岡山大学大学院医歯薬学総合研究科ヒトES細胞倫理審査委員会 第15回委員会議事録
 
日 時:平成19年6月11日 午後1時〜3時30分
場 所:歯学部第一会議室(歯学部棟2階)
出席者:A,B,D,E,F,G,H,K,L,申請者B
欠席者:I
資 料:ヒトES細胞研究実施報告書
使用計画の一部変更(研究責任者の変更)について
ヒトES細胞指針改正説明会要旨
ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針(改正)の解説
ヒトES細胞使用申請書解説(大臣確認申請マニュアル)
ヒトES細胞の樹立及び使用計画申請に関するQ&A
    使用計画変更申請書(様式4−2−1,4−2−2)
使用計画変更の届出(様式4−3−1)
倫理審査委員会における審査経過及び結果(様式4−4)
使用計画書
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科ヒトES細胞倫理審査委員会規程(改正案)
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科ヒトES細胞研究実施指針(改正案)
 
A : ヒトES細胞の倫理委員会を開始したいと思います。先生方お忙しい中をおいでくださいましてありがとうございます。
 今日は御承知のように5月の末に指針が改定されまして,内容が変更されております。そのことについて理解を深めて,その新しい指針に基づいて今後の審査を行うということになります。さまざまな議題がございますけれども,できれば予定の時間内に終えたいと思いますので御協力をお願いしたいと思います。
 それではまず,事務の方から資料の説明をしてくださいますか。
事務: 開催通知を配付させていただいたときに添付させていただいた資料1及び資料2,それから5月31日のES指針改正説明会要旨と,3冊の冊子体,御用意して既に送らせていただいております。今日机上に資料を配付させていただいてますが,まず使用計画変更の届出,様式4―3―1とありますA4の横の1枚物,それから使用計画変更申請書,様式4―2―1と様式4―2―2に,引き続きまして使用計画書を添付させていただいております。それから,使用機関の倫理審査委員会における審査経過及び結果,様式4―4,これも1枚物です。それから,岡山大学大学院医歯薬学総合研究科ヒトES細胞倫理審査委員会規程,こちらは青字で修正が入っているもの,それからその後ろにクリップで現行の委員会規程を参考までにつけております。それから,最後に岡山大学大学院医歯薬学総合研究科ヒトES細胞研究実施指針のこれも両面で1枚物を添付させていただいております。
A : はい,ありがとうございました。
 資料は委員の皆様,お手元にございますでしょうか。
 それでは,実際の審議に入りたいと思いますけれども,今日の手順を最初に申し上げます。まず第1に指針が改定されましたので,指針がどういう部分で改定されたのかということと,それから実際に新しい指針の含む内容について御理解をいただいて,それについて御意見があれば伺いたいと思います。
 その上に立って,関連する規定の見直しがございまして,今日の資料の一番後についている青字の部分の修正というのはそのために修正案を用意したものでございます。それは2つございまして,1つはES細胞研究実施指針と,もう一つはES細胞倫理審査委員会規程,この2つを部分修正する必要があるでしょうということで,まずそれを行いたいと思います。
 その上に立って,実際に使用計画についての審査に入るわけですけれども,実は今日は実施状況についての報告を受けると同時に使用者の方から幾つかの点で変更申請が出ております。したがって,まず新しい指針についての理解を深めた上でそれに基づいてその変更計画の適否を審査すると,そういう手順で進めたいと思います。
 この手順でよろしいでしょうか。
 では,その手順で進めさせていただくといたしまして,お手元に既にお配りしてある分厚い資料が3冊ございますけれども,それをお読みいただけると大体概要はおつかみいただいたと思うんですけれども,要点だけ改めて説明をしていただきたいと思います。説明会の要旨というところにまとめられていますけれども,それについてまず事務の方から簡単な御説明をお願いします。
事務: 指針の改正説明会が5月31日に京都大学でありまして,A先生,それから研究者の申請者B先生,それから私とここにおります主任の4名で出席いたしました。主な改正の要点として4つ挙げてあるんですけれども,まず樹立機関のほかにES細胞の分配をする機関としての分配機関の設置というのが制度化されました。これは使用計画がかなりたくさんになっていて,樹立機関の負担も増えているということで,分配機関をきちんと設置してそれを制度化しようということのようです。
 それから,あわせまして我が国で樹立されたヒトES細胞の海外の機関への分配が制度化されました。
 それから,3番として分化細胞の譲渡及び保存の手続を制度化ということです。分化細胞はヒトES細胞由来であるという1点を除いて一般のヒト細胞と科学的な差異はないということとされ,分化細胞については今まではヒトES細胞と同様の扱いを求められていたんですけれども,今後は分化細胞はヒトES細胞とは同等の取り扱いを求めないということとされました。ただ,由来がヒト細胞ですので,譲渡する際にはこれはヒト由来の細胞であるということをきちんと周知した上でしてほしいということでした。そこに補足としていますが,これは当日の質疑応答のところで出てきたのですけれども,分化細胞の定義というのは,分化させてしまえばすべてが分化細胞かという質問がありまして,それについては研究者が判断するのではなく機関の長が判断してほしいということです。機関の長は当然ながら倫理審査委員会への諮問を行いますので,委員会の方で改めて研究機関の長に答申を行うということになります。
 それから,その他計画の根幹にかかわらない軽微な変更については届け出制とされました。具体的にはここにも書いてあるように,機関の名称,所在地,機関の長の氏名等の変更,計画の全体に影響が少ない軽微な変更であると考えられるものは届け出制とされました。あと今回ちょっと関連してくるんですけれども,機関の長,医歯薬学総合研究科長というのが公文裕巳先生から今度田中紀章先生に変更になりましたので,この部分についてのみは届け出でよいということになります。ただ,今回はそれにあわせて申請者の方から研究責任者の変更もあわせて申し出をされておりますので,そのあたりを今日御審議していただくようになるとは思います。
 それから,指針の中で研究者のカテゴリーを使用責任者,使用分担者,研究者に分類するということになりました。この中で使用責任者,使用分担者については従来どおり変更とか追加がある場合には文部科学大臣の確認申請というのが必要になってきますが,研究者の追加,変更については,手続の簡素化ということで報告事項とされました。
 それと現時点で文部科学大臣の確認を受けている研究計画,この研究計画がそれに該当しますけれども,新指針に基づき使用計画申請書を再提出して,経過期間中に文部科学大臣の確認を再度受ける必要があるということで聞いておりますので,今回のこの本日追加で提出させていただきました資料,分厚いのが1個ついておりますが,今回の新指針に合わせた形での様式につくり直しております。ですので,それも合わせて御審議いただけたらと思っております。
 補足があれば,A先生お願いします。
A : どうもありがとうございました。
 今御説明いただきましたように大きく,どう分けるかによって4つとか5つとかの大きな変更点がございます。
 まず第1に,分配機関を設置するということと,それから海外の機関への分配を制度化するということに関しましては,私たちの方では私たちの機関は使用機関でございますので直接には関係がございません。ただし,そこでどのような考え方に基づいてこういう方策が新しくとられるようになったかということは,ほかのことを審議する場合にも参考になると思われますので一応御理解をいただきたいと思います。
 まず1番目に分配機関を設置するということに関しましては,今まで樹立機関が分配を兼ねていたわけですけれども,業務が過重になってきたために独立した分配機関を設けるということのようでありまして,基本的には今聞いている限りでは国内に存在するセルバンクがこれを担うということで,一番先行しているのは理化学研究所のセルバンク,それから厚生省の方のセルバンクもこういう方向に向けて,今独立法人になっているんですけれども,これに向けて少しずつ準備をしているようでありまして,この前の説明会にも来て活発な質問をしておられました。
 それから,2番目の海外の機関への分配に関しましては,基本的な精神としては日本の研究に海外の資材を使っているということを考えますと,日本も双方向主義の立場で海外の研究にも貢献する必要があるであろうと。それが一番のベースになって,海外への分配も制度化して認めるということになったという説明がありました。それで,基本的にはどのようなところに出すかということに関しましては,それぞれ国内にガイドラインなり法令なりでES細胞の取り扱いがきちんとされるということが担保されている国の機関に対して文科省の方でそれぞれ個別の契約を結んで出すということのようであります。そこで少しこの改正を審議する委員会の議事録を読んでみますと,1つ問題になったのはインフォームド・コンセントの問題で,これから新しく樹立する,あるいは提供者に対しては,海外に出すこともあり得るという説明を明確にするということが求められております。ところが,これまで既に提供された件に関しましては明確にそれがなされておりませんでして,それではこれまでに樹立された細胞を海外に出してもよいのかという議論が中央の委員会の方で大分あったようでありまして,それぞれの意見がありましたけれども,どうやらそれは特にそのことに言及しなくても既に樹立されたものも配付の対象にしようということのようであります。
 この2つは直接的な関係がないのでと思いますけれども,何かこの2点について疑問なり御質問なりございますでしょうか,コメントでも結構ですけれども。
 はい,どうぞ。
E: 海外に出す場合にも全く同じような条件で手数料等,取るんでしょうか。
A : そのことについても審議されたようでありまして,日本のES細胞の取り扱いに関しましては実費以外は無償ということが原則となっていますので,送料等はとるんでしょうけれども,そのほかは無償ということで,それが条件になっているようです。
 よろしいですか。ほかに。
 それでは,残りの3点で,1つは分化細胞の問題なんですね。このQ&Aにもいろいろ説明がございましたけれども,これまではES細胞に由来する細胞はすべて,その取り扱いに関してES細胞と同等とみなすと,当分の間,そういうことで最初の指針がスタートしております。したがって,ES細胞に由来するどのような細胞も第三者に譲渡することは禁止されておりますし,研究が終了した時点で必要な場合は樹立機関に,すなわち分与していただいた機関に返却するか廃棄するということが定められています。
 この説明のところにもありましたけれども,だんだん研究が進んで幅広い解析が必要となってきたということと,それからES細胞の取り扱いが実際にいろいろなところで行われるようになりまして,その取り扱いの危険度とか安全性とか取り扱い体制が安定しているかどうかどうかとか,そういう経験が積み重ねられてきてある程度安心といいますか,現実に信頼できる状況になってきたということがあると思います。そういうことを踏まえまして,ES細胞に由来する分化細胞の特性の解析を行うとか,あるいはその再現性を確認するとかという研究はもう少し広い部分で行われる方が効率的ではないかという考えで,分化細胞という定義を設けたと。分化細胞に関しましてはこれまでのようなES細胞由来だからES細胞と同等に扱われるのではなくて,由来であってもES細胞と同様な扱いはしなくてもよいということにすると。ただし,例えばその細胞を第三者に分与する場合はES細胞由来であるということを心にとどめて研究をしてもらいたいという要望でありまして,したがって分与が適当であるかどうかは機関長が,もちろん倫理審査委員会の判断を経てですけれども,機関の長が判断をするのであって使用者が判断するものではないということがうたわれております。同時に分与に当たってはこれがES細胞に由来したものであって,そのことを心にとどめて使用するようにということを必ず周知させるということも要望されております。
