。しかし,実際に研究が始まって4か月たちますが,安全にできていますので,その辺を考慮しますと,凍結保存ということをまず最初に提案させていただけたらいいのではないかなというふうに考えております。
A: それから,先ほどG先生からもH委員からも出たんですけれど,1つは何%ぐらいということで,正確にはまだ言えないけれどもというお話を伺いました。それから,腫瘍性の問題がどういうことの意味かということも話がございまして。ただ,今のこの計画しているシステムは体外型としては置くということですよね。そうすると,その点は細胞をダイレクトに体内に入れるという話ではありませんので,ある意味でいえば10%ぐらい変な細胞,変なというか機能がない細胞が混ざっていても,トータルとしてある種の機能を使用できればよいということになりますよね。つまり植え込んだユニット全体としてどれだけの機能を持つかということが恐らく最終的な目標ということになるでしょうから。そこのところの検討がこれから定量的な値として出てくるのではないかというふうに私としては理解しているんですけれど。現在の段階では,とにかく細胞を培養して分化誘導したら,そういう機能を持つものが,まだ定量的な部分ではないけれども,ある程度得られる見通しが立ったということで,ということですよね。
申請者B: そうですね。それと,もう1つ付け加えさせていただきたいのは,こういう分化誘導したときに,それがほんとにその最終分化しているのかどうかということは,非常によく議論になると思います。デバイスの中に我々は当初閉じこめていこうというのは,これは将来的に患者様,いわゆる実用化するときに安全性が高いだろうという観点からそういう提案をさせていただきました。実際にこういう実験をしていますと,ベーシックなサイエンスからいいますと,例えばこういう肝細胞がまたほかのものになっちゃう,例えば肝細胞の形質は持っているのだけども,やっぱりそれでも生体に移植するとテラトーマをつくる能力があるのだよというような,これは科学的な少しデータを持っときたいなというようには実験を通じて思いました。
A: 余り科学的に細かいことを言ってもしょうがないんですけど,我々も全く別なシステムですけれども,リドカインの代謝を調べたときに,あれは入れたものがどのぐらい減少するかということで見ると,こういう複雑な装置,最終的に複雑な装置を組み立てたときに,変なところにいろいろくっついたり,そういうことがポジティブに評価されてしまうということがありますので,コントロールとしては,例えば分化誘導してない細胞を入れて同じシステムでやって,それを100%にしてするというような,そういう細かい注意が必要ではないかと思うんですけど。
申請者B: そうですね。おっしゃるとおりだと思います。ありがとうございます。
A: ほかにございますでしょうか。
B:実験上で教えてもらいたいことがあるんですけれども,アルブミンのプロモーターを組み込んだプラスミドを一過性に発現させて,肝細胞に分化しているかどうかの指標にしたいというお話ですが,エンドジナスなアルブミンの遺伝子が存在している遺伝子部位は細胞核内で裸で存在しているわけではなく,高次構造をとっていますよね。ベクターで外来性に入れた遺伝子DNA,つまり一過性に入れた遺伝子DNAの場合には,そういう高次構造はとっていませんよね。そこで,アルブミンの代わりにGFPの発現を見ることで,エンドジナスなアルブミンがその細胞で発現しているかいないかという指標になりますでしょうか。
申請者B: マウスのES細胞から同じシステムを使いまして,やっぱり40%ぐらいアルブミン陽性細胞が分化誘導されます。これはもう免疫染色で確認をしていまして,それをアルブミンプロモーターでGFPが駆動する,そういうベクターをヌクレオフェクションというちょっと特殊な器械を使いまして導入しますと,一過性に,遺伝子導入効率が大体60%程度です。そして,99.8%までGFP陽性の細胞がソーティングできまして,その細胞を実際に染色しますと100%アルブミン陽性ですね。それはマウスのES細胞に関しましてそういうシステムが働いております。ですから,ヒトの場合も恐らくそういう手法が適用できるだろうと。
B: 逆にGFPマイナスの細胞はアルブミンの産生はネガティブだと。
申請者B: マイナスです。
B: それはRT-PCRで確認をして。それは難しいですよね,細胞を分画する事はできませんからね。
