岡山大学大学院医歯薬学総合研究科ヒトES細胞倫理審査委員会 第17回委員会議事録

日 時:平成20年5月26日 午後1時〜3時

場 所:歯学部第1会議室(歯学部棟2階)

出席者:ABDEFGHLK,使用責任者

欠席者:I

資 料:資料1   ヒトES細胞研究実施報告書

    資料2−1 使用計画変更申請書

    資料2−2 使用計画変更の届出

    資料2−3 使用期間の倫理審査委員会における審査過程及び結果

 

A : それでは,時間ですので,ES細胞の倫理審査委員会を開催したいと思います。先生方,お忙しい中をお集まりいただきまして,ありがとうございます。今年度も引き続き数回の委員会を予定しておりますので,御協力のほどをよろしくお願いいたします。

 今日は,もうお配りしてありますけれども,大きく言って2つの議題で,2番目の議題の中に幾つかの審議すべき項目がございます。

 使用責任者の申請者B先生に来ていただいて説明をいただきます。その後で退席していただいて,自由に審査をしたいと思うんですけれども,入室していただく前に2つ,ポイントをお話ししたいと思います。

 1つは,御承知のように,この計画が開始されまして,概ね半年に1回報告書をいただいて審議をするというお約束で出発いたしましたけれども,昨年の秋から年末にかけて予定されていた委員会が少し延び延びになってしまいました。それは,1つは11月に例の分化細胞の定義の問題が出てきましたので,理研から笹井先生をお呼びして,正式な委員会は開かれなかったわけですけれども,委員の先生方においでいただいて勉強会を開催しました。その後に分化細胞の評価についての委員会を開く予定でしたけれども,1つはその分化細胞の計画そのものの策定が少し遅れたことと,もう一つは委員の先生方が非常にお忙しくて,なかなか日程調整ができなかったという,そういう事情でやや延び延びになったことをおわびいたします。今後は,少なくとも実施状況の報告書に関しましては,半年に1回は出していただくということにしたいと思いますし,委員会もできるだけそれに合わせて開きたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。それがまず第一。

 それから2つ目は,今日の議題は大きく言って2つです。1つは実施状況についてということがございます。報告書を提出していただいておりますので,今から説明を受けて,その後質疑と審議をいたしますけれども,実施状況につきましては,1つは管理の状況が問題なく当初予定されたとおりのルールの中で行われているかどうかということのチェックと,もう一つはこの貴重な資源を乱用しないということの中には,研究が順調に進展しているということが大事ですので,成功したか,最終的にはうまくはいかなかった部分もあるにせよ,こういう努力をしておりますということがこちらにちゃんと伝わると,それからこちらに伝わって世間にちゃんと伝わるという観点から審理すべきであろうと考えておりますので,今日もよろしくお願いいたします。

 それから,2番目に研究計画の変更ということがございまして,具体的には3点変更がございます。1つは分化細胞の取り扱いについてということでありまして,昨年度勉強会をしましたように,指針が少し変更になりまして,ヒトES細胞に由来する分化細胞については少し取り扱いの基準が緩やかになったと。そのことを受けて,分化細胞として取り扱いたいという計画が出てまいりましたので,そのことについて審査をお願いしたいと思います。その点については後でもう少し詳しく敷衍をしたいと思いますけれども,大事なポイントは,分化細胞というものを実施計画と分離して定義しようと思うと非常に難しい。それは笹井先生との勉強会と笹井先生との議論の中で明らかとなったと私は思っておりますけれども,分化細胞の取り扱いの安全性というか信頼性に関しましては,その分化細胞が誰によってどういう状況で取り扱われるかということと一体化した状況で審理をする必要があるだろうと考えておりますので,その観点からお考えいただければと思っております。

 それから,研究期間の延長に関しましては,これはもうほかの国内の各研究機関がいろいろ研究期間の延長の申請を出しておりまして,承認されている機関もたくさんございます。大事なポイントは,なぜ最初に3年間なら3年間の計画を立てたのか,それからそれを延長するに当たって合理的な理由があるのかどうか,そのあたりのことが大事ではないかと思います。

 それから3番目は,研究者の変更についてでございますけれども,御承知のように研究者の変更につきましては文科省の専門委員会の審査を経ることなく,このIRBで,私たちのこの委員会で審査をするということになっておりますので,そのことをお考えいただければと思います。

 以上が,申請者B先生に説明を受ける前に少しポイントを整理してみたものですけれども,この点に関しまして何か御意見ございますでしょうか。

 よろしいでしょうか。

 いつもお願いをしておりますが,最近も文科省専門委員会の議事録を見ますと,ある倫理審査委員会について新任の委員の人がほとんど発言していないのではないか,これでは困るというようなクレームがついている事例もございます。ほかの委員会ですと,委員会の議論の大勢が御自分の意見と合っているときにはまあそれでよいということで,話が流れていきがちなんですけれども,どうもこのヒトESの倫理審査委員会に関しましては,そういう場合でもできるだけ積極的に意思表明をしていただけると,全体としてきちっと審理が行われているということが伝わりますので,是非よろしくお願いいたします。

 それでは,申請者B先生に入っていただいてよろしいですか。

 それでは,入れてください。

事務: その前に1つ資料のほう,差しかえをお願いしたいと思います。机の上に資料2―1と書いたものがあると思いますけれども,この資料2―1の最初の2枚の部分を机上に置かせていただいている資料に差しかえをさせていただきます。

 変更箇所は3ページの部分,変更の理由のところですね,こちらを補足して作成しておりますので,変更箇所はその部分のみです。よろしくお願いします。

   A : 申請者B先生,どうも今日はお忙しいところお疲れさまです。

 今日は主な議題が2つございまして,1つは進行状況,研究の状況の報告,それから2番目は研究計画の変更ということです。

 まず,最初に現状報告をしていただいて,その後質疑,それからその後に計画の変更についてお話ししていただいて,その後質疑ということになります。

 現状につきましては,もう何回かやられているので御承知だと思いますけれども,研究の実施状況の説明をまずしていただきたいと思います。問題がなかったかどうか,どういう状況で行われているかとか。今日は資料も入室記録その他お持ちいただいていると思いますので,それを御回覧ください。それから,研究の実際の中身に関しましては,前回の報告書を提出していただいてからどのような研究の努力がされて,どういう進歩があったのかということについて説明していただければと思います。

 それでは,どうぞ。

申請者B: 医学部・歯学部附属病院の消化管外科の申請者Bでございます。我々は胚性幹細胞,ES細胞を肝臓の細胞に分化誘導して,体外式のバイオ人工臓器の開発に応用したいというための基礎的研究に取り組んでおります。昨年の9月20日をもちまして,使用責任者を申請者Aから申請者Bに変更させていただきました。実験に関しましては,従来どおり消化器腫瘍外科学教室の8階にありますヒトES細胞専用実験室を使用させていただいておりまして,施錠等もできておりまして,盗難等一切の管理上の問題はございません,発生しておりません。記録のほうも,記帳するというような形で,本日記録簿を持参させていただきました。

 そして,このES細胞の培養に関しましては,これは我々がジェロン社から学んだ,フィーダー細胞を使わない,マトリゲルを使うやり方で研究を行っております。京都大学から提供いただきました日本で樹立されましたヒトのES細胞を使っております。

 研究の進展といたしますと,これは我々がバイオ人工肝臓のスカフォールド,足場として考えておりますポリドアミノウレタンで加工されましたポリテトラエチレンの不織布の上に細胞をまいていくと,肝臓の細胞の生着,機能が非常にいいということがこれまでのデータで分かっていましたので,それを使う。そして,肝臓の細胞への分化誘導に関しましては欠失型の肝細胞増殖因子を使うというふうな形でやってまいりました。これは2006年に論文を,その成果を発表させていただきました。セルトランスプランテーションという雑誌でございます。

 胚様体をつくりますと肝臓細胞への分化誘導効率が少し落ちるというふうなことがありまして,胚様体を形成せずに直接肝細胞へ分化誘導しようという,ダイレクトディファレンシエーションというふうなことが研究者の間で報告がなされてまいりましたので,我々はアクチビンAというものを使いまして,内胚葉への分化誘導を促進しようというふうな形で,ダイレクトディファレンシエーションの検討も行いました。これも前回報告させていただきました。これも2006年にセルトランスプランテーションのほうに報告をさせていただきました。このときのアルブミンの発現率が18.3%の細胞に認められたということでございました。

 ダイレクトディファレンシエーションの方法ですけども,アクチビンAを50ミリグラム・パー・ミリリットルを使うことによりまして5日間培養して,その後肝細胞成長因子,そしてデキサメサゾン等を使うことによって分化誘導するというような形でございます。

 これは我々のマウスの実験の成果ですけども,マウスのES細胞を肝臓の細胞に持っていくときに肝臓の非実質細胞の馴化培地を使う,いわゆる仲間細胞から放出される成長因子,そしてサイトカイン等を利用することによって,より効率よく内胚葉に持っていけないかということです。そして,分化効率を上げようということができないかということで,そういう馴化培地を使おうという試みを行いました。

 この3つの細胞に関しましては,我々の教室が樹立しましたオリジナルな細胞で,世界にはございません。そして,リアルタイムPCRでメッセンジャーRNAの発現レベルを検討してみますと,コンディションドミディアム,すなわち馴化培地を使ったものを組み合わせますと,α―フェトプロテイン,アルブミンの発現がやはりよく保たれているというふうなことが分かりましたので,やはりこうした馴化培地をヒトのES細胞にも使うということは有益であろうというふうなことが分かりました。

 こういう馴化培地等を使いまして,未分化な細胞の状態がいかに保たれているかということをアルカリフォスパターゼで検討いたしますと,実際に馴化培地とヘパティックインダクション,すなわち肝細胞への分化誘導をかけたものに関しましては,アルカリフォスパターゼの発現が非常に,ほとんどゼロに抑えられている。いわゆる未分化な状態のものはないというふうなことも分かりました。