 ただし,恐らく今後この倫理審査委員会がかかわるところで一番問題なのは,分化細胞というものをどのように定義すればいいのかということです。私はこれを聞いたときにちょっとそれはなかなか大変だなと思って,その後で質問をしてみたんですけれども,正直なところ文部省の担当者もこの点に関しては明確な意見をお持ちではありませんでした。それは僕が考えるに無理からぬところでありまして,もちろん文科省の専門官は行政の方でありますから,細胞のビヘイビアはなかなか御存じないと。その審査をしたこれは何というんですかね,専門委員会ではなくて,生命倫理専門調査会というのがございまして,ここで指針の改定についての妥当性を審議されているようですけれども,その議事録を見ましてもどうも分化細胞をどのように考えるかということについて細かい議論はされていないように思うんですね。したがって,どう判断していいか分からないので質問したんですけれども必ずしも明らかではない。その後に京都大学の中辻先生に同じ質問を,ES細胞を中心に研究している人たちの中ではどのような常識があるのかということを伺ってみたんです。そうすると,1つ大事なのは分化細胞集団の中に未分化のものがないということが割合大事なポイントであろうということをおっしゃいました。実際に新しい指針の中でも,未分化な細胞の存在が確認されたら直ちにそれを届け出て適切な処理をすると。つまりそれは分化細胞集団として扱われないことになりますので,そういうことが書いてあります。
 ただし,それではその未分化の細胞の定義は何かということになりますと,どうもそう簡単ではないんですね。それで1つはマルチポーテンシーをなくしたものという議論がありましたが,ではそのマルチポーテンシーというのはすべての体の構成細胞にコントリビュートする能力を意味しているのか,あるいは胚葉を超えた細胞への分化を意味しているのか,あるいは同じ胚葉内でも幾つかの細胞系列になればよいのか。そのあたりのことは明確には定義をされていないというのが現状のように私は理解しております。ということは,これから世の中の議論がどうなっていくのか,実例がどうなっていくのかということを我々はモニタリングしながら考えていかなくてはいけないと思いますけれども,少なくとも現時点では明確な判断基準はありません。したがって,委員のそれぞれの先生方がこの分化細胞というカテゴリーを導入した精神の背景をよく探っていただいて,それぞれの御判断をお持ちいただいて,その中で我々が議論して決めていかなくてはいけないというような状況だというのが私の認識なんですけど。
 これについて何か御意見,コメントがあればお願いしたいと思います。
D: 確かに先生が言われましたように未分化の細胞が混在しているというときに,それは十分考えられますので,分化細胞の定義というのは非常に難しいと思うんですね。ましてや中には研究の一端としまして,一旦分化したものが脱分化するかどうかというようなことを研究する人も出てくる可能性もあると思うんですね,そうしたところで非常に判断が難しくなると考えますけれども,そうした質問はなかったのでしょうか,逆の脱分化という話の部分では。
A : 脱分化させる研究があり得るとか,あるいはその脱分化,もし脱分化に成功した細胞をどうするのかという議論はございませんでした。分化細胞の定義は問題ですけれども,もう一つ,仮に定義が成り立ったとして,どの範囲でどういう目的ならば第三者に譲渡してよいのかということも問題だと思います。この点も質問したんですけれども,それも必ずしも明確ではありませんでした。というのは,私自身が思いますのにそこのところが恐らく一番大事であって,例えば本学の第1外科でES細胞の分化誘導の研究をしていると,そこでできた分化したと認定された細胞集団は,例えば学内のいろいろな研究者に配付してさまざまな角度から研究をしてもらえば,当然研究の精度もスピードも上がるはずなんですね。だけども,それが許されているのかどうか,それが許されるのかどうかということが恐らくはこれから一番大事で,それを質問したんですけれども,文科省の担当の方がそのときに答えられたのは,私たちは余りそういうことは考えておりませんで,研究の終了時に細胞をどう扱うかということが主な関心でしたと,こういうふうにおっしゃったんです。それだったら非常に話は限定されてしまうわけで,研究が終了した時点でその後どうするかという話になってしまうので,相当影響は違うであろうと。
 実際に新しい指針を読んでみますと,皆さんのお手元の資料の改正指針の解説ですか,ここの中のどこかにあるんだと思うんですけれども,要するに分化細胞をどのように扱うかという議論があったときに,研究が終了した時点でほかの研究というふうに,研究が終了した時点でということがほかの研究にはかかっていないというような文章になっていたと思うんですよ。
 分化細胞のところがありますか。64ページ。そうですね,64ページの右側の解説のところの3番目のパラグラフ,「したがって使用責任者は使用計画において作成された分化細胞を」云々というところに,「他の機関に譲渡する場合または使用計画の終了後に使用または保存する場合」とこう書いてあるんですね。つまり,「他の機関に譲渡する場合」という前には使用計画の終了後というのがついていないと。私は法律規定がどのように厳密に解釈できるのかどうか分からないんですけど,少なくともこの文章からしますと終了後でなくても,当たり前のことかもしれませんが,終了後でなくても分化細胞を他の機関に譲渡することはあり得るということなんですね。だから,問題はもしこれが広く認められると研究のアクティビティーというか,広がり,信頼性は非常に広まると思いますけれども,ただその管理というものがその程度のことでよいのか,ただ単にES細胞に由来している細胞ですよというお知らせだけをして,あとはその研究者に任せるということでよいのか。このあたりにかなり微妙な問題があるのではないかと思います。
 ヒトES細胞の取り扱いに関しては,最初のときからすべて中央でものごとを厳密に決めて例えば法律をつくって規定するよりは,むしろある自由度を持って機関内倫理審査委員会に次第に権限も渡していくし,その中で自主的な形でちゃんと動いてもらいたいという精神があるように私は理解しておりまして,恐らくこの部分もそういうことで理解できるのではないか。確かに条文を見るとこのように書いておりまして,かなり幅広い裁量権が各機関というか使用者,使用機関にあるように見えますけれども,逆に言えばそれだけ任されている中でこのES細胞の取り扱いの精神を維持していくというのにはそれなりの個別の規制がかかる必要があるであろうと。そういうことを考慮しながら,恐らくその審議をしていかなくてはならないのではないかというのが私の理解なんですけど,いかがでしょうか。
D: もう一度よろしいでしょうか。先ほど脱分化の実験をするかもしれないというような話をしましたけど,これはある完成品があったとして,例えばソフトウエアでもそうですけれども,ある物を製品としてつくった場合,必ずその中にバグがあるというところを知らしめようとして活動する人たちがいるわけですね。このES細胞を用いた研究であっても,完成品ができましたといって公開されて,それは研究計画期間であろうと,その終了後でもあろうと,分配されますと,それに対して本当に大丈夫かということを検証する人たちがやはり出てくると思います。ですので,何らかの対策が必要ではないかなと思ったわけです。それで質問いたしました。
 今A先生が示された64ページの第3番目のパラグラフを超えて第4番目に行きますと,一番最後に未分化細胞が認められた場合には直ちに何とか対応しなさいというのが書いてありますから,そのことを付与して分化細胞を譲渡していくということになりますと,安全な形でいけると思います。そんなふうに今,後から入ってきた情報でそう判断させていただきました。
 以上です。
A : ほかにございますでしょうか。
 積極的にそれぞれ御自由に発言していただきたいと思うんです。倫理審査委員会の審議が一部の委員のみの発言によって進行していくということはまずいことですので,遠慮なさらずに発言していただければありがたいと思います。
 よろしいですかね。
 余りこの部分だけに時間を費やしていることもちょっとできないということが1点と,幸いにして今すぐに譲渡するというような話ではございませんので,少し時間をかけて我々一人一人がこの部分の問題を評価をして,それぞれそれなりの基準を持っていただいてまた議論をしたいと考えます。
 恐らくES細胞から誘導された細胞をどういうふうに見るのか,どう扱うのかということには2つの問題があるように私は思うんです。というのは1つはもともとES細胞に由来しているということで,ES細胞がいつも言われておりますように生命の萌芽としての胚を滅失してつくられたと。そういう意味ではここでも随分議論があったように普通の細胞とは異なる感覚を持って扱うということ,すなわち由来によって,由来の特性による問題というのが1つございます。それからもう一つは,ES細胞がひょっとするとマルチポーテンシーであることによって今後どういうことに使われるかという問題があると。つまりここで未分化の細胞が出たら廃棄するなり処理をしなくてはいけないということはどういうことかというと,未分化の細胞であれ由来は同じ,分化した細胞であれ由来は同じでありますから,恐らくそこの焦点はその細胞がこの先どれぐらいのどういうポテンシーをもっているのか,どういう危険性につながるのかということに関連した議論ではないかと思うんです。だから,恐らくその2つの部分は少し分けて考えた方がいいのではないかと私は思っております。
 というのは,皆さんも御承知だと思いますが,京都大学のさる先生がマウスのファイブロブラストにたった4つの遺伝子を導入しただけでES細胞様の細胞になるということを示しました。ということは,マルチポーテントであって将来は生殖細胞系列でさえも生み出しうる細胞が,実はES細胞オリジンではなくてつくられる可能性があるわけですね。その細胞の危険性というのはES細胞由来の細胞と全く変わらないということになります。先ほど私が上流と下流に分けて考えた方がいいのではないかというのは,下流に関してはそういう方法によってつくられた細胞も全く同じように取り扱わなければ安全性とか信頼性を確保できないであろうと。上流は話が違う。そういうふうに考えていく必要があるのではないかと思っているんですけど,そういうことも含めてちょっと先生方にまたお考えいただいて,これから具体的な審査をしなければいけないときに備えていただきたい,備えましょうということで,この分化細胞についての議論は終わりたいと思うんでがよろしいでようか。
 もし特段の意見がございませんようでしたら次の変更点の確認に進みたいと思います。1つは具体的な手続上の細かい点はいいんですが,新しく,今まで使用責任者と研究者,使用者に分かれていたんですが,使用分担者というのが新しくカテゴライズされまして,研究に携わる人は使用責任者,使用分担者,それから研究者ということになっています。使用責任者の役割は今までと余り変わらないんですけれども,使用分担者を設けるということがありまして,使用分担者というのは使用責任者の職務をほぼ補完できる,代替できる程度の能力を持った方というふうに理解されます。それから,研究者に関しましては,これは大学院生とかテクニシャンも含めて,技術員も含めて,実際に研究に携わるんだけれども,そこまでの責任というか能力は求めないし全体を率いることもないという,そういうふうに3つに分けられております。使用分担者は必ず設けることとなっているようでありまして,今回の変更届にもそれが入っておりますので,そのことを御理解いただきたいと思いますけど,この使用分担者について御質問がございますでしょうか。
 よろしいですか。
 次の改正点は手続上の問題と,それから指針のより明確な運用を図るために指針で求められる要件の明確化ということが言われております。これまでは余り細かいところをできれば定めないで,精神を理解してもらって,むしろ具体的なところは機関内倫理審査委員会に詰めてもらいたいというふうな立場だったようですけれども,実際に運用してみるともう少し規定してあげた方がかえって親切ではないかという観点からそういうことが出てきたと理解しております。
 例えば,これは幾つかの点があるんですが,1つは使用責任者は教育研修をちゃんと計画して,それにみんなを参加させなくてはいけないと。その教育研修の計画を立てて,そしてそれを実施するというのが機関の長の責任で,使用責任者はその教育研修に関係者を参加させるという義務を負う。同時に使用責任者はみずから独自の教育研修の機会を設けるというようなことが書かれてあります。
 それから,例えば倫理委員会の構成もこれまでに加えて国立大学法人化されたということもあって,例えば内部の機関以外の者というのに,使用機関とそれが属する大学法人以外の人を2名以上入れなくてはいけないという規定にもなっておりますし,それからこれも以前に少し問題になりましたけれども,親族とか利害関係者が審査に加わらないようにということも指針で明確になっておりますので,それに従って一部等委員会の規定を見直すということにもなります。それは後で具体的に出てきますけれども,この点に関して何かございますでしょうか。
 よろしいですか。
