岡山大学大学院医歯薬学総合研究科ヒトES細胞倫理審査委員会 第18回委員会議事録

日 時:平成21年1月9日 午前10時〜11時35分

場 所:歯学部第1会議室(歯学部棟2階)

出席者:A,B,D,E,G,H,K,I,研究責任者B

欠席者:F,L

資 料:資料1   ヒトES細胞研究実施報告書

 

A : 皆様,本日はお忙しい中,お越し下さいましてありがとうございます。それでは時間ですので,第18回の委員会を開催いたします。これまではどちらかといいますと,この研究そのものあるいは倫理審査委員会の活動も割合スムーズにやってきたつもりだったんですけれども,昨年は大波にもまれまして,皆さんに大変御心配をおかけいたしました。改めて陳謝いたします。申しわけありませんでした。

 今日の議題は,昨年の経過を御説明いたしまして,その後のこと,今後の対策をどうするかということをお考えいただくということが1つのテーマでございますし,もう一つは,定期的に行っております研究の進行状況をチェックです。今提出された報告書を先生方にお配りしてあると思いますけれども,その内容について審査をするという,その2つの議題でございます。

 本来ならば,最初に昨年来の経過を検討したほうがいいんですけれども,実は研究の実施責任者である研究責任者B先生が今日は外来診療中で,10時から,ちょっと御無理を言って,30分ないし40分間あけてもらっております。したがって,先に研究責任者B先生に現状,研究の進行状況を御説明いただいて,そのことについて審査をした上で,その後昨年来の問題について検討したいと思いますけれども,それでよろしいでしょうか。

 それでは,研究責任者B先生に入っていただいて。

    (研究責任者B入室)

研究責任者B先生,お忙しいところをありがとうございました。

 それでは,いつものように研究の進行状況を御説明いただけるとありがたいと思います。よろしくお願いします。

研究責任者B: 本日はお忙しいところどうもありがとうございます。新年明けましておめでとうございます。本日も御指導のほうよろしくお願いいたします。

 実験計画でございますが,ヒトの胚性幹細胞の肝細胞への分化誘導及びその体外式バイオ人工肝臓の応用に関する基礎的研究ということを,平成17年9月14日文部科学省の文部大臣の承認を得て研究をスタートしております。

 研究の場所に関しましては,岡山大学消化器腫瘍外科学8階のES細胞の専用研究室を使わせていただいております。

 進捗の状況でございますが,ネブラスカメディカルセンターにおられましたフォックス教授と長年のつき合いがございまして,ヒトES細胞から肝細胞への分化誘導に関して共同研究を行おうというふうなことで実験を進めてまいっております。

 我々の方法といたしますと,これは前回の研究成果として報告をさせていただきました肝臓の細胞の成熟した一つの指標としまして,アシアロ糖蛋白のレセプターの発現があるものが出現してくるということが分かりましたので,そういう細胞を選択的に識別することによって,より機能の高い肝臓の細胞を選別できるというふうなことができるのではないかということを前回御報告させていただいたわけでございます。将来的にはそういう細胞を動物に移植して,腫瘍をつくってこないかどうか,また肝不全の動物を救命することができるかどうかというふうな実験を行いたいと考えておる次第でございますが,まだこうした動物実験に関しては一切施行をしておりません。

 これは前回のお示ししました分化誘導過程の細胞の遺伝子の発現の程度を見ておりますけども,ちょうどここへ示しておりますように分化したヒトES細胞由来肝細胞,同細胞には,こういうアシアロ糖蛋白レセプターというものが出現してくるということが,遺伝子のレベルで分かりました。たんぱくの発現を解析することによって,実際にたんぱくに翻訳されているということが分かりました。そして,その発現率が概ね26%であるということが分かりました。

 そして,これは染色の結果でございます。ヒトの肝臓の細胞,そして肝臓がん由来のヒトの細胞であるHepG2というようなものを使いまして,アルブミン,そして胎児性たんぱく,α―フェトプロテインの発現の状況を調べたものでありますが,これが現在の分化誘導療法で得られている細胞の特徴です。アルブミンの発現は非常にこう良好である。しかしながら,少し未熟な肝臓の細胞に発現してきますα―フェトプロテインというものがちょっと陽性になっている,一部で陽性であります。成熟した肝臓の細胞ではそういうものの発現を認めていませんので,かなり正常な肝細胞に近い状態にはなっているんですけども,まだα―フェトプロテインの発現が少しあるというふうな状況でございます。

 血液の第7凝固因子,血液製剤には限りがございますので,ヒトのES細胞から誘導された肝細胞が血液の凝固因子をつくってくれるということは,血漿製剤,血液製剤の国内需要,国内供給に対して,こういう細胞が将来そういうことに応用できるという可能性がありますので,意義が高いということで検討を行いますと,たんぱくレベルでの発現もこういう形で発現が認められるということが分かりました。

 実際に第7凝固因子はビタミンKの存在下で実際に活性が誘導されるというふうなことが分かっていますので,分化して,アシアロ糖蛋白を発現しているものにはビタミンKを依存的に活性が上がってくるということが分かりました。

 これはヒトのサンプル,ヒトの血漿です,ボランティアの血漿ですけども,42から277ということですけど,こういう範囲に入っているということで,非常に意義深いデータであるということが分かりました。

 こういうような研究をしてまいったわけですけども,問題点といたしまして,今回皆様方に御迷惑をおかけしました,当初の大臣承認が9月14日,平成17年9月14日でございましたので,3年間の研究期間ということになりますと,9月13日,14日までに延長に関する大臣承認が届かなければ研究の継続を行ってはいけないということでございましたが,研究のほうに重点を置く余り,研究期間に対する認識が甘いと,甘かったという失態を私のほうが起こしてしまいました。それで,指摘されたのが平成20年10月8日と,期間が延長されて承認がまだ届いておりませんでしたので,直ちにヒトES細胞の培養を中止いたしまして,凍結保存を行いました。こちらの記録のほうにその旨を記載させていただいております。

 当問題に関しましては,11月27日,文部科学省の専門委員会に出席をさせていただきまして,厳正な審査を受けまして,今回の経緯の御説明をさせていただくとともに期間延長の申請のお願いも申しました。これは12月24日付でございますが,文部科学大臣のほうから,今後こうした責任者としての,期間延長を含めましたES細胞研究の指針を遵守するということを厳守するという条件下での期間延長,2年間の延長を認めていただくことができました。

 使用責任者としまして二度とこういうことが起こらないようにということで,再発防止のための具体的な方策といたしまして4つの事項を考えました。平成22年9月13日が期限でございますが,具体的には2ケ月,1ケ月,2週間前に,私のコンピューターと携帯電話にアラームを設定するということをしまして,意識の欠如というふうなことを防止しようということ。そしてまた,残り期間が同様な期間になりましたら,使用責任者はA倫理委員長と人見事務担当者に御連絡をさせていただくということ。そして,使用者はデスクの前の壁に期限が明記された計画書を貼付して,常に意識の集中を図ろうと。そしてまた,ES細胞専用室の入り口にもそうした警告書を貼付して,常に使用期限の認識というものを心にとめておこうと考えました。

 実際に使用計画書,使用期間というものを赤字で明記しまして,これは私のコンピューターですけど,壁の上,そしてまたこれはES細胞の部屋でございますけど,ここに張るというふうな形で今後の再発防止に努めようと考えております。