 先ほどの研究を少し深めまして,未分化維持に関する検討を少し行いました。これは,これまで凍結保存ということが,許可をまだ申請をしておりませんでしたので,継代をどんどん重ねていくと。そうしますと,ES細胞の未分化状態の維持が可能なのかどうかということで,継代数40まで来たところで一応三胚葉に分化する能力があるかどうかということを検討いたしますと,そういう能力がやはり保持されているということが分かりましたので,マトリゲルの上でフィーダーをフリーで細胞を培養することによっても,こういう未分化な状態が保てるということが確認できたわけでございます。これは2008年,今年セルトランスプランテーションにこの成果を発表させていただきました。

 肝臓細胞への分化誘導をずっと試みてきたわけですけども,世界でも非常にこういういろいろな問題点も明らかになってきているというふうなことで,ピッツバーグ大学のストローム先生と少し共同研究を開始いたしました。その共同研究としますと,肝臓細胞,いわゆるES細胞から分化した肝細胞とマチュアーな肝細胞との機能をどう比較したらいいのだろうかということを少し話題に取り上げました。少し英語で申しわけないんですけども,多くの論文の問題点としますと,分化した肝細胞の機能が幹細胞から誘導された細胞に認められるんだというふうなことが少し誇張されていると,エグザジャレートされているというふうなところがあると。ですから,その多くの研究というのは遺伝子の発現をRT―PCRで見ているとか,免疫組織学的な染色で,そういうアルブミンといったようなものが発現されているという検討にとどまっているということであります。確かにこういう検討は必要なのでありますけども,ヘパトサイトとして,肝臓細胞としてそういう細胞を定義するには不十分であるということでございます。

 それで,実際にES細胞から分化誘導されました肝臓様細胞の機能を,いかに信憑性のあるものかということで,マチュアーな,成熟しました肝細胞の機能と比べる必要があるということでございます。彼,そして他の研究者等を少し含めまして検討したところ,やはりスライドに示しているような,少なくともこういう遺伝子の発現に関しては,アダルトの肝臓の遺伝子発現との比較検討をしないと,実用化レベルのものにまでは持っていけないであろうというふうなことで,こういう遺伝子の一応リストを挙げさせていただきました。

 やはり強調したいというところは,成人の肝臓とどれくらいの機能的に遺伝子の発現があらわれているのかというところをイン・ビトロで見る必要があるだろうと。そして,RNAの遺伝子発現のレベルをコンファームするためにも代謝試験,そしてたんぱく発現をウエスタンブロット法で検討する必要があるだろうということがありました。そして,生体に移植して,移植実験においても成熟した肝臓の遺伝子の発現の解析をするべきであるというふうなことです。

 そういうことで,現在私を含めまして総勢6名で,ES細胞由来の肝細胞の定義に関する国際的コンセンサス研究会をつくろうという働きかけをしております。これは同一のヒトのES細胞を使用して,同一なアッセイを用いることによって,分化細胞の機能を評価しようということです。昨年の9月20日をもちまして,ウィスコンシン大学が樹立しましたH1ヒトES細胞株を使うことができました。文部科学省のほうも海外産のES細胞の使用を昨年の5月の新改正のときに認めておりまして,同一の細胞を使う,そして同じアッセイを使うことによって,多くの研究者のデータを比較検討するということができるかと思います。こういう形のコンセンサス研究会を,第1回目を来年の4月20,21の2日間岡山で開催する予定でおります。

 これはネブラスカ大学のフォックス教授とこれまでマウスのES細胞の共同研究をしていましたので,ヒトES細胞の研究に当たりまして,ヒト用のプライマーをお互いに設定しようではないかということで,未分化なマーカーとしましてOct―3,Nanogといったようなもの,そして内胚葉としますとSOX,そして肝臓の細胞としますとアルブミン,そしてα―フェトプトテイン,そして血液凝固因子の第7因子,そしてこれは成熟な肝細胞にのみ認められるアシアログライコプロテインレセプターの発現を見るためのものであります。そして,膵臓等への分化誘導のPDX1,ネスティンという,そして,肺への分化誘導というふうなことでブラッキュリー,そしてパックス,そしてNKX2.5というようなもののプライマーの設定をお互いにいたしまして,この配列で同じようなバンドの濃さが出るんだというふうなことで,同じプライマーを使って,同じサイクルでの条件で比較検討しようということで,そういうふうなプライマーの設定を行いました。これがお互いのラボで働くんだという確認を行いました。我々の,こちらのほうのプライマーを使って,彼らとのデータの比較も今後はしていけるというふうなプライマーの設定をしました。

 それで,先ほどお見せしましたようなダイレクトディファレンシエーション,EBをつくらない方法等もいろいろ検討してまいったんですが,やはりアクチビンの障害が少し強いということで,EBを2日間つくってやろうという,これはもともと我々がマウスのES細胞でやったときの,やはり2日間つくってやってアクチビンを入れることによって,アクチビンの障害性が少し軽減できるということ,そして塩基性繊維芽細胞成長因子というか,ベーシックFGFを使うことによりまして,アクチビンの毒性を軽減できるというふうなことでやっています。そして,肝細胞成長因子としてデムスを使います。最後のマチュレーションにデキサメサゾンを使うという工程で行こうということに,これが比較的安定するというふうなことが分かりました。そして,先ほどお見せしましたようにアシアログライコプロテインレセプターが発現している細胞を将来的にはソーティングしてくることによって,順化できるというふうなことが分かりました。現在までの検討は,この赤色の枠で示しております。

 分化細胞の定義づけができますと,こうした細胞をセルソーティングにかけるというように,専用施設から持ち出すことができるということが一つあります。そして,そういう細胞の機能を見るために,肝不全にしました動物,そして特殊な代謝疾患の動物に細胞を移植することによりまして,細胞の機能,そして腫瘍性があるのかどうかというふうな検討を行いたい。動物実験を行うことによって,より安全性と有効性の検討をしていきたいというような,現在シナリオを描いております。

 これまでの研究は,ここまでの研究を行いました。

 そのデータをお示しします。そうしますと,アシアログライコプロテインレセプターの発現が,やはりうっすらとではありますが,認められます。ですので,これは細胞表面タンパクですので,それを手がかりにこのポピュレーションだけをとることができるのではないかと考えています。そして,アルブミンの発現も分化とともにこう十分に上がってくると。しかしながら,未分化なマーカーでございますが,やはりある程度分化させた段階でも発現が出てくるということです。

 これは先ほどのコンセンサスミーティングのメンバーとも協議しているんですけども,肝臓様細胞に分化誘導したという研究を同様にしているんですけども,やはり未分化なマーカーはどうしても出ると,完全にゼロになるわけではない。ですから,肝臓の細胞の分化細胞の定義をするときに,この発現が全くなくなるということは,やはり試験管のレベルでは難しいということですので,90%以下に抑えられればいいのではないかというように一応定義づけのほうにはさせていただきました。

 薬物代謝試験も同時にしておりますが,アンモニアに関しましては一番いいときでやはり8%程度,リドカインに関しましては12%と,まだ少し非肝臓細胞が入っているというふうなこともありますので,このポピュレーションだけをとってくることによってこういう数値も上げることができるのではないかと。そういうことになりますと,やはり分化細胞としての定義づけをして,もう少し細胞が利用できる施設を学内の少し広い機関に持ち出せるというふうなことが必要ではないかと考えています。

 凍結保存を,昨年の9月20日に凍結の認可をいただきましたので,10月10日に計7本,日本由来の京都産のES細胞を行いまして,これはES細胞の部屋にある専用の液体窒素の中に保存をさせていただいています。

 そして,1月28日にウィスコンシンのビーセルからH1の入手,凍結バイアルが1本届きました。ちょうどこちらの肝細胞の分化誘導の実験を行っていましたので,その実験が終わった2月8日に凍結融解して,培養を現在執行中でございます。H1の記録簿のほうを別途作成させていただきました。しかし,残念ながら少し細胞の成長が非常に緩やかで,まだしっかりとパッセージができる状態にまではなっていない。これはやはり多くの研究者が少し抱えている問題のようでございます。

 ここまでが,これまでの研究の取り組みでございます。

 国内でのES細胞関連の教育研修セミナーのほうへも少し参加をさせていただきました。1つは,今年の3月14日,日本再生医療学会のランチョンセミナーで,京都大学の中辻先生が座長でございまして,ヒトES細胞由来のモデル細胞と創薬研究というふうなことです。このときに肝臓の細胞,肝細胞への分化誘導の話も出ていましたが,まだやはり実用化できるレベルにはなっていない。やはり薬物の代謝酵素等の発現が出るような,そういう細胞を目指していく必要があるということでございまして,まだまだ研究のゴールといいますか,は遠いところにあるのかなと思いました。そういうところを考えますと,同一の細胞を使って同一のアッセイをやることによって,世界的な共同研究を推進するということがやはり必要なのではないかと考えています。

 岡山大学でもセミナー,勉強会などの開催をさせていただきました。これは歯学部の先生方との情報交換会ということで,2007年にセルトランスプランテーションの国際学会に参加させていただきましたので,ヒトES細胞研究の動向というのをこの勉強会でお話をさせていただきました。そして,D教授には岡山大学での幹細胞研究の取り組みに関しまして御報告いただきまして,研究室の峯柴先生にNIHでの取り組みのお話をしていただきました。

 昨年の11月5日には神戸の理研のディレクターである笹井先生に,分化細胞に対する考え方というものに関しまして御講演をいただきました。定義からまいりますと,指針にのっとりますと,分化細胞とはES細胞の性質がなくなる,いわゆる自己複製能がない,そして未分化なES細胞に特異的な遺伝子発現を不可逆的に喪失するというように一応定義にはなっているんですけども,そしてES細胞が発現しない組織特異的なマーカーを発現するといったところでございますが,検討いたしますと,この未分化な遺伝子発現がもうゼロになるということは,やはり非常にこれは難しいと,ハードルが高いということで,2に関しては少し慎重に定義づけを行う必要があるだろうということです。当然大事なことは,未分化な状態に戻るような,そういう培養を行うことは決して行わない,そしてこういうような条件でさらにまだ2週間以上培養してやるということが大事であると。万が一,脱分化したような形態のものが出現した場合は直ちに廃棄するというふうな姿勢で取り組むということでは思っています。

