認知症では、もの忘れ、理解力の低下などの症状以外にも、幻覚・妄想、攻撃性、イライラ、抑うつ、不安・緊張、睡眠障害などの多くの症状がみられる場合があります。これらの症状は患者さんごとの個人差が大きく、身体的・環境的な原因が関係することもあるため、第一には体調を整えゆっくり休める環境を作ることが大切です。症状が強い場合や、他の原因対策を行っても十分な改善が得られない場合に、それぞれの症状に応じたお薬を使用して、治療を行います。ただし、ここで紹介するお薬は、本来は他の病気に使用されるお薬を応用していますので、医師・薬剤師から十分な説明を受け、納得した上で使用しましょう。
抗精神病薬
- 認知症に伴う幻覚・妄想、興奮・攻撃性、イライラなどの症状に対して使用します。
- 少量から開始して少しずつ増量し、副作用が出ない範囲で使用します。
- 主な副作用として、歩きにくい、話しにくい(ろれつが回らない)、飲み込みにくい、手足のふるえ、立ちくらみなどの症状があります。
- 主な抗精神病薬:エビリファイ、シクレスト、ジプレキサ、セロクエル、リスパダール、ルーラン、ロナセン
抗うつ薬
- 気分の落ち込みや抑うつ症状だけでなく、薬によっては不眠症状に対しても使用します。
- 主な副作用として吐き気・下痢など消化器症状や尿閉(おしっこが出にくい)、眠気、口が渇くなどの症状があります。
- 急に減量したり、勝手に中断すると不安、焦燥、不眠の悪化や敵意、衝動性、易刺激性、パニック発作、そう状態などの症状が出る恐れがあります。量の変更は、医師に相談のうえ、慎重に行います。
- 主な抗うつ薬:イフェクサー、サインバルタ、ジェイゾロフト、トレドミン、パキシル、リフレックス、ルボックス、レクサプロ
抗不安薬、睡眠導入薬
- 不安が強い場合や、睡眠の問題(寝付きにくい、寝てもすぐに目が覚めるなど)がある場合に使用します。
- 日中の眠気やふらつきなどの副作用を生じやすく、転倒・骨折につながるため効き目の短い薬剤へ変更される場合や、減量される場合があります。
- 抗不安薬や睡眠導入薬の使用により、認知機能の悪化やせん妄症状(特に夜間、急に意識障害が現れる)がみられる場合があります。このような場合には使用の中止や他のお薬へ変更が行われます。
- 症状に応じて、抗うつ薬や抗精神病薬を睡眠導入薬として使う場合があります。
- 主な抗不安薬:ワイパックス、ソラナックス、デパス、リーゼ、デパス
- 主な睡眠導入薬:マイスリー、レンドルミン、サイレース、アモバン、ルネスタ、ロゼレム、ベルソムラ