 こういう研究とともにセミナー,勉強会などの開催を少しさせていただきました。これは平成20年11月22日ですけども,ヒトES細胞の至適培養液の開発がやはりいろいろな会社からなされておりまして,これは東北にある会社でございますが,伊藤先生に来ていただきまして,最新のヒトES細胞の培養液の講習会といいますか,御講演を受けました。

 そして,国内外での教育研修セミナーへの参加,そして発表ということを行わせていただきました。ちょうどこの11月23日ですが,これはES細胞の研究が中断してしまいましたので,少し学会活動のほうに精力的に行ってまいりました。日本臓器保存生物医学会で,ヒトES細胞の研究の発表をさせていただきました。そして,翌日の24日には現在岡山大学と同済医科大学,部局間の協定を結んでおります。そこで将来バイオ人工肝臓の共同研究を行おうというふうなことがありまして,情報交換ということで,ヒトES細胞を使ったバイオ人工肝の将来性ということに関しまして講演,そして親睦を深めてまいりました。

 今後の研究に対する心構えということになりますと,文部大臣及び文部科学省からの今回の我々の失態に対しまして注意事項としまして,やはりES細胞研究指針の遵守をしてくださいということでありますので,しっかりとこういう指針を理解して,意識のエアポケットができないように努力をしていきたいと思います。

 そして,研究の方向性,方針でございますが,アシアロ糖蛋白というものを発現する細胞を指標とすることで,凝固活性が非常に有力である肝臓への細胞を選別することができるということが分かりましたので,薬物代謝に非常に大事であるチトクロームP450の活性,いわゆる薬物の代謝試験に使えるという,これはこれまでも倫理委員のG先生のほうで,これを検討することが非常に有意義なんだというふうなアドバイスをいただいていますので,そういう研究を行っていきたいと思います。

 それとまた,ES細胞から分化誘導された肝臓の細胞,現在はiPS細胞という非常に国内外で非常に注目されています,そういういわゆるほかの種類の幹細胞から分化誘導される肝細胞,もうどれくらいの成熟過程にあるのかということを正確に評価できる,そういうふうな国際的なクライテリアの作成を行っていきたいと思っておりまして,本年の4月20,21日と岡山で国際細胞治療学会を会長として開催させていただく運びになっておりますので,そこでそういった細胞の成熟度を判定できる,そういうふうなクライテリアに関する国際的なコンセンサス研究会を開催いたします。そういうような少し国際的な取り組みも行っていきたいと思っています。

 総括とさせていただきますと,研究に関しましては常に胚提供者への感謝の意を持って実験を行わせていただいているということです。それと,第1外科の8階への入室に関する,施錠ができる,そしてまたES細胞の実験室自体の施錠というふうなダブルキーシステムになっていますので,これまで特に盗難とか不審人物の侵入の管理面では全く問題ございませんでしたが,使用期間の認識に対する意識の欠如というものが生じましたので,こうしたことが起こらぬように再発防止に全力を尽くしたいと思っております。

 実験計画書どおりにほぼ実験が施行できていると考えております。そして,分化細胞を選別する有効な方法を生み出すことができたと考えております。より研究の充実化を図るために国際的な幹細胞研究の組織化を行っていきたい。これは特に昨年の文科省のヒトES細胞指針の改正によりまして,海外産のヒトES細胞が国内でも使用できるというふうなことにつながりまして,国際的な同じ土俵に立った議論ができるというような,研究者にとっては非常に好ましい流れでございます。

 そしてまた,教育研修,セミナーのほうに関しましても,積極的に参加して,知識を広く吸収していきたいと考えております。

 以上,御清聴ありがとうございました。

A : 研究責任者B先生,どうもありがとうございました。

 それでは,ただいまの御説明について質疑を行いたいと思いますけれども,先ほど最初に欠席者の確認をすることを忘れておりましたので,ちょっと先にそれをさせてください。今日はF先生とL先生が御都合により御欠席でございます。H先生は10時30分頃にお見えになる予定ですので,委員会はこのメンバー,H先生を含めたメンバーで進めたいと思っております。

 それでは,研究責任者B先生のただいまの御説明ですけれども,恐らく3つぐらいの要点がございまして,1つはサイエンティフィックな面で研究がどのような進行状況にあるかということ,2つ目は実験を進めていく上での管理状況といいますか記録その他の面,それから3つ目は昨年問題が発生した期間延長の件であります。

 実施状況につきましては最後に簡単に触れていただいただけですけれども,このことにつきましてはこれまでも特に問題がなかったということで,今日記録簿を御持参いただいて現在回覧しておりますので,それをごらんいただければと思います。

 3番目の……はい,どうぞ。

研究責任者B: 記録簿のほうでございますが,前回D委員からもう少し細胞の状況がよく分かるようにということで,実際に培養しているプレートの数だけではなくて,細胞の占拠状態というふうなものを記させていただいております。当初は細胞の形態,どれくらいの範囲に細胞がいるかというのを記載させていただこうかと思ったんですが,少しまちまちに見えたりいたしますので,占拠率の記載という形で御理解をいただければと思います。

A : はい,ありがとうございました。その記載は余りにディテールということになりますと,負担が過重だと思います。前回のときの議論は,例えばマルチウェルのプレートが1枚と言って,その中に,1枚のうちの1カ所を使っているのか,6個を培養して別な条件で使っているのか,そのあたりのことがよく分からないのでという議論でしたので,常識的な範囲で記述をしていただければいいのではないかと思っております。そういう観点からも委員の皆様が御検討くださればいいと思います。

 それから,昨年の研究期間の超過といいますか,過ぎてしまったということに関しましては,今研究責任者としての立場から御説明がございました。私としては,もちろん研究責任者としての責任は当然あるわけですけれども,同時に倫理審査委員会としての責任,特に委員長としての責任もあると認識しております。その理由は,研究責任者B先生が期間延長の申請書を出されて,それを受けて開いた委員会が5月の末,5月26日でございまして,その後申請書の修正をしていただいて,6月20日にはその修正案が上がったと。そういう意味からいいますと,明確な期限の認識はなかったにしても,十分間に合うだけの時間的余裕をとって申請が出されたということは,私もよく認識をしております。ただし,これはそれぞれに責任があるからお互いにあいまいにという意味ではありませんでして,それぞれが応分の責任感を持ってこの事態をもう一度振り返って,今後どのように防止策を講じていくかということが問われていると,そういう認識で私はいますので,そのことを踏まえた上で質疑をしていただきたいと思います。

 何か委員の先生方から,サイエンスの問題,施行状況,あるいは昨年の経過,今後の防止策等について御意見が,あるいはお尋ねになりたいことがありましたら,是非よろしくお願いいたします。

 D先生,いかがでございますか。

D : 考えていたところなんですけども,サイエンティフィックな進行状況なり,あと管理の状態に関しましては,ずっと聞かせていただいていましたので,納得できる範囲だと私は思います。

 期間の延長のことに関しましての部分ですけども,自分自身も種々の形で他の倫理委員会に申請しているものもあったりしますが,そのところでいざ一生懸命研究していますと,終了の時期に関してはついつい失念するというのがやはり起こってしまう事実は,あるわけですね。このところの部分,大変なことになってしまったなと思っております。それは確かに委員会の責任でもありますし,大学の研究科としての対策なりがうまくできていなかったところもあると思うんですけども,これに関して研究責任者B先生のほうがいろいろアイデアを出していただいています。これ,いざ実行しようと思うと大変なんですけども,最初のトライアルという形でやっていただくしかないと思いますし,頑張ってくださいというお願いをするというところになると思います。

