移植の流れ

造血幹細胞移植ってなにをするの?

Q1血液ってなんで赤いの?

血液は大きく分けると、いろいろな働きをもった血液細胞と、血液細胞や栄養分などをはこぶ血漿とよばれる液体成分からなります。血液細胞の多くをしめる赤血球の色で血液は赤く見えます。赤血球が少なくなる(= 貧血)と赤みは薄くなります。

Q2血液細胞ってなにをしているの?

血液細胞には、白血球赤血球血小板の3つの細胞からなります。
白血球は、主に体の外から入ってくる病原微生物を攻撃して体を守る働きがあります。少なくなると、病原微生物から体を守れなくなるため、感染しやすくなります。
赤血球は、血液細胞の大部分を占めます。以前にお話したように赤い色をしています。働きとしては、酸素を体全体の細胞に運ぶ役割をしています。貧血になると一度に運べる酸素が少なくなりますので、疲れやすくなったり、動悸がしたりします。
血小板は、血を止める働きがあります。少なくなると、けがや採血した時に血が止まりにくくなったり、少しぶつかっただけであざができたりします。

Q3血液幹細胞ってなに?

血液幹細胞とは、Q2に出てきました3つの血液細胞のどれにでもなることができる能力をもった細胞です。主に骨の中心部にある骨髄に存在します。血液幹細胞がうまく働いていれば、体を維持するのにちょうどよいバランスで血液細胞が日々作られます。他にも赤ちゃんとお母さんを結ぶへその緒(= さい帯)や少量ですが全身を回っている血液(= 末梢血)中にも存在します。

Q4なんで移植がひつようなの?

移植治療が必要な方は大きく2つに分けられます。
ひとつは、主に白血病やリンパ腫などの血液のがんです。これらの病気は基本的に抗がん剤の治療をします。しかし、抗がん剤のみでは治すことが難しい場合があり、骨髄を入れ替えて健康な血液をつくれるように、移植療法を選択します。
もう一つは、血液の細胞をうまく作れなくなる病気です。こちらには、先天的な免疫不全症や再生不良性貧血などが含まれます。

Q5移植はだれでもできるの?

体に負担のかかる治療法ですので、だれでもできるわけではありません。病気の種類や年齢、現在のからだの状態をみてできる人を判定します。最近では、体への負担を軽減した移植法(= ミニ移植 Q9参照)も選択できるようになり、移植できる人の範囲は広くなっています。

【こどもの移植について】

こどもでも、おとなと同じように移植を行うことがあります。こどもの移植は、こどもの病棟で、こども専門のスタッフが行います。血液のがんや再生不良性貧血のほか、こども特有の固形がんの治療に、「自家移植」を行うこともあります。

【高校生は“小児”なの?】

いっぱんに、小児科で診療する「こども」は、中学生以下とされることが多いです。しかし、こどものころにかかった病気が高校生になって再発した場合や、こども特有の病気にかかった高校生などは、小児科医が治療を担当することもあります。10代のお子さんについては、病気の種類やそれまでの経過などによって、どこの病棟でどのような治療をするか、個別に相談していきます。

Q6移植にはどんな種類があるの?

移植は、大きく自家移植同種移植に分けられます。
自家移植は、治療中に自分自身の血液幹細胞を取っておいて、大量の抗がん剤治療の後に自分の体に戻します。自分自身の細胞ですので、移植後の合併症は同種移植に比べると軽いです。しかし、抗がん剤が十分に効く腫瘍でないと効果は一時的です。また、血液細胞をうまく作れなくなっている方では、自分自身の幹細胞が取れませんので使用できません。
同種移植は、他の人からもらってきた血液幹細胞を移植します。血液幹細胞をもらう種類によって、骨髄移植末梢血幹細胞移植さい帯血移植にわけられます。他の人からもらった血液細胞ですので、自家移植に比べて合併症も多いです。しかし、悪性腫瘍の場合には悪い細胞を攻撃する良い免疫反応も期待できます。

Q7移植ってどんなことをするの?

移植というイメージから手術室で行われると思われるかもしれませんが、手術はしません。入院している病室で行います。骨髄移植末梢血幹細胞移植の場合には、輸血と同じように点滴で体の中に輸注します。さい帯血の場合には、量が少ないので注射で輸注します。また、さい帯血を骨髄の中に直接輸注する移植法が選択される場合もあります。

Q8移植した血液幹細胞がうまく働けているかはどう判定するの?

移植後に血液幹細胞がうまく働けるようになったかは、血液検査で血液細胞が作れるようになったかどうかで判断します。うまく働けるようになった状態を「生着」といい、白血球の一成分である好中球という細胞の数で判定します。

Q9同種移植3種類の違いってなに?