 そして,これは体験学習といいまして,金光学園の高校生の方々を今年の3月にオープンラボにお招きをいたしまして,細胞治療の現状と将来像ということで実際に細胞の培養,これはマウスのES細胞ですけども,ヒトのES細胞の研究の紹介等をさせていただきまして,こういう高校生を対象にしたセミナーも行いました。

 今後の方針,課題としますと,H1を使うことによって広く有効的な分化誘導法を解明しようということ。当然そのH1を使うということは日本産のものを使わないということではございませんで,同時に使用を行っていくということ。そして,動物実験を行うことによりまして,ある程度分化したものの安全性と有効性がどの程度あるのかということを検討したいというふうに。そして,ES細胞由来肝細胞の定義づけ,恐らくこれは研究が進めば,それごとによりブラッシュアップされた高度な定義づけに持っていけるというようには信じておりますけども,やはり何らかの定義づけを当面しておいて,それでのより解析をしていくと。より機能的なものができた段階で,その定義づけをよりレベルアップしていくというようなことが大事だろうと思います。そういうためのコンセンサス研究会を立ち上げようとしています。

 アシアログライコプロテインレセプターを使うことによりまして,そういう細胞の順化をできるという手がかりがつかめましたので,研究者の追加をお願いしたいと思っていまして,永坂岳司先生,これは消化器腫瘍外科学の非常勤講師をされていまして……。

A : 先生,これは研究計画の変更のほうですよね。

申請者B: そうです。

A : それはまた後にしていただいて。

 一応現状報告はよろしいですか,これで。

申請者B: はい,そうです。

A : どうもありがとうございました。

申請者B: どうも御清聴ありがとうございました。

A : それでは,一度ここで切って質疑をして現状の質疑をするということで,その後に研究計画の変更に関して,また改めてお話ししていただくということにしたいと思います。

 今の申請者B先生のお話と先に提出された報告書,それから今回覧いたしました記録簿につきまして御質問のある委員の先生方,どうぞよろしくお願いいたします。

F: 今回覧で拝見させていただいた研究記録簿ですが,平成18年3月24日以降書式が変更されて,改善されていますね。要するに非常にいい書式に変わったと思うんですけれども,これは何か委員会で指摘か何かありましたでしょうか。それ以前の書式について何かということで。

申請者B: いえ,一切ありません。

F: そうですか。

申請者B: はい。実際に実験をしていて,大体行う一通りのことが分かった段階で,記録がしやすいというふうな形に変更させていただきました。

F: 私みたいな素人でもある程度分かる形式になっているので,改善されていて非常によろしかったと思います。今後も素人にも分かりやすいように,一層の工夫を検討していただきたいと思います。

申請者B: 貴重なコメントありがとうございました。

A : ほかにございますでしょうか。

 どうぞ,B先生。

B: 分化した細胞のマーカーを調べるということで,未分化なマーカー,Oct―3を調べていらっしゃいましたよね。わずかにPCRでバンドが出ていたということで,その解釈が分化はしているけれども,この遺伝子の発現は完全にはシャットオフされていないという解釈をされていましたが,細胞集団の中に未分化な細胞がわずかにまだ存在しているためにPCRでバンドがあらわれた,プロダクトが出たという可能性はないんでしょうか。

申請者B: 先生が言われた後者のほうを考えております。90%,例えば95%分化誘導ができたとしても,残りの10とか5%にやはり少し未分化な状態ないしは脱分化したようなものが含まれているために,それからのいわゆるコンタミネーションというふうな形だと思っています。

B: そのコンタミネーションがある限りは,分化した細胞として外には持ち出せないと考えていらっしゃるんでしょうか。

申請者B: いいえ,例えば本当にいい選別法ができたとしても,例えば1,000個に1個未分化な細胞がまざってしまうと,恐らくRT―PCRをするとバンドがうっすら出てしまうと思うんですね。ですから,それに関してはもう完全にゼロになるということは,これは分化細胞としての定義づけをしてしまうと恐らくもう分化細胞とはもう言えなくなって,学内の例えばセルソーターにかけるとか,そういった操作ができないと判断しております。

 ですから,我々としますと,ある程度のバンドが薄くなっていると,有意に薄くなっている,そしてアルブミンとかα―フェトプロテインといいました肝臓様のマーカーの発現が有意に上がっているというふうな段階を分化細胞として,とりあえず定義づけをさせていただいたらどうかと思います。

A : 今のところは私も非常に大事なところだと思うんですよね。ただ,これは分化細胞の研究計画の変更のところでもう一度ちゃんと議論をしたいと思いますので,少し後回しにしてよろしいでしょうか。

 そのほかにございますでしょうか。

 はい,H先生,どうぞ。

H: 先生,ありがとうございました。専門的なことが多くてなかなか分からなかったのですが,非常に素人的なところで,大きく言うと2つお尋ねしたいと思います。

 1つは,昨年の許可を受けて凍結をされたという御報告がありまして,もともとの京大のものの凍結と,それからウィスコンシンのほうは,これは凍結した状態で来たものを融解したということですか。

申請者B: そうです。凍結したのが1月28日に届きましたので,それをすぐ液体窒素の中に入れまして,2月8日にそれを融解させていただいたということです。ですから,アメリカ産のものに関しましては,もともとが凍結バイアルで1本届いたということです。

H: ということは,今後の課題ということで前回言われた凍結保存でいうと,秋に行われた京大のものの7本の凍結が当たるということですね。

申請者B: そうです,当たります。

H: 凍結保存というのは,例えば各段階での凍結保存を行うとか,幾つかそういうことを,前回とか今回のこの課題のところでも書かれているんですけども,この7本というのがどういう意味があるのか,教えてください。

申請者B: これは段階は全く一緒で,未分化な状態のものを保存させていただきました。未分化な状態で保存ができますと,最高で言いますと,最初のスタート地点に戻ることができる,培養ができます。次にやるステップとしますと,例えば少し肝臓細胞よりに寄った段階で少し凍結保存をしてやる,例えばほとんどもう肝臓の細胞になったと思われるものを凍結保存するというふうなことを次の段階としたら計画しております。

H: 7本というのは,普通それぐらいずつ残しておくものなんですか。

申請者B: 基本的にシックスウェルプレートで,そんなに大きいプレートで培養をしていないんです。それで,7本にした意味がどこにあるのかと言われるんですけども,大体普通の細胞をした場合に20本,30本することはできるんですけども,やはりちょっと細胞密度が低いと,起こしたときに,融解したときに少し細胞の生きが悪かったりするようなことがありますので,一応10本以内に控えようということで,一応7本,ラッキーセブンということで7本にさせていただきました。

H: なるほど,分かりました。それが1つです。

 もう一つは,最後のところで今後の方針とか課題を大きく3つ書いていらっしゃったと思うんですが,実施報告書として,資料1でいただいているもので今後の方針,課題で3点挙げられているものと同じでないように感じられたんですけども,そこはどういう関係でしょうか。

申請者B: 済みません,このスライドはちょうど昨日つくらせていただきまして,報告書のほうは1週間前ぐらいに提出をさせていただいたので,少し意気込みが違うところがあるかもしれません。ですから,今日聞いていただいたほうがより今の状況に近いかなということです。

H: なるほど。では,これはむしろ委員長にお任せしますけど,その場合にはここはどうしたらいいのかなと思います。

A : やはりそれはアップ・ツー・デートなバージョンにしていただいたほうが。これから記録に残すところですから,基本はそれほど大きくは変わっていないと思いますけど,そのようにしてください。

申請者B: 了解いたしました。ありがとうございます。

A : それから,私が幾つか気がついたところをお尋ねしたいんですけれども。1つは入退室の記録を見ますと,この細胞は面倒を見るのが大変で,ほとんど毎日,飛んでも1日置きというようなことで入退室記録があるんですが,先生は,ほとんど先生のお名前が入っていますけれども,一方で非常にお忙しい,学会出張とか外国も含めて。そのあたりのことはちゃんと記録と整合性はもちろんあるんですよね。

申請者B: そうです。私がいないときは山辻のバックアップ,そしてその後は白川というふうな形でさせていただいております。

A : そのときに先生がいなくて,他の人が入室しただけなのに,先生のお名前に丸がついているということがないんでしょうか。

申請者B: それはありません。

A : ないですか。

申請者B: はい。

A : それは大事なことですので。さっきある部分を見たら,ほとんど先生がずっといらした。こんなにずっと大学にいる人かなと思って,ちょっと疑問に思いましたので。

申請者B: ここ1年は非常に大学のほうに詰めて。

A : そうですか。

申請者B: はい。

A : 分かりました。それはちょっと確認だけで。

 それから,培養の状況の記録に,ほとんどディッシュ1枚という記録がずらっと並んでいるところがあって,これは普通の培養の常識からすると何か考えにくいことだなと。それはどういうことなんでしょうか。

申請者B: これは培養皿は基本的にシックスウェル培養皿を使っていますので,基本的にはもう1枚で,肝細胞への分化誘導をするときで基本的に2枚というような形にしております。常に1枚は継代用のバックアップというふうな形にしております。

A : 少なくともそのES細胞の研究の状況を把握するというか,それをモニタリングする記録として,そのバックアップのための1枚というのが確実にそれが確保されているとしますよね。それで一方で分化誘導の実験をして,それは少なくとも今の分化細胞の範疇に入らない限りは,ES細胞あるいはその直属というか直接由来した細胞集団であって,やはりそれもちゃんと記録に入れるのが普通だと思うんですね。それが実際の実態を記録するということにもつながると思いますけど。

申請者B: シックスウェルの中に,1枚のプレートに6個の状態がありますので,それの6個の状態を全体の平均を少,中,高と,付着度そしてという形で反映をさせていただいている,平均をとらせているということです。

A : そのことも含めて,もちろんそうでしょうけれども,実態に即した記録にするように努めていただきたいと思います。

申請者B: 分かりました。

A : それから,ちょっと細かい話ですけど,さっき実験室の写真が出ましたよね,あの液体窒素のタンクの左下に何か大きなボトルがずらっと並んでいましたけど,あれは何なんですか。あの左下に。