 ですから,あえて質問ということではなくて,感想なり,あと勉強になったというところを述べさせていただきました。

A : ありがとうございました。

 G先生,お願いします。

G : 研究の進行状況について私の意見です。研究責任者B先生は非常に仕事が早い人で,頑張られていると思いますが,このくらいのデータが3年もかかったのかなと思うと,私自身の感じでは少し遅すぎると思っている。

 やはり難しかったですか,これだけ出すの,3年もかかりましたか。

研究責任者B: 実は,当初ですが,そんなに特殊な操作をしなくても自然にある程度分化してしまうというふうな性格もございまして,アルブミンとかは陽性になってくるというふうなことは経験をしておりました。しかしながら,何かいい指標がないかと,完全にすべての細胞を100%肝臓の細胞に誘導するというのは,これはなかなか難しいだろうと思っておりました。そこで,アシアロ糖蛋白の発現に注目するということができたんですけども,そこに行き着くまでがやはり少し距離が,時間が少し,本当に実際かかってしまったなということは先生のおっしゃるとおりでございます。

 ただ,培養自体がやはり普通の細胞と少し違いまして,我々はマトリゲルを使う,いわゆるフィーダー細胞を使わないというような方法を採用はしているんですけども,やはり普通の細胞に比べますと培養に少し工夫が要る。各種グロースファクターを入れたり,少し細胞の増殖がいいときもあれば少し悪いときもあったりというふうなところで,我々が通常使っております株化された細胞とはかなり取り扱いが違っていたというふうなところはございました。

G : いろいろのES細胞を使っての分化細胞への研究は非常なスピードで進んでいると思います。この肝臓への分化というのは,そのうちでは非常に難しい部類に入ると私は思っておる。皮膚をつくるとか筋肉をつくるとか,そういう方向へは割と行きやすいと思う。研究責任者B先生のグループが非常に馬力をかけてやられても,なかなかこのバイオ人工肝臓まで行くのは道のりが遠いと思う。本当に,2年これから延長するんでしょうけれども,それでどこまでできるか不安です。

 それと,細胞の培養が難しいことはありますが,そういう細胞を扱うときはたくさんの細胞をとにかく沢山持っていて,いつでも使える状態に増やしていて,いつでも実験がスタートができるようにしないと,一々細胞の状態が悪いからといってそれを待っていたんでは,仕事は進まないと私は思います。

 そういうことで,本当に行けるかどうか,あるいはもう少し馬力かけてスピードアップしていただきたい。それができないなら,もう打ち切ってもいいのではないか,そういうふうにも思っていますが,どうですか。

研究責任者B: 貴重なアドバイスをありがとうございます。確かに先生が言われるように肝臓の細胞への分化誘導というのは,皮膚の細胞とか心筋の細胞に比べるとやはり難しいというのは現実だと思います。これは世界のさまざまな研究者もやはりそういうような訴えをしております。今年の4月にそういう問題点を一つ解決する方法として,国際的なそういうコンセンサス会議を開こうということです。この趣旨は,そういうグループに対しては同じプロトコルを使おうではないかということです。また,細胞も同じ細胞を使おうというようなこと。それで,共通のデータベースをつくっていって,よりいいプロトコルが出れば,それを採用するというような,そういう研究の国際化ということが可能になってまいりますので,そういう点を利用して研究のスピードアップも図りたいというように一つは考えております。

 それと,確かに細胞を大量に培養する,そういうような少し大型の培養装置を導入していくというふうなことも今後の研究には必要だろうと思っておりますので,今年の4月ではございますが,そういう国際的な取り組みのシステム化をつくることでスピードアップをより促進したいというふうには考えております。

A : G先生,よろしいでしょうか。

G : はい。私自身の考えで,実験のスピードの問題,それから目的に行くかどうかという問題,そのための意見をお聞きしたかったわけです。結構です。

A : 今,H先生が御到着になりました。よろしくお願いいたします。最初に現在の研究の進行状況について研究責任者B先生から御説明いただきまして,今,それについての質疑をしているところです。

 どのようにして研究の進行状況をモニタリングするかということに関しましては,ディテールが定められているわけではないと思うんですね。それで,今回もこの記録簿を見て思ったんですけれども,少なくとも前回,培養の状況がよく分からないと言った意味は,研究,いろいろな形で分化誘導したり,それをハーベストして起こっているという研究の進行状況の説明と,それから培養しているプレートがある時期にマルチウェルプレートが1枚だったりしたので,どういうふうにプレートを使って,どうやっているのかということがちょっとよく分からない面があったので,そういう指摘があったと私は認識しておりまして,1つのプレートの中の何%オキュパイしているかということまで記録するというのは,私としては少し過剰に反応され過ぎているなという感じはいたします。

 いかがでしょうか,D先生,どう思われますか。

D : 大体どれぐらいの細胞を培養しているかというのは,実は私たちが学生だった頃にやっていたときに書いていた内容なんですね。ですから,どの程度の細胞がいますよと,それを次のかわった人が,研究を継続する人もしくは別の日にやってくれる人がその状況を知りながらやるというので伝えていた内容なんですけども,そうしたときにはやはり1枚だけではなくて,何ウェル使っていたとかというような情報を出していたと思います。ですから,そのぐらいの部分は書いておかれないとまずいのではないかと思ったわけなんですね。

 社会的な懸念とされる部分というのは,結局増やした細胞をどうされているかとか,どの程度の数の細胞がいるかというところがやはり問題となってくるんだと思います。今回の研究期間の話ともちょっと関係するんですけども,社会の懸念なり関心というのはそうした部分にどうしても向いていってしまうと思うんですね。ですので,可能な限り記録できるものは,簡単にでもいいですけども,全体像を把握できるように書いてあげる,残しておくということは必要ではないかなと思います。

A : ありがとうございます。私は,私の個人的な考え方は,D先生が先ほどおっしゃった,どのぐらいの細胞がいてというディテールは,これは実験ノート,研究を進めるために記録する実験ノートであって,その研究の内容の実験ノートまでこのES細胞の倫理審査委員会がコミットしてチェックする必要はないと思っています。

 ただ,大ざっぱに言って,細胞が例えば100枚のプレートで培養されているのか,1枚のプレートで培養されているのか,10枚のプレートで培養されているのかというようなことが大体分かっていれば,このヒトのES細胞というものがあの場所で研究されて,どのぐらいの規模で維持されて,どうなっているかということがほぼ分かるだろうと。そのぐらいで十分ではないかと,倫理審査委員会としてはですね,そういうふうに思っているんですけれど。

 研究責任者B先生,この件について何かコメントございますか。

研究責任者B: 前回D先生に御指摘をいただきまして,占拠率を書くとか,そういうことに関しては大きい負担では,これはございませんし,記載させていくのはやはり当然の結果だったろうと思います。やはりこういう倫理,モニタリングが進むにつれてそういう内容も少しブラッシュアップできているというようには実際感じてはおります。