骨髄移植:骨髄から採取した血液幹細胞を移植する方法です。最も古くから施行されています。
末梢血幹細胞移植:末梢血中の血液幹細胞を移植する方法です。骨髄移植に比べて、生着が早いですが、移植後の免疫関連合併症(Q14参照)が強く出る傾向にあります。
さい帯血移植:へその緒から採取した臍帯血中の血液幹細胞を移植する方法です。骨髄移植と比べて生着までの期間が長く、生着できない危険性も増えますが、移植後の免疫関連合併症は少ない傾向にあります。
ミニ移植:移植前に使う抗がん剤の種類や量を弱くした移植法です。この方法により、高齢の方や移植前に合併症を多くもたれている方にも移植する機会を得ることができるようになりました。

Q10ドナーってなに?

血液幹細胞を提供される方のことをドナーといいます。白血球の型が一致した人が選ばれます。ドナーとしては、ご家族が候補となる血縁ドナーと骨髄バンクや臍帯血バンクなどが候補となる非血縁者ドナーに分けられます。
骨髄:ドナーの腰骨から骨髄液を採取します。全身麻酔を施行し、両方の腰骨から採取していきます。採取する量は、移植される方の体格によりますが、500-1000ml程度です。採取前に自分の血液を貯めておく自己血貯血の必要があります。入院期間は、3-4日程度です。
末梢血:白血球を増やす薬を数日注射して、末梢血に流れ出てきた血液幹細胞を採取します。両腕の血管に針を入れて、片方から血液を抜き、分離装置で必要な血液幹細胞だけを回収した後にもう片方から残りの血液を戻します。採取の3日ほど前から白血球を増やす薬を始めて、採取に1-2日かかりますので、5-7日の入院が必要です。
さい帯血:臍帯血の提供に同意された妊産婦さんから採取します。出産後に捨てられてしまう臍帯と胎盤に残っている血液中の血液幹細胞を採取し、凍結保存します。そのため母子ともに痛みも影響もありません。

Q11骨髄バンクってなにをするところ?

骨髄バンクは、全国からドナー登録者を募り、骨髄・末梢血幹細胞移植を必要とする人が移植を受ける機会を確保できるように活動しています。

Q12さい帯血バンクってなにをするところ?

さい帯血バンクとは、さい帯血の提供に同意された妊産婦から頂いたさい帯血を凍結保存し、移植を希望される患者さんに提供するところです。さい帯血は各さい帯血バンクと提携している施設で採取されます。

Q13移植をするのにどれだけお金がかかるの?

ドナー候補者の人数(人数×検査料など)や、ドナーのお住まいの地域(運搬料)などにより、料金に差が出て来ます。

Q14移植は安全なの?

医療の発展により、昔と比べると安全性は高まってきていますが、体に負担のかかる治療であることは違いありません。主な合併症として生着不全移植片対宿主病(= GVHD)が挙げられます。
生着不全とは、移植した血液幹細胞がうまく働ける状態にならず、血液細胞が作れない状態です。血液細胞ができない状態は命にかかわりますので、2度目の移植などが必要になります。
移植した血液幹細胞からできる血液細胞にとって移植をうけた人の体は他人となります。したがって、本来は正常な細胞を攻撃してしまう免疫反応が起き、これをGVHDといいます。GVHDは重大な合併症のため、移植前から予防する薬は使用しますが、現状では完全に予防することはできていません。皮膚、肝臓、消化管が反応の場になるため、皮疹、肝機能障害、下痢などが出現します。

Q15移植をしたら病気は治るの?

血液の細胞をうまく作れなくなる病気に関しては、完治を見込める治療になります。
悪性腫瘍に関しても完治を目指して移植します。しかし、現在の移植治療では残念ながら再発を0にすることはできていません。そのため、私たちはすべての人に完治を目指せる移植法の開発を目標に日々研鑚を積んでおります。

Q16移植ではどれくらい入院するの?

移植の方法や移植後の経過によって大きく幅はありますが、移植前の処置と移植後を合わせて、約2カ月前後の入院期間となります。

Q17移植をしたら何か変わる?

移植後も病気になる前と同じ生活ができることが、すべての移植医療従事者の治療目標です。治療の発展により多くの方が、目標を達成できるようにはなってきましたが、移植後の合併症の程度により、活動に制限ができてしまう場合もあります。
また、ドナーにより血液型は変わる場合があります。

Q18移植前後で気を付けることはある?

移植前もそうですが、移植後には病原微生物に対する抵抗力が低下しおり、感染症には弱い状態です。感染予防には十分注意する必要があります。

Q19移植したらもう病院に行かなくていいの?

移植後も薬の調整や症状の変化に対応するため通院の必要があります。移植後の経過により、通院する間隔は徐々に長くなっていきます。
また、当院では移植後の合併症を早期発見する目的で、移植後6か月後および1年毎に移植後長期フォローアップ外来(= LTFU外来)を実施しております。

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