申請者B: これはRNA抽出用のエタノールが茶色い瓶です。そして,下の少し透明なボトルがPBSです。

A : PBSは問題ないんでしょうけれども,厳密に言うとあのエタノールもあの大きなボトルを実験室の人が動いている床のところに置くというのは,余り推奨されるべきことではないと思うんですよ。だから,少しやはり場所を考えていただいたほうがいいのかなと思いました。

申請者B: はい。ありがとうございます。

A : そのほかにございますか。

 D先生。

D: 先ほどA先生の言われましたプレートの枚数と関連すると思いますけども,私のほうは実質上,1枚,2枚と書いただけでは全体像の細胞の数を推測できないなと思ったわけです。といいますのは,途中でセルを滅失しないといけないときがありますよね。ですので,そのセル数がどの程度で動いているかというのを推測するのは難しいなと思いました。ある意味では,セル数を明確にしなければいけませんから,プレートの面積というんでしょうかね,例えば今言われましたシックスウェルプレートを何枚,もしくは何センチのプレートを何枚とかというような形の表現にするのが実際の研究者としては理解しやすい形ではないかなと思いました。

 以上です。

申請者B: ありがとうございます。そういうふうに改善をさせていただきたいと思います。

A : ほかの先生方,何かございますでしょうか。

 よろしいですか。

 それでは,一応研究の現状報告に関しましては質疑をこのあたりにいたしまして,次に研究計画の変更の内容について説明していただきたいと思います。

 内容変更点は3点ございまして,1つは分化細胞の取り扱い,それから研究期間の延長,3番目に研究者の変更ということになります。

 質疑とそれから後の審議の時間を十分にとりたいので,申請者B先生,手短に要点をお願いします。

申請者B: 研究者のまず追加と削除でございますが,これまで深澤先生,細胞の立ち上げに非常に協力をしてくれていました。今年の基盤研究Bのほうで,肺がんの特異的なプロモーターを使った研究に専念したいと。基盤研究Bのほうが当たりましたので,そちらのほうに専念していただくということで,深澤先生が今回の研究からおりられると。そして,そのかわり永坂先生に研究のほうに入っていただきたいと。現在は岡山大学の非常勤講師でございまして,これまで,当然医学博士を持っておられます,そして多くの論文もございます。ES細胞に関しては,これまで実際の取り扱いはございませんが,事実的には遺伝子の発現等を検討するに関しては十分な資質を持っておられる方でございまして,笹井先生のセミナーにも御参加をしていただいたと。ES細胞研究に関して非常に現在熱意を持っておられるということでお願いをしたいと思います。

 そして,もう一名は孫先生といいまして,これは岡山大学消化器腫瘍外科学の技術補佐員をしておりまして,中国からの留学生でございますが,岡山大学で博士号をとられました。このときの論文がマウスの骨髄由来の受容細胞を移植することによって,小腸移植の生存がいいということで,これはラットを使いました小腸移植ができる,いわゆる動物実験に非常にたけているというふうなことがございますので,今回の変更届におきましては動物実験を行いたいということにしていますので,それの私がする実験のアシストをしていただければ非常に心強いと考えました。日本語のほうに関しましても,もうコミュニケーションに全く不自由はございません。

 そして,あとはメキシコからの留学生ですが,ナル・ナバロさんといいまして,これまでソト君,ジョージ君とともにES細胞研究に非常に熱心に取り組んでまいった大学院生でございまして,英語のほうは非常に堪能でございますので,英語でのコミュニケーションをすることによって,何ら実験に支障はない。これまで多くのES細胞関係の論文も発表をしております。ですから,彼女にも動物実験の補助を行っていただければと考えております。マウスのES細胞に関しましては非常に長期間,平成17年10月からもう取り扱いを覚えまして,取り扱いを行っていますので,ES細胞を取り扱うことに関しては全く技術的に問題ないと考えております。そして,この彼女は非常にこういうセミナーへの参加を熱意を持って参加しておりまして,これまで多くのここに記しましたような研究会とか研修に行っております。そして,これは昨年の6月1日に神戸理研が行いましたセミナーですけど,それにも出席しましたときの受講修了証を示させていただきます。

 今回,実験のほうに関しましては,先ほどお話をさせていただきましたようにアシアログライコプロテインレセプターの発現がある。これは……。

A : 申請者B先生,済みません,今研究者の話はこれで終わりですよね。

申請者B: はい,終わりです。

A : では,申しわけないんですけど,そこでちょっと切って,そこだけやりましょうか。

申請者B: はい。

A : ただいま研究者の変更についての御説明がございました。3名の方を新たに研究者として加えたいということでございます。

 これまでの審査経過でお分かりのように,研究者として参画するためには,1つは技術的なサイエンティフィックなバックグラウンドが十分であるかどうか,それからもう一つは,人間としてといいますか,倫理的な面でのトレーニング,本人の資質が十分であるかどうか,そういう観点から審査をいただきたいと思います。

 何か御質問ございますでしょうか,それぞれの方について。

 どうぞ。

F: 質問ということではないんですが,いま申請者B先生のほうから口頭でいただきました御説明のほうがむしろ適しているといいますか,21ページになるんですけれども,永坂先生のヒトES細胞の取り扱いについて,括弧書きで記載があるんですけれども,経験はないけれどもヒトES細胞研究には興味を持っておりという形で,非常にシンプルに書かれておられます。技術的な能力を表明するについては記述が不十分かなと思います。ただ,今,申請者B先生が口頭で明確に技術面での補足がございましたので,今言われましたほうの文章に差しかえをしていただけるとよいと考えます。

申請者B: ありがとうございました。ちょっとつけ加えですが,彼は米国へ留学中にメチレーションの研究に非常に興味を持っていまして,特にES細胞でそういうメチレーチョンの研究もしたいと。今回の研究には直接かかわってこないんですけども,そういうような熱意がありますので,そのあたりを少し具体的に書かせていただくということで。ありがとうございました。

A : 今のところは大事なことで,これまでの経過にもありましたが,特に研究者に関しましては必ずしもヒトESの経験がなくても,研究チームに入る中でトレーニングをしてということがあります。したがって,一般的な意味での研究の基盤といいますか,技術的な基盤,知識としての基盤があれば,出発点としてはよいということなんですけれども,やはりそこにそういう人を実際に参画させるわけですから,今後どのようなプランといいますか計画でこの人をトレーニングをしていって,そしてこういう段階に至れば実際に参画させるというあたりの具体的な計画というかプランをやはりここに示していただいたほうがいいと思いますね。

 ほかにございますでしょうか。

 はい,どうぞ,H先生。

H: これはA先生に確認ですけど,今おっしゃったのは,この参考でつけてくださっている横長の資料に,霊長類の取り扱いの実績がない場合には研修計画を添付するようにと書いてあることを指して言っていらっしゃるということだとすると,これはしたほうがいいのではないかというよりは,しないといけないということかなと思ったんですけど。これは確認ですが。

A : そうですね,やはりもう少し,特に初期のころにはかなり厳密なことが要求されていたと思いますけれども,やはり今でも基本的にはその部分というのは大事なことですので,明確な計画をきちっと記述して,またいただくということが必要でしょう。

申請者B: 了解です。ありがとうございました。

A : ほかにございますでしょうか。

 これは先ほど申し上げましたとおり,この委員会で最終的に決定をするということで,最終的な責任まで負うということですので,委員の先生方,遠慮なく質問してくださればありがたいですけど。

 よろしいですか。

 それでは,実際の質疑,結論はまた後の審議といたしまして,今は申請者B先生への質問はこれで,このあたりでよろしいでしょうか。

 それでは,ここまでにいたしまして,次に先生,何をお話しになりますか。

申請者B: 研究期間をあと2年。

A : 研究期間について,はい,どうぞ。

申請者B: ということでございますが,これまでやはりアルブミンとかα―フェトプロテインといいました細胞内のようなものをターゲットにしてきていました。しかしながら,今回,これまでの検討でやっと細胞を,順化細胞を効率よく選別できる方法として,アシアログライコプロテインの発現を目安にできる,指標にできるという,非常に大きいことが分かりましたので,もう2年研究期間を延長させていただければと。

 あとはもう一つは肝臓細胞,分化細胞の定義づけでございます。私個人的な意見としますと,未分化なES細胞を今動物実験するということに関しては,何らハードルがなく,理化学研究所等を中心に行われています。しかしながら,学内の動物実験施設に未分化なES細胞を持っていくということに関しては,少し精神的に持ち運びにくいというようなところがありますので,分化細胞ということに少し定義づければ,そういう動物実験が少し精神的に行いやすくなる。ES細胞から由来した細胞ですので,それを粗末に扱えるとかという,そういうふうな気持ちからではなくて,学内でのそういう施設への移動というのが精神的に非常に負担が軽くなるという。分化細胞に関しましては,当面は学外の施設に細胞を提供したり共同研究しようというふうな計画は今のところ一切ありません。そういうような,それほどの機能的なものができた段階では倫理委員会のほうに再度御報告をさせていただいて,承認を受けて学外のどういう機関に出すというふうな形での御相談をさせていただきたいとは思っています。

 しかしながら,ある段階での分化細胞の定義づけをそろそろ行わないと,やはり実験のほうの少し硬直してしまうというふうなことを考えまして,分化細胞の定義をさせていただきたいと思いました。やはり分化しているのなら,もう未分化な遺伝子の発現がないというのが理想だと思うんですけども,これは多くの研究者に聞きましても,やはり未分化なマーカーはわずかにあるというのが世界の現状ですので,そこまでハードルを高くしますと,今後の分化細胞の定義自体が非常に難しくなってしまいますので,そのあたりを今回は未分化の遺伝子の発現が有意に低下しているというふうな形での表現にかえさせていただきました。