 それでは,一応概略を御理解いただいたといたしまして,規程の変更の検討に入りたいと思います。まず,当委員会の倫理委員会規程でございますけれども,資料をごらんください。設置のところに,これはこの一文を入れたらどうかと思いましたのは,指針の中に倫理審査委員会は,言うまでもないことかもしれませんが,自由な活動に基づいて独立して審議を行うということが明らかに書かれております。そのことがこの学内の本委員会の規定の中にございませんでしたので,頭のところに「委員会の審査は自由かつ独立した活動に基づいてこれを行う」という一文を入れたらどうかということであります。
 それから,第3条第2項に,これは新しい指針の中に書かれておりますのでそれに準拠したものですけれども,「委員会は研究科及び国立大学法人岡山大学に所属する者以外の者を2名以上含み」というふうにここも明確化されております。つまりこれはどういうことかといいますと,今まで「研究科に所属する以外の者」というふうな解釈で,岡山大学に所属しながらも本研究科には所属していない人を内部の人とカウントするのか外部の人とカウントするのか必ずしも明確ではなかった。そこを明確化して,岡山大学法人に所属する人も内部の人であるということを明確化するということであります。
 それから,その次の項に新しい指針に明記されたものを入れております。使用計画を実施する者,使用責任者との間に利害関係を有する者及び使用責任者の3親等以内の親族は審査に参画させないということが書かれてあります。委員にしてはいけないということは書いていなかったので,そのことはどういうことかなとちょっと考えてみましたら,結局計画ごとに,例えば本学の研究,この倫理審査委員会にもいろいろな計画が出てくるはずで,計画ごとに親族とかあるいは利害を有する者というのを考えていけばよろしいと。だから委員に入っていても,関係する場合はその審査から外せばよいというふうに理解されるので,最初は委員から除外すると書こうと思ったんですけど,こっちの方がいいと思ってそうしてあります。
 それから,あとは委員会の運営がどの指針によるかということで,平成19年度の新しい指針,一番最後のところですけれども,指針に定めるところにより行うものとするということと施行日を何日ということでありますけれども,これについてはいかがでしょうか。
H: 質問ですけれども,3条3項ですけれども,「使用計画を実施する者」には使用責任者から研究者まで全部入るのかということと,それからそこ以下のところで利害関係者や3親等以内の親族は使用責任者との関係という形になっていますけれども,これは指針も使用責任者ということなのでこれでいいんだと思うんですが,使用分担者と使用責任者というのがかなり役割的に近いものだとすればそれでいいのかということについて,もし皆さんの御意見があれば伺いたいなと思いました。
A : 今の件について委員の皆様方から何か御意見がございましたらお願いしたいと思います。
 ございませんでしょうか。
 もとの新しい指針の中に倫理審査委員会について,これは樹立機関について倫理審査委員会の中身をまとめてあと読みかえることになっておりますので,樹立機関のことについての項を読み上げますと,「樹立計画を実施する者,樹立責任者との間に利害関係を有する者及び」となっているんですね。ということは,これを使用というふうに読みかえまして,そこに書いてあるんです。「使用計画を実施する者」ということでありますから,当然使用者も使用分担者も全部含むというふうに解釈していいのではないかと思っているんですけど。
 恐らくは親族の場合は多分利害よりも,どうなんでしょうか,もうちょっと狭い感じになっていて,親族の場合は使用責任者との親族関係だけが問題になっていると。これも指針に書かれていることを準用したということであります。
 御意見ございませんか。よろしいですか。
 それでは,この方向で改定させていただきたいと思います。
 改定の手続については,これはどうするんですかね。
事務: 改正の手続については,関係の会議に諮り了解を得た上で研究科長の決裁をとりまして,正式に発効させたいと思います。
A : できるだけスムーズに手続を進めて,早い時期に正式な改定にこぎ着けたいと考えております。
 では,次に本研究科が定めているヒトES細胞研究実施指針でございます。これも基本的には新しい指針に基づいてのことでして,修正点はすべて下線部で示されております。一番右上に改正の日時,それから第1条の真ん中に指針に基づいてということですので新しい指針を入れたと。それから,第2条第3項の5番目に「機関内の研究者に対し,ヒトES細胞使用に関する教育研修計画を策定し,これに基づき教育研修を実施すること」ということで,古い規程はそういうことは当然の義務として考えられていたんですけれども,指針に明文化されたこともありましてここに明文化いたしました。それから,次に「作成した分化細胞の譲渡及び使用計画完了後の使用または保存を了承すること」ということです。つまり分化細胞の取り扱いを処理しなければいけないという義務が新しい指針にもありますので,そのためにこれを充てたわけですけれども,括弧内のことは,もとの文章,指針に「了承すること」となっているので,「了承すること」ということをデューティーにすると最初から了承しなくてはいけないみたいなことになるから何かおかしいなと私は個人的に思いましたので,「保存の適否を判断し了承すること」というふうにした方がいいのではないかというのでそこに括弧で入れておきました。ちょっと委員の先生方の御意見を伺いたいと思います。
 それから,次のページの3行目に使用分担者が新しく設けられましたのでそこに入れてあるということです。それから,指針に定められたものということで第2項に「十分な専門知識及び技術的能力を有し,かつヒトES細胞の使用を総括し研究者に対し必要な指示を与えることのできる者であること,また」ということになっております。それから,その下の方にやはり使用者だけではなくて使用分担者及び研究者となっております。
 それから,6というところに新しい項目を起こしまして,使用責任者は……これはちょっと誤りですね,これは。ごめんなさい,この部分を一部修正しなくてはいけないように思います。というのは,これは使用責任者の責務を定めているものでありますから,「使用分担者及び研究者を機関の長の実施する教育研究に参加させるとともに,そのほかヒトES細胞の使用にかかわる技術力や倫理的認識を向上させるための教育研修を実施すること」ということにしたいということであります。
 それから,その下の3,4のところは使用分担者という名前を入れたという,以下全部そうですね,ということであります。
 いかがでしょうか。
E: 簡単に,気がついたところから。6ですね,「保存の適否を判定すること」だけでもいいかもしれないですね。適否を判定したら,適ならば了承しますし,不適ならば了承しないことになりますので。
A : そうですね。
E: 「了承すること」が入ると,さっき先生がおっしゃったように何かせざるを得ないという感じになるんですよね。「の適否を判定すること」だけでも。
A : 判定し,認可する。
E: 「判定し了承する」,判定することだけで,判定したらそれにしたがって自動的に手続が進むわけですよね。正確に言えば「判定し,適ならば認可」あるいは「了承し」で,そこまで書かなくても。適否を判定することだけで通じるような気が。
A : なるほど,法律的な観点からいかがですか。
F: 今E先生が御指摘された方向でよろしいのではないかと思います。了承とか認可とか入れるとかえって誤解を招きかねないかなという気はいたしますので。
A : はい,分かりました。そうすると,「完了後の使用または保存の適否を判定する」ということでよろしいですか。
E: 「こと」ですか。
A : 「こと」ですね,上も「こと」ですから。
 ほかの委員の先生方はいかがでしょうか。この件を含めてほかの部分,ほかの部分といっても余りないんですけれども。
 よろしいですか。
F: 単純な字句修正の問題ですけど,2条4項の2号ですね,「使用分担者及び使用者」にという形で古いのが残っておりますので,多分ほかのところは全部「使用分担者及び研究者に」というふうになっていたと思いますが,そこが直っていないと思いますので。
A : ありがとうございました。では,この部分は修正いたします。
 ほかにございますか。
 E先生。
E: 第4条の6ですか,第1行目の「教育研究」ですか。「研修」ではないですか。「研究」でいいですか。
A : 「研修」ですね,そうです。
E: その上の文章の一部が下の文章ですよね。要するに「その他」以下の文章はその上の文章の一部分を例示しているわけですよね。違いますか。
A : いや,そうじゃなくて,ここの部分はどういう意味かと言いますと,まず機関の長が一番のデューティーを持っているわけです。要するに機関の長が教育研修の機会を,要するに計画を策定して,そしてそれを実施すると。使用責任者は使用分担者及び研究者をそこにまず参加させるという義務を一方で持っている。それが1番目の文章です。そのほかに,それだけに頼るのではなくて使用責任者は独自に自分たちなりの独自の努力もしなくてはいけないと。そういう意味なんですけど。
E: なるほど,上の教育研修と下の教育研修というのは違うもの。
A : そうです。目的は同じですけれども主催者が違うと,一番単純に言えばそういう話。
 よろしいですか。
 それでは,この変更も同様な手続で定めさせていただきます。
 はい,どうぞ。
H: ちょっと戻ってしまうんですが,規程の第5条の議事の後段に「みずからが実施する研究等が審査を受けるときは委員として当該研究所の審査に加わることはできない。この場合において当該研究等に係る審査を行う間は委員の数から除くものとする。」というのがあって,これは先ほどの3条3項と何かこう。
A : 矛盾するということですか。
H: いや,矛盾……。
A : 少し整合性がないですよね。
 全部とってしまえばいいのではないですかね。
H: 同じことを言っている。
A : そうそう。
 委員会規定の5条の後段に,今回の修正のようなことがなかったので,「ただしみずからが実施する研究等が審査を受けるときは委員として当該研究等の審査に加わることはできない」と。だから,例えばこの委員会の構成メンバーがある計画を自分が実施しようというときには委員会から外すということの規定がしてあったんですね。だけど,確かに今回の修正が入りますと,そういうことはあり得ないわけだから,この部分はもう削ってもよいと。そういう議論ですよね。
E: 参加させないという3条の。
H: 使用計画を実施する者は審査に参加させないと。
事務: ここの解釈で「委員の数から除く」というのは,今この委員会は10名で成り立っておりますけれども,10名で委員の3分の2以上の出席,ですから7名の方の出席が必要になってくるんですけれども,そうなってくると今度は委員の数から除くということは9名が正式なメンバーということになって,9名の3分の2ですから実質は一緒なんですけれども,そういう問題です。だから委員の数が変わった場合に,11名,12名とかになった場合にやはりここは残しておいた方がいいかと思います。もちろん前条との整合性をとる必要はあるんですけれども,残す必要があるのではないかと思います。
A : 分かりました。そうすると当該研究等にかかわる審査を行う間は委員の数から除くと。委員の数から除くということが大事なので,その前段の文章を変えて,この前の変更点,すなわち第3条の第3項ですか,「第3項の規定にかかわる者はこの委員から除く」と,そういうふうに書けば一応整合性がとれると思うんですけれども。
F: 先ほど委員長がこの3条3項の部分は樹立の方の規定を準用する形になっているのでということで,「使用」というふうにそこを書き直したものを使っているという御説明だったと思うんですけど,3条3項の読点の位置の関係で,解釈が混乱するかもしれないので,確認です。例えば3条3項というのは例えば使用分担者ですかね,使用分担者との間に利害関係を有する者であるとか,使用分担者の3親等内の親族というのは審査には参画できるという考え方になるわけですか。
A : まず第1に樹立計画で読みかえるということに意味はないんです。というのは,もともとの指針がただ単に同じことを繰り返すのを避けて読みかえるということだけですので,使用計画にもこのルールは厳密に適用されるということなんですね。読みかえるのは我々が恣意的に読みかえているのではなくて指針がそのように定めていると解釈してください。それで,この点の位置というのはこれはもとの指針にこの点の位置を正確にこれを移したものだというふうに,私はそのつもりでやったんですが,確かにそうなんです。そこに点が打たれております。それで,これは私自身はどのように解釈したかといいますと,「及び」というところで大きく分かれていて,使用計画を実施する者や使用責任者との間に利害関係を有する者と……違うかな,違うか。
E: 通常はそうです。A,B及びCという形で。