申請者B: ええ,そうですね。免染ではネガティブになります。
B: 免疫染色ですよね。
申請者B: はい。
B: では,免疫染色でディテクトできる程度のアルブミンは発現していると。
申請者B: そうです,はい。
B: なるほど。
申請者B: マウスのES細胞に関しましてはそういうことが可能ですね。ですから,恐らくヒトのES細胞でも可能だと思います。DNA組換実験の範疇に入りますので,またその辺に関しては,マウスでしっかりそういうデータが出ているという基礎的なデータをお示しして,次のステップとして進みたいというように考えていますが,マウスでは非常に有用です。
B: 現在の実験の進め方ですけれども,マウスのES細胞とヒトのES細胞の実験を,部屋は別ですし,別の方たちがやられているんだと思うんですが,パラレルに進めていらっしゃるんですか。
申請者B: マウスの実験に関しましては2年前から着手しておりまして,来週頭ぐらいに論文投稿ができるというような状況でございます。それで,今回ヒトの実験の提案をさせていただいたのは,マウスで非常に有効な手法が見いだせているということ。そして,細胞種は違いますけども,かなり似たデータが今の段階では得られているというようなことがございます。現時点ではパラレルという感じでは実はなくて,マウスのデータ,知識をヒトの実験に投入しているというような状況でございます。またマウスの細胞の論文に関しまして,リバイス等が要求されますと,またマウスの方の実験を再度再開というような形にはなるかというようには思っております。
 ただ,実験する場所は全く違いまして,マウスの方の実験に関しては,オープンラボの2階の方でやっております。
A: ほかにございますでしょうか。
 G先生何かございますか。
G: テクニカルなことで。二,三日おきに液替えするということを,培地を工夫するとか,冷蔵庫に入れておくとか,いろいろ工夫して,1週間ぐらい何もやらなくても細胞はもつのではないでしょうか。「ファイブロブラスト」だと1か月ぐらいは大丈夫です。
申請者B: 我々も当初はそういう感じで思ってはいたのですが。それで,培養液に関しましては冷蔵庫で遮光してアルミホイルを張ったような形で使っております。これは実際に我々もジェロン社で見てきたのですけども,2日に1回やっぱり彼らも培地の交換をしています。ミディアムの色が非常に変化して,実際にヒトのES細胞というのはやはりほかの細胞とはかなり性格が違います。実際に実験してそういうことを思いました。
 それで,G先生が言われるように,少し耐久性の長いようなミディアムを開発したいなと。そうすることによって経済的な面も少し助かるかなというようなところは実感しています。
G: 例えば,血清は何%入っていますか。
申請者B: これは,順化培地ですので,無血清でやっております,先生。それで,培養に関しましてはbasic FGFを少し高濃度で入れて使っておるというところでございます。
G: そうすると,無血清でつながれているわけですね,今。
申請者B: そうです。
A: よろしいでしょうか。
G: 私が思うのは,何かアルブミンのようなものを入れてやるとか,あるいは牛の血清が入るといろんなものもまた入りますので,大豆から採ったペプチドのようなものを入れてやるとか,何かちょっと考えられて,そして,その培地にして,もちろん細胞はありますよ。細胞はやって入れて,そして冷蔵庫へぱんと入れとけば1週間や10日はもつのではないかなと思ったりするんですけど。
申請者B: ありがとうございます。また,先生御指導を是非お願いいたします。
A: よろしいでしょうか。はい,どうぞ。
H: 今,記録簿を拝見させていただいて,幾つか教えていただきたいと思ったんですけれども。まず,1つは入室者の氏名のところに,研究者ということで挙げられている以外の方のお名前があるということ。
 それから,実験記録の方は,記録者ということかもしれませんが,入られた方ということではなくて,使用者の氏名が1名だけという形で書かれていますし,入退室ごとではなくて,1日1日で記録をつけられているということで,この辺が妥当かどうかというのは私は素人で分からないんですけども,どういうお考えでやってらっしゃるのかということを教えていただければと思いました。