A : はい,どうもありがとうございました。

 今の2点,2つの点を一緒にお話ししていただきました。1つは研究期間の延長ということでありますし,もう一つは分化細胞の定義をして,分化細胞として取り扱いたいという2点でございますけれども,ただいまの御説明に関しまして,あるいはその変更の計画案を含めてですけれども,御質問ございますでしょうか。

 どうぞ,K先生。

K: この使用計画変更書の2ページになるんですが,分化細胞の定義のところで1番,0ct4の発現が90%以下に低下しているという文章があるんですが,これは10%以下という意味ですよね,恐らく。

申請者B: そうです,はい。

K: ですから,ここは少し直していただかないと若干ぐあいが悪いのではないかと思います。

申請者B: 了解です。

K: それからもう一点は,ソーティングされるということですが,これは具体的にはセルソーターか何か使ってやられるということを計画されているんですか。

申請者B: 我々オープンラボの2階にセルソーターのモーフローを持っておりますので,そちらのほうに分化細胞を移動してソーティングをしたいと考えております。

K: そうですか,はい,分かりました。

 以上です。

A : 今の点に関しましては,私も読んだときにそう思いました。だから,それを修正していただきたいと思います。

 ほかにございますでしょうか。

 はい,どうぞ。

L: あと2年ということですけども,これまで3年間やられてこられて,それなりの成果を上げてこられていますが,多分2年とされたのは,この表面抗原等を見つけられて,この2年間でどういう成果が出たときにこの研究は一区切りがつくのだろうと,そういう目標がおありになるのだろうと思うんですね。今のセルソーティングのことも含めまして,また移植実験のことも少しお話しになりましたが,どういうところまで実験を実際にやられる,どういう成果が出るというところまでやられるのか,それを具体的に教えてください。

申請者B: 動物実験に関しましては,腫瘍形成能がないというところを一つのゴール,細胞が例えば生体に何か逸脱するような現象が起きても,そこで腫瘍をつくらない。ですから,免疫不全動物に細胞を移植しても腫瘍をつくってくる能力がないということを確認したいと思います。それと,第2点としますと,肝不全の一時的な細胞移植がサポートになるというふうなデータがとれればという,その2点が動物実験のゴールです。

 そして,イン・ビトロでの実験の計画としますと,アシアログライコプロテインレセプターというのは成熟した肝臓の細胞に発現しているというところがありますので,これは今までもG先生によくアドバイスをいただいているんですが,やはり薬剤の誘導性,いわゆる創薬に利用できるようなところを1つのゴールと,イン・ビトロでの試験の場合はゴールと考えていますので,例えばアンモニアに関してはやはり30%以上,リドカインに関しても30%以上の代謝能力があるということ。そして,薬剤代謝酵素であるP450のシップの3A4の発現だけではなくて誘導がかかる,そういう細胞に持っていきたいというところをここ2年で頑張りたいと思います。

L: ちょっと追加させてください。今先生がおっしゃった内容というのはとても多岐にわたっており,プラス2年間で本当にこれが達成可能なのか。むしろちゃんと実験計画を練って,スケジュールを熟考いただいて,今まで3年かかっていますので,2年といわず3年の計画をご提出いただいてもかまわないと思います。今おっしゃったアウトカムに関しても,動物実験にしても,非常に大きなアウトカムをねらっていらっしゃいますので,この2年間の計画で本当にこれが達成可能なのかどうか心配になります。また,最近ではiPS細胞のようなものも出てきていますので,そうしますとどこかの時点で,このES細胞の研究に見切りをつけるのか,その辺も含めて少し教えていただければと思います。

申請者B: 2年にさせていただいたのは,やはり1つはiPSという問題が1つあります。これはES細胞の場合はやはり多くの研究者が,この間の再生医療学会でも述べていましたが,やはり非常にモニタリング,倫理的な配慮,そのあたりは非常に文部科学省のレギュレーションが高いというふうなことが一つございます。iPSに関しましても,かなりES細胞に近い性格になってきているというふうなことがありますので,一つはやはりiPS研究が,もう2年先ぐらいを考えると非常に主流になってくるのではないかというふうなところも一つ研究者としては思っています。

 これまでに数多くの失敗,ES細胞研究の,培養の難しさとかいろいろなところも学んできましたので,これまでの3年よりもかなりスピードアップができるということと,それとH1等の海外産を使えるということで,海外との共同研究のタイアップの密度が非常に濃厚にできるというふうなことがありますので,少し急いで研究を終わらす,終わらすというのではないんですけど,ゴールを見据える必要があるだろうということで2年という。

 先生御指摘のように,本当にこれは非常に大事な研究ですので,5年,10年と当然かけていく必要はあるかと思うんですけど,やはり一つiPSという非常に競合細胞も出てきておりますので,私も個人的には非常に興味がありますが,ES細胞の知見というのは,必ずiPSにも生かすことができるだろうというふうな思いもありますので,ES細胞の研究をもう2年続けさせていただきたいなと思った次第でございます。

 よろしいでしょうか。

A : 今のことに関して私も思うことは,ここに変更理由,変更箇所3の理由というのを改めて提出していただいているんですけども,まだいまいち明確ではないんですよね。これ,計画書を提出して,もちろんこの委員会での審議,それからさらにはこれは文科省に出ていくところで,そこでも審議があると。そのときに何を分かっていただく必要があるかというと,当初計画を立てたときに3年間でこれこれこういうことができるであろうという見通しをまず立てたわけですよね。それから,実際に研究をしてみると,それは私たちも分かっているし,世の中の人も恐らく分かってくださると思うんですけれども,研究というのは必ずしも計画どおりに進行しないこともあるし,うまくいかないこともある。それはそれで仕方のない話で,だから当初の見通しはこういう点では合っていて超過達成したような成果を得たけれども,こういう点では予想ほどはうまくはいかなかったと。いずれにしてもその3年間でこれこれこういう段階に至りました,そうして,このベースに立って,もう2年間あれば何ができるのかということが,やはりここで明確に示される必要があると思うんです。

 だから,当初,一番最初の計画,それからこの3年目が,まだ終わっていませんけども,終わろうとしている時期での総括と,それからその2年間の,今のお話のように2年後の目標は具体的にこれこれこうであると。その先はまだ分かりませんよね,先生がおっしゃったように,研究はどうなるか分からないし。iPS云々ということもありますけれども,この前iPSの実際につくった先生方のお話からは,むしろES細胞もしっかりやってもらわないとiPS研究も進まないということを盛んに強調されておられましたので,その重要性がそう簡単になくなるわけではないと思うんですよね。それも含めて,もう少し具体的な中身を説得力のある形で示していただくほうが,いただくほうがというよりは,いただかなければ多分専門委員会でもそう簡単に承認されないということがあると思うんです。私の現時点での評価はそういうことだと思う。

申請者B: そうですね,そのようにさせていただきたいと思いますので,貴重なコメントありがとうございます。

A : そのほかに,今は研究期間のほうに話がやや行っていますが,特に追加はございますでしょうか,質問。

 特にございませんか。

 それでは,もう一つのほうの分化細胞の定義に関してです。これは笹井先生においでいただいていろいろなお話を伺って,私自身もそこで非常に勉強にもなりましたし,その後いろいろ考えてみました。そこで,やはり分化細胞の定義を研究の実施計画と離れて定義するのはほとんど不可能に近いのではないかと。つまり基本は分化細胞の定義にしても,指針の出発点といいますかもとになった精神をいかに遵守するかということだと思うんですね。そうすると,その遵守するということの安全性というか,担保が何によってされるかというと,いろいろな研究体制も含めたことで担保されるわけで,そこから離れますと,もう極端に厳しい基準でもなければ分化細胞として扱えないだろうと。

 逆に言うと,今提出されている計画のように,ここに出されているところでは,今の使用責任者である申請者B先生がほとんど監督して,その監督下で物事が行われるということは,ある意味で言えば,ヒトES細胞とほとんど同じレベルに近い取り扱いがされるというようなことが計画の中身であると。そうすると,先ほどの問題となる未分化の細胞があらわれたときの対応とか,これが未分化の細胞であるということの検出といいますか,認識といいますか,そういうのはもう非常に経験のある先生が管理されるわけですから。そういう観点からすれば,未分化細胞の定義はかなり低くても指針の精神は担保されるのではないかということで,研究計画と一体化した形で出していただきたいということを申請者B先生にお願いをして,現在の形になっているわけです。

 それで,実際の定義の中身について,ちょっと私が,サイエンティフィックな面からなんですけれども,先ほどの議論にもありましたけれども,未分化マーカーが減ってはくる,だけどもちゃんと残っているといったときに,2つの可能性があると。1つは同じ1つの細胞で分化マーカーも出ているけれども未分化マーカーが残っているということと,もう一つは細胞のポピュレーションが違っていて,未分化な細胞は未分化,分化は分化で,未分化なものはちゃんとその中にあるんだということの2つの可能性があると思うんです。

 申請者B先生は先ほど,その後のほうの可能性が高いのではないかとおっしゃいましたけど,それは僕自身は必ずしもそうではないのではないかと思っているんですね。つまり今までほかの細胞種の,ほかのステムセルの分化のプロセスをいろいろやられている例を見ますと,正常の発生過程ではもっとシャープに未分化マーカーをぴしゃっとシャットアウトして分化マーカーというふうに割合きれいに入れかわるんだけれども,培養の中で,特にこういう人工的な環境の中でやっていると,結構分化マーカーが出ながら,未分化マーカーがまだ残っているというようなことがあり得て。だから,もう一つのほうの可能性も必ずしも否定できないのではないかということです。

 全く手つかずの未分化細胞が,その中に例えば10%まざっているとすると,それはやはり分化細胞として扱えないのではないかと私は思うんですけどね。つまり,先ほどの話ではないですけど,もしそうだったら形態的にも区別がつくはずですよね,少なくとも。そのあたりのことはどうでしょうか。

申請者B: 実際にRT―PCR,増幅試験になりますので,例えばそこでバンドが10%になったから肉眼的にその10%それがいるという,肉眼的な細胞の形態の10%と,遺伝子発現でのバンドの濃さの発現の10%は比例しないんですね。では,肉眼でいこうとすると,これはなかなか研究者の目によって違いますので,例えばポピュレーションの中にどうも未分化っぽいのが10%いるというのと,遺伝子の発現でそのバンドの濃さが10%になったという,ちょっと評価がバンドの濃度の定量でしたほうが数字として出るからと思いました。