A : そうか,そういうことですね,つまり。これはこういうことですね,つまり使用計画を実施する者がA,使用責任者との間に利害関係を有する者がB,それから使用責任者の3親等以内の親族がC,でこのA,B,Cは対等で全部含めていると,こういうことですね。分かりました。ここをちょっと誤解しておりました。
 それで,そうすると審査に参画させないということは,時には委員に入っていることもあり得るということですよね。だから,それに従ってこの次のページの第5条は,だからそういたしましょう。つまり,「ただし」というところから始まる文章の前段は「前項の規定に触れる者については当該研究等にかかわる審査を行う間委員の数から除くものとする」と。
E: 審査に参画できないということと委員の数から除くということとの関係は。
A : 委員の数から除くということは,先ほど事務から説明があったように,決を採る際の何分の1以上が何人になるかという,純粋にそういう手続上の問題です。つまり計算するときに……。
E: それは分かりますが……。
 審査に参画できないというのは,人数は数えるという意味ですか。
A : 委員の数から除くというから,その人はいなかったものとして4分の3なり3分の2なりを数えるという意味です。
E: いずれにせよ整合性は必要ですね,この先の文章に。
A : そうです。だからそうしましょう。
F: 済みません,もう一度確認なんですけど,先ほどHさんが最初のころに聞かれたかと思うんですけど,使用計画を実施する者というのは,使用責任者それから使用分担者,研究者すべてを含んでいると。
A : そうですね。
F: それから,使用計画の形式上の責任者である研究機関の長も含むということになるわけですか,この「使用計画を実施する者」は。使用計画の表書きはその研究機関の長の名前で計画が出るわけですよね。
A : それはどうなんでしょうか。そうすると,例えば広い意味でいうと倫理審査委員会はどうなるんですかと。つまり使用機関の長は入らないのではないんですかね。
G: 「実施する者」だから機関の長は入らないでしょう。
A : 入らないのではないかと。使用責任者以下。
F: 使用責任者以下すべて入るということになると,やはり5条のただし書きはこれは消すわけにはいかないということになって,ただ委員の数から除くものとするというところが少し分かりづらいというか,要するに定足数の算定の対象にしないということですよね。そこをもう少し明瞭にするのか,それともこの記述でそういう意味合いだというふうにここで了解しておくのかという,その程度だと思いますけど。
A : 今の件に関しましてはここの部分だけ読むと委員の数から除くっていって何のことかよく分かりませんが,その前段に3分の2以上が出席し云々ということがありまして,だからこの項は要するに定足数とか云々の議論の中でのことですので,これで御理解いただけるのではないかと思うんですけど。
 それでよろしいでしょうか。少し時間があれですので,この前段の部分は先ほどのようにその前項を受けてということを明文化しますけど,その細かい文章の文言までここで検討するとそれだけで終わってしまいますので,そこはお任せいただいて,私と事務方で検討いたしますので,後はお願いするということでいかがでしょうか。
F: はい,異議なしです。
A : ありがとうございました。そのようにいたしたいと思います。
 それでは……。
D: 済みません,もう一点だけ。今もう一度規程の方に戻ったので気がついたことを。規程の方,最後の方に施行日を書いてありますけれども,指針の方は上段のところに制定日,改正日を列記して歴史が分かるようになっていますね。ですから規程の方もその改正の歴史が分かるようにどこかに記された方がよろしいのではないでしょうか。通常は最後のところにずっと続いてくると思います。
A : はい,分かりました。そのようにいたします。
 それでは,実際に申請者B先生もずっと1時半から待機していただいておりますので,現在の研究の進行状況の御報告をいただくということと,それから使用計画の改定についての要点を説明していただくということをお願いしたいと思います。
 この新しい指針は5月23日ですか,に公布されまして,施行日が8月1日,それから施行から3カ月以内にすべての使用計画が新たな指針に基づいた計画書を提出することを義務づけられています。だから,10月1日までに変更があってもなくても一度研究使用計画を策定し直さなければいけないということになりました。
 以前から使用者側から幾つかの変更点の希望が出されておりまして,それを今から説明していただきますけれども,使用責任者の交代とかあるいは研究者の構成とかあるいは細胞の凍結云々の問題もありますので,それをどのように扱うのか。まず旧指針に基づいて提出して,新しい指針に基づいたものを後からもう一度出すのかということをいろいろ相談していただいて,文科省とも打ち合わせをいたしまして,結論としてはもう最初から新たな指針に基づいた計画書を出して,それで一挙に改定を行うというそういう方向でやろうということになりましたので,この点は御了解いただきたいと思います。
 では,申請者B先生に説明いただきますので。
事務: 済みません,資料の説明のときにちょっと言い忘れたんですけど,今日机の上にお配りした資料1は,こちらの差しかえになっていますので,こちらの2枚とじになっている方でお願いします。事前に配付している裏表の1枚物の資料1は廃棄してください。
 では,申請者B先生に入っていただきます。
A : 申請者B先生においでいただきました。申請者B先生,お忙しいところどうもありがとうございます。進行の都合で大変長らくお待たせして申しわけないと思いますけれども,今日まず実施報告書の内容にかかわる御説明をいただいて,その後に使用計画の変更についての要点を御説明いただきたいと思います。時間が限られておりますので,比較的簡明に要約して説明をお願いいたします。その説明をいただいた後に少し質疑をいたしまして,それで退出していただきますのでよろしくお願いします。
申請者B: 今日は皆様お忙しい中,まことにありがとうございます。
 これまでの研究の進捗状況に対しましてまず報告をさせていただきたいと思います。研究計画に関しましては,スライドにございますようにヒトの胚性幹細胞を肝臓の細胞に分化誘導して,体外式のバイオ人工肝臓に応用しようという基礎研究でございます。
 本研究に関しましては専用のヒトES細胞専用実験室の方で実験が行われております。実験を行いまして1年7カ月が経過いたしましたが,盗難そして不審者等の管理上の問題もなく,順調に細胞培養の方も行っております。入退室の記録,そして実験ノートの方を記帳させていただいております。ヒトのES細胞の培養でございますが,これはこれまで過去の2回でも御報告いたしましたように,我々は米国のジェロン社の手法にのっとりましてフィーダーフリー法を採用しているということでございます。
 これまでの研究の進展状況を2枚のスライドで御説明させていただきたいと思いますが,まず5日間は胚葉体をつくりまして,その後に特殊な細胞シートの上に細胞を播種いたしまして,欠失型の肝細胞成長因子dHGFを主成分といたしました分化誘導療法を行いまして,アルブミンを産生する,そしてアンモニアを代謝することができるそういうような肝臓細胞への分化誘導の手がかりを得たということで,セルトランスプランテーション(Cell Transplantation)誌の方にこれは2006年に発表させていただきました。
 そして,米国のノボセルから胚葉体をつくらずにアクチビンAという物質を使うことによりまして,我々が目的とします内胚葉系の細胞への分化誘導の効率がいいというふうな報告がございましたので,胚葉体をつくらないというような方法を少し検討いたしました。そして,アクチビンの濃度を50ナノグラム・パー・ミリリットルというように設定いたしまして,5日間培養した後に1週間先ほどのdHGF,欠失型の肝細胞成長因子を使うことによって7日間培養いたしますと,アルブミン遺伝子,そしてサイトケラチン18といいます肝細胞に認められます遺伝子の発現,そしてアルブミンの免疫染色をいたしますと培養細胞の18.3%のポピュレーションにそういう細胞が認められたと。そしてまた,当該細胞はアンモニアとリドカインを代謝する能力があったということが分かりましたので,こちらの方も2006年にセルトランスプランテーション誌の方に報告をさせていただきました。
 このスライドは先ほどの胚性幹細胞培養にアクチビンを5日間使いまして,dHGFを500ナノグラム使いますと,アルブミンの陽性の細胞が出てくるということでございます。
 今回の研究の御報告でございますが,マウスの胚性幹細胞を我々はこれまで教室で樹立してまいりましたヒトの肝臓の非実質細胞,いわゆる肝細胞の仲間細胞,いわゆる血管の内皮細胞,そして胆管細胞,そして星細胞というふうなものが肝臓を構成している非実質細胞でございますが,こういう細胞の馴化培地といいますか,コンディションドミディアムというふうな言い方をいたしますが,こういう細胞を培養した上清を集めることによりまして肝細胞への分化誘導ができないかということで検討いたしました。マウスの研究結果では,マウスの胚性幹細胞はこういう3種類の細胞を使うことによりましてマウスの肝細胞への分化誘導効率がよかったというふうなデータを今年のネイチャープロトコールという雑誌に報告をさせていただきましたので,そういう手法を用いまして,これをヒトに応用したわけでございます。やはりアクチビンAという物質とベーシックFGFというものを3日間使いまして,その後1週間形質型の肝細胞成長因子を用いました。
 各種未分化のマーカー遺伝子,そして肝臓細胞の遺伝子発現,そして内胚葉系の遺伝子の発現をリアルタイムPCRで検討をいたしました。注目していただきたいのは,この未分化なヒトのES細胞の場合は未分化マーカーが強い発現をしておりまして,肝臓の細胞のそういうマーカーの発現はございません。また,内胚葉系の発現も非常に弱いということが分かります。我々の馴化培地だけを使った場合は少し肝細胞としての発現がございますが,やはりまだ未分化なものの発現があるというふうな状況でした。
 そして,先ほどのアクチビンと,欠失型の肝細胞成長因子とこのコンディションドミディアム,すなわち馴化培地を使うことによりまして,未分化マーカーの発現がないということが分かりました。そして,アルファフェトプロテイン,そしてアルブミンといいました肝臓細胞のマーカー遺伝子の発現がぐっと上がってくるということが分かりましたので,馴化培地を使うということは非常にコストの面でも少し節約ができます。そして遺伝子発現の面でも良好になるというふうなことが分かりました。
 縦軸に関しましてはリアルタイムPCRでございますので,レラクティブイクスプレッションということになります。
 こういう馴化培地と肝細胞への分化誘導のdHGFを使った細胞は比較的肝細胞様の形態を呈しておりまして,未分化のマーカーの発現であるアルカリフォスファターゼの発現はほとんど認められないというふうなことが分かります。アルカリフォスファターゼは未分化な細胞には蛍光染色されますので,未分化の状態はこう,分化したものでは形態も全く違いますし,発現もないというふうなことも分かりました。
 我々のフィーダーフリー法を用いまして,ヒトのES細胞の継代培養をこれまで52回行っておりますけれども,実際に未分化な状態が維持されているのかどうかということを少し検討するつもりで,胚葉体をつくりましてゼラチンのプレートに細胞を播きますと,外胚葉,そして中胚葉,内胚葉に向かうような形態のものが実際に出現してまいります。そして,内胚葉のマーカーでありますアルファフェトプロテインの発現がある。そして,中胚葉のマーカーでありますが,アルファカルディアックアクチンの発現がある。そして,外胚葉のマーカーでございますパックスの発現もあるというふうなことで,未分化な状態は維持できていると。そして,これはアルカリフォスファターゼ染色でございますが,細胞はアルカリフォスファターゼに均一に染まっておりますので,当手法によって未分化な状態が良好に維持できているというようなことが確認できるのではないかと思います。ベーターアクチンの発現をインターナルコントロールとして採用いたしました。
 こういう海外の研究の進展状況はどうかということになりますと,これは中国の北京大学の生命科学院から今年の5月にヘパトロジー誌の方に報告されました。アクチビンAを使いまして3日間の分化誘導が行われまして,FGF―4とBMP―2を使うことによって5日間,最後は肝細胞成長因子を5日間,最終段階はデキサメサゾンを使うという18日間のプロトコールでございますが,機能的なヘパトサイトに持っていくことができたということを報告しております。彼らはこういう手法を使いましてできた肝臓の細胞を免疫不全のマウスの肝臓に移植しますと,そういう移植した細胞が,2カ月以上肝臓に生着して肝臓のマーカー遺伝子の発現をしていたことを同時に報告しております。このグループというのは,実は昨年の10月10日にバイオ人工肝臓の共同研究をしましょうということで我々が訪問したグループでございまして,昨年帰りまして国際交流協定計画の準備に入りまして,今年の3月に部局間の正式な共同研究の書類を交わすことができましたので,彼らと情報交換をしていけるというようなことでございます。