 やはり我々としても,例えば実際にデジカメでいろいろな培養の経過を写真で撮ってノートのほうには張っているんですけども,そこまでこれに張りだすと,非常に膨大な量になってしまうというふうなこともありますので,ディテールは分からなくても,どれくらいの枚数で実験をしているのかというふうなことは記載させていただくべきだったと思いますし,前回の御指摘で5月27日からそういうような記載にさせていただいています。またよりいいと思うことがあれば,どんどん盛り込んでいきたいというふうな姿勢では考えております。

 ただ,やはり胚提供者に対して,どういう形で我々が敬意を示せるかというと,やはり研究者とするとそういうことを記載するということで示す,お示しすることしかできないのかなというようには少し感じてはおります。ただ,事務手続的な問題,例えば専用の実験室を用意しなさいというふうなところもあって,やはりヒトES細胞の研究に少しブレーキがかかるとともに,iPS細胞研究のほうに流れようという動きが実際に多いというのは,やはり現状ではないかなと思いますので。ただ,私の個人的な考えとすると,iPSよりも私はES細胞のほうがより自然に近い細胞ですので,その研究を促進する意義は非常に強いと思っていますので,余り世間も,マスコミも含めて,文部科学省のほうも大分指針をだんだん緩めてはこられていますので,そういうようにだんだん規制が緩和されるという方向には行くのではないかと。

 しかしながら,規制が緩和されると,やはり今回のようなちょっと使用期間の認識のエアポケットが生じるようなこともありますので,その辺の兼ね合いというのは非常に難しいのかなと。そこはやはり責任者が一つ一つ問題を認識しながら,今回のように,私が一番いいと思いましたのは,目の前にいつも張って見ておいて,期限をもう,いつが期限なんだというように持続して認識するということかなと考えております。ですから,非常にこうした問題を,今後学内でそういう講習会とか勉強会を開きながら,皆さんの意見を交えて岡山大学独自のまた新しいシステムを作るということになれば,こういう経験が生かせるのではないかと考えてはおる次第です。

A : ありがとうございます。ほかにございますか。

 I先生,何か。よろしいですか。

 そろそろ研究責任者B先生の予定の時間になったんですけど,はい,どうぞ,K先生。

K : 先ほどG先生も言われたんですが,細胞をたくさん集めるということに関しては,どの程度の見通しがあるんでしょうか。すなわち細胞を増やすという,その分化した肝細胞,分化肝細胞を増やすということに関しては,どの程度の見通しというのがあるんでしょうか。

研究責任者B: 今我々はシックスウェルプレートといいまして,1つのプレートに6個あります。大体細胞がいっぱいになると200万個です。大量に培養できる実はもう培養システム自体は,7年前からクラレメディカルと共同開発をいたしまして,200億の細胞が詰めれるという,そういうモジュールが完成しております。そういうモジュールができたということがありまして,スライドでお示ししましたように中国の同済医科大学に行ってまいりました。これは中国でのバイオ人工肝臓の臨床試験をしようというのが前提です。しかし,そこで詰める細胞というのは,まだES細胞というようには考えていないわけですね。当面,研究計画があった自体は,とりあえず臨床応用は考えるなと,臨床使用を前提としないというのが国の指針でした。あくまでも基礎研究であるというのが文部科学省の指針なんですね。我々は,ですからバイオ人工肝臓開発のための基礎研究というように銘を打っております。しかしながら,当然こういう貴重な細胞を使うわけですから,将来は国民の皆さんの恩恵を受けれるような治療をしたいということで,人工肝開発まで持っていこうと思っています。

 分化した細胞を増やすということは,基本的にこれまでの占拠率等を見てみますと,増やすということは難しい,不可能だと思っていますので,必要な数を想定して,例えば具体的にしまして26%いますので,そういう細胞だけを選りすぐるというような,大量に培養しておいて,目的とする数以上のものを当然培養,培養器の中で培養してというふうなことを考えていますので,大量培養に関しては実は全く懸念を持っておりません。要はスケールアップすればいいということで,非常に増殖能が豊富な細胞ですから,未分化な状態でも幾らでも増えるわけですね。1つ考えていますのは,そういう装置の中に大量に置いておいて分化誘導しておいて,アシアロ糖蛋白のドリガンドをバイオ人工装置の中に,機材の上に加工しておけば,そういう細胞だけ残ってきますので,そういうようなことを考えております。

 ですから,大量に培養するということは,要はこれはもうコストとあとは培養のシステムだけの問題です。そこに関しては,現在のバイオテクノロジー,テクノロジーのほうがもうそこまで来ていますので,いかにあとはもう少し純度26%を選別することなく試験管の中で増やすことができる,増やすというかそのポピュレーションを増やすことができるかと,誘導効率を上げることができるかどうかというふうなところに少しかかっているかなということで,当面の研究に関してはシックスウェルの培養でいけるのではないかと考えております。ある程度目途がついた段階で大型のモジュールの中に細胞を装填していくと。ただ,この大型の培養器に入れた場合の目的としますと,やはり肝不全動物等の治療での成果を見ていきたいと思っておりますので,その時期がいつになるかということに関しては1年後ぐらいを想定はしてはおりますが。

A : よろしいですか。

 B先生,何かございますか。

B : 現在26%の分化の効率を得ていますよね。これをさらに上げたいということが今後2年間のかなり重要な課題だと思うんですけれども,現在分化誘導をかけているのは,主にアクチビン-AとbFGFですが,これ以外のものを検討する御予定ですか,それともこれらの分化誘導系のさらなる微調整という形で誘導効率を上げたいと思っていらっしゃるんでしょうか。

研究責任者B: 26%というのは,私の中ではある意味で十分な数字なのかなと。4分の1いっていますので,例えば1億欲しければ4億最初のスタート地点で増やしておけばいいわけですよね。ですから,現段階でも例えば大型のモジュールの中にそういう選別された細胞だけがくっつくような加工をしてやれば,細胞を充填して動物実験をするということはもう可能な状況です。ただ非常に,現段階では臨床治療というのを考えてはいけないんですけども,臨床治療を想定するとしますと,非常に大量の細胞を用意して非常に大量の培養液が要りますと,大体1人の患者さんを治療するのに肝臓移植で2,000万円ですね,ですから2,000万円を超えるような培養システムであっては意味がないというふうなことになります。

 ですから,ある程度コストダウンもしないといけないというふうなことがありますので,例えばもう26が限界であれば,26に持っていくのにもっと低コストでいけないかというふうなこと。それと26を一つ上げる方法とすると,もう少し培養期間を延長をするというようなところ,それとあと先生の御指摘の,少し成長因子等の微調整を行うというふうなところがあるかとは思っておりますけども,極端な話をしますと,例えば現段階でもモジュールに詰めて動物実験は行えるという段階まで来てはいます。

A : はい,よろしいでしょうか。

 はい,G先生,どうぞ。

G : 皆さんの繰り返しになるかも分かりませんけれども,やはりこの分化の程度を上げるというのも一つの手だと思いますが,先生が言われるようにそのくらいでもいいかと思う。だけど,上げる努力も要ると思う。

 それともう一つは,分化した細胞をいかに長くキープできるか。やはり人工肝臓とかそういうことのほうへ行くとすると,どのくらいキープできるんですかね,分化した細胞をただ培養して,それをサンプリングして,こういうふうなものが出たというのではなくて,本当はこういう分化した細胞をどれだけ長くキープできるかということが1つあると思います。そのことが1つ。