A : 確かにそうなんです。実際にやる場合の基準としては,やはりRT―PCRならRT―PCRである種の定量的な基準を示さなければいけないだろうと思うんですね。

申請者B: 済みません,ちょっと追加です。先生が言われるように明らかに,例えばRT―PCRで10%ぐらいになっているんだけども,肉眼的にもう未分化なような形態のものがもう20%ぐらいいれば,それはもうその時点でそれは分化細胞としての定義から外れてくるというようには考えます。肉眼的にはちょっと区別がつかないというような段階で,そういう遺伝子の発現レベルでの定量化をしたいと思います。

 ただ,そのときに本当にそれが腫瘍をつくる能力があるのかどうかというのは,ちょっと科学者として知りたいんですね。ですから,何か肉眼的には10%ほど未分化なようなものがいると,しかしながら遺伝子の発現を見るとかなり未分化な発現は減っていると,例えば実際にそれを移植した場合には,海外の報告を見るとやはり腫瘍をつくってきていますので,そのあたりも,腫瘍をつくってくると,では分化細胞ではないのではないかというようなことになりますので,この分化細胞の定義づけというのが,先生が今言われたような指針にのっとったようなやり方で,精神的な気持ちだけでいいのか,それとも第三者が見たときにこの定義はどうもやはり合っていないよというふうな,2つの面から検討していく必要があると思うんですね。

 先生が今言われた肉眼的にというのは,これはどちらかというと科学者自身の配慮に任されると思います。ただ,ある程度定量的な数値を出しておかないと,外部機関が見たときにちょっとどうもこの定義はクエスチョンだなというふうなところがありますので,その辺が今回分化細胞を定義する上で非常に難しい。2つの面があるんだというようには認識をしております。

A : やはりこの問題は本当に難しいんですよね。実際に昨年の5月でしたか,こういう方向で指針が変わって,そのときの説明会とその後のいろいろなディスカッションを聞いていても,やはりその明確な姿というのがなかなか出てこなくて,みんな苦労しているところではないかと思っているんですけれども,だからこそ逆に全体として,つまりある意味では,分化細胞の定義というところだけを切り離してどうこうというのではなくて,今計画して実施しようとしている研究計画すべて全体を含めて,指針の精神に合っているかどうかということが大事なのではないかというように私は思っているんです。

 先ほどもちょっと言いましたけれども,実施体制,実施計画そのものは非常に厳密な中で行われていますので,解釈,考え方によっては,これは必ずしも分化細胞として取り扱わなくても実施可能な内容ではないかと。そこは恐らく使用責任者の申請者B先生は,そうはいっても動物実験室のほうにも細胞を持っていくので,もう少しはっきりさせておきたいという,そういうお考えだと思うんですけど。

 そのあたりのことについて,いかがでしょうか。

 D先生,どうぞ。

D: 今のディスカッション聞かせていただいて,ふと思ったんですけども,やはり10%未満であっても,その細胞が分化しているかいないかをちゃんと細胞単位で見ておく必要があると思うんですね。そのためにはターゲットとされていました遺伝子が2つありましたけれども,そのもので脱分化をやってみたりとか,それから限界希釈をしたりして,最後に残ったシングルの細胞で,もし分化していない未分化なものであれば,また増殖してくるはずですから,その辺で確実に確認をしていくことが必要だと思いました。

 特に分化の方法の違いや,分化しているターゲット細胞が異なることによってがん化する可能性だって残っているかもしれません。そうしたところを確認するには,やはり一つ一つの研究系において私が今言ったようなことをやっておかないといけないのではないかなと,一つ思ったわけです。これは特に動物実験になったときに,他の施設に細胞を持ち出してやることになりますけれども,その際にももちろん動物そのものはアイソレーターの中で隔離されて,飼育されるんでしょうけども,万が一,最初のときは分からなくて,それでどこかで脱分化してしまうと,別のものが生まれてくるということもあり得るのではないかなと思って,ふと不安になりますよね。ですので,ビボに持ち込む前にビトロのところでもう一度押さえが必要ではないかなと思いました。

 以上です。

申請者B: ありがとうございました。

A : 今のことに関連してですけど,こういうヒトES細胞で可能なのかどうかなんですけれども,普通は例えば未分化な,どういう定義であれ,あるマイナーなポピュレーションが全体の集団の中に含まれているとして,それを確認するときにはそのポピュレーション,マイナーなポピュレーションだけが増えるように,そういう培地条件で飼ってやれば検証できますよね。一番簡単なのは,例えばコロニーフォーメーションをやって,何個出てくるかということなんだけど。そういう培養も可能でしょう。つまり未分化状態を維持するという培養条件に戻してやると,もしその中に本来の未分化細胞が入っていれば,その細胞というのは非常に早く増えますよね,もともとES細胞というのは。そうすると,グロスアドバンテージがあるからそれがエンリッチされて,未分化な細胞集団がぽっぽっと出てくるということが可能なんでしょうかね,どうでしょう,それ。

申請者B: 十分可能ですね。そのとおりだと思います。ですから,笹井先生たちも言われているように,先祖返りしない,未分化が起こりそうな培養条件にはもうするなということですね,1つは。

A : そこで分化細胞として,これはもう今日から分化細胞ですよと言った後に未分化培養の条件でやるということは,それはもうやるなということになっているわけですけど,そうではなくて分化細胞として取り扱うかどうかということの判定のときに,あるいは判定の前にそういう条件で培養してみて,つまりある条件でずっと培養しました,こういうポピュレーションになりましたと,これをもう一回未分化細胞の培養条件に戻して,出てくるかどうかをモニタリングするというのが必要ではないでしょうか。それを入れると,今D先生の御懸念にもこたえることにもなります。RT―PCRだけではなくてそういう基準もここの中に入れたらどうかということです。

申請者B: それは非常に有効な方法だと思いますので,盛り込ませていただきたいと思います。先生が言われるようにちょっと未分化な状態にしますと,そのポピュレーションがどんどん大きくなっていきますので,肉眼的に割と容易に確認ができるかと思いますので。ありがとうございます。

A : そうですよね。ちょうど分化誘導が終わったときとか,先ほど先生がおっしゃった,2週間分化培地で飼ったものを分化細胞として使うというふうにおっしゃっているので,2週間メンテインする前もそれをやってみる,それから後でもやってみると。すると,前はちょっとは出るけれども,後はもう全然出ないということになれば,非常に信頼性は高まると思うんですよね。

申請者B: ありがとうございました。非常に参考にさせていただきます。

A : そのほかにございますでしょうか。

 はい,どうぞ。

E: 分化細胞の定義を最も厳しいものに仮にしたとして,完全に分化にしている状態の細胞と最初の段階のES細胞とで取り扱いを,当然もとの段階よりも厳しくはしないようになるわけですね。その程度,その根拠を何に持っていくかですね。もし完全に分化しているとすると,もう危ないことは起きそうもない。多能化,万能性はなくなっているわけですね。その点はもうクリアされていますね。完全,100%もう分化したとする分が最後だとすれば。

 それは,例えばA先生が扱っていらっしゃる通常のヒト細胞とどう違うように扱うのか,どのように扱い方を違わさせなければならないのか。胚を破壊したという負の遺産といいますか,負い目といいますか,そういうものを,そうなった段階でもまだ背負わせるのかと。そのことをどう考えればよろしいんでしょうか。

A : そのことは私は個人的には,基本的にはこれは私たちは指針で縛られて行動していますので,指針を定めた先生方のお考えということになるわけですけれども,私自身はその指針の変更を受けて考えるに,これはもう一貫して私は言っていますけれども,やはりいつまでたってもそれなりに背負っているものは背負っていると思っています。ここで何度も議論が出ましたけれども程度の問題があって,程度としてはだんだん軽減されているんだけれども,やはり背負っているものは背負っていると。そのことはこの新しい新指針にもやはり書かれていると思うんですよね。そういう意味では以前にも例えばヒトの他の臓器,普通の体細胞組織に由来する細胞でも,実際に扱っている研究者の感覚としてはマウスよりもちょっと違うという感覚はあるし,マウスの細胞でもケミカルとはまた違うという感覚もある。そういうことの連続性の中で,ではこの分化細胞が完全に分化したということが保証されたとしても,全くそれまでの歴史を負わないかというと,私はやはりそうではなくて,普通の体組織に由来するヒトの細胞とはやはり違う感じでもって取り扱うべきであろうと思うんですけど。これは私自身の。

 ほかの先生方に御意見ございましたら,どうぞ。

 はい,どうぞ。

申請者B: 済みません,使用責任者として,先ほどのそういうような問題もあるんですけど,私も分化細胞になったら,もう普通の,もうES細胞ではなくてどう取り扱ってもいいというのではなくて,やはり未分化な状態と同じ姿勢で扱うというのはもう当然の気持ちとさせて,ただあの部屋から出せるか出せないかというところで少し一線を引けるのが,やはりこれは分化細胞の定義なのかなということで,今回提案をさせていただいています。

 やはりいろいろな,A先生が言われたような肉眼系でこういうものはない,2週間ほど若返るような培地で飼ったときにどうなるんだというふうなことも少し検討して,そういう項目も折り込んでいって,今決めた分化細胞の定義が,これが例えば1年後もそれが有効というのではなくて,ブラッシュアップはしていこうとは思っているんですけども,まず一つ何か足がかり的なものがやはり必要なのではないかと。ですから,精神的な面ではES細胞,未分化なES細胞を分化したES細胞,これは一緒の気持ちで取り扱いましょう。ただ,専用の施設から出すのか出さないのかというところで一つの,ではどういう条件があれば出してもいいんだという,倫理委員会の先生方の一応コンセンサスを得たいというのが趣旨でございます。