申請者B: 基本的に細胞の培養に関しましては,私が学会等でいない以外は,すべて私自身が細胞のパッセージといいますかミディアム交換を行っています。これはコンタミネーションの可能性を極力控えるということ。それで,という意味で,実地使用書の方に関しましては,ミディアム交換をした,いわゆる細胞を直接扱った人間という名前で私の名前だけにしています。
 それで,入室した者に関しまして,やはりその細胞に興味があって,どういう形態をしているのか,どういう実験室でしているのかという来客の方がおられます。それと,大学院生の人たちが非常にこういう細胞の培養に興味を持っていまして,見ることで,見学することでもいいから習いたいというような希望がありますので。それで,入室した者に関しては全部名前を書いています。そうすることによって,将来何か盗難等があったときに,誰が入っているというような記録が分かるというふうな形にしていますので,入退室に関しては入った人間を全員。そして,培養に関しては私が学会でいない以外は私が基本的に全部世話をする。そして,実際に細胞を扱った人間の名前だけを書いているという形で区別をさせていただきました。
A: 今のところは大事なことだと思うんですね。研究室に入るということ自体は,後進を育てるということもあるし,一定の使用責任者の御判断でこの人は入ってもよかろうということであれば,入ること自体は構わないのではないかと思うんですけど。
 もちろん,細胞をダイレクトに触るということは許されてないわけですね。それで,今,先生が例えば学会に行ったとき以外はというようにおっしゃったのは,その場合でも許可された人だけがミディアムチェンジをしているわけですよね。
申請者B: そうです。山辻先生にお願いしています。ですから,私以外の名前で使用帳簿の方の名前があるのは山辻先生だけですね。
A: 分かりました。
申請者B: そういう形でコンタミを防ぐ極力の努力といいますか。ただ,2人ともいないときはどうするんだということになりますと白川先生というような形でバックアップはしておりますけども,なるべく常にその細胞に接する人間が時間をつくって見るというようなシステムにしております。
 ただ,実際こういう実験をしていますと非常に,こういう言い方は非常に失礼ですけど,かなりやっぱり研究者にとっては非常にストレスでございまして,G先生が言われるように,少しミディアムを本当は改良して週に1回ぐらいのミディアム交換になれば,そういうコンタミネーションの危険ですね,極力減らすこともできて,経済面もいいし,研究者の精神的なゆとりもいいなというように思いますので,非常に貴重な御意見だというように思って今拝聴いたしました。
A: 入退室の記録につきましては,全員の名前を記載していただくということがこれは当然といえば当然だし,必要なことで,透明性を高めるという意味でも重要ですので,それは今のままでよろしいのではないかと私は思いますけれども。
 ほかに御意見はございますか。
 それでは,今は報告書に関してでしたけれども,新しい研究者を加えたいということで,2名の方の御紹介がございましたけども,この点に関して皆さん何か質問がございますか。
 まず,私の方から1つ,このチン・ユウさんに関しまして,先ほどマウスのES細胞で経験があるというようにおっしゃったわけですが,どの程度実質的な経験があるんでしょうか。このリストを見ますと彼がファーストオーサーの論文はES細胞の話ではないですよね。
申請者B: はい,だと思います。
A: 共著者になっているわけですけれど,実際に彼にどのぐらいの経験があるのかということを,具体的に説明していただけますか。
申請者B: メキシコからの留学生のソト先生とES細胞の方の,マウスのES細胞の研究をほぼ同時に始めまして,彼がかなりアシスタントとして非常に根気強く手伝ったというような経緯。
 それと,現在,整形外科学教室から参加していただいている大学院生ですが三澤治夫先生という方が我々の研究室でマウスのES細胞から骨の分化誘導をしております。彼は,週にやはり4回の外勤日,ネーベンがございますので,その間に関しましては,このチン・ユウ先生が骨への分化誘導のためのそういうマウスのES細胞の分化誘導に関しまして,ここ1年そういうお手伝いをしているというような経緯がございます。