 それから,100%分化するということはインポッシブルだと思います。だから,ある程度分化したポピュレーションを使って,それが肝細胞としての機能を持っておればいいと,代替できるというだけの機能があればいいのではないかなと私は思っています。

 以上です。結局分化した細胞をキープできるか,あるいはある程度分化したポピュレーションをもって肝機能としての機能を維持する,それがまたどのくらいの期間維持できるか,そういう問題ですね。

研究責任者B: 機能に関しては,試験管で培養いたしますとやはり1週間が限界といいますか,1週間しますとかなり機能がやはり落ちて,3分の1以下になってしまうというふうなことがございます。これは正常な肝臓の細胞の培養とやはり同じようなパターンをとってくるということが1点。ただ,我々はまだ動物実験を行っていないんですけども,ネブラスカ大学で同じ手法を使って,肝臓の中に免疫不全動物に移植しますと,長期間ずっとアルブミン,そしてアルファアンチトリプシンというのは肝臓特異的な酵素なんですけど,これがずっと増えてくる。これは普通の同じ数のヒトの肝臓の細胞を移植したときと同じようなパターンをとってくるということで,生体の中では移植をするとそういう細胞はずっと機能を持って増えてくるというようなことが分かっています。しかしながら,何例かに1例は奇形腫が生じるというふうなことがございます。

 ですから,裸で細胞を生体に移植した場合は,動物レベルであれば長期間,6カ月ぐらいにわたって機能が維持されている。これは動物の寿命が来ますので,それ以上は観察ができていないということです。これはマウスです。しかしながら,生体の中に直接入れてしまうと,そういうふうな奇形腫ができてくる危険性が12.5%に認められていますので,デバイスの中に入れていく必要があろうかと。しかし,デバイスの中であれば試験管と同じ状況になってしまいますので,機能としたら1週間。ですから,短期的な使用にしか向いていないと考えております。

G : ちょっと追加。最初の頃話されておったけれど,ポリウレタンに入れるとか,そういう三次元にやるとかなんとかして,とにかくこの人工肝臓を目指す。そういう三次元とかなんとかそういう形に持っていって,肝臓の機能としてどのくらいもてるかという,そういう基礎実験が要ると私は思います。だから,この単層培養の細胞でというのは余り意味がないと思っていますが。

A : よろしいですか。時間も少し過ぎましたし,この委員会はES細胞の倫理審査委員会でございますので,ES細胞が有意義に使われているかどうかということをチェックするという範囲内で研究の方向性というか研究の進行状況をチェックするというのが基本的な立場だと思います。したがって,今専門の先生方いろいろなコメントをしていただいて,研究責任者B先生がそれを受けて,役に立つところは参考にされて,研究を進めていただければいいのではないかと。必ずしもサイエンティフィックな内容までに踏み込んで,この委員会が何かをこうしなさい,ああしなさいということではございませんので,研究責任者B先生もその点は誤解のないようにお願いしたいと思います。あくまで有用に使われているかどうかということをチェックするという立場でいろいろなコメントをしているということだと私は理解しております。

 時間が過ぎたんですけど,それはどうでしょうか。追加,どうしてもということがなければ,これで研究責任者B先生御退席いただきたいと思いますが。

 先生,ございますでしょうか。

K : 報告書の中でちょっと何カ所か分かりにくい箇所があるかと思うんですが。

A : どうぞ,お願いします。

K : 4番の研究の進展状況の1)の4行目,上から4行目,「その都度記載,ES指針に対する注意の欠如をだした」という,ここら辺がちょっと分かりにくいかと思うんですが。

 それから,裏のほうの最初の2)番というのがあるんですが,そこの最初のほうの使用責任「者」が抜けているのではないかと思うんですが,これは。

研究責任者B: 使用責任者,「者」が抜けております。

K : 「者」ですね,はい。

 私が気がついたところは以上です。

A : ありがとうございました。

 研究責任者B先生,ではその点修正をお願いいたします。

研究責任者B: はい,ありがとうございました。

A : それでは,研究責任者B先生,どうもお忙しいところありがとうございました。これで退席してくださって結構です。

研究責任者B: どうも今日はありがとうございました。

   (研究責任者B退席)

A : それでは研究責任者B先生が退席されましたので,現在の研究の進行状況についての総括的な議論を行いたいと思います。何か御意見ございますでしょうか。

 はい,D先生。

D : 先ほどから研究のゴールの話などもいろいろありましたけども,結局今現在進行されている研究がどのような評価を受けているかという部分を若干垣間見ないと,どのあたりまで進められてきているかというのがつかみにくいのではないかなと思うわけですね。ですから,それが研究期間の延長の長さにもつながってくると思います。

 ですので,例えば研究報告書の4番の4)のその他というところがあるわけですけれども,そういうところなどに外部からどのような評価を受けられているかという部分も書かれてもよかったのではないかなと思うところがあります。通常でしたら論文だとか学会公表だとかいろいろ書くんでしょうけども,そうではなくても,公表した論文などにどのような意見をもらったとか,そうしたことがあれば,この研究の位置づけというのが私たちのほうには分かりやすいのではないかと思いますし,また社会に公表したときにも,委員会として公表したときも何を見ていたかというのが分かりやすくなるのではないかなと思いました。

 もう一点,その次にあります5)のホームページ公開内容のところですけども,文章がここだけ「ですます」調に書いてあるので,恐らくホームページの内容そのものを書かれているのではないかなと思うんですけど,ちょっとその一部だけ書かれたとしても,その一部であるかとか,何かこう1行「である」調の文章で説明がいただければと思うところがあります。同時に,この報告書というのは結局文科省にも行く報告書でもあると思うんですけど,そうなりますと,URLですかね,ホームページですからURLも書いてあったほうが,次の段階の審査などを受けるときにいいのではないかなと思いました。そういうところをちょっと心配しています。

 以上です。

A : ありがとうございました。確かに先生のおっしゃるとおり,今のような内容をつけ加えたら報告書としてより完成されたものになりますので,それをそれでは研究責任者B先生にお伝えして,ちょっとリバイズをしていただく。先ほどK先生が言われたミスタイピングといいますか,その点の修正も含めて一部手直しをお願いしたいと思います。

 そのほかにございますか。

 よろしいでしょうか。

 それでは,今いただいた御意見に従ってこの報告書の文章を手直しするという上に立って,現在の進行状況については特に問題はないというふうに結論してよろしいでしょうか。

 G先生,よろしいですか。今の進行状況について。

G : 私はちょっと遅いのではないかと言いたいけど。

A : まあ,先生,私が先ほど申し上げましたように,それはコメントではありますけど,励ましのお言葉として,倫理審査委員会の立場としては進行状況としては,倫理面からは特に問題がないと。

G : 早くやってもらわんとね,こんなに時間をとったらたまらないから,早く結論をつけて終わってほしいんですよ。

A : それはそうですけどね。

 励ましのお言葉を,それでは。

 そのほかにございますか。よろしいですか。

 それでは,そのように結論させていただきたいと思います。

 では,今度はこの委員会そのものの問題といいますか,先ほど申し上げました2番目のその他の中に前回の委員会以降どういう状況があったかということを,先日Eメールで概要を御説明いたしましたけれども,改めてこの場で報告させていただいて,今後の防止策について御議論いただきたいと思います。