 これまでの研究の問題点といたしますと,やはり研究者は常に汚染の危険を感じつつ実験をしていますので,精神的にゆとりを得るということ,それと将来的なデータの再現性を確認するというような面から,凍結保存をさせていただきたいということは常々思っておりました。本研究を開始いたしまして1年7カ月という期間がたちましたが管理上の面も問題ないので,今回は凍結保存の申請をさせていただきたいと思いました。
 ヒトES細胞ですが,継代の初期には細胞の増殖が少し悪い,どうもアポトーシス等で死んでいるのではないかというふうな印象もありました。ですから,こういう継代に伴う細胞障害を最小限にとどめる工夫をする必要があるということを常々感じておりました。
 そして,先ほどのマウスのES細胞から肝細胞への分化誘導に関しましては,ネブラスカ州立大学のアイラ・ジェイ・フォックス教授との共同研究をこれまでしてまいりました。彼は現在ヒトES細胞株,これはウィスコンシン大学が樹立しましたH1とH9という細胞を使って肝細胞への分化誘導の研究をしておりまして,マウスだけではなくて彼らともヒトのES細胞で共同研究ができれば本研究のよりさらなる推進が図られると考えております。
 それと先ほどの論文をお示ししましたように,北京大学のDeng教授たちのグループと国際共同研究書を交わしたところでありますので,彼らもH1とH9を使用していますので,同一の細胞を使うことができれば国際的な共同研究の推進が促進ができるだろうということです。そして,分化細胞の安全性と有効性を検討したいということを常々思っていましたので,今後動物への移植実験を施行したいと思いまして倫理委員会の方にお願いをしたいと思っています。
 今回の文部科学省の指針の変更に伴いまして,教育研修セミナーにしっかり参加しろよというような御指導がございました。これは5月31日に京都市で行われました。指針の大きな点としますと,分配機関の設置を制度化しようということ,そして海外へ日本のES細胞を分配して海外の研究者との情報交換をしようというふうなこと,そして分化細胞はもう未分化なES細胞ではないというような……。
A : 申請者B先生,その部分はもう既にここで議論しました。
申請者B: そうですか,済みません。
 現在文部科学大臣によって指針の適合性が確認されているものの中にH1とH9がありますので,今回はこのH1とH9に限って外国産のヒトES細胞を使わせていただきたいという申請を行いたい思います。必要な書類に関しましては,分配に関しては必要な経費を除き無償で分配するという書類をウィスコンシンの方からいただきたいと思っております。
 そして,これは6月1日でございましたが,神戸の理化学研究所の方で文部省の専門官と笹井教授から分化細胞に対する考え方というようなものが少し,分化細胞の定義はどうするんだというふうなことがございますが,まだこれは各倫理委員会の裁量に任せるというのが文部科学省の意向でございましたが,これは理研ではどう考えているかということでございますが,未分化な細胞はいわゆる自己複製能等を持っていますので,分化細胞の定義といたしますと自己複製能を持っていない,未分化な遺伝子の発現が可逆的に喪失している,そして未分化な細胞には発現しない組織特異的なマーカーを発現するというようなものが該当するであろうと。こういうような培養条件で2週間以上培養しているということがとりあえずコンセンサスではないかというように案が出ておりました。
 それで,私といたしますと分化細胞の定義といたしますと,未分化なマーカーであるOct―4は発現しない,そして内胚葉分化マーカーであれば,アルファフェトプロテイン,アルブミン等を発現する。そして,こういうような発現が確認されるような培養条件でさらに2週間以上培養を継続したものを分化細胞というように定義させていただきたいと思います。
 そして,もう一つこのときにES細胞の技術に関する説明会がございましたので注意深く聞かせていただきました。やはりヒトのES細胞はその培養課程で容易に細胞死を起こす。細胞数が著しく失われてしまうという実用的な面での大きい課題がございましたが,彼らはRhoキナーゼという,ROCKという物質がヒトES細胞をばらばらにした場合に活性化されて,それが細胞死の原因になるんだということでこのROCKの阻害剤を使うことによりまして爆発的に,約30倍というような表現をされておりましたが,細胞を増やすことができる。そして,こういうROCKを使って細胞死を抑制した細胞は分化誘導する,多分化能を有しているというようなことも報告していますので,この薬剤を我々の培養にも応用したいと思っています。
 また,今回の指針に関しましては教育研修の取り組みを実地計画書の方に盛り込めというふうなことがございましたので,岡山大学の方でもこれまでセミナーを開催してきた経緯もございます。本年の3月29日には環境研の曽根先生を招きまして,そしてまた今年の2月6日には鳥取大学の中山先生に来ていただきまして,中四国地方のヒトES細胞研究の取り組みというように題しまして情報交換を行いました。
 これまでの研究成果を振り返りまして,今後の方針,課題といたしますと,非常に安全性の高い管理ができているというように思いますので,実験を開始しまして1年7カ月という日数も経過したことを考えまして凍結保存を申請したいということ。そして,細胞死を防ぐためにROCK阻害剤を実験に使用することによりまして細胞ロスを少なくしていこうということ。そして,H1,H9という外国産のヒトES細胞を,同時に当然日本で樹立されましたヒトES細胞も実験に使うわけでございますが,使うことによりましてネブラスカ大学そして北京大学とはもう直接に共同研究ができるというふうな体制でございます。そして,分化細胞の安全性と有効性を動物実験,動物実験これはマウス,ラットという小動物を想定しておりますが,に移植実験を行いたいということでございます。
 総括でございますが,胚提供者に対する感謝の念を持ちまして常に実験を施行してまいりました。入退室に関しましては記録をとり,施錠し,管理面での特に大きな問題はございませんでした。実験計画書どおりにこれまでのところ研究ができております。研究のより一層の充実を図るためにES細胞の凍結保存,そして外国産のH1及びH9細胞株の使用,そして分化細胞への動物実験の施行を申請したいと考えております。今後も学内外のセミナーに参加する,そしてセミナーを開催するというような教育と技術修練に関しまして一層精進をしていきたいと考えております。
 以上が研究の報告でございます。
A : はい,どうもありがとうございました。
 それでは,委員の皆様方から今発表していただいた内容に関してといいますか,進行状況及び新しく今日提出された研究計画の変更について質問をお願いしたいと思います。
 はい,E先生。
E: 細かいところから先に申し上げますと,中国で何か,先生たちの,日本のES細胞が使えないというふうにおっしゃっています。それは何か制限があるんですか。
申請者B: これまで日本で樹立されましたヒトES細胞を海外へ,海外施設に分配するということが認められておりませんでした。今回の指針の改正に伴いまして海外への分配を行おうということでございますので,ただ書類上の手続は少し時間がかかるかと思います。ただ,彼らが現在中国が使っているのはウィスコンシン大学が樹立しましたH1,H9という細胞株でございまして,これは現在日本でも使用可能でございますので,H1,H9を使うことによって彼らとの議論ができるということでございます。将来的には日本のものも海外が使えるというような方向になります。
A : ほかにございますか。
 はい,どうぞ。
E: 先ほどの,細かい点ですが,分化細胞の定義と書いていらっしゃったのは,あれは判断基準,分化細胞であるかどうかの判断基準ですか。
申請者B: そうでございます。
 分化細胞なのか,分化細胞の中に未分化なものがまざっていないのかどうかという,ここは誰も分からないというところが正直なところだと思います。今回文部科学省の方が分化細胞という言葉を使ったのは,例えば実験が終了した後に,例えば論文を投稿したり何かするときにやはり凍結保存をしておきたい,しておくことが大事であろうということで,分化したものに関しては未分化なもうES細胞ではないというように認めれば,当初の京都大学からこういう細胞をいただいていますけれども,京都大学に返さずに各自の施設でその細胞を管理できるようにしようというのが大きい趣旨だというように私の方は判断しました。
 この分化細胞に関しては研究者及び学内の倫理委員会の方で一定の基準を設けてくださいというような意見ではなかったというように自分の方では解釈をしております。
A : 今2つの問題,現在の進捗状況についての御報告ということと,それからそれと関連はあるわけですけれども,新しく使用計画を変更するということについての御説明がございました。まず,現在の進行状況についてですけれども,1つは前回も記録簿を,前回記録簿の記述が少し不備であるということでこの委員会から勧告いたしまして先生に改善のための方策について書類を出していただきまして,その後の管理状況について報告していただくということと,今お持ちいただいていますよね,それを委員の方にちょっと回していただきたいと思います。
 その後改善はされて順調に動いているんでしょうか。
申請者B: はい。その後改善をさせていただきまして,2名でチェックするというような体制にしておりますので,それ以来このような不備がないというように考えております。
A : それから,先ほど幸いにして外部からの侵入者その他事故がなかったということですけれども,今回不審者が入ってコンピューターが盗まれるという事件がありましたけれども,その盗まれた場所とこのES細胞の研究をやっている場所というのはどういう関係にあるんでしょうか。
申請者B: 旧第1外科といいますか,消化器・腫瘍外科学教室は臨床研究棟の8階に位置しております。今回我々の教室からデジタルカメラが1台盗難に遭っております。このデジタルカメラがあった部屋は我々が研究している部屋の横にございまして,実はこれは施錠できないシステムになっていますので戸をあければ入れるというところでしたので,これは盗難に遭っても仕方がないかなと思います。我々が研究しているところはその施錠がまずできるということが1点,その施錠ができる部屋の中に専用の部屋を設けてまして,そこにまた鍵を設けているというふうなことで二重のチェックになっていますので。いわゆるES細胞が専用室があるその研究室に関しては侵入されていませんので,安全面は完備できているのではないかと考えています。
A : はい,分かりました。
 そのほかにまず現在の研究の進行状況についての御報告について何か質問ございませんでしょうか。
 はい,どうぞ。
K: 分化した細胞は継代されるとかそういうことはやっておられないわけですか,現段階では。
申請者B: 現段階ではしておりません。
K: そうですか。それから,十数%ぐらいの分化能ということですが,HGFのレセプターの方の発現がどの程度かというのがちょっと気になるところなんですが,それは調べたことはあるのでしょうか。
申請者B: HGFのレセプター,C―Metの発現はこの細胞では検討しておりません。
K: そうですか,はい,分かりました。
A : ほかにございますでしょうか。
 はい,D先生。
D: 今後の研究の方向として分化した細胞を動物に移植したいということを言われておりましたけれども,今のK先生の御発言と関係して,分化の指標で18%と,アルブミン産生でしょうけれども,言われておりました。これはソーティングされてから移植されるということでしょうか。それとも未分化のものが入っていることを承知の上で移植されることになるんでしょうか。
申請者B: 現時点ではソーティングする機械がES細胞の部屋にございませんので,ソーティングは考えておりません。ちょっと話はずれるんですけど,文部科学省の先日の指針の改正でソーティングはES細胞専用の部屋になければ外へ持ち出してソーティングしてもいいですよということになりました。ですからソーティングは可能でございますが,細胞が少しやはり障害されるという,細胞の障害,ダメージを少し考えまして,移植に関しましてはソーティングしない細胞を移植したいと考えています。もう一つの理由としますと,北京大学が今先ほど示した論文などで18日間の培養を行っております。そういう細胞を免疫不全の動物に移植しているんですけれども,奇形腫等の腫瘍はつくってこない。ですからある程度分化している,そして2カ月以上にわたり移植後に試験管で認められたよりも肝細胞としてのどうも発現が上がっているようなことを報告しておりますので,現在我々が試験管のレベルで18.3%,アルブミンの指標でございますが,していますので,こういうものを移植することによってもう少し生体内で成熟化がかかるかどうかというふうなこと,そしてそういう細胞が実際に奇形腫をつくってこないのかどうかというふうなところの安全性についても検討したいというように現在思っています。