 それで,最初のこの実験の組織づくりをしたときは,なるべくもう学位を取っている人間を集めたい。エキスパートが揃うことによってなるべく実験で不祥事がないようにしたいというふうなことを思っておりまして,大学院生というものは省きました。しかしながらチン・ユウ先生に関しましては,本日大学院の取得を取ったということと,それと,非常にES細胞に対して実験をしたいという熱意が非常に強いというようなことがございましたので。それで,彼のフォーストオーサーでの論文発表はないのですが,そういうようなバックグラウンドを考慮いたしまして,今回追加のメンバーとして名前を挙げさせていただきました。
A: 分かりました。もう一つは,お二人とも留学生で,倫理的な理解というか,言葉も含めて,そのあたりの理解状況というか,研修状況について御説明いただけますか。
申請者B: チン・ユウ先生に関しましては,3年日本におられまして,日本語に関しましては80%以上の理解力がございます。これは先日,3月7日に学位審査が行われましたが,審査員の教授から非常に日本語がうまいと褒めていただいたというようなところもありまして,コミュニケーションに関しては全く問題がございません。
 それで,ソト君に関しましては,研究を始めて約2年でございますが,彼に関しましては,まだ日本語に関しては30%ぐらいの理解でございます。ただ,岡山大学へ入学した際には,半年間日本語コースを受けてというような研修はしておりますが,日本語の上達度に関しましてはチン・ユウ先生にはまだ及んでいないと。
 しかしながら,ソト君に関しましては,先ほどのプレゼンテーションでお見せしましたように,理研での生命倫理の会等がありますと,そういうものに積極的にやっぱり参加して理解していこうというような,そういう非常に姿勢がございます。
 それと,マウスのES細胞から肝細胞への分化誘導に関しましては,彼がほとんどメインになってやりました。そして,また彼の研究成果は去年のアメリカ肝臓病学会のオーラルプレゼンテーションに選ばれたということ。そして,インターナショナル・カレッジ・オブ・サージャンでヤング・インベスティゲーター・アワードを受賞したというようなことも関しまして,技術的に関しましては超一流の技術を大学院生でございますが持っている。
 ただ,コミュニケーションに関しましては,彼と私は普段は英語でコミュニケーションを取っておりまして,英語でコミュニケーションをすることに関しては一切問題がございませんので,私の指導の下,教授の申請者Aの指導の下という形で厳しい条件付けをさせていただければ,言葉の障害は,コミュニケーションの問題はないのではないかというように考えました。
A: ありがとうございました。
 そのほかに委員の皆様方から。
H: この研究は何人かの先生方がチームでやってらっしゃると思うんです。今回お二人の方が入られた場合に,例えば直接その細胞を触られるのが,今はほとんど申請者B先生で,次が山辻先生。どうしてもお二人ともいらっしゃらなかったら白川先生という御説明でしたが,そういう部分にこのお二人が入ってくる可能性があるのか。あるいは,研究チームの中でどういう役割を果たされると想定されているのかということについて教えてください。
申請者B: そうですね。非常に重要な問題だと思います。彼らが2人参加したとしても,最初の3か月はオブザーバー。場合によっては6か月ぐらいはオブザーバーという形で,実際に細胞を扱わせるということはちょっと控えようと思っています。それで,彼らが細胞を取り扱える時期としては,一つ,我々指導者から見て十分信頼が置けるなと思うとき。それと,あとヒトES細胞の凍結保存が可能というような条件ができた場合に,実際に細胞を扱わそうかなというように思っています。
 実際に彼らにお願いしたいなと思っているのは,サンプルの取扱いですね。例えば,遺伝子の発現を実際に見る。そして電顕を施行する,そして免疫染色をするというような細胞の継代というのではなくて,もう既に細胞はある程度固定されている,もう細胞はある意味でもうDNAとかRNの形になっているようなサンプルを取り扱わさせていただきたいと。
 それで,今回,入退室の方に名前がありますけども,これは強制したわけではなくて,彼らがなるべく1回でも多くES細胞の取扱いを見たいというような希望がございましたので,入室を許可していまして,特にチン・ユウ先生に関しましては,現在,何か中国の方では非常にヒトES細胞の研究が一部の施設ですけど,かなり精力的に研究されているというような現状もございまして,今回,大学院の学位を取りましたので,近い将来中国に帰ったときに,そういう研究に従事したいというような強い情熱がございますので,そういうようなことを考慮して,彼がかなり頻回に入室しているという現状もございます。そういうことも考慮をいたしまして,今回めでたく大学院の学位も取れたということで,博士号があるというようなことも,そして,技術的にも十分,そして日本語の方も問題ないというようなことを考えまして御提案をさせていただきました。