A : それにちょっと関連してですけれども,動物実験施設に持っていって動物実験を行うというときに,その実験室の環境といいますか,今先生がおっしゃったように分化細胞といえども普通の細胞のような取り扱いはしたくないということは,その実験を行う動物実験施設の実験室の状況ですよね,余りに汚いとか余りに乱雑とか,それなりにきちっとした環境下で飼えるということですよね。

申請者B: そうですね。今は動物舎のほうもかなり改善をされて,ケージもきれいになりました。そういう意味では実験を行う精神的な気持ちも,非常にきれいな環境でやれるというふうな状況になっていますので,それはちょっとつけ加えさせていただきます。

A : ありがとうございます。

 G先生,何か全体にございますでしょうか。

G: 完全に分化するというのは非常に難しいと思いますね,実験的にね。だから,やはり実験の目的によってそのあたりの定義をしていかないといけないのではないかなと思いまです。例えばいわゆる人工肝臓をつくるような場合はかなり厳しい条件で行かないといけない。だけど,これはモジュールの中へ入っていて,細胞が実際に人体の中へ入るわけではないですよね。だから,ある程度肝臓の分化機能があがって,サルの実験では成功されていますけれども,人間の肝不全の場合患者さんを救えれるような状態,可能性があれば,やはりそれはある程度やってもいいと思います。十分なエビデンス,実験データがないといけませんけれども。

 それから,シップの,3A4の分化誘導でき,薬剤の検査をイン・ビトロでやるときは,分化度はそれほど厳密にいかなくても,薬のスクリーニングに使えれば非常に役に立つのではないかなと私は思います。

 だから,要約すれば,研究の目的によってそれぞれの分化度の定義が変わってきてもいいかなと私は考えます。100%分化することは,非常に難しい。しかし,難しいと思われた実験も成功することもありますので,そちらへ向かっても行かないといけないけど。2年間でそれをやるというのはできるかなとに私は思っておりますが。

申請者B: どうも,貴重なコメントありがとうございました。2年というのは,余り余裕を持つというのもいけませんので,ちょっと自分を……。

G: それはいいことですよ,期限を切るのはいいことだと私は思います。やはり何をやるにしても。

 やはり何かやるのに期限を切ってやるということは非常に大切だと私は思います。だから,やはりその目的に向かって,その期限の中で精いっぱい努力されるというのは大切なことだと私は思います。

申請者B: どうも,先生,ありがとうございました。

 それと,1つあれなんですが,割とヒトES細胞結構セルソーターを使って選別している施設が多いんですね,実際。ただ,やはりES細胞の専用実験室のために,ES細胞だけにそのセルソーターを使っているわけではないんですね。やはりその場合はちょっと施設を出している,学内の施設なんですけど,そちらへ持っていっているというのが現状だと思うんですね。そのあたりに関しては余り明確化されていないんですね。ですから,分化細胞という定義ができれば,そういう持ち出しに関して,どういうものを専用実験室からおまえたちは持ち出しているんだということの一つの公開できる指標にはなるのではないかと。ただ,それは今多くの施設では少し不透明に行われているのではないかなと思います。

G: セルソーターを使うと,シングルセルにしないといけません。そうすると,細胞のサバイバルに対して非常にダメージが大きい。また,ES細胞をシングルセルにするのは難しいです。だから,私はセルソーターで行くのが,良いかどうか疑問に思っています。むしろ形態的に見てほとんど完全に肝細胞に分化しているとか,あるいは今A委員長が言われたように未分化な状態に,培養に一回返してみて,本当にどれだけの細胞が未分化なままであるのか。あるいはそれを動物に移植して,腫瘍性はないかどうかとかということのほうが私はリーズナブルではないかなと思います。

 あるいはもう一つ,ある処理をすると未分化の細胞も腫瘍性がなくなる,その方法を開発されれば,少しの細胞に未分化があってもある薬を処理することによって,腫瘍性はなくなり,しかも,分化細胞のファンクションは変わらない方法を見出すことも一つの手ではないかなと私は思います。

申請者B: ありがとうございました。

A : 先ほど申請者B先生が言われたセルソーターを使う際ですけれども,私が前に,これも説明会,文科省の説明会だったと思いますけども,それはグレーゾーンで行われているのではなくて,ちゃんと認められていると。つまり,そういう特殊な条件のときには区域外,特にセルソーターのこと,まさにセルソーターのことが議論されていまして,それはオーケーということになっていると思いますね。専門委員会のほうもそれを認識していると理解していますけど。

申請者B: どうもありがとうございました。

A : E先生,何かありましたか。

E: 申請者B先生が,分化度が低いといいますか,100%の分化ではなくても分化細胞として扱いたいとおっしゃるのは,そうすると扱いが楽になるからということなんでしょうか。

申請者B: 例えばセルソーターにかけるときに,違う施設に移動しますですね。あと例えば動物舎に入るときに,動物実験が,未分化な状態ではないと,一応分化細胞として定義されたものを移植実験をしているんだというような。

E: そういうメリットがあるということですよね。しかし,考え方として,もしそういう未分化のものがまじっているものを,分化と定義したから何かできるというふうにして,そういうことを行えるようにするということが妥当かどうか,ですね。やはり通常,分化したといわれるもの,そういう状態になったもの,あるいはもう少なくとも何も危険性がない,腫瘍などの不都合なものをつくらない状態になったものを実質的には持ち出すなり,何かを,そういう形で使う必要があるような気がするんですけど。

A : ちょっと多分誤解された面があるのではないかと。それは多分申請者B先生の説明が最初にRT―PCRでやって,未分化のものが含まれていると,ミックスポピュレーションとして含まれていると考えているとおっしゃって,それで10%とおっしゃったから,その部分だけをとると,未分化のマルチポーテンシーを持った細胞が10%含まれていてもよいということになってしまうんですね。そういうふうな説明だと。僕は現実には多分だめだと思います。そうではなくて細胞がもう分化をし始めてマルチポーテンシーをなくしても,やはり未分化マーカーというのはRT―PCRでやったらある程度出てくる可能性が高いです。そういう細胞はもう多能性はないんだけれどもね。だから,そういう証明をしてくださいと。逆に言えば,未分化細胞をプロパゲートするような,選択的に増殖を促進させるような培養条件でやってください。そうすると,そこで出てこなければ,もうそれらの細胞は未分化状態ではないと。その保証をつけてもらえば,今E先生がおっしゃった心配もなくなるし,指針にも合うんですよね。

 先ほどのように,もしも例えば8%の細胞が未分化で残っているとすれば,それを分化細胞として扱いましょうということにはならないと。これは指針の中にもそういうことは許されていないと私は理解しています。そういうことだと思うんですけど。

申請者B: そうですね,そういうように理解をさせていただいております。

A : ほかにございますか。

 はい,どうぞ。

F: 全く違う視点から2年間の延長ということを考える上で1つ確認をさせていただきたいと思います。本研究においてどの程度の研究経費がかかるのかということは全く私推測ができないわけでありますが,この2年間延長期間中の研究費の裏打ちというものは十分お持ちかどうかという,そこをまず確認させていただきたいと思います。

申請者B: 研究費に関しましては問題ございません。

F: その場合に,申請者B先生が学内外でお引き受けのさまざまな役職あるかと思いますが,民間営利企業等からもし本研究に関して資金の受け入れ等があれば,それとそのお役職との関係で特に問題が生ずるおそれというのは今のところあるかないかということを確認させてください。

申請者B: 一切ございません。ありがとうございます。

F: はい。安心いたしました。

A : ほかにございますでしょうか。

 それでは,かなり長時間の御説明をいただきましたけれども,申請者B先生,これで結構ですので,御退席ください。お疲れさまでした。

申請者B: どうも長い時間ありがとうございました。

A : それでは,申請者B先生が退席されましたので,今日の審議事項について一つ一つ御審議いただきたいと思います。

 まず第一に,現状,研究状況についての報告でございますけれども,いかがでしょうか。幾つか御質問ございましたけれども,この取り扱いですが,最終的にこの委員会としては妥当に研究が行われていて,これでよろしいということもあり得るし,だめだから中止せよということもあり得るし,それからこれこれこういう点に留意して注意しなさいという意見書をつけることも可能ですけれども,いかがでしょうか。

 何か問題点ございましたでしょうか。

 先ほど,今G先生が退席されましたけれども,G先生はよかろうというお考えだと伺っております。

 どうでしょうか,よろしいでしょうか。

 はい,D先生。

D: 概ねよろしいとは思うんですけども,1点,ディッシュの枚数の件でちょっとあいまいに,いろいろ理解ができる場合もありましたので,そこのところを明確にさえしていただく,その記載方法を改善していただければもうよろしいのではないかと思います。

A : 分かりました。私もちょっと何か1枚というふうにこうぽっきり書いてあるのは余り実情が分からないような記載だなと思いましたので,ではその点に関しては改善の指示をしたいと思います。

 そのほかにございますでしょうか。

 はい,どうぞ。

H: この件については最初の使用計画というのがあって,それが状況によって変わっていったりするということと,定期的な報告によってモニタリングするということが行われていると思うんですが,先ほども申請者B先生に対して方針,課題のところのずれについて申し上げましたが,例えば計画の中で前回の変更で凍結保存とか海外との比較検討とか動物実験とか幾つか入っているわけですが,それがそれぞれに,凍結保存については実際に行われ,海外との比較についてもネブラスカ大でしたかの話が出てきていたり,動物実験についても大分進んだ検討まで入っていると。その辺のことがこの報告書とはどういうふうにリンクするか,例えば凍結保存とか海外のことは,このペーパーにはほとんど書いていないわけですが,そのあたりはどう判断すべきかなと思うんです。

A : 今おっしゃられた報告書の内容,形式としてはやはりおっしゃられたように,変更があって具体的にこういう計画を立てたという観点から,それに見合うような形で書いていただいたほうがいいですよね。せっかく今日こういうふうにお話しになったんですから,その内容をちゃんと盛り込んで対応するようにやっていただきましょう。それは私のほうから後でお願いをいたします。