 将来的により高率に純化する方法,現在我々はマグネットを使ってマグネッティングソーティングが比較的早いのではないかと思っておりますので,そういういい手法ができましたらそういうような形で肝細胞様細胞だけをエンリッチして移植したいというふうな,次の段階ではそういうことを考えております。
A : ほかにございますか。
 はい,G先生。
G: その中国の場合はどこに移植したわけですか。
申請者B: 免疫不全,スキッドマウスの脾臓に移植をしまして,脾臓経由で細胞を肝臓に到達させております。彼らは肝臓の切片を切りまして,肝臓内に移植した細胞がインテグレートされて生着しているというような表現をしておりました。
G: もう一つ,ソーティングというのは非常に難しいのではないかなと思いますね。やはりES細胞というのは非常にアグリゲートしているでしょう。だから非常に難しい。
申請者B: まさに先生のおっしゃるとおりでございまして,ソーティングするということは非常に難しいことと,もう一点はソーティングの際には論文的によくされているのはアルブミンプロモーターの下にGFPを光らせるような方法をしていますので,ヒトES細胞に遺伝子導入を一たんする必要が出てきますので,DNA組み替え委員会の方にもしそういう研究計画を申請して認可を受けてというような,少しステップが多くなるかというように一応考えております。
A : ほかにございませんでしょうか。よろしいでしょうかね。
 それでは,次に新しい研究計画の変更についてのことでございますけれども,幾つか実験に直接関係することについては御説明いただきましたが,責任者の交代について,あるいは研究分担者をこのたび新しく設けられたことによって,研究分担者と研究者が分けられたわけですよね。その分けるときの判断基準等の説明をお願いしています。
申請者B: 今回,従来の研究代表者が教授の田中でございましたが,医歯薬学総合研究科の科長の任務につきましたので兼任ができないということがございまして,これまで研究代表者のもとで実質的な役割を果たしてまいりました私,申請者Bが新たに研究代表者として本研究を継続させていただきたいと思いました。これまで田中のもとで細胞治療の開発に9年間指導を受けてきたというような経緯もございまして,またES細胞研究に関しまして非常に密に連絡も取り合っておりましたので,研究の引き継ぎに関しましては非常にスムーズに行えます。そしてまた,8階のES細胞研究専用室が旧第1外科,現の消化器・腫瘍外科の方に属しているということがございますので,施設を使うということに関しまして何ら支障がございません。
 そして,新たに今回研究分担者というものを設けるということでございまして,これまで研究者の中に山辻,白川と深澤とおりましたが,山辻,白川に新たに使用分担者という形になっていただきます。そして,深澤君に関しましては,現在肺がん特異的なプロモーター研究という彼のもう一つのライフワークでございますが,こちらの方にももう少し時間を割きたいというふうな御意向がございましたので,研究者として残っていただきまして貴重なアドバイスをいただくというふうな形で思っています。
 あと研究者2名でございますが,ソト氏,そしてジョージ氏の2名が本研究に当たることになりました。ソト君,ジョージ君に関しましては,マウスのES細胞の取り扱い経験,そして本ES細胞研究がスタートした当初から我々の背後でES細胞研究の学習をしてきたというふうな経緯もございます。そしてまた,積極的にセミナー等に参加してきたというようなこと,そして倫理的なセミナーへの参加も行ってきたというような経緯がございますので,そういう体制で臨ませていただければと考えております。
A : ありがとうございました。
 今回大きく言って5つの変更点,ここには4つにまとめられていますけれども,あって,まず第1は責任者の交代,2番目は使用分担者,研究者の再編成,それから3番目が細胞の凍結,4番目が海外で樹立されたヒトES細胞の導入,それから5番目は動物への移植実験ということだろうと思うんですが,まず細胞の凍結に関しては,これはES細胞自身を凍結しようというんでしょうか,分化細胞を凍結しようというんでしょうか。
申請者B: 両者の凍結を申請したいと思います。
A : 現在,実際にやってみなくては分からないと思いますけれども,現在そのES細胞自身を凍結してどの程度リカバーできるんでしょうかね。つまり,そこでは2つの問題があって,1つはバイアビリティーの問題がどのぐらいかということと,それからバイアビリティーが悪くても凍結したアンプルからは必ず回復できるという,その2つの指標から考えて大体どういう感じでしょうか。
申請者B: 我々研究が当初スタートした段階で京都大学にいただいたときは,これは凍結バイアルでございまして,確かに最初の増殖が非常に悪うございますが,確実にコロニーができてくるというように一応判断しておりまして,バイアビリティーに関しましては私自身の直接の数字は持っておりませんが,京大のグループがリプロセルという会社から専用の凍結保存剤等のプロトコルが出ておりまして,それを使いますとバイアビリティーがリカバリーレイトが20から40%ぐらいはリカバリーできるというような報告がありますので,凍結保存して細胞が起きないというようなことはないというように一応考えております。
A : そこのところはES細胞をいわゆる最初のころにいろいろ議論がありましたように濫用しないと。濫用の中にはむだに死ぬとかそういうことが入っているわけですね。だから凍結計画も実際の技術が濫用の範疇に入るような,つまり再現性が悪いとか効率が悪い,理論的に例えば世の中では効率よく凍結保存を行っているということがあったとしても,みずからの技術がどうであるかいうことが恐らく重要なので,それについては例えば実際にやっているところで既にもう研修を受けたとか,あるいはこれから研修に行くとか,そういう計画はありますか。
申請者B: 米国でジェロン社の方で,これは細胞株は違うんですけれども,H1とH7に関しましては凍結後の融解というのを見学させていただきました。それと,京都大学に細胞をいただくときに末盛助教授から融解時の工夫といいますか,そういうちょっとチップスの方を実際に実施例を見せていただいていますので,少しそれは昔の話になるかと思いますので,リプロセルのあたりに御相談をさせていただきまして,一番至適な凍結保存法を施行したいというようには考えております。
A : ということで起こすところはもちろん今回の細胞をスタートするときに御経験済みですけれども,凍結するところも恐らく大事でしょうから,そのあたり最大限バイアビリティーを保つ,あるいはもう一回起こすことが可能なような率を確保する,担保するということに御留意いただきたいと思います。
申請者B: 了解いたしました。
A : それから,海外との,先ほど中国との共同研究のお話がありましたが,これは現在の段階では細胞のやりとりということは含まれていないわけですよね。
申請者B: はい。一切細胞のやりとりは入っておりません。同一の細胞から得られた情報の交換と,それとディスカッションというようなことを将来していきたいと考えております。
A : ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。
 はい,D先生。
D: 3点ぐらいあります。
 1点はその凍結保存ですけれども,これは読ませていただくとフリーザーと書いてありますけど,液体窒素は使用されないわけですね。
申請者B: マイナス80度に何日か,1週間管理した後,液体窒素の方に入れたいと考えております。
D: そうしますと液体窒素のボンベも専用のものをお使いになられるんでしょうか。
申請者B: はい,そうなります。
D: その記載が,2枚物の資料2の方になかったので確認させていただきました。
 それから,使用分担者ですけれども,1名の方は人事の異動があって非常勤講師の方が助教に,医員の方が非常勤講師になられるということですけれども,非常勤講師の方が使用分担者になられた場合に,国立大学法人岡山大学として何らかの問題が起こったときに処分とかなんとかというような文書が行くことがあると思うんですけれども,そのようなときでもよろしいんでしょうか。これは先生への質問というよりも委員長,A先生への質問になるかもしれません。
A : 済みません,今の趣旨がちょっと理解できなかった。もう一度ちょっと。
D: 岡山大学の正規の職員であれば,使用分担者という形にして何らかの問題があったときに岡山大学から処分なり通達が行くことは可能なのですけれども,非常勤講師の方が使用分担者になられている場合はそれでもよろしいかと,そういうことが対応できるのかということなんです。つまり,今回の場合人事異動があってお二方が異動されていますけれども,1人が非常勤講師から助教に変えられてやられると,お一人は医員である方が非常勤講師になられると。医員の方はどっちみち正規職員という形ではないかもしれませんけれども,その辺が,使用分担者というのは使用責任者に準ずる立場にあるということから適切かどうかというのをちょっと思いました。
A : 分かりました,今の問題点は。それは私もすぐ右から左にこれは絶対大丈夫だとかちょっと判断がつきませんので,後で御意見をいただいて事務サイドからもちょっと検討していただきたいと思っております。その点は留意いたします。
D: もう一点です。これは,済みません,情報を知り得ているからなんですが,余り言っていいことかどうか分からないんですけれども,ソトさんはたしか3年半で大学院修了の予定です。9月末修了の予定でしたね。そうされますと大学院生であるためというような表現が,この審査が終わった後ぐらいのときに多分大学院修了されるはずなので,また立場を変える形になると思うんです。その辺が少し難しいのではないかなと考えるんですけれども。また,国費留学生ですので3年半で終わられるときに一旦帰られるのですかね,それとも学振の特別研究員として延長されるのか。その辺との関連があって,書き方を工夫されないとちょっと身分が浮いた形になるのではないかなと思いました。
申請者B: ありがとうございました。今3年修了後に学振の研究員としての応募を考えておりますが,そのあたりを明確にまたさせていただきたいと思います。
事務: 先ほどの非常勤講師の件ですが,非常勤講師は非常勤職員ということで大学と雇用関係が生じますので,非常勤講師であっても指揮命令系統下には置くことはできると思います,事務手続上は。それが今のD先生に対するお答えになっているかどうかはちょっとまた別の問題なんですけれども。
D: この方は本務が法務省管轄になられるようですけれども。
事務: ですから,雇用関係が岡山大学と発生するということです。
A : 少なくともこのES細胞研究を含めた大学における研究に従事しているその活動の範囲では岡山大学の,今の話ではないですけど,フルに指揮命令系統の中に入っているということですよね。そういう解釈だそうです。
 ほかに,はいE先生。
E: 簡単に,細かい点で申しわけないですが,ヒト肝臓非実質細胞株という,これを培地として使うという話でしたけれども,この肝臓の細胞というのは例えば日本の病院に来られた患者さんのものなのか,それともいろいろなバンクから購入というか,譲渡してもらったものなのかを教えていただければ。
申請者B: これは購入したものが1種類,そして譲渡していただいたものが2例でございます。
E: 譲渡というのは患者さんですか。
申請者B: いえ,他の研究施設から。
E: 研究施設。
申請者B: はい。患者様から分離して樹立した細胞ではございません。
A : ほかにございますでしょうか。
 ちょっとつまらない話ですけど,コンディッションミディアムは「じゅんか培地」というんだと思うんですけどね。
申請者B: 済みません,はいそうです。
A : ほかにございませんでしょうか。
F: 済みません。
A : はいどうぞ。
F: ちょっと今日は書類が多いので若干混乱をしておるんですけれども,本日は結局その計画の修正部分についての審議も兼ねておるわけですよね。
A : そのとおりです。これから申請者B先生が退席された後にその中身に入るということで,その準備段階として今申請者B先生がいらっしゃるうちに聞いておきたいことを是非聞いてくださいというふうにお願いしております。