A: 先ごろの文科省との打合せでも,マウスのES細胞の取扱いの経験だけで研究を始めることも可能だけれども,そういう人を研究に参加させるときには,ヒトES細胞を使った研修をきちっとやってもらいたいというお話もありました。今,先生もそのような計画を持っておられるようですから,その点を意識されて,最初の一定期間は細胞を扱うにしても研修をきちっとやって,それでオーケーといったときに本格的な研究に参画させると,そういうことに留意していただければと思います。
申請者B: はい,ありがとうございます。そうですね。必ず最初の3か月ぐらいは指導者が後ろで見ながら,注意点等をチェックしながらさせていただきたいというように思っております。
C: 留学生の場合,母国と倫理観が異なるという場合があろうかと思いますので,その点,講習をされるときにも,倫理的な面を特に強調し周知徹底していただきたいと思います。
申請者B: どうもありがとうございます。先生がおっしゃるように,非常にその部分に関しましては,国によってかなり倫理観も違うかと思いますけども,ES細胞の樹立された経緯,そういうところに関しては非常に理解を深めていただこうというように思っています。そして,そういうようなセミナーがあれば積極的に参加を促して,日本語で分かる部分は日本語で。そして,日本語で理解できてないところは英語とでより説明をしてというような形で,日ごろから啓蒙するというような教育をしていますので,今後も続けていきたいというように思っています。
B: チン・ユウ先生に関してですけれども,学位を取得して大学院を卒業されるわけですよね。その後,客員研究員という身分になられると書かれてあるんですが,具体的にはどのような形で,客員研究員というものに関して説明していただけますか。
申請者B: 現在は,今思っていますのは,今2種類の研究,JSTとNEDOの方に研究計画書を出していまして,それのポスドクとして採用をしたいというように考えています。ただ,研究費の方の採択が決まるかどうか分からないのですけども,そういうような身分を一応考えています。
A: 客員研究員というのは,ちゃんとそういう枠があるんです。要するに,お金のソースがあってもなくても,あるクオリファイされた研究者であれば,客員研究員という形の身分があって,籍をおけます。それで,研究に参画するという形。うちにもいますけど。
申請者A: 客員研究員で当面は考えております。あと今申し上げたように予算がとれれば,それによるリサーチフェローのような形で支援してもらいたいと考えております。
A: ほかにございますか。よろしいでしょうか。
 それでは,御退席いただいてよろしいですか。
 では,申請者A先生,申請者B先生,お忙しいところどうもありがとうございました。研究の御発展をお祈りしています。
 それでは,申請者A先生,申請者B先生が退席されましたので,委員会の審議を再開したいと思いますけれども。出された書類と,それから今の口頭による説明,質疑を受けて,何か全体として御意見がございますでしょうか。まず,報告書に関してですけれど。
 皆さん,一応納得されましたでしょうか。
G: 指摘されたところを直していただくということでいいのではないでしょうかね。
A: 分かりました。それでは,幾つか指摘があった点について,直せるところは直していただくし,今後こうしてくださいというような要望も,実際には我々の委員会がこの報告書に対してコメントをつけることになっておりますので,そのようなコメントをつけて最終的には研究科長に提出することになります。それで,そのコメントの案を一応私の方で議事録を起こした後に考えまして,案として皆様にお配りいたしたいと思います。先生何かございますか。