 5月26日に前回の委員会が開催されまして,その中で報告書の内容等についてさまざまな御意見がございました。修正の必要性もあったことから,委員会の議論の内容に基づきまして私のほうから修正点を研究責任者B先生に伝えまして,改めて申請書を出してくださいとお願いをいたしました。それが6月20日に研究責任者B先生のほうで修正をしていただいた申請書が出されましたので,これを委員の皆様方にお送りいたしまして,いろいろな御意見をいただいたということであります。

 問題は,それから9月4日までの間にかなり時間がたってしまいました。この点につきましては,夏に入って夏休みということもありましたし,1つの一番深刻な問題は,承認期限ということを私自身も意識しておりませんでしたので,少し店ざらしになった感じがあります。私はこの点については委員長としては非常に深い責任があると認識をしております。その結果,最終的に文科省への提出書類,個々の具体的な提出書類について委員の皆様方から確認を最後にいただいたのが9月12日,文科省に送ったのが9月19日ということになりまして,先ほども話が出ましたけれども,9月14日に申請がおりておりますので,正確には9月13日で3年間の期限が切れてしまったわけです。その書類が文科省に行きまして,文科省から10月8日に,文科省のほうでも少しすぐにチェックされたわけではないという事情がございまして,8日に研究期間が過ぎているというお知らせがございました。当方としては非常に驚きまして,直ちに研究を中断して今後の方策を探るという姿勢をとったわけでございます。

 幸い10月22日に文科省の野島専門官が,このことがある前から一度こちらに来られるというお話もあったんですけれども,ちょうどこういう問題も起こりましたので,来ていただいて,詳細な説明と指導がございました,どのような姿勢でやるべきかということで。そこでは,本来ならば期限を超過しているので,厳密に言えば改めて新しい申請ということになるんだけれども,さまざまな事情を考慮して,また過去に非常にきちっとした取り組みがされているということも評価していただきまして,研究期間の延長という形で受け付けて,専門委員会に審議に付するというお話がございまして,同時に経過の説明とか今後の対応策とか,そういうものを書いた書類をつけて文科省に改めてお送りをいたしました。

 11月27日に文科省の専門委員会へ私と研究責任者B先生が出席をいたしまして,経過の説明をしまして,こういう事態を招いたことについて陳謝をいたしました。その結果,その場では特段の御意見がございませんでして,私たちが退席した後に審議がされまして,基本的には対応策も練られているし,このままで認めてよかろうと。ただし,留意事項として今後は,当然のことですけれども,承認期限の前にちゃんと手続をするようにということで大臣確認がとれたというのが今までの経過でございます。

 先ほど申し上げましたように,なぜこういうことが起こったのか,責任問題とか経過についてはさまざまな観点がございます。

 私自身の立場といたしましては,倫理審査委員会というものが本来そういうことをきちっとモニタリングするという形の上での責任を負っているわけで,その責任者としては非常に重い責任があると。しかも夏の6月20日から9月4日まで,もっと迅速に作業が進むはずであったのに,その部分の作業の遅延は主に私の責任であると認識をしております。この点につきましては,先ほども申し上げましたけれども,改めて陳謝したいという気持ちがございます。

 それから,もちろんそれぞれに責任がないわけではございませんでして,事務方もこういう面につきましては従来事務方がそういうことをチェックするという体制でやってきたという部分がございますので,事務方のほうもそういう認識にはありまして,さまざまな場面でそういうことが表明されておりますし,文科省の見方は,文科省の野島専門官の御意見では,やはり研究の実施責任者がもう少し認識をしなくてはいけないのではないかということも来学時におっしゃっておられまして,これは研究責任者B先生と一緒に話を伺いましたので,研究責任者B先生のほうもそういう自覚は十分にあるであろうというのが私の理解しているところでございます。

 それで,後ろ向きに考えても仕方がないので,そういう反省の上に立って,今後再発防止策をどうするかということでございますけれども,そこでいろいろ前回説明のEメールを送った後に委員の先生方からもアイデアをいただきましたし,研究責任者B先生のほうからもアイデアをいただきました。その上で,そこに書いてありますように,1つはこれ全体の倫理審査委員の先生方は非常にお忙しい先生方が多くて,日程調整に困難を生ずることが多いんですね。そのために開催の時期が少しずつ延びてしまうというのが現状がありますので,私としては,申請書とかこういう報告書が出てきたときに機動的に詳細をチェックできるような小委員会を設けてはどうかと考まして,私とそれからD先生,E先生,それから事務方の人見さんの4人でこの小委員会を組織したいと。改めて事前のチェックを行いまして,そのチェックをした結果を付して委員の皆様方にお送りするという形にしたほうが実質的ではないかと考えました。幸いにして,D先生,E先生には内諾をいただいておりますので,そういう方向で進めたいと考えております。

 それから2つ目は,全体の,研究期間が今後また2年間あるわけですけれども,2年間の中でどういう時期にどういうことをしなければいけないのかということを一覧表にした行程表を作成して,それが一目瞭然となるようにしておきたいというのが2番目の問題でございます。

 それから3番目は,やはり定期的にこの指針の勉強会を催しまして,社会情勢の変化とかES細胞に関しましてもさまざまな議論が行われて少しずつ変化をしておりますので,それを私たちも認識を常に新たにするためもありまして,定期的な勉強会を開催したいと思います。当面,まだ時期は確定的ではありませんけれども,例えば3月あたりを目途に文科省の野島専門官においでいただいて,現在のこの生命倫理に関する動向とか,あるいは特にES細胞のルールを,新しい指針をどう考えるかというようなことについて講演をしていただいて,そこにはこの委員会のメンバー及び研究を担当している方々,それからそのほか学内のいろいろな興味のある,興味を持ってくださる方に開放して,勉強会を開催したいと思っております。

 それから4番目は,D先生にこれは御意見をいただいたんですが,承認の期限の終わりが近づきましたら自動的にアラームを発することだって可能ではないかということで,そういうシステムを構築してはどうかという御提言をいただきました。これは非常に大事なことでもありますし,倫理審査委員会が管轄する研究計画,研究というものは必ずしもES細胞だけではございませんので,そのほかの倫理審査案件,倫理審査委員会の管轄下にある研究についてもこのシステムを適用してはどうかということで,今後そういう方向で進めたいと考えてはおります。

 以上,そこに挙げました4つの対応策をとって,今後の再発防止に努めたいというのが現在のところの考えでございますけれども,今までのこの説明,経過説明とそれから今後の対策について御意見がありましたら,よろしくお願いしたいと思います。

E : この委員会だけではなくゲノムの委員会や疫学の委員会や臨床研究の委員会や遺伝子治療臨床研究の委員会など,みんなそれぞれ悩みというか,問題が山積みなんですね。事務の人の負担量も物すごく大きいですね。現在,事務は兼任ですが,専任の人をつけるようにA先生から研究科長なりにお願いしていただくといいですね。ほかの委員会からもそういうふうにするように言っているんですね。ほかに,新たに利益相反委員会というのもつくらないといけないんですね。それがないと厚労科研が出せなくなる。来年の4月からですね。どんどん厳しくなるわけですが,対応をせざるを得ない。これらの倫理系の委員会に張りつく専任の人がいらっしゃったらと思うんです。