F: それで,申請者B先生がこういう形で展開していきたいという表明をされたものと研究計画変更書等との書類とはちょっとかみ合わない部分がありまして,そこで結局今回の修正ないしは追加の要望というのはどの点なのかというのがちょっと分からなくなってしまいまして。というのが,黒いクリップでとめてあります様式4―2―2のところを見ると,研究計画の一部変更ということで2つしか上がっていないわけですね。ところが先ほど来から動物への移植という話が出ておるわけで,その動物への移植というのは将来的に考えているということなのか,今回にそういうことをしたいので追加するということなのか。その後の文章,後にくっついている文章を見ると今回やりたいというように見えるんですけど,結局文書ごとに少しずつずれがあって,よく分からないのでその点を。単なる記載ミスだとは思いますけれども。
A : 申請者B先生いかがでしょうか。
申請者B: 動物実験,凍結保存,そしてH1,H9外国産のヒトES細胞を使いたいというこの3点の研究申請を今回行いたいということ。そして,研究代表者が今回申請者Aから申請者Bにかわるというその4点でございます。
A : だとすれば確かに今,F先生が指摘されたように4―2―2の一番最初のページの下の方ですね,研究計画の一部変更の中に動物実験,動物への移植実験ということは入れておいた方がすっきりするということだと思いますね。
申請者B: はい,そう思います。ありがとうございました。
K: これはもともとは入っていないのですか。動物実験はもともとは入っていないのですね。
申請者B: はい。もともとは凍結保存と動物実験に関しては言及しておりません。
K: 分かりました。
A : ほかにございませんでしょうか。
 はい,どうぞ。
H: 今回ウィスコンシン大学の海外のES細胞を導入されたいということで,新しい修正した使用計画の方を拝見すると,いわゆる3つの条件を満たしているというふうに書いていらっしゃいます。文科大臣が確認しているので,いわゆる余剰胚であるということとインフォームド・コンセントについては確認されているという前提に立ってこの文章を書かれているのか,あるいはそうであるけれども一応3点とも満たしているということを今回確認されたかについて教えてください。
申請者B: このH1とH9に関しては,既に国内の施設でもう使っている施設が幾つかあります。そして,現在外国産は9株だと思いますけれども,日本の文部省の方で日本の指針に合っているということは確認されています。ただ,3つ目の要求といたしますと,細胞自体無償ですと,ただそのシッピングのハンドリング料といいますか,そういう手数料はとるというのが外国産を使う場合の,外国産のESを使う場合の金銭のやりとりが生じる部分でございまして,細胞自体に関しては無償であると,そして取扱料に関しては幾らかのお金をとりますということを明記した文章を1通用意すれば使用できるということでございます。
H: つまり1と2については特に今回新たに確認するということではなくて,既に文科大臣の確認がされているということをもって確認されているということですね。
申請者B: そうです。1番2番に関しましてはもうこれは公知の事実というふうな形になっておりますので,3番の書類を準備させていただければいいということでございます。
A : 私の理解でもそのとおりでありまして,文科省のリストに入っているものに関しては中央の方で樹立の背景をチェックをいたしまして日本の基準に合うということがもう認定されていると理解しています。そのほかに認定されていない細胞を使いたいという希望を出すときには,それを保証する資料を提供するということだと思います。したがって,リストの中にある細胞の導入に関してはお金の問題だけで,要するに無償であるということを保証すればよいというふうに理解しておりますけど。
 E先生,ございますか。
E: 今の点ですが,これ輸入先はジェロン社なんですか。
申請者B: ウィスコンシンのグループがつくっているベンチャーのようなのがございまして,このヴィーセル(WiCell)という会社からいただくというような形になるかと思います。
E: なるほど,これ会社だけども,通常向こうだと,もう細胞そのものの値段をつけて売りますよね。ほかのES以外の細胞だったら細胞そのものの値段がついていますよね。
申請者B: はい。
E: この場合は,日本ではそういうの,ちょっとよくないから,細胞そのものに値段をつけちゃね,向こうにそういう書類をつくってもらうという形になるわけですか。ある意味でちょっと無理を言う形になるんですか。
申請者B: いいえ,私実は5年前にコンタクトしたことがございまして,そのときはまだ日本で国内のES細胞が樹立されていなかったころなんですね。そのときはヒトES細胞研究をするときは外国産のES細胞を使わざるを得ないというような現状がございました。それでウィスコンシン大学からヴィーセルを通しまして細胞の提供を受けるというようなことで,1バイアル5,000ドルというのが当時の値段でございました。ただ,その5,000ドルというのはやはり手数料でございまして,細胞自体にはお金がかかっていないというような取り決めであったように思います。現在価格がどのように設定されているかというのは,少し金額が下がったというようには聞いていますけれども具体的にまだお手紙を書いたわけではないので分かりませんが,日本の研究者が使えるような対応をしているのではないかと思います。ですから,細胞自体は無償ですよと。しかしながら,細胞をメンテナンスしたり,凍結してそれをバイアルに詰めて送るというような操作に少しお金,値段をかけていると。それが例えば5,000ドルが高いのか安いのかということに関しましては,これは研究者間での決め事かなというようには思っておりますが。
E: よろしいですか,もうこれでやめますが,通常の細胞はそれ自体に値段をつけていますよね。ESだとやはり特別に配慮して,それ自体は一応ただというふうにしていると考えてよろしいでしょうか。
申請者B: 大日本住友製薬等からヒトの正常の細胞を入手することができます。これは例えばヒトの肝細胞の場合だと,高い場合は1フラスコ,小さい3×5センチぐらいのフラスコでございますが,物によっては16万円というように値段がついています。細胞自体なのか,やはり細胞を少し,それは実際に細胞をフラスコの底面に細胞を播種したような形で,培養液をこういっぱいに満たして送ってくるわけですけれども,やはり手間暇もかなりかかりますですね。ですから,細胞自体にお金をかけているのか,そこに費やす労力にかけているのかということに関しては,少し私自身ちょっとそこは不明です。
A : どの範囲を手数料部分と見て,どの範囲を細胞自体と見るのかということは申請者B先生に直接ここでお答えいただくということもあれですので,こちらでまた検討したいと思います。
 動物実験について最後にちょっとお伺いしたいんですが,1つはこれも今日本でほかの施設で動物移植実験というのがどの程度やられているかというような情報があったら参考までに教えていただきたいということと,もう一つは実際に動物移植実験をするとして,動物はどこに,動物実験をするのは動物実験施設ではないかと思うんですけれども,その環境というか,ヒトES細胞に由来するものを取り扱うということで,もちろん分化細胞を移植するわけですから同等には見ないという,特に新しい指針ではそのことが強調されているわけですけれども,そうは言いつつもやはりヒトES細胞に由来したということを考慮に置くということもありますので,一応確認のためにどういう環境下で動物移植実験をするのか,そのことについて説明してください。
申請者B: 私が知っている範囲では,先ほどお話ししました神戸の理化学研究所の方でヒトのES細胞を効率よく細胞死を防ぐROCK阻害剤を使うことによって多分化能を維持できるというふうなことを示すために,これは免疫不全動物の精巣に実際に細胞を移植しております。ネイチャーバイオテクノロジーの5月の電子版だったと思いますけれども,実際に奇形腫をつくっているというような写真も見ることができますので,そういうような実験が実際に行われております。ヒトではございませんが,サルのES細胞から分化したドーパミン細胞を京都大学等ではパーキンソン病のサルに移植して効いているというふうなところもありますので,かなり動物実験に関しては進んでいるのではないかと思います。
 そして,海外の最近の論文を見ますと,やはりヒトESから分化した肝臓細胞様のものをやはり免疫不全動物の脾臓に細胞を移植して肝臓へ到達させてというふうな論文を多々見てはおります。
 動物実験に関しましては,分化誘導したものを専用の実験室から持ち出しまして,動物舎の4階の動物実験室の方で移植実験を行うというふうな形になります。やはり分化細胞はもう既にES細胞ではないという考えではなくて,やはりそれは提供者に対する敬意を持ってしっかりと移植実験を考慮して,むだな移植実験をしない。そして移植データはしっかりとデータを確保するような心構えで当然臨ませていただきたいというようには思っております。
A : はい,ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 どうぞ。
B: 1つだけ教えてもらいたいんですけれども,ヒトES細胞株,海外で使われているものと同じ株を使って実験をしたい,研究をしたいということは良くわかるんですが,現在までの情報あるいはデータで先生達が使われている京大で樹立された細胞株とウィスコンシン大学で樹立された細胞株との間で決定的な違いとか大きな違いというのはあるんでしょうか。
申請者B: 日本でできたものはかなり優秀であるように実は思っております。海外の場合は,H1とH7,H9いろいろな株がございまして,そのなかでやはり神経に分化しやすいもの,そして肝臓の細胞に分化しやすいものと,樹立された細胞株によって少しそういうような分化の程度が少し違うようでございます。我々は日本でできたものはかなりそういう分化機能に関しては多分化能をかなり保持しているような印象を現在持っております。海外から出ている報告の中で結構論文を見るといいデータが出ておりますので,彼らの手法を実際にそういう細胞を使うことによって,我々の確立した手法が外国産の細胞にも応用できるのかどうかというふうなところ,そういうところを検討してみたいと思います。ですから,海外のを使うから日本のを使わないというのではなくて,海外のものと比較検討をしながら,そしてまた将来的に日本のこういうヒトES細胞も海外の施設で使用できるようになりますので,より多くの共通した細胞で共同研究ができるのではないかと考えております。
A : はい,ありがとうございました。
 それでは,時間もあれですのでよろしいでしょうかね。
 では,申請者B先生,お忙しいところありがとうございました。御退席ください。
 それでは,ちょっと時間を超過してしまいましたけれども,もうちょっとですので御協力いただきたいと思います。今G先生とF先生がどうしても所用がございまして今退席されますけれども,御意見を伺いましたところ,新しい使用計画の変更に関しては現在出されている修正点が行われれば特に異存はないという御意見をいただいております。
 さて,まず現在の進行状況でございますけれども,書面での報告及び口頭での報告から何かお気づきの点はございますでしょうか。
K: この資料1の3番の前回までの報告の概要の中で,下から6行目の右端,欠失型,次はHGFのタイプミスではないかと思うのですが。肝細胞成長因子のタイプミスではないかと思うのですが。
事務: これは今日の机の上に置いてあったこっちが正しいんです。これは変えております。
K: 変わっていました。失礼しました。
A : よろしいですか。
 ほかにございますか。
 特に前回問題になりましたこの使用記録簿等について,何か記載上お気づきの点ございませんでしょうか。よろしいですか。
 特に問題がなければ,今回いろいろ出た論点を整理をいたしまして,倫理審査委員会の判断という文章をまとめて,私の方でまとめまして,また先生方にお送りして最終的な御了解をいただいて研究科長に報告したい。研究科長というか,機関の長ですから研究科長に報告させていただきたいと思います。
 では,最後に新しい変更された研究計画書でございます。時間の関係もありますので,文言,書式その他の細かい点は後ほどお気づきの点があればお知らせいただくということと,事務方とそれから使用責任者の方で細かい点をさらに詰めていただくと。例えば先ほど出されました研究計画の一部変更というところには2つしか上げてありませんでしたけれども,動物実験も加えるといったようなことを修正していただきたいと思います。
 問題の要点は,先ほどから申し上げておりますように変更の要点は5つございまして,1番目は責任者の交代ということであります。これは使用責任者が研究科長になられたために,2つのオプションがありました。1つは研究科長がこのES細胞研究の監督という職務だけを代行する人を置くということが認められております。それから,もう一つは現在のような形態で責任者が交代するということであります。その2つの可能性を文科省とも相談をいたしましたし,それから研究者サイドの人たちともいろいろ議論をし検討していただきました。以前から委員の皆様御承知のようにこの研究自体はむしろ実質的には申請者B先生が中心になって進められておりますので,この際研究科長の御意向としても申請者B先生に交代したいということでありました。そのこと自身は妥当なところではないかと思います。