 ほかにございますか。

 ありがとうございます。

 今は実施状況について御検討をいただいて,これはもうよろしいですね,それでは。今の2点,修正のお願いをするということで。

 それでは,実施状況については委員の先生方皆さん御賛同いただきましたということで,次に研究計画の変更ということです。今,F先生から研究計画の変更について御意見をいただきましたが,そのほかの先生方はいかがでしょうか。

 はい,どうぞ。

F: 委員の先生方から出された御意見,提案等を十分に踏まえた上でしかるべく修正されるのであれば,今回の申請者B先生の研究期間等,計3点については何ら異存はございません。

L: 研究計画の変更,特に期間の変更に関しては,3年間で多分予測したよりも成果が不十分だったということをはっきりさせて,その不十分な部分をこの2年間でこういうストラテジーで,そしてできればその期間,2年間の期間内のタイムコースをある程度例示をして,2年間の許可を得られるべきではないかなと思います。

A : ありがとうございます。その点に関しましては,私も先ほど申し上げましたけれど,やはり当初計画のときにどう考えていたのか,それから3年近くになったとき,この現時点でどういう評価をし,新しく研究計画を延長してこの期間内にこういうことを達成したいということをやはり明確に分けて書いていただかないと説得力を持たないと思うんですね。申請者B先生がお話しになったときには,委員の皆様方も御理解いただけたと思うんですけれども,計画書の中に必ずしもそれが十分反映されているとは言いがたいということですので,その点については修正を求めるということにしたいと思います。

 そのほかにございますか。

 どうぞ。

E: 分化細胞の定義のところの話は今含まれますか。

A : それはまだ含まれておりません。それについては,先ほどお話ししましたように,分化細胞の定義については,これまでの話ですとRT―PCRが中心でしたけれども,大事なことはやはり未分化細胞がむしろ選択的に増殖してくるというような培養法で,その中に性質として,細胞レベルの性質として未分化のものが検出限界以下であるというアッセイ法を取り入れていただいて,それで分化細胞の定義として認めるというふうにはしたいと思います。

E: 言葉の問題ですが,よく見るとこれ分化細胞の「定義」ではなくて,分化しているかどうかということの「判定基準」ですね,ここに書いてある1),2),3)とか。

A : いや,それはそうなんです。

E: ですね,よく見ると。

A : というのは,抽象的な定義をしても意味がないと。つまり現実的な判定基準がないと,そこが難しいところなんですよ,新指針には言葉があるんですよ,だけどもその言葉を裏づける,つまり何を分化細胞としてみなすかということになると,これこれこういう実験をして,こういう値以下であるということがないと,それはできないという話を今。

E: そうです。ここに書いてある今先生がおっしゃったようなことをすると,ほぼ100%の分化度,100%分化しているということが証明できるということを意味するわけですね。

A : そのとおりです。つまり,そうかといって,さっきも話がありましたけれども,例えば1万個の中の1個がどうだ,その1個の性質が微妙に,微妙に未分化からちょっとずれているようなポピュレーションが1個あったときに,それが現実の問題として検出できるかというと,恐らくそれは難しいでしょう。だから,いずれにしても結局は量的に合理的な範囲で決めていかざるを得ないというところがあるんですけれども,それが1つはPCRであり,もう一つは細胞培養という条件を使ったオペレーショナルな定義であると。その2点でどうでしょうかという話が今のところだと思うんですけど。

 ほかに何かございますか。

 はい,どうぞ。

L: 研究者の変更に関してですが,岡山大学も,国民も大変な期待を持って本研究の成果を待ちわびているという事実があります。だからこそこのES細胞を使わせていただいているわけでございますので,この研究は本当に強力に推進する義務がある,この倫理委員会にも,それから岡山大学にもあるというふうにも思います。そのために研究者がどうしてもかわることはやむを得ないわけですので,研究者をかえることを許可するということは大変重要なステップであると思います。

 一方で,先ほども議論になっておりましたが,その方々の能力に合った教育システムをちゃんと具体的に,どういうふうなレベルになったらさわらせる,そういうふうな具体的なカットオフをちゃんと決めて,それを許すという方針が望ましいのではないかと思います。

A : ありがとうございます。まさにそのとおりでございまして,先ほどもそういうお話が出ましたけれども,その点も是非つけ加えると。つまりトレーニング計画,具体的な計画とそれからどの段階に至ったら実際にES細胞をさわらせて実験に参画させるかということは明確に示してもらうというふうにしたいと思います。

 そのほかにございますか。

 よろしいでしょうか。

 それでは,研究計画の変更に関しましては3点ございました。1つは研究者の変更についてで,これは何度も申し上げますけれども,このIRBでの承認ということになります。それから,研究期間の延長と分化細胞の取り扱いに関しましては研究計画の変更届を文科省専門委員会に提出して,そこでの審査を仰ぐということになります。

 まずその研究者の変更につきましては,今L先生がおっしゃったように,そのこと自身は必要なことでもあり大事なことでもあるということにかんがみまして,トレーニング計画,具体的なトレーニング計画と基準,資質,これでオーケーという基準を明確にしていただくということを附帯条件としてつけるということで,この研究者の変更に関しましては承認ということでよろしいでしょうか。

 では,委員の先生方皆さん御賛同いただきましたので,そのように決したいと思います。

 次に,研究期間の延長に関しましては,3年間の当初の研究計画がどうであったのか,それから現時点でどういう評価,どういう成果が生まれて,どういう点に問題が生じたのか,それからそれを乗り越えてさらに研究を発展させるために,具体的にどういう計画を立てて,それが2年間のうちに終わるという,そういう具体的なプランをもう少し説得力のある形で示す必要がある。その意味では,研究計画書を書き直してもらうということを条件にいたしまして,期間の延長も基本的には考え自身は理解できたので,承認をするということでよろしいでしょうか。

 それでは,先生方御賛同をいただきましたということで,これもそのようにいたしたいと思います。

 それから,分化細胞の定義に関しましては,さまざまに難しい問題がございますけれども,これも最初から何度も出ていますように,この分化細胞の取り扱いに関しましては実施計画と一体化した中で判定をすると。その中で考えてみたときに,申請者B先生の提出された分化細胞の定義に関しましてはまだ不十分な点があると。RT―PCRだけを主な手段として判定するのは不十分であると。そのほか,形態もそうですけれども,特に培養条件を未分化細胞を選択的に増殖させるような培養条件で培養をして,それでもあるレベル以下で検出されない,未分化細胞の集団が検出されないということを保証した上で,少なくともこの研究計画の中では分化細胞として取り扱ってよろしいという承認ということになりますけれども,それでいかがでしょうか。

 よろしいですか。

 どうもありがとうございます。それでは,以上のように決しました。

 今日の議題の主なところはそれで終わりだと思いますけれども,先生方でそのほかに何かこういうことを議論しておいたほうがよいのではということがありましたら,どうぞお願いしたいんですけれど。

 はい,どうぞ。

H: 今日も例えば未分化の細胞を7本凍結保存していますという御報告がりましたが,京大あるいはウィスコンシン大からES細胞の株というものが来て,それが培養されたり,いろいろな実験をされたり,あるいは凍結保存されたり。その在庫管理というか,どんなものがどれぐらいあるかということはどういうふうに管理されているかということを知りたいと思いました。理由は,最終的にこの計画が終わったら滅失することになっているわけですけども,棚卸しをしていないものをどうやって全部やったかどうか分かるのかというのが分からなかったので。

A : ちょっと,棚卸しをしていないというのはどういう意味でしょうか。

H: 普通のお店なんかで在庫を管理すると,定期的に今例えば倉庫に何が何個ありますとか店頭に何個ありますとかということを全部こうやって表にして,管理をしていくわけですよね。そういうことをしているから,何かあったときには今自分たちが何を持っているとか,全部売らなきゃいけないとしたらどうやって売ればいいかが分かるわけじゃないですか。そういう管理はどういうふうになっているのかなと思ったんです。

A : それはもう当然いつも完全な棚卸し管理状態にあると。つまり,たった7本しかないわけです。記録は7本でしょう。

H: 凍結はですよね。そうじゃなくて。

A : 凍結。

H: 全体の。

A : 全体は,だからさっきのカルチャーのディッシュが,だからそれでさっきのお話が出たんですね。カルチャーディッシュが1枚,1枚とか2枚とか書いてあったので,もう少しその内容が,ディッシュ1枚といって,それで細かく聞いてみるとシックスウェルプレートで,ここにはこういう培養をして,ここにはこういう培養をしてというお話もありましたので,もう少し中身が分かるような記述の方法を工夫してくださいと。だから,もう少し,例えばどのぐらいそれを具体的に書くかは別なんですけど,ディッシュがそれこそマルチウェルプレートとしては1枚だけれども,その中にこういうカルチャーがあって,こういうカルチャーがあって,ここでは分化誘導しているとか,そういうことがもう少し分かるように記述しなさいと。そうすると,全体の,今インキュベーターの中にある細胞全体が,個数までは分からないにしても大ざっぱにはディッシュ何枚分に相当するものが今動いているということが分かるということになると思うんです。

H: そうすると,今把握しておかなければいけない細胞は,その凍結されているものと,記録を見ると3枚だったり1枚だったり,何か時期によって違っていましたけど,そのものとというのがすべてということなんですか。分かりました。

A : そうです。というのは,メインテインするのもあれ結構大変で,お金もすごくかかる話なので,余りスケールを大きく培養,普通の細胞と違ってスケールを大きく培養できないのではないかと思うんですね。だから,本当にあの状況を見ると,やはりかなりミニマムな条件でやっているなと。

そのほかにございますでしょうか。

 それでは,これで終わりたいと思います。次回は冒頭申し上げましたように半年後ぐらいに状況報告書を提出していただいて,またそのあたりのときに皆さんにまた相談したいと思います。どうも今日はお忙しい中ありがとうございました。

事務: 最後にお願いですが,議事録が1週間ほどで上がってまいりますので,またお手元にお届けしますから,確認をお願いします。それをもとに,今日つけている資料2―3で,今日の倫理委員会における審査過程及び結果というものをまとめて,文部科学省のほうへ提出するようになっております。これにつきましてもまたお手元にお届けしますので御確認をよろしくお願いします。

 以上です。