B: 済みません,訂正のところでリストに挙げていただきたいんですけれども,フィーダー細胞に関してです。4の@で下から4行目に「フィーダー細胞を除去した」という記述があるんですね。これはパワーポイントで説明を受けて理解できたんですけれども,ES細胞を培養しているうちに一部はフィーダー細胞様に分化してくるという説明がありましたから,それの除去だと思うんです。ただ,そういう説明なしで読んでいて,次のページの2)ですね,研究の問題点のところで,フィーダー細胞を使用していないためうんぬんという記述がありますので,そういうバックグラウンドを知らないでこれを読むと矛盾だと感じると思いますので,訂正されるときにはそのあたり,語句の訂正になると思うんですが,付け加えておいてください。
A: 分かりました。つまり馴化培地をつくるためにフィーダー細胞を使っているんだけれどということですね。だから,そういう意味ではフィーダー細胞を使っているはずなのに。
G: いや,フィーダー細胞を使ってないと思いますけど。
B: ではなくって,そうではないですね。使ってないと思います。
A: いやいや,馴化培地をつくるためにフィーダー細胞を・・・。
B: 何かかっているうちに一部がフィーダー細胞様に分化してくるんだというふうに申請者B先生は説明されました。
A: いやいや,僕が言うのは,馴化培地を・・・,そうですか,どこですか。
B: いわゆるフィーダー細胞は使用していないと思うんですね。にもかかわらず,コラゲナーゼを使ってフィーダー細胞を除去したというのが。
G: 矛盾しておるわね。
B: 表現が矛盾するので。
A: そのコラゲナーゼを使ってフィーダー細胞を除去したというのは,どこでしたっけ。
B: というのは,4の@のヒトES細胞の培養の項目の下から4行目です。
A: なるほど,なるほど。
G: これは実験が2段階に分かれているんだと思う。ES細胞を増やす段階ではフィーダー細胞を使っているんだと思う。
B: 使っているんでしょうか。
G: それから,肝臓細胞に入れるところではコンディションミディアムを使っていると思う。
A: なるほど,そういうことですか。
B: そういうことですかね。
G: だから。
B: でも,先生,マトリゲルを使ってフィーダー細胞を使わないというふうに説明されていましたよね。
G: そうですよね,うん。ここチェックする必要あるね。
B: それで,実は最初読んだときからここのところはおかしいと思ってたのですけど,申請者B先生の説明でこのフィーダー細胞を除去したというのは,自然発生的に分化してきた細胞だっていうふうに説明を受けたので納得はしたんですが。
A: いやいや。それは多分そうではないと。
B: 違いますか。
G: これはちょっとチェックする必要がありますね。
A: これは一つ,我々がここで読んでも理解不能だとすれば問題ですので,ちょっと確認をして,人に分かるようにちゃんともう一回整理をしていただくことにします。分かりました。それを入れましょう。
 そのほかにございますでしょうか。
G: 私も今,B先生が言われたように,フィーダーセルフリーで行っているのに,何でフィーダーセルに分化するのかなと思って聞いていました。十分にフィーダーが取れてないから,結局残っているのではないかなと思って聞いていたんですけどね。今,読んだらおかしいです。そのあたりちょっとチェックして。
A: そもそも,フィーダーセル様に分化するなんて表現がおかしいわけで,フィーダーセルというのは何をいうかといったら,フィーダーとして使った細胞をフィーダーセルと言うのであって,線維芽細胞様に分化したというんだったら分かりますよ。基本的な話がおかしい,もしそうだとするなら。
B: おかしいです,はい。
G: だから,私は残っていたのだと思っていました。
A: ちょっと問題ですね。
G: 私もうっかりして。
A: 分かるようにもう少しちゃんと書いていただきましょう。その点は修正していただきたいと思います。
 そのほかにございますでしょうか。
H: 言うまでもないところだと思うんですが,4の1の2),3行目のところでアンダーバーが2と提供者の間に入っていたり,「感謝の念も持って」というのは,多分「を」ではないかと思うんですけど,そういう誤字,脱字のあたりももう一度確認されるということですよね。
A: 分かりました,その点も。どうも計画書から始まって,大体チェックが甘いんですよね,これは。
D: 1か所だけ途中で改行されているところが3)のBにあるんですね。プロモーターのところがプロモー,ターで行が変わってきているところがあるんですけども,これはでも通常に書かれたらそのまま続くはずですけどね。
A : 何しろ忙しい先生方ですけど,公的な文書ですので,もう一度しっかり見てくださるようにお願いをいたします。