 問題は申請者B先生がこの研究責任者として妥当な経験,資質を持っておられるかどうかということだと思いますが,その点について御意見をいただきたいと思います。
E :問題ないと思います・
A  :どうでしょうか。今問題ないという御意見もございましたが,よろしいですか。
 既に提出されている書類だけでも十分な経験が見て取れますし,これまでも実質的に研究を中心になって進めてこられたということで十分な経験を有しているということでよろしいですね。
 それでは,2番目に研究分担者と研究者の仕分けといいますか,その部分に関していかがでしょうか。
 よろしいですかね。
 3番目はその細胞の凍結ということでありまして,ES細胞本体それから分化細胞の両方を凍結保存したいと。一般的に細胞培養の研究からしますと,むしろ細胞を凍結するのが常識であって,凍結する方が合理的な研究姿勢だというふうに私も考えております。たまたまこの研究がスタートするときに使用者の方がいろいろ心配をいたしまして,盗難その他の可能性があるのではないかということで,あえて凍結はいたしませんという計画にして出したという経緯がございます。今はそういうことで凍結をしたいということですけれども,どうでしょうか。よろしいですか,先ほどの説明で。
 それでは,この点もオーケーと。
 4番目に,海外産のヒトES細胞の使用ということでありますけれども,これも先ほど申し上げましたように文科省で既に一定の数の株を,株のオリジンを検討いたしましてクォリファイしております。その中に入っている細胞ですので,細胞のソースとしては特に問題はないと。それから,あとは無償で譲渡されるということが条件となっておりまして,先ほどE先生が確認されましたようにそれは無償であると,細胞自身は無償であるということが文章で確認されているということをつけ加えて,そういう上に立ってですけれどもいかがでしょうか。
 よろしいですね,皆さん。
 最後に動物実験です。それで,動物実験そのものは特に禁止されているわけではありませんし,先ほども説明がございましたように国内でも他の施設でそういう実験が行われていると。いずれにしても細胞の機能とか分化のポテンシャルを確認するためには動物実験を抜きにしては語れないという背景もあります。問題はその動物実験がどのような条件下で行われるかということではないかというふうに私は思っておりまして先ほどちょっと聞いてみたわけですけれども,そのあたりについては現在の環境がどの程度かということが確認はされておりません。どういうことを求めるのかということもあろうかと思いますけど,そのあたりについて御意見ございますでしょうか。
 どこでやってもよいという考え方もあるかと思いますし,ES細胞オリジンであるということを考えれば,少なくともやはりほかの動物由来の細胞を移植するという実験のところとはせめて部屋を分けるというところまで行かなくても,区分を分けてクリーンにしてきちっとやるということだってあると思いますけれども,どうでしょうかね。
 D先生,いかがですか。
D: 私もよほどそれを言おうと思ったんですけれども,遺伝子組み換え動物と同じようにアイソレーターの中で飼育されるとか,何らかの工夫を最初はされておいた方がいいのではないかなと思いました。といいますのは,この施設において初めての経験ですので慎重には慎重にしておいた方がいいと思います。
A : H先生はどうですか,一般の立場から考えて。今の動物移植のお話なんかにどういう感覚を持たれますかね。
H: 当初の計画よりもそういう意味では踏み込むという印象はありますけれども,ただ先ほどからの説明とか一般的にどれぐらい行われているかというようなお話も聞きましたし,あくまでも基礎的な研究の中で行われていくということなのだろうというふうには一応理解をしています。
A : よろしいでしょうか。ほかにございますか。
 B先生,どうでしょう,動物実験について。
B: 指針そのものが変わってきているので,当初の計画からは相当離れてきているという印象は受けるんですが,動物実験をしてはいけないという結論は出せないかなと思います。ただ,動物実験施設の方をもう少しきちっとして動物を飼うという,そのあたりは研究者だけの問題ではないんですけれども,何かそのあたりをきちっとした方がいいかなという気はします。
A : ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。
 それでは,動物実験に関しましては先ほどアイソレーター云々のお話もございましたが,アイソレーターをどうしても入れてやれというわけではなくて,そのような気持ちを持って環境整備を行った上でという条件をつけて認めるということではいかがですか。
 D先生,それでよろしいでしょうか。
 それでは,主な5点について委員の皆様方全員に御賛同いただきました。現在の進行状況,今日の議論については欠席の委員の先生方にも資料をお送りいたしますし,それから今日の議事録もお送りいたしまして議事の過程も見ていただいて,最終的に御意見をいただいて,それらを全部まとめた上で倫理審査委員会としての判断ということで文科省に,この新しい計画変更届につけなくてはいけませんので,それをつけて送付したいと思いますけれども,よろしいですね。
 はい,どうぞ。
H: 2つありまして,1つは使用完了後のヒトES細胞及び分化細胞の取り扱いというところにも凍結保存を検討するということが今回加わっているんですけれども,5点の変更とは別項目にしなくてもいいのかということと,それから申請者B先生にかわられるに伴って申請者B先生の研究指導指針という形で,使用責任者としての基本姿勢と所見を述べた文章をつけられているんですが,ほとんど田中先生の文章と同じなんです。素人考えかもしれませんし,申請者B先生が今までやっていらっしゃったのはよく分かるんですけれども,ちょっと不自然な印象は否めません。
A : 分かりました。まず第1番目の使用完了後ということは,つまり研究期間が終えた後ということですよね,そのときには分化細胞の定義について,その取り扱いについてもそれが本当に分化した細胞として扱ってよいかどうかということを改めてこの倫理審査委員会が審議をして研究科長が判定をしなければいけませんので。
H: するかどうかということですか。
A : そうです。
H: 計画書の24ページのところ,今までは当然そういうことはしないと書かれてあったんですよ。今後は検討するということが,別立てに書いてあります。
A : 24ページの。
H: 右下。
A : H先生が問題にされているのは24ページのどの部分ですか。
H: 右下に9番ということで書いてありますよね,これは変更で,もともとの使用計画書は滅失するということだったんですけれども,今回凍結保存も検討するということを書き加えていらっしゃるんですけれども。
A : そうですね,分かりました。私は今回のこの申請については使用完了後の議論をしているのではなくて,使用期間中に凍結保存をしてまた起こしてということをやるというふうに理解しているんです。
H: それも書いてあるんです。
A : だから,使用完了後に関してはそれはちょっとまた別の問題ですね,明らかに。
H: だとすればこれは。
A : ええ,それは不適当だと思いますね。
D: ですから,別項目を立てられて,項目が5つから6つになればよろしいかと思うんですけれども。
A : 計画期間,つまり使用期間終了後のことを今決めておくことが。
D: どっちみち研究期間中に分化したものを凍結保存しますよね,それがそのまま分与してくれという依頼が来るでしょうから,そうすると研究計画終了後も保存しておかなくてはいけないということが出てくると思うわけです。特にネイチャー系の雑誌などを出されますと必ず供与をしないといけませんので,そういうところを考えられて追加されているんだと考えたんですけれども。
A : ただし,使用完了後はES細胞そのものは返却しなければいけないわけですよね。だからこれはちょっと矛盾というか,問題点があると思うんです。つまりES細胞そのものはこれはソースがあるわけですから,分化細胞は先ほど凍結保存して,それはES細胞と同等に扱わないから使用完了後も保存も可能だし分与も可能だけれども,ES細胞はそういうことは許されていないんですよね。だからここのところはちょっと誤りですね。
 貴重な御指摘ありがとうございました。この点については少し検討いたしまして詰めたいと思います。基本的には私の理解では,使用期間満了後はES細胞そのものの保存も許されていませんという理解です。返す必要があれば樹立機関に,つまり供用された機関に返す,あるいは廃棄する。分化細胞についてはそれが分化細胞として認定されれば保存は可能だし分与も可能であるということで,研究者が一体何を求めておるのかということを確認をいたしまして,ES細胞についてはそれはもう認可しないと,今の段階ではこの委員会としては。分化細胞については改めて分化細胞ということが認定されれば,それは認めるということにしたいと思いますけど。よろしいですか。
H: そうすると,分化細胞に限ったとして,この項目としてはもう一つ立てると。
A : それは現時点で立てるのがいいのか,あるいはまたいよいよ完了のときに立てるのがいいのかということだと思います。つまり研究が済んだ時点で実は分化細胞が残っていなかったということだと,凍結保存する必要もないということになるかもしれません,理屈上は。だから,どちらの選択肢もあり得ると思うんですけれども。
 このことのために恐らくはもう一度委員会を開くということもできませんので,もう一度確認いたしますと,ES細胞使用期間満了後はES細胞の保存は認めないということです。それから分化細胞については,もし使用者が希望すればそれを研究計画の変更に含めることは認めると。それは実際に指針で認められていることですから。それが分化細胞であるかどうかの確認はもちろん必要なんですけれども,確認されたら保存したいというのであればそれは保存してもよろしいと。ただし先ほど言いましたように今の時点でそこまでは踏み込む必要がないと使用者が判断したら,もうそれは削除していただくと。そのことでこの委員会としてそういう方針で了承するということでいかがですか。
B: 未分化の細胞を含まないという確認の実験は誰がしますか。本人たちに任せますか。
A : それは任せるわけにはいかないんです。指針に明記されているように,判断者は機関の長なんですね。それでその機関の長の判断の材料として,材料というか機関の長が倫理委員会に諮問するということが要求されておりますので,倫理委員会がかなり強い決定の権限を持っているということです。それに必要な資料は,実験データは実験者が,使用者が用意して提供するということだろうと。だから,最初に申し上げましたようにその点の判断は非常に難しいんです。だから我々が相当基準を一生懸命考えないと適切な判断ができないということになります。先ほどちょっと時間がもうなくなりましたので申し上げませんでしたが,例えばRT―PCRである遺伝子が出たとか出ないとかといっても,先生方御承知のようにこれは実験条件でかなり左右されるわけで,やはり例えば分化した細胞の中に未分化のものを何個,何%まぜたら検出できるようなシステムで検出したのかというようなことが現実に要求されるでしょうし,我々が少なくともある基準を定めて使用者に要求するということがこれから必要だろうと思っております。
 よろしいでしょうかね。
 はい,どうぞ。
K: 動物実験に関して未分化な細胞が入っていてもいわゆる一般の動物施設で行っても構わないという判断でよろしいんですか,それは。
A : 私の理解ではES細胞を実験区画内から生きたまま持ち出すというのはある特殊な場合に限られていると思っておりまして,例えばそれをセルソーターが,これは非常に現実的な問題で,ES細胞の研究だけにセルソーターを,しかもその装置が入るような実験施設を準備するというのもなかなか困難な話なので,例外的に認めようということで文科省も認めたんだと理解しております。したがって未分化のES細胞を持ち出して動物舎に持っていって移植実験をするというのは,少なくとも現時点では認めないということだと思うんですけれども。だから,申請者B先生も移植するのは分化した細胞に限るということだと思います。
K: はい,分かりました。
A : よろしいですか。
 それでは,今日はちょっと内容が非常に多くてあれでしたので時間を30分もオーバーしてしまいましたが,ありがとうございました。本日いろいろ御意見いただいたことに従ってこの先の手続を進めたいと思います。
 次回またいつになるかということは御連絡を差し上げますので,今後とも引き続き御協力のほどをよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。