A : 貴重な御意見をありがとうございます。確かに先生のおっしゃるとおりでございまして,実際にこの8月の期間中,7月8月に少し事態の進み方が遅かったという中に,私自身の自覚ということがあるんですけれど,大抵これまでのところですと事務方から,先生何をしているんだといって言ってくださるんですけど,ちょっとその部分が少し弱かったことがあるので,それは事情がございまして,学内で全く別な案件で大変な負担が生じまして,そこにもうかかりっ切りになっていたと伺っております。だから,先生のおっしゃることはもっともで,社会一般の常識から考えれば,当然そういう対応をしなければいけないと思いますけれども,今の現実,この大学を取り巻く現状は負担量はますます増えるんだけれども,人員はそれと関係なくどんどん減らすという方向で動いておりまして,先生がおっしゃってくださった希望が可能であるかどうか,非常に難しいだろうとは思います。

 この点に関して,事務の御意見はいかがでしょうか。

事務: 専任のスタッフ化,事務スタッフ化の問題については確かに必要だと思います。ただ,現状今我々2人の事務スタッフで倫理委員会だけでなく,他の業務,例えば学部の教授会の主催からRI関係の手続,そういったものを一切やっておりますので,実際モニタリング,それから後のアフターケア,フォロー,そういったことがほとんどできていない状態です。ただ,これから先のこととして考えるのであれば,やはりそういった組織体制をきちんとつくる,そこに人を張りつけるということは可能であろうとは思います。今の倫理委員会が4つあって,これは研究科長のもとでの組織ではあるんですけれども,研究本部を作る,ような組織化をした上で事務スタッフを要求するという手順を今後とっていく必要があります。ES研究はもちろんですけれども,そのほかの研究,たくさん先生方が研究されておられますので,そういった支援スタッフみたいなものを置くにはやはりそういう組織が一つ必要ではないのかなと,事務方としては思います。

A : ありがとうございました。これはこの倫理審査委員会が単独でどうこうという問題を超えているとは思いますけれども,今の事務の御意見も踏まえて考えてみますと,今のこういう社会情勢の中で医療の臨床研究,特にこの臨床研究を含めてスムーズに進めるためには,やはり強力な倫理面でのモニタリングがちゃんとできるような体制ということがどうしても必要になるだろうと。だから,将来的にはそういう方向で考えていかないと実態は進まない,あるいはいろいろなさまざまな問題が起こるということが出てくるのではないかということがちょっと分かりました。

 したがって,いかがでしょうか。今のこの,その点に関しましては,倫理審査委員会,この委員会といたしましては,やはりそういうことが必要なのではないかという意見として提言をするということで,研究科長にそういう意見を申し上げて,将来的に研究科長がそういう方向で整備していただくようにお願いをするということで対応したいと思いますが,それでよろしいでしょうか。

 なかなか一朝一夕にはセンター化して人が増えるということにはなりにくいと思いますので,それまでの間はいかにして事務方だけの負担ということにしないで,知恵を絞って,効率的に作業が進むようなシステムを工夫していくと。先ほどの行程表とか,それから自動的なアラームシステムもそうなんですけれども,余計なエネルギーを使わないでも物事がうまくいくというような方向の工夫を一生懸命やりたいと思いますし,この事務方に負担をみんな押しつけるのではなくて,私も含めて委員の皆様方の御協力をいただいて,効率のよい運営をしていけたらと考えます。

 そのほかに何かございますでしょうか。

 はい,どうぞ。

E : 今,倫理系の委員会が5つあるんですね。この委員会と,疫学とヒトゲノムと臨床研究で3つ,そして遺伝子治療臨床研究で5つですね。それと,治験委員会がありますね。治験は少し性質が違うんですが,臨床研究の倫理委員会とかなりダブっていたり,どちらで審査するかが分からなかったり。これらの倫理委員会を一つにまとめて,それに1人でも専任の人を張りつけるという,これは可能だと思うんですね。

A : ありがとうございます。貴重な御提言で,是非そういう方向で研究科としては考えていただきたいとは思いますけれども,そのこと自身をどうするかに関しましては,明らかにこの委員会の役目の範疇を超えておりますので,先ほど申し上げましたように研究科長にそういう方向で要望するということで,その点はここまでにしたいと思います。

 そのほかにございますでしょうか。H先生,何か今の議論について。

H : この件に関しては,今いろいろ建設的な御提案があったと思いますし,それについては異論がないところなので,それで是非進めていただきたいと思います。私たち自身もこういう行程表をいただくことで,もっと認識を持つよう努めないといけないなと思います。

A : ありがとうございました。

 I先生,何か一般の立場で。

I : さっきからのお話ですけれども,やはりミスやトラブルが起こるたびにシステムが煩雑になるというのは,もう大学,文化系の大学でも痛感することで,それによって本当にエネルギーがそっちにとられて,一番やらないといけないことがおろそかになるという傾向が全体的にあるんですね。だから,そのシステム全体を考え直すというのは,もちろんこの委員会の仕事ではないとはいえ,とても大事なことのように思います。やはり一番大事なところがおろそかにならないようにしないと,本当に何か非常にアンバランスな状態になっているような感じがします。

 それから,先ほどのこの研究そのもののお話ですけれども,やはりD先生がおっしゃったように,この研究の評価が全体としてどうなのかというのは素人には特に分からないことで,それこそiPS細胞と比べてどうかということをさっき研究責任者B先生がおっしゃっておられたんですけれども,その辺についても素人にはもう少し詳しく説明していただかないとよく分からないということがありまして,その辺について勉強できる機会があればありがたいと思います。

 それから,小委員会をつくって,こういうふうに検討していただくと,私もしばしば日程が合わなくて出席できなくて,日程調整に御迷惑をおかけしているのが大変気になっているんですけれども,その辺が能率的にできればと思います。

A : ありがとうございます。本当に先生のおっしゃるとおり,大学に限らずどこの組織でもそうかもしれませんけれども,問題が起こると継ぎ当てをするためにちょっと何か新しいことをやる,そうするとどんどんどんどん複雑になって,何か建て増しを繰り返しているホテルのようなもので,最後は迷路だと。だから,先ほどからE先生に言っていただいた御意見というのは,多分そういう迷路化しているところをもう一度全部更地にして,すっきりした建物を建てようということだと思うんですね。そういうことは本当に大事なことだと思いますので,研究科長にもお願いをして,そういう方向で検討をしていただきたいと考えます。

 それから,評価に関しましては,先ほどD先生も言われましたので,研究責任者B先生のほうにももう少しそういうことを意識して,この委員会にもそういうことが分かるような形に努めていただきたいということは是非お願いをしたいと思います。

 そのほかにございますでしょうか。

 はい,どうぞ。

H : I先生がおっしゃったことに関連して,評価ということについてです。ゴールがどこで,延長したということはもう2年ぐらいかかると設定されているのだと思いますけど,そこに向かって今どの辺にいるのかということは,専門家の先生たちがいらっしゃるので先生たちにはきっと分かっているのだろう,その専門家の判断にある意味ゆだねて,間違っていないのだろうと思えばいいのだろうかというようなところがあります。もしかしたらI先生もそうかもしれないんですけど,そういう意味では一般の立場で来ている場合にどういう役割を果たすべきなのかなというのは,悩みとしてあるわけです。

 もちろん専門的な研究ですから,中学生にでも分かるようにということはなかなか難しいかと思いますけれども,しかしそのあたりをどういう形で示していくのかということもあります。例えばホームページの公開内容も,「ですます」調にはなっているんですけれども,内容的には私がこれを読んで,現在こういう段階に来ているんだなと評価をすることは残念ながらできません。ホームページが誰を対象にしているかということは,それはそれでまたあるわけですけれども,一般に公開をして,社会に向かって理解を求めていくということも目的にあるのであれば,分かりやすくするということに協力をすることは,もしかしたら私やI先生のほうが先生方よりもできることかもしれません。必要なのであれば,そういう協力もさせていただきたいし,そのことで自分も含めて一般的な社会に向かって開かれるということでプラスになるのであれば望ましいことかなと思っております。

A : ありがとうございます。その点は非常に大事なポイントで,ただし実際にはもちろんなかなか難しい面も同時にあるんだろうと考えております。先ほど来,G先生がいろいろ御指摘になってことも,本質的にはそういうことを専門的な具体的な内容を指摘されながら述べられたものだと受け止めております。ただ,そこの難しさというのは,なかなか研究というのが,これも前からそういう議論がいろいろ出ましたけれども,どうもやってみなければ分からないという面があって,それで世の中ですと例えば何か工事を請け負って,工事が途中でビルが7階までしか建たなかった,10階には3階分たりませんでしたと言ったら,それはもう話にならないという評価ですけれど,研究というのは未知の領域に入っていくので,大体10のことをやると言って,半分か6割ぐらいいけば立派な成果を上げたという面があるんですね,私の理解では。それはその5割6割を,では何で判断して5割6割と言うのかというところはもちろんあるんですけれど,どうしても研究というのはそういう側面があると。ただし,ES細胞に関して,それではそういうことをどんどん容認していいのかというと,大事に扱って有意義に使うということから考えると,そう自由に容認はできないだろうというのが最初の計画を承認するときの議論だったと思います。

 だから,そういう観点からG先生が今の進みぐあいでいいのかということを具体的に指摘されたというふうにも考えておりますし,もうちょっとそれが目に見えるような形,ホームページで出して一般の方がそれを読んでも分かるような形にする必要があるのではないかということは大事なポイントだと思います。この点についても少しそういうことに留意をして,2年間,もう2年間ですから,2年間ということをよく意識をして物事を進めていただくようにお願いしたいと思います。具体的に何か御協力していただくことがあったら,またお願いすることになると思いますので,よろしくお願いいたします。

 そのほかにございますでしょうか。

 よろしいでしょうか。

 それでは,一応この間の経過についても御説明を申し上げまして,委員の先生方に御理解いただいたということと,それから今後の再発防止策を含めた努力の方向性について,こういう方向でやればよかろうとお考えいただいたということにしたいと思いますけれども,それでよろしいでしょうか。

 はい,どうぞ。

H : 確認というか教えていただきたいんですけども,裏面の3)にあるように,現在は中断中で,文科省の専門委員会と文部科学大臣の承認と確認があって再開するという現状に今もあって,これが例えばいつ頃に。

A : ごめんなさい,これはもう文部大臣の確認は昨年の12月24日付で確認されました。したがって,もう再開可能なので。もう再開されたんですか。

事務: はい。

A : もう再開されたということで,その確認を受けてから実験をもう一回スタートしたということです。

事務: 実際に文書で届いたのは1月5日なんですけれども,日付が12月24日付で,事前に文科省からも承認になりましたという御連絡はいただいています。

H : 報告書は24日付だから,この記載のままでいいということなのかどうかということと,記録簿を見ると,10月8日に中止したというのが最後になっていたので,そのあたり現状はどうなっているのかなと思ったので,分かれば教えていただければ。

A : 再開はいつされたんですか。

事務: 日にちまでは。

A : 聞いていないよね。まだ,どうなんですかね,ちょうどボーダーラインぐらいで,再開後の記録はこの分に入っていないということだと思いますけど。

 よろしいでしょうか。

 それでは,その点についてはこれで,その他のうちの前半部分は終わらせていただきたいと思います。

 次の点は,その他についての委員の任期についてでございますが,現在の委員の任期は全員が平成19年4月1日から平成21年3月31日でございますので,この3月31日で任期が切れるんですけれども,研究期間もう2年間ございますので,まことに申しわけないんですけど全員の委員の皆様方に是非再任をお願いしたいと思うんですけれど,よろしいでしょうか。

 では,嫌だという声が出る前に,御承諾いただいたということにしたいと思います。ありがとうございます。よろしく御協力のほどをお願いします。

 最後に,次回の開催日ですけれども。

事務: 本日机上にお配りしております行程表ですけれども,1月に研究実施報告をいただきましたので,特に研究責任者B先生から変更の申請とか依頼とかがない限りは今のところ半年後,2009年7月,平成21年7月頃にこの委員会を開催させていただきたいと考えておりますので,詳細な日程照会をそのときまた,1カ月前ぐらいにはさせていただきたいと思いますけれども,よろしくお願いいたします。

A : はい,ありがとうございます。

 そういう予定でおります。先ほど申し上げましたように,その間に勉強会がございます。その件につきましてはまた御案内を差し上げますので,是非お時間の都合のつく方は御出席いただいて,今の現状をお考えいただければと思っております。

 以上が予定されていた議題のすべてでありますけれども,そのほかに委員の先生方から何かございますでしょうか。

 はい,どうぞ

I : 今勉強会というのをおっしゃったんですけど,多分専門家の方のための勉強会では私たちは何も分からないので,H先生もそうだと思うんですけれども,その辺がちょっとつらいところで,何も分からないから勉強会に参加させていただいたほうがいいんだけれども,行ってもやはり分からないという,そのギャップをどう埋めたらいいのかということが,多分H先生も私も委員会に参加していて,これでいいんだろうかという不安が非常にあるところなんですが。

A : ありがとうございます。まずこの委員会の委員としては,このヒトES細胞の取扱指針にももちろんそういうこと,そういう精神がうたわれておりますように,いろいろな立場の方がこの場に参画してほしいということなんですね。もちろん,ある人は研究に携わっている人ですから研究のことに詳しい,ある先生は倫理の専門家だから倫理に詳しい,法律に詳しい。だけど,大事なことは,私は最初の頃にいろいろな議論の中で申し上げましたけれど,倫理というのは,突き詰めてみれば,世の中から見て,普通の世の中から見て,おかしいのじゃないの,それは,考えるか,いいんじゃないのと思うか,そこに尽きるのではないかと思うんです。だから,確かに専門の部分のディテールはディテールですけれども,こうおおざっぱに眺めていて,やはりそういう感情を持たれるかどうかということが非常に大事なことなので,先生方の役割は非常に大きいんですよ,だから委員会の中では相変わらず非常に大きな役割を担っていただいているという認識でおりますので,よろしくお願いしたいと思います。

 それから,勉強会に関しましては,確かに前回笹井先生に来ていただいて勉強会をされました。あの先生は研究者でありますから,どうしても話の内容がそういう研究の具体的な分子の話とか細胞の話ということになりますけども,今回お呼びする予定の方は文科省の野島専門官でございますので,むしろお役所の立場から生命倫理を眺めておられる方なので,非常に一般的な話なんです。だから,サイエンティフィックな具体的な細胞の名前だ遺伝子だということは全然ありませんで,そういう立場の方ですので,是非よろしくお願いいたします。

 ほかにもし特段のことがございませんでしたら,これで委員会を終わりたいと思います。どうも御協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。