 それでよろしいですか,それでは,報告書に関しましては。
 それでは,先ほど申し上げましたように,これを訂正していただいた報告書に委員会のコメント案をつけて皆様方にお送りいたしますので,またそのときチェックしていただければと思います。
 では,2番目の議題で研究者として追加をしたいという2名の方について,いかがでしょうか。
 最初に申し上げましたし,これまでの議論の中にも出てきましたけれども,研究者として参画する資格といたしましては,留学生であっても大学院生であっても構わないという考え方になっております。それで,一つは技術的なバックグラウンドが十分かということと,倫理的な理解,姿勢が十分かという2つの点があると思います。技術的なバックグラウンドに関しましては,少なくともマウスのES細胞を使った経験があって,それなりの知識と技量があるということが最低の要件と考えていいのだと思います。ヒトの経験,あるいはサルの経験があればなおよろしいということだと思います。
 それから,倫理的な問題に関しましては,実際に使用責任者がある種のトレーニングをしているということと,できれば客観的にいろんな研修に出かけたりするということが要求されていますし,一たん認められた後,使用責任者が責任を持ってその点を配慮して研修をするということが条件になろうかと思いますけれども,そういうことに照らして提出された実績の資料と,それから先ほど幾つか説明をいただきましたけれども,それを考慮して妥当かどうかという御判断をいただきたいと思います。それで,この委員会で一応承認されますと,正式に書類をつくって文科省の専門委員会の方に計画書の内容変更ということで申請をするということになると思いますけど,よろしくお願いします。
G: このチン・ユウさん,前の方の論文では共著だけれども,エンブリオの細胞を使ってやっていますね。そういうことで私はいいのではないかなと思います。
A: 分かりました,ありがとうございます。
 ソトさんに関しても,この人は実際。
G: 例えば,この文献をチェックしてください,例えば3番の英語ですけれども。その4行目,文献の3の4行目,mouses,これはmouseだと思うんです。sは要らないんだね。細かく全部見たわけではないけれども,ちょっと気がついて。ここら辺,エンブリオを使った仕事なんでね。
A: そうでしょうね。
G: この3,4番はエンブリオの細胞を使っていますね。それから,1,2もそうだと思います。タイプミスだと思います。
A: ありがとうございます。そのほかにございますか。
 よろしいでしょうか。かなり経験はあるような感じはいたしますよね,先ほどの説明に関しては。
 それでは,一応この委員会としては要件を満たしているのではないかという御判断でよろしいですか。
 では,そういうことにさせていただきます。
 以上で予定された議案は終わりですけれども,そのほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 では,今後の予定ですけれども,先ほど申し上げましたとおり,まずは議事録をいつものように起こしまして,その議事録を見ながら私の方でコメントの案をつくると。その間にこの報告書の,先ほども出ました訂正をお願いをいたしまして,それをすべてまとめて委員の皆様方にお送りいたしますので,そのことに関しましては,書類上の審査で最終的に研究科長に上げる報告書を作成するということでよろしいでしょうか。
 では,そのようにさせていただきます。
 これで委員会を終えたいと思いますけれども,C先生が学部長になられて4月から交替することになったようですので,先生,最後にごあいさつをどうぞ。
C: このたび歯学部長を拝命することになり,この委員会を続けていくのは時間的に難しくなりましたので,交替していただこうと思っております。
 後任の教授はES細胞を,ヒトのではありませんけれども,マウスのES細胞を使った研究にも従事していますので適任かと思って推薦させていただきました。
 皆さんいろいろお世話になりありがとうございました。本委員会からは離れますが今後ともよろしくお願いいたします。
A: どうも,先生,いろいろお忙しい中を御協力いただきましてありがとうございました。学部長も頑張ってください。
 それでは,今日の委員